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200年ぶりに帰ってきました
城から出て行くようです
しおりを挟むあの馬鹿との遭遇後、俺達は与えられた個室へ向かった。
個室はそりゃもう広かったし豪華だった。
天井にシャンデリアがあるなんて初めて見たし、部屋にある家具のどれもが高価だとわかる造りだった。
庶民な生活をしていた一般人がこの部屋を遠慮なく使うのは戸惑われるものなのではないか。
「うおっすげー!俺こんな部屋初めて見た!」
・・・・・・一部を除いて
流石竜馬。物の価値が分からない男。
あいつの頭には遠慮という文字は無いのか。馬鹿だからなのか。
ほらみろ、翔太も引いてるぞ。
翔太も俺と同じこと考えてそうだな。多分。
さて、あの遠慮なくベッドの上を飛び跳ねていたバカ(竜馬)を大人しくさせ(物理)俺達はこれからどうするか相談することにした。
「第1回異世界召還されちゃったけどマジでこれからどうしよう会議~」
「ものすごくセンスがないですね」
「そのままじゃん」
「わかりゃあいいんだよわかりゃあ!司会はこの俺!竜馬様がしまーす!」
「そんな頭にタンコブがある司会なんてやだ」
「激しく同意です」
「お前らさっきからうるせーぞ!しかもタンコブは晶のせいじゃねえか!」
「これからどうする翔太」
「とりあえずこの世界のことを知った方がいいと思います」
「おっいいね」
「無視すんなよお!」
流石に竜馬がうるさいのとかわいそうだと9:1の割合で思ったから話し合いに参加させた。
「あんまり魔王討伐とか参加したくないよな」
「ある程度鍛えてからここから逃げましょうか?」
とか時々茶々を入れながら真面目に話し合っていた。
しかし俺はどうしようか。
俺は今すぐにでもここから出て行きたい。
古い友人にも会いたいし世界を回ってみたい。
しかし竜馬と翔太も気になるし一緒に行くとしても説明がめんどくさい。
それにちんたらここで待ってもいられない。むむう。
---よし、出て行こう。竜馬と翔太は強いし大丈夫だろ、いざという時の保険もかけとくし---
こうして、俺は帝国から出て行く決意をした。
「なあ竜馬、翔太」
「なんだ、晶」
「俺、一人で帝国から出て行こうと思う」
「へえそうか・・・ってホエアッ!?」
「えっちょっまってくださっ・・・ええ!?」
「二人共落ち着け」
「これが落ち着けるか!」
「そうですよ!何でいきなり・・・」
「自由になりたいから」
「そんな理由ある訳ないわ!!」
竜馬が机をドンッと強くたたいた。
竜馬は珍しく本気で怒っていた。
竜馬は沸点が低く怒ることはよくあるが本気で怒ることは少ない。
だから珍しく本気で怒っていて少し驚いた。
竜馬は俺の首襟を掴んで怒鳴った。
俺はよけることもできたし、手を払うこともできたが、あえて受け入れた。
竜馬の行動は俺のためであると分かってるから。
「ちょっと待って九藤さん、それは・・・」
「少し黙ってろ翔太。晶!お前馬鹿なのか!ああ馬鹿だな!それって本気なのか!」
「馬鹿に馬鹿と呼ばれるのは心外だな。だが自由になりたいというのは本気だ。俺は世界を見てみたい」
「だからって一人でいかなくてもいいだろ!外がどうなってるかわからないだろ!それに魔物もでるって王様がいってただろ!そんな危険なところに一人でいくのか!」
「行くよ。何を言ってもこれは譲らない」
「っ・・・なら俺達も「無理だよ」
「今の竜馬と翔太の力が魔物に敵うか分からないし、しかも足手纏いな俺がいたら十分に実力が発揮できないと思う」
「でもっ・・・だからって一人は・・・」
「九藤さん、諦めましょう」
なお反論する竜馬に翔太が話しかけた。
少し意外だった。
翔太も竜馬と一緒に引き止めると思ったからだ。
「なら翔太は晶を一人で行かせるのかよ!」
「僕は行かせたくないですよ、もちろん」
「だったらなおさら・・・」
「けどこれは千野さんが決めたことです。僕等は友人として信頼し、見送ってあげることも大事だと思います」
「止めてやることも友人として大切なことだろ!」
「それもそうです。だけど千野さんは愚かではありません。ちゃんと先を見通して一人でいける方法があると思います」
「・・・あるのか?晶」
「ちゃんと考えてるよ。なかったら言ってないよ」
「そうか」
竜馬はどうやら折れてくれたようだ。
翔太の言葉があったおかげだから感謝しないとな。ありがとう翔太。
そして竜馬は真面目な顔で言い放った。
「俺は親友として晶を信頼して一人で先に行かせよう。ただし晶、絶対死ぬな!俺達も後で行くからな!忘れんなよ!」
なるほど、「親友」としてか。
竜馬は俺をそうみてくれてたのか。
これはうれしいな。
だったらなおさら死ぬわけにはいかない。
「任せろ、俺はたとえ火の中でも水の中でも死なないぞ。安心しろ」
「ははっそれはうれしい限りだ」
これで心配事もなく帝国から出ていける。
待ってろ世界、これから俺の旅が始まるからな。
・・・あっ図書館行かなければいけないんだった。ついでに王様の許可。
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