異母姉妹たちに虐げられ、追放された私はもふもふと幸せに生きます ~今さら私の才能に気づいた家族が戻ってきてほしいと懇願するけど、遅いです~

木嶋隆太

文字の大きさ
17 / 57

第17話



 室内に入り、改めて私は師団長と向かい合っていた。
 机は全部で五つ置かれている。
 それぞれの席にはそれぞれの荷物と思われるものがあり、机ごとに個性が現れていた。
 その一番奥の席に師団長――ベールド様が着席された。

「いやぁ、ごめんね? ちょっとここで尋問していた犯罪者が逃げ出しちゃったみたいでね。僕が捕まえに行っていたんだ」
「そうなんだ」

 私がぼそりと返すと、ベールド様はにこりと微笑んだ。

「いつもは優しい優しい師団長だから、そう怯えないでね?」

 自分で言わないでほしい。
 ていうか、その笑顔が逆に怖いんだけど。
 さっきの怒り顔を見ているし、それから優しい顔への変化も一瞬だった。
 そんな流れを見ていると、突然ブチ切れるんじゃないかと思ってしまう。

「うん、分かってる。でも、いきなりだったからビビった」
「あはは、キミ素直だね。気に入ったよ」

 いや、気に入らなくていいです。

「それで……私はどうしてここに呼ばれたの?」
「特に明確な理由はないかな」
「え……?」
「本当に一目見て、キミと話してみたかっただけだよ。それと、宮廷精霊術師の試験は頑張ってねっていう応援、かな?」

 それだけで私呼ばれたんだ。

「うん、もちろん頑張る」
「頑張るだけじゃないよ? もちろん、『合格』するんだよ?」

 一瞬彼の目が鋭くなった気がした。

「落ちたらもしかしてさっきみたいな感じになる?」
「なっちゃうかも」

 ……うん、絶対に落ちれない。
 ベールド様は楽しそうに笑っているが、それも本当かどうか分からない。

「それ以外で何か気になることはある? 僕であれば答えるけど……」
「何かあればファイランに聞くから大丈夫」
「えー、僕なんだか距離置かれてる?」
「別にそんなことない」

 私は冗談っぽい空気を出し、顔をそらしながら行ってみた。
 するとベールド様はまたくすくすと笑う。

「キミ、やっぱりいいね。僕にここまで軽口を言ってくれる子は久しぶりだよ」
「……それが嬉しいことなの?」

 普通舐められてる! とか怒るところじゃないだろうか?

「うん。なんだかゾクゾクしてくるね」

 ……うわ、変態かもしれない。
 私が軽く引きながら……そういえば一つだけ疑問があったことを思い出した。
 それについて、聞いてみようか。
 私は確かに冒険者として、それなりに活躍している方だった。
 けれど、いきなり宮廷からスカウトが来るほどの人材だったかと問われると首を傾げたくなる部分はあった。

「どうして私に声をかけてくれたの?」
「うーん、どうしてだと思う?」
「どこかで私の話を耳にしたからだとは思う。でも、いきなり宮廷精霊術師っていうのは変だと思った」

 流れ的には、精霊術師から宮廷精霊術師なのだ。
 打診するとしても精霊術師として、だと思っていた。
 私の疑問に、ベールド様はにこりと笑みを濃くした。

「そうだね。僕たちのもとにいくつか、高ランクの依頼が届いたんだ。ただ、たまたまその時手が空いていなくてね。対応できないで困っていると、ギルドから依頼の取り下げが来たんだ。それがちょうど半年ほど前かな? 誰が受領してくれたのか興味本位で調べたら……すべてキミの名前が出てきたんだ」
「……」

 なるほど。それで興味を持たれたのか。
 確かに私は他の人が受けたがらない依頼を受けることが多かった。

「心当たりはあるかい?」
「うん、まあ色々」
「キミはどうしてそのような依頼ばかり受けていたんだい?」
「強くなるため」

 多くの冒険者が金や名誉を理由に活動をしている。
 私の目的は、ティルガや微精霊、それに困っている人たちを助けるため。
 そのために、力をつけたいと思い、より強い相手との戦いを求めた。

 私自身、そういう環境に身を置きたいっていうのもあったけど。
 高ランクの依頼は危険な割に、報酬が高くないことが多い。
 もちろん、普通の依頼よりは高いけど、命を賭けるこほどなの? っていうことはわりとある。

