死ぬほど暇なので転生することにしました。(仮)

テル

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第1章

第34話 バーソン商会

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 ※

両開りょうびらきの玄関げんかんとおってなかはいるとおおきな部屋へやがあり、そこは食堂しょくどうになっていた。

おくには厨房ちゅうぼうと10以上いじょう個室こしつ。トイレはそと風呂ふろはなし。行商仲間ぎょうしょうなかまやその護衛ごえい使用人しようにんなども寝泊ねとまりしているらしい。

行商人ぎょうしょうにんなのに、いえっているってことは、このむら出身しゅっしん?」

おれいえじゃない。ここはバーソン商会しょうかいものでね」

理希コトキとグラヴィスは、食堂しょくどう片隅かたすみのテーブルをはさみ、かいって椅子いすすわっていた。

ミケはフードのなか寝息ねいきてているから、昼寝中ひるねちゅうなのだろう。ハチははいるとゆかけそうなので、うまたちと一緒いっしょそと待機たいきしてもらっている。

「ちなみにおれ王都おうと『ウィステリア』の出身しゅっしんだ」

「バーソン商会しょうかいって?」

おれやとぬしさ。レメディウム王国内おうこくないだけじゃなく、クリーメン帝国ていこくやプリンキピア神聖教国しんせいきょうこくとも取引とりひきしている、まぁ、ってくらい有名ゆうめい商業組織しょうぎょうそしきだ」

理希コトキかおながら、グラヴィスは口角こうかくげた。

「……、そうなんだろうね」

ぼく何者なにものなのかさぐっているみたいだけど、説明せつめいしてよいのかからないからこまる。転生者てんせいしゃってほかにもいるのか?

