二次ヒーロー: 親友である女主人公が異世界に召喚され、私も一緒に異世界に引きずり込まれ「脇役勇者」にされてしまう。

Saskia

文字の大きさ
21 / 53
ミッション5:自由を手に入れろ

第21章: 正義と贖罪

しおりを挟む
アレックスは落ち着いた足取りで山賊のリーダーに近づいた。リーダーは地面に倒れ込み、かつて手があったはずの血まみれの切断面を押さえていた。顔は青ざめ、震える声で助けを求めていた。

「お願いだ…ここで死にたくない…」と、痛みに耐えながら呟いた。

アレックスは冷たく、真剣な表情で彼を見下ろしていた。その後ろでは、EMIが負傷した女性を抱えており、彼女はゆっくりと意識を取り戻し始めた。女性が目を開けた瞬間、EMIに抱えられていることに気づき、ふと奇妙な想像が頭をよぎった。EMIが男性のタキシードを着ており、自分が白いドレスを着ている場面だ。

顔を赤らめながら弱々しく言葉を返した。
「ええ…大丈夫です。」

EMIは穏やかに微笑んだ。「それは良かった。」

女性は視線をそらし、自分の感情に戸惑っていた。そのとき、リーダーの叫び声が彼女の注意を引いた。アレックスがリーダーの前に立っているのを見て、彼女はEMIと共に近づくことを決めた。EMIは女性を優しく地面に降ろした。

「アリア、」とアレックスは毅然とした声で彼女に言った。「目を閉じて。」

アリアは彼の声のトーンからその意図を察し、何も言わずにEMIの後ろに隠れた。EMIもアレックスの計画を理解し、アリアの耳を覆ってこれから起こることから彼女を守ろうとした。

アレックスはリーダーに身を屈め、じっと見つめた。
「知っているか?皮肉なものだ。お前はこれまで多くの女性の弱みにつけ込んできた。でも今度はお前が弱者になって、助けを求めるのか?」

リーダーは何か言い訳をしようとしたが、アレックスはそれを遮った。

「俺には魔法なんてない。でも、今は同じ条件だな。」
アレックスは拳を強く握り締めた。「これだけで十分だ。」

そう言うと、アレックスはリーダーを殴り始めた。一撃一撃に、抑え込まれた怒りと正義が込められていた。彼を地面に叩きつけ、壁に投げつけても、アレックスは止まらなかった。リーダーの叫び声が部屋中に響き渡った。

ついに、アレックスは動きを止め、深く息をついて女性に向き直った。

—「君の魔法は、触れたものを全て消滅させるんだよな?」

女性はゆっくりとうなずいた。彼が何を言おうとしているのか、正確に理解していた。

—「辛いことだとは分かっている。でも、彼をこの記憶と共に生かしておく方が、死よりも残酷かもしれない。」

女性は歯を食いしばり、苦々しい声で答えた。

—「男なんて大嫌い。特に触れるなんて。でも、私たち全員にしたことの代償を払わせるためなら、やるわ。」

決意を込めて、女性は恐怖で震えるリーダーに近づいた。ためらうことなく手を彼に置き、彼の体の一部を消滅させた。断末魔の叫びが隠れ家中に響き渡る中、女性は無表情でその場を離れた。

対決の後、グループは基地の外に集まった。

女性は不安げに彼らを見た。
—「これで終わったからには、私を逮捕して引き渡すつもりなの?」

EMIは腕を組み、答えを考えていた。しかし、彼が何か言う前にアレックスが彼女の腕をそっと掴んだ。

—「行っていいよ。罪のない人を傷つけたわけじゃない。心配しなくていい。」

女性は信じられないという表情で彼を見た。
—「どうしてそんなことを?私の懸賞金はかなりの額なのに。」

アレックスはギルドの掲示板から取ってきた一枚のポスターを見せた。そこにはリーダーの写真が載っていた。
—「この男の懸賞金は君の10倍だ。だけどその前に、もう少しだけいてほしい。戦いの中で気づいたことがあるんだ。」