 だから、多くの冒険者が敬遠してしまい、依頼が残りがちだった。
 稀に、名誉を理由に受ける人もいるのだが、それは本当に稀なもの。
 私はそんな依頼も積極的に受けていた。周囲からは自殺願望があるのかとか、英雄気取りなのかとか蔑まれることもあったものだ。

 私にそんな考えはないけど。
 ただ、ベールド様は私の言葉のすべてを素直に受け取ったわけではないようだ。含みのある笑みとともに、嬉しそうな吐息をもらした。

「それは立派だね。話していて、なおさらキミと一緒に仕事がしたいと思ったけど……まあ、国の決まりとして試験を受ける必要があるんだから仕方ない。そんなしきたりがなければもっと楽でいいんだけどね」

 ベールド様がにこりと微笑む。
 純粋な期待を込めての笑顔なんだろう。
 悪い人ではなさそうかな? っと話していて思った。
 ちょっと怖い部分はあるけど。

「試験を受けて、正式に認められるように頑張る」
「うん、頑張ってね。それで、他に何か質問はあるかい?」
「大丈夫。あるとしても……宮廷精霊術師になってからの質問……かな?」

 どんな感じで仕事をしていくのか、とか。
 給料はどのくらいもらえるのか、とか。
 給料がたくさんもらえれば甘い物とか食べ放題できるかもしれない。

「それは良かった。それじゃあ、試験は来週だよ。合格したらすぐにまた会うことになるから、その日を楽しみにしているよ」
「分かった」
「ああ、そうだ。宿はこちらで借りておいてあるから……ファイラン、案内の方お願い」
「ええ、分かったわ。それじゃあルクス。向かいましょうか」

 ファイランがすっと礼をし、私も彼女に倣って頭を下げたあと宮廷を後にした。
感想 20

あなたにおすすめの小説

婚約者を奪った妹と縁を切り、辺境領を継いだら勇者一行がついてきました

藤原遊
ファンタジー
婚約発表の場で、妹に婚約者を奪われた。 家族にも教会にも見放され、聖女である私・エリシアは “不要” と切り捨てられる。 その“褒賞”として押しつけられたのは―― 魔物と瘴気に覆われた、滅びかけの辺境領だった。 けれど私は、絶望しなかった。 むしろ、生まれて初めて「自由」になれたのだ。 そして、予想外の出来事が起きる。 ――かつて共に魔王を倒した“勇者一行”が、次々と押しかけてきた。 「君をひとりで行かせるわけがない」 そう言って微笑む勇者レオン。 村を守るため剣を抜く騎士。 魔導具を抱えて駆けつける天才魔法使い。 物陰から見守る斥候は、相変わらず不器用で優しい。 彼らと力を合わせ、私は土地を浄化し、村を癒し、辺境の地に息を吹き返す。 気づけば、魔物巣窟は制圧され、泉は澄み渡り、鉱山もダンジョンも豊かに開き―― いつの間にか領地は、“どの国よりも最強の地”になっていた。 もう、誰にも振り回されない。 ここが私の新しい居場所。 そして、隣には――かつての仲間たちがいる。 捨てられた聖女が、仲間と共に辺境を立て直す。 これは、そんな私の第二の人生の物語。

私は婚約者を同級生に奪われました。彼女はセレブになれると思い込んでたみたいですけど。

十条沙良
恋愛
聖女のいなくなった国は滅亡すること知らないの?

追放された私の代わりに入った女、三日で国を滅ぼしたらしいですよ?

タマ マコト
ファンタジー
王国直属の宮廷魔導師・セレス・アルトレイン。 白銀の髪に琥珀の瞳を持つ、稀代の天才。 しかし、その才能はあまりに“美しすぎた”。 王妃リディアの嫉妬。 王太子レオンの盲信。 そして、セレスを庇うはずだった上官の沈黙。 「あなたの魔法は冷たい。心がこもっていないわ」 そう言われ、セレスは**『無能』の烙印**を押され、王国から追放される。 彼女はただ一言だけ残した。 「――この国の炎は、三日で尽きるでしょう。」 誰もそれを脅しとは受け取らなかった。 だがそれは、彼女が未来を見通す“預言魔法”の言葉だったのだ。

