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第1章
第47話 完全変態
※
「近くで見るとやっぱり大きいニャ…」
「元は立派な樹だったんだろうね…」
途中で折れて枯れてしまっているけど、巨大だったジェニファー・ジュニアと比べても、幹がとんでもなく太く高さも3倍以上ありそうだ。
理希はペアレンティング・アントの巣から200メートルほど離れた森の中にいた。
巣の周囲には木はなく、ちょっとした広場みたいになっている。
「あんニャに大きいのに、子供たちを見つけられるのかニャ?」
「白アリに案内してもらうから、多分大丈夫」
巣の中は蟻道が入り乱れていて迷路みたいになっているらしい。
「うニャ?」
ペアレンティング・アントについては、昨日色々と教えてもらった。
生きて帰ってくる子供たちが多いから、生態についてはよく知られている。
「地中よりはましかなぁ…」
群体?によって巣の形態は様々で、この集団は枯れた老木を利用しているようだ。
「よっと」
理希はレイピアを抜くと、背後から忍び寄っていたペアレンティング・アントの頭を突き刺し、鞘に戻した。
「ギギ……」
奇妙な声を発しながら、あっという間に石化する。
「そろそろ日が落ちるね」
「作戦開始の時間ニャ」
兵隊アリはもうまばらにしか巣から出てこない。
「じゃあ、魔法を使うからちょっと離れてて」
「うニャん!」
ミケは伏せをしているハチの背中に飛び乗った。
「上手くいくかな…」
今回の救出計画はこの魔法がキモとなる。
アニメとかだと躊躇なくしかも楽しそうに変身していることが多いけど、実際に自分が使うとなるとなんだかちょっと怖い。
「と、その前に…」
ベンヌ・ローブを脱ぎ、レイピアをベルトから外すと異空間収納に投げ入れた。
換わりにグラヴィスに用意してもらった少女の服とカバンを取り出す。
「あっ!」
「ど、どうしたのニャ?」
「!?」
ペアレンティング・アントの巣を監視していたハチも、顔をこちらに向けた。
「下着と靴を頼むの忘れてた」
「ニャ…、ビックリしたのニャ…」
ミケは大きく一つ息を吐くと、心臓の辺りを撫でている。
「……」
ハチは無言で…、というか元々しゃべれないけど、巣へと視線を戻した。
「まぁ…、いいや」
理希は気を取り直して詠唱を始めた。
「ネー・フロンティ・クレーデ」外見を信じてはいけない
「ダビト・セルモ・アニミ・イマーゴ」言葉は心に姿を与え
「イマーゴ・エスト・アニミ・ウルトゥス」顔は心の形を写す
変身というのはやはり複雑なのだろう。1フレーズは短いけど、詠唱が少し長い。
「コグノスケ・テー・イプスム」自らを知り
「コンペスケ・メンテム」精神を整えよ
簡易ヒントによると、この魔法はイメージが重要で、しっかりとした像を思い浮かべる必要があるらしい。
少女の姿というような曖昧な感じだと失敗する可能性が高くなるから、とりあえず日本で有名だった子役の姿をイメージした。
「コンプリート・メタモフォシス」
一瞬で淡い七色の光に包まれる。
なにが起きているのか自分ではよく分からないけど、ミケが目を丸くして呆然としているから、変化はしているのだろう。
「おっ?」
段々視線の位置が低くなってくる。手を見ると明らかに小さい。カペルの服がブカブカになり、腰のベルトが足元に落ちた。
間もなく光が消える。
「うニャ~! ご主人が女の子にニャっちゃったのニャ!!」
何故かミケが悲鳴をあげた。
「ちょ、こら、声が大きいって!」
怪しげな光でさんざん悪目立ちしといてなんだけど、白アリの巣が近いから用心しないと。
「ニャ…」
両手で口を押さえている。
「一応…、成功かな」
鏡で確かめたいところだけど、村にもなかったし、異空間収納にも入ってないからしょうがない。
自分から発せられたとは思えない違和感ありありの声は、明らかに小さな女の子のものだから、変身は細部まできっと上手くいったのだろう。
理希はカペルの服と下着を脱ぐと、ワンピースのような簡単な作りの少女の服に着替えた。
「なんかスース―する…」
風呂でもないのに、外でノーパンになる日がくるとは思ってもみなかった。
ベルトに付けていた袋から魔法石を取り出し、素早く小さなカバンに入れ替える。
「靴がないのはさすがに困るなぁ…」
異空間収納に不要になった脱いだ服や靴などを入れると、小さめのボーブスの皮袋を2枚取り出した。
袋に足を入れ、足首を紐で止める。
「とりあえず…、これでいいかな」
意外と履き心地は悪くない。
「すぐ元に戻るんニャよね?」
「元の姿を強くイメージするだけで魔法は解けるから」
「うニャ…」
ミケの頭を撫でた。どうやらミケには、この姿はお気に召さないらしい。
月明りがあるから真っ暗ではないけど、色々と手間取っている間に、完全に日が落ちたようだ。
「じゃあ、ハチ、後は頼んだよ」
ハチの鼻を撫でると、大きく頷いた。
子供達を連れたミケと合流するまで、巣の周りの魔物退治を任せている。
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