「レメディウム王国おうこくにクリーメン帝国ていこく、プリンキピア神聖教国しんせいきょうこく…」

ゆびって確認かくにんする。このむらはレメディウム王国おうこくりょう首都しゅとがウィステリア…、なのかな。

「そのほかに、アグライア・オドラータ辺境連合へんきょうれんごう都市国家としこっかとも商売しょうばいしてるぞ」

「……」

固有名詞こゆうめいしがいっぱいてきてあたまいつかないから、あと整理せいりしたほうがいいかも。

「ところでぼくのことを貴族きぞくのボンボンとおもった理由りゆういてもいい?」

自慢じまんじゃないけど、これまで高貴こうきさとは無縁むえん生活せいかつおくってきたから、なぜなのかになった。

二点にてんほどある」

ブイの左手ひだりてゆび二本立にほんたてた。

ひとつは、こんな僻地へきち寒村かんそんるような酔狂すいきょうやつは、冒険者ぼうけんしゃにもいないってことさ」

「グラヴィス…、さんも、そんなむらてるじゃないか」

おれ商売人しょうばいにんだからな」

ためいきき、はなあたまいた。

てでいい。おれもそうするから」

採算さいさんとれてます?」

「……、なかなかするどいな。ればるほど赤字あかじさ」

「じゃあ、なんで?」

おれやとわれのだからな。くわしい理由りゆうはしらん」

両手りょうてひらうえにして左右さゆうかるげ、くびった。わざとらしいおおげさなジャスチャーだ。

「ボランティアってわけでもなさそうだね」

なにかかくしてそうだけど、深入ふかいりすることでもないし。これ以上いじょう追及ついきゅうするのはよそう。

あと2、3ヵげつもしたら、行商ぎょうしょうむずかしくなるだろうがな」

「それはまたどうして?」

「……、秘密ひみつなんだが、まぁ、いいか。かみちからよわまってるからさ」

かみちから?」

よわまったりつよまったり、数百年単位すうひゃくねんたんい周期しゅうきがあるらしいが、各国かっこくうごきがなにかおかしい」

グラヴィスは中腰ちゅうごしになってかおちかづけ、こえひそめた。

食堂しょくどうにはほかひとがいないから、そんなことする必要ひつようはないとおもうけど、という演出えんしゅつをしているのかも。

「え~と、で、よわまるとどうなるの?」

「……、魔物まもの増加ぞうかする」

グラヴィスは苦笑くしょうして椅子いすすわなおした。

「なるほど。だからこの村周辺むらしゅうへんでも、キラー・ラクーンがえているのか…」

「いや、それはまたべつ理由りゆうだよ」

「ややこしいなぁ…」

ミケをこして、一緒いっしょいてもらったほうがいいようながしてきた。

「この地域ちいきまもがみだった神鳥しんちょうが、ここ数日姿すうじつすがたせないらしい」

「へぇ…、まもがみなんていたんだ」

おれわせれば、ただの大喰おおぐいのものだけどな。領域ナワバリおかしたら人間にんげんおそうし」

もの…」

毎日魔物まいにちまものらかしてたから、漆黒しっこくもりちかいこんな場所ばしょでも人間にんげんめたのさ」

「いなくなって数日すうじつ影響えいきょうがでるほどの大食漢たいしょくかんか」

漆黒しっこくもりってのは、魔王まおう関係かんけいがあるのかな…。

かみ御使みつかいとしてまつってるやしろ西にしおかにあるから、になるなら今度案内こんどあんないしよう」

べつにいいや」

理希コトキ無下むげことわった。いや、ほんとに興味きょうみないし。

「それで、ふたは?」

「ボンボンとおもった理由りゆうはなしている途中とちゅうだったな。おまえさんがているそのローブと、ウェインにあげたマントさ」

「あぁ…、これかぁ…」

いえなかそと気温きおんはたいしてわらないので、がずにていたベンヌ・ローブをさわり、あらためて確認かくにんした。

レアアイテムだとはおもっていたけど、『装備者そうびしゃ』=『金持かねもち』と認識にんしきされる、というかんがえは、これまでかばなかった。

価値かちっているやつなんてそうそういないが、をつけることだ」

をつける? なにを?」

なかわるやつおおいってことさ。ぬすまれるだけならまだいいが、いのちうばわれることもある」

「……」

「いやぁ、なんの躊躇ためらいもなくあのマントをあげちまったときはおどろいたね」

てたの?」

おれ一番嫌いちばんきらいなタイプだからな。どこのぼっちゃんだからないが、いっちょだましてぐるみはがしてやろうかとおもったんだが…」

豪快ごうかいわらいながらテーブルをたたいた。

ひどいことうなぁ…」

本気ほんきなのかうそなのか表情ひょうじょうからはからないが、多分たぶん本音ほんねはなしているがする。

おこるなよ。はなしてみたらわった。いま親切しんせつにしてるだろ」

そうってグラヴィスははなあたまいた。

「じゃあ、親切しんせつついでにあのマント、ほか村人むらびとには内緒ないしょでウェインさんからってあげてくれない?」

阿漕あこぎ商売人しょうばいにんおれたのんでいいのか?」

適正てきせい価格かかくじゃなくていいから」

「まぁ、それがいいだろうな。いきなり大金持おおがねもちになったらねたみの対象たいしょうにもなりかねんし」

「……」

ここは日本にほんじゃないとかっていたつもりだったけど、ちょっと軽率けいそつすぎたようだ。はや段階だんかい指摘してきしてもらえてよかった。

交渉こうしょうはしてみるが、きっと買取かいとり無理むりだな」

「え? なんで?」

「おまえさん、もうすこひとこころというか、社会しゃかい勉強べんきょうしたほうがいい」

グラヴィスはためいきいた。

「うニャ~。ご主人しゅじんをバカにするニャ」

フードからると、理希コトキかたうえねむをこすりながらミケが抗議こうぎした。

「ミケ。このひと警告けいこくしてくれているんだよ。ぼく世間知せけんしらずなのは本当ほんとうのことだし」

人差ひとさゆびでノドをでながら、小声こごえさとした。
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