現聖女ですが、王太子妃様が聖女になりたいというので、故郷に戻って結婚しようと思います。

和泉鷹央
恋愛
 聖女は十年しか生きられない。  この悲しい運命を変えるため、ライラは聖女になるときに精霊王と二つの契約をした。  それは期間満了後に始まる約束だったけど――  一つ……一度、死んだあと蘇生し、王太子の側室として本来の寿命で死ぬまで尽くすこと。  二つ……王太子が国王となったとき、国民が苦しむ政治をしないように側で支えること。  ライラはこの契約を承諾する。  十年後。  あと半月でライラの寿命が尽きるという頃、王太子妃ハンナが聖女になりたいと言い出した。  そして、王太子は聖女が農民出身で王族に相応しくないから、婚約破棄をすると言う。  こんな王族の為に、死ぬのは嫌だな……王太子妃様にあとを任せて、村に戻り幼馴染の彼と結婚しよう。  そう思い、ライラは聖女をやめることにした。  他の投稿サイトでも掲載しています。

私を棄てて選んだその妹ですが、継母の私生児なので持参金ないんです。今更ぐだぐだ言われても、私、他人なので。

百谷シカ
恋愛
「やったわ! 私がお姉様に勝てるなんて奇跡よ!!」 妹のパンジーに悪気はない。この子は継母の連れ子。父親が誰かはわからない。 でも、父はそれでいいと思っていた。 母は早くに病死してしまったし、今ここに愛があれば、パンジーの出自は問わないと。 同等の教育、平等の愛。私たちは、血は繋がらずとも、まあ悪くない姉妹だった。 この日までは。 「すまないね、ラモーナ。僕はパンジーを愛してしまったんだ」 婚約者ジェフリーに棄てられた。 父はパンジーの結婚を許した。但し、心を凍らせて。 「どういう事だい!? なぜ持参金が出ないんだよ!!」 「その子はお父様の実子ではないと、あなたも承知の上でしょう?」 「なんて無礼なんだ! 君たち親子は破滅だ!!」 2ヶ月後、私は王立図書館でひとりの男性と出会った。 王様より科学の研究を任された侯爵令息シオドリック・ダッシュウッド博士。 「ラモーナ・スコールズ。私の妻になってほしい」 運命の恋だった。 ================================= (他エブリスタ様に投稿・エブリスタ様にて佳作受賞作品)

襲ってきた王太子と、私を売った婚約者を殴ったら、不敬罪で国外追放されました。

克全
恋愛
「カクヨム」と「小説家になろう」にも投稿しています。

ボロボロになるまで働いたのに見た目が不快だと追放された聖女は隣国の皇子に溺愛される。……ちょっと待って、皇子が三つ子だなんて聞いてません!

沙寺絃
恋愛
ルイン王国の神殿で働く聖女アリーシャは、早朝から深夜まで一人で激務をこなしていた。 それなのに聖女の力を理解しない王太子コリンから理不尽に追放を言い渡されてしまう。 失意のアリーシャを迎えに来たのは、隣国アストラ帝国からの使者だった。 アリーシャはポーション作りの才能を買われ、アストラ帝国に招かれて病に臥せった皇帝を助ける。 帝国の皇子は感謝して、アリーシャに深い愛情と敬意を示すようになる。 そして帝国の皇子は十年前にアリーシャと出会った事のある初恋の男の子だった。 再会に胸を弾ませるアリーシャ。しかし、衝撃の事実が発覚する。 なんと、皇子は三つ子だった! アリーシャの幼馴染の男の子も、三人の皇子が入れ替わって接していたと判明。 しかも病から復活した皇帝は、アリーシャを皇子の妃に迎えると言い出す。アリーシャと結婚した皇子に、次の皇帝の座を譲ると宣言した。 アリーシャは個性的な三つ子の皇子に愛されながら、誰と結婚するか決める事になってしまう。 一方、アリーシャを追放したルイン王国では暗雲が立ち込め始めていた……。

【完結】次期聖女として育てられてきましたが、異父妹の出現で全てが終わりました。史上最高の聖女を追放した代償は高くつきます!

林 真帆
恋愛
マリアは聖女の血を受け継ぐ家系に生まれ、次期聖女として大切に育てられてきた。  マリア自身も、自分が聖女になり、全てを国と民に捧げるものと信じて疑わなかった。  そんなマリアの前に、異父妹のカタリナが突然現れる。  そして、カタリナが現れたことで、マリアの生活は一変する。  どうやら現聖女である母親のエリザベートが、マリアを追い出し、カタリナを次期聖女にしようと企んでいるようで……。 2022.6.22 第一章完結しました。 2022.7.5 第二章完結しました。 第一章は、主人公が理不尽な目に遭い、追放されるまでのお話です。 第二章は、主人公が国を追放された後の生活。まだまだ不幸は続きます。 第三章から徐々に主人公が報われる展開となる予定です。