数時間後、刑務所の所長が護衛隊と共に到着した。彼らにはアリアの父であるアラリック公爵も同行していた。

女性を連行する準備が整ったが、EMIは彼らを制止し、山賊とそのリーダーを捕まえたと説明した。

所長は感謝の意を示し、報酬を提供しようとしたが、EMIはそれを断った。
—「報酬はいらない。ただ、彼女の捜索をやめ、容疑を取り下げてほしいだけだ。」

アラリック公爵は首を振った。
—「それは不可能だ。」

アレックスは状況を見て、最後の手を使うことにした。アリアに向かって微笑みながら言った。
—「アリア、お父さんを説得してくれないか?成功したらキスしてあげるよ。」

アリアの目が輝き、決意に満ちた表情で子犬のような瞳を父に向けた。公爵はため息をつき、最終的にアレックスに目を向けた。
—「彼女を信じるのか?」

—「はい。そしてそれに…」 —アレックスは机の上の書類の束を指差した。
—「このリーダーが他の犯罪にも関与している証拠を見つけました。」

所長は驚いて書類を確認し、短い議論の末、公爵と所長は同意した。

—「もしこの書類が本物なら、彼女は解放されるだろう。協力に感謝する。」

リーダーとその一味が逮捕され、グループはついに帰路につくことができた。彼らは正しいことをしたという確信を胸に。


しおりを挟む
感想 4

あなたにおすすめの小説

高校生の俺、異世界転移していきなり追放されるが、じつは最強魔法使い。可愛い看板娘がいる宿屋に拾われたのでもう戻りません

下昴しん
ファンタジー
高校生のタクトは部活帰りに突然異世界へ転移してしまう。 横柄な態度の王から、魔法使いはいらんわ、城から出ていけと言われ、いきなり無職になったタクト。 偶然会った宿屋の店長トロに仕事をもらい、看板娘のマロンと一緒に宿と食堂を手伝うことに。 すると突然、客の兵士が暴れだし宿はメチャクチャになる。 兵士に殴り飛ばされるトロとマロン。 この世界の魔法は、生活で利用する程度の威力しかなく、とても弱い。 しかし──タクトの魔法は人並み外れて、無法者も脳筋男もひれ伏すほど強かった。

男女比1:15の貞操逆転世界で高校生活(婚活)

大寒波
恋愛
日本で生活していた前世の記憶を持つ主人公、七瀬達也が日本によく似た貞操逆転世界に転生し、高校生活を楽しみながら婚活を頑張るお話。 この世界の法律では、男性は二十歳までに5人と結婚をしなければならない。(高校卒業時点は3人) そんな法律があるなら、もういっそのこと高校在学中に5人と結婚しよう!となるのが今作の主人公である達也だ! この世界の経済は基本的に女性のみで回っており、男性に求められることといえば子種、遺伝子だ。 前世の影響かはわからないが、日本屈指のHENTAIである達也は運よく遺伝子も最高ランクになった。 顔もイケメン!遺伝子も優秀!貴重な男!…と、驕らずに自分と関わった女性には少しでも幸せな気持ちを分かち合えるように努力しようと決意する。 どうせなら、WIN-WINの関係でありたいよね! そうして、別居婚が主流なこの世界では珍しいみんなと同居することを、いや。ハーレムを目標に個性豊かなヒロイン達と織り成す学園ラブコメディがいま始まる! 主人公の通う学校では、少し貞操逆転の要素薄いかもです。男女比に寄っています。 外はその限りではありません。 カクヨムでも投稿しております。

チート魅了スキルで始まる、美少女たちとの異世界ハーレム生活

仙道
ファンタジー
 ごく普通の会社員だった佐々木健太は、異世界へ転移してして、あらゆる女性を無条件に魅了するチート能力を手にする。  彼はこの能力で、女騎士セシリア、ギルド受付嬢リリア、幼女ルナ、踊り子エリスといった魅力的な女性たちと出会い、絆を深めていく。

大和型戦艦、異世界に転移する。

焼飯学生
ファンタジー
第二次世界大戦が起きなかった世界。大日本帝国は仮想敵国を定め、軍事力を中心に強化を行っていた。ある日、大日本帝国海軍は、大和型戦艦四隻による大規模な演習と言う名目で、太平洋沖合にて、演習を行うことに決定。大和、武蔵、信濃、紀伊の四隻は、横須賀海軍基地で補給したのち出港。しかし、移動の途中で濃霧が発生し、レーダーやソナーが使えなくなり、更に信濃と紀伊とは通信が途絶してしまう。孤立した大和と武蔵は濃霧を突き進み、太平洋にはないはずの、未知の島に辿り着いた。 ※ この作品は私が書きたいと思い、書き進めている作品です。文章がおかしかったり、不明瞭な点、あるいは不快な思いをさせてしまう可能性がございます。できる限りそのような事態が起こらないよう気をつけていますが、何卒ご了承賜りますよう、お願い申し上げます。

