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⭐︎突然の再会
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「お茶くらい普通に奢るよ。それよりスーツを……」
「決まり。じゃあとりあえず連絡先交換しよう」
ニコニコと微笑まれ、断る隙も与えられず携帯をリンクし合って連絡先を交換することになった。
「じゃあ、時間がないからまた連絡するよ。とりあえずこのタオルは借りていくな」
爽やかな笑みを浮かべてそう言うと、私のタオルと汚れたスーツのまま颯爽と去って行ってしまった。
「あっ、ちょっと朝日くん!」
通行人に振り向かれながら堂々とした態度で足早に去る彼の背中を、罪悪感に満ちた気持ちでいっぱいになりながら、引き留めることもできず見送ってしまった。
その場に一人残された私。
カップの中のクリームはなくなり、綺麗だったグラデーションも今はもう境目がなくなっている。
私は水滴が垂れるドリンクを片手に、ただ呆然と立ち尽くした。
十七年ぶりに偶然再会した幼馴染に感動する余裕もなく、ただただ申し訳ない気持ちでいっぱいになるだけだった。
*
「あまかわしぇんしぇー!これみてぇー」
「ちぇんちぇ、おちっこ……」
「うえーん! ひろくんがたたいたぁ」
「はいはい、順番ねぇ」
ゆっくりする暇などない毎日の保育業務。
午睡してくれるまではノンストップで二歳児の相手が続くけれど、へとへとになりながらもそれなりにやりがいを感じる毎日だ。
父の会社が倒産し、両親の苦労を見てきた私は会社員ではなく、子供と関われる保育士になりたいと夢見て大学を卒業し、保育士になった。
子供たちの可愛い笑顔や笑い声に癒やされ、できなかった事が出来るようになった姿を発見できれば、忙しくて疲れていてもそれだけで喜びにあふれる。
だから子供たちに関する不満はまったくない。
あるとすれば、やはりどの職場に行っても起こりうる人間関係……。
「天河さん、この子の様子見ていてって言ったよね。ほんっと要領悪いんだから。そんなんでよく保育士続けてられるよね」
「すみません」
「もういいから、あっちの子の面倒見ててよ。あと、あの壁に貼ってある季節の野菜と動物の切り絵、センスないから作り直してね」
「……はい」
一年前に再就職してこのあけぼの保育園に来てから、こんなことは日常茶飯事だ。
確かに要領も悪いしセンスもないかもしれない。だから年長者で主任保育士の高野先生に文句を言われたりすることもあるのは分かっている。
以前いた職場とシステムが違って慣れないこともあり、モタモタする私を見て苛立つのだろう。
けれど、もっと要領よくなりたいと思いながら何度も言われてしまうと、心が折れそうになってくる。
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