『急所』を突いてドロップ率100%。魔物から奪ったSSRスキルと最強装備で、俺だけが規格外の冒険者になる

仙道
ファンタジー
 気がつくと、俺は森の中に立っていた。目の前には実体化した女神がいて、ここがステータスやスキルの存在する異世界だと告げてくる。女神は俺に特典として【鑑定】と、魔物の『ドロップ急所』が見える眼を与えて消えた。  この世界では、魔物は倒した際に稀にアイテムやスキルを落とす。俺の眼には、魔物の体に赤い光の点が見えた。そこを攻撃して倒せば、【鑑定】で表示されたレアアイテムが確実に手に入るのだ。  俺は実験のために、森でオークに襲われているエルフの少女を見つける。オークのドロップリストには『剛力の腕輪(攻撃力+500)』があった。俺はエルフを助けるというよりも、その腕輪が欲しくてオークの急所を剣で貫く。  オークは光となって消え、俺の手には強力な腕輪が残った。  腰を抜かしていたエルフの少女、リーナは俺の圧倒的な一撃と、伝説級の装備を平然と手に入れる姿を見て、俺に同行を申し出る。  俺は効率よく強くなるために、彼女を前衛の盾役として採用した。  こうして、欲しいドロップ品を狙って魔物を狩り続ける、俺の異世界冒険が始まる。

コンバット

サクラ近衛将監
ファンタジー
 藤堂 忍は、10歳の頃に難病に指定されているALS(amyotrophic lateral sclerosis:筋萎縮性側索硬化症)を発症した。  ALSは発症してから平均3年半で死に至るが、遅いケースでは10年以上にわたり闘病する場合もある。  忍は、不屈の闘志で最後まで運命に抗った。  担当医師の見立てでは、精々5年以内という余命期間を大幅に延長し、12年間の壮絶な闘病生活の果てについに力尽きて亡くなった。  その陰で家族の献身的な助力があったことは間違いないが、何よりも忍自身の生きようとする意志の力が大いに働いていたのである。  その超人的な精神の強靭さゆえに忍の生き様は、天上界の神々の心も揺り動かしていた。  かくして天上界でも類稀な神々の総意に依り、忍の魂は異なる世界への転生という形で蘇ることが許されたのである。  この物語は、地球世界に生を受けながらも、その生を満喫できないまま死に至った一人の若い女性の魂が、神々の助力により異世界で新たな生を受け、神々の加護を受けつつ新たな人生を歩む姿を描いたものである。  しかしながら、神々の意向とは裏腹に、転生した魂は、新たな闘いの場に身を投じることになった。  この物語は「カクヨム様」にも同時投稿します。  一応不定期なのですが、土曜の午後8時に投稿するよう努力いたします。

異世界ビルメン~清掃スキルで召喚された俺、役立たずと蔑まれ投獄されたが、実は光の女神の使徒でした~

松永 恭
ファンタジー
三十三歳のビルメン、白石恭真(しらいし きょうま)。 異世界に召喚されたが、与えられたスキルは「清掃」。 「役立たず」と蔑まれ、牢獄に放り込まれる。 だがモップひと振りで汚れも瘴気も消す“浄化スキル”は規格外。 牢獄を光で満たした結果、強制釈放されることに。 やがて彼は知らされる。 その力は偶然ではなく、光の女神に選ばれし“使徒”の証だと――。 金髪エルフやクセ者たちと繰り広げる、 戦闘より掃除が多い異世界ライフ。 ──これは、汚れと戦いながら世界を救う、 笑えて、ときにシリアスなおじさん清掃員の奮闘記である。

レベルアップは異世界がおすすめ!

まったりー
ファンタジー
レベルの上がらない世界にダンジョンが出現し、誰もが装備や技術を鍛えて攻略していました。 そんな中、異世界ではレベルが上がることを記憶で知っていた主人公は、手芸スキルと言う生産スキルで異世界に行ける手段を作り、自分たちだけレベルを上げてダンジョンに挑むお話です。

処理中です...