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第21話
「ルクス。もう朝だぞ」
ぺしぺしと尻尾で顔を叩かれる。
そのモフモフに不快感はない。
むしろ枕にしてもうひと眠りをしたかった。
だから、尻尾を掴んで頭の下にしこうとすると、ティルガが唸った。
……もう、仕方ない。
二度寝したかったけど、起きよっか。
「ティルガ、おはよう」
返事をしながらあくびをする。
背中を伸ばしていると、ティルガが呆れたような声を上げた。
「今日は試験日だろう。そんなのんきにしていていいのか?」
そうだった。
もう試験の日だった。
王都に来てから、適当にギルドで依頼を受けていたらあっという間に時間は過ぎてしまった。
とりあえず、ファイランが迎えに来るって言っていた。
着替えでもして待っていようかな。
私は自分の服に着替えながら、のんびりと時間を待っていた。
しばらく時間が経った時だった。部屋の扉がノックされた。
「微精霊たち、誰?」
『この前の強い女の人だよー!』
『うん、ルクスのこと迎えに来た人ー!』
どうやらファイランのようだ。
私が扉を開けると、そこには皆が言うようにファイランがいた。
目が合うと嬉しそうに微笑んだ。
「おはよう。調子はどうかしら?」
「うん、元気」
「それなら良かったわ。試験会場に移動しましょうか」
「分かった」
ファイランとともに宿を出る。
ちなみに、ティルガはお留守番だ。
宿を出てすぐだった。ファイランが仮面を取り出した。
そして、それを顔につける。ちょっとふざけた仮面である。隣に並んで歩きたくない。
「……どうしたの?」
できれば外してほしいという空気を出しながら言ってあげる。
「今日の試験会場には精霊術師がたくさん集まっているわ。そして、宮廷精霊術師というのは……憧れの的なのよ」
「だから、顔を隠している?」
「そういうこと」
だったら、もう少し良い仮面なかったのだろうか?
私がそう言おうとしたときだった。
「この仮面、可愛いでしょ」
ファイランのセンスは絶望的なようだ。
何か、デザインなどをお願いするときはファイランにだけは任せないようにしよう。
会場の受付に到着したところで、私はファイランとは別れた。
それから、受付の女性に自分の名前を伝えると、
「ルクスさんですね。こちらの木札をお持ちください」
「これは?」
「受験番号ですね。試験中はその番号で呼ばれますので、準備していてください。控室はそちらの廊下にあります。番号ごとに別れていますので、該当する番号の部屋に向かってください」
「分かった」
渡された木札を持って、私は言われた通り廊下を歩いていく。
いくつもの部屋が並んでおり、一つの部屋当たり二十人くらいが入っているみたいだ。
1~20、といった看板を眺めていき、自分の番号の部屋へと向かった。
控え室の扉を開けると、たくさんの微精霊が確認できた。
『わー、懐かしい子いっぱいいる!』
『ルクス! 遊び行ってくる!』
こくんと頷いて返すと、私の周りによくいる微精霊たちが一斉に動き出した。
……たしかに、たくさんの微精霊がいる。
だいたい一人あたり一匹の微精霊がついている。
部屋の人数分の微精霊がいるため、微精霊が見える私からすればこの部屋はわりと窮屈だ。
ていうか、野良微精霊も部屋に来ているみたいだし、実際の数はかなりのものだ。
『わー、キミがルクス!?』
『僕も一緒についていっていい!?』
野良微精霊たちが私の周りへとやってくる。
……こんな感じで仲間になりたがる子はわりと多くいて、私はそのすべてを受けれいている。
常に一緒にいるのは十匹くらいだけど、かき集めたらたぶん100を超える微精霊が協力してくれると思う。
私は番号札の置かれた席へと向かい、着席する。
その時、思っていた以上に視線が集まっていることに気付いた。
注目されている……? でも、どうしてだろうか?
私が不思議に思って首を傾げていると、隣の席の受験生が声をかけてきた。
「……キミ、若いね」
男性の精霊術師だ。少し警戒した様子だけど、私も同じ気持ちだ。
男性が言ったように、確かに私はこの部屋の中ではかなり若い方だと思う。
皆、私よりも五歳くらいは年上だし。
「そう、かも?」
「普通、キミくらい若い子で試験を受けることはないから驚いたよ……ちなみに、何歳なの?」
「15歳。今年、16歳になる」
私がそう伝えると、私たちの会話が聞こえた人たちが驚いたようにこちらを見てきた。
どうして年齢を聞かれたのだろうか?
私が首を傾げていると、近くを微精霊が過ぎた。
『ルクスは若すぎるんだって!』
『他の微精霊さんたちも驚いているよ! ぴちぴち魔力おいしそうって!』
……なるほど、そういうことなんだ。
私くらいの年齢で宮廷精霊術師の試験を受けるのが珍しいから、注目されているんだ。
下手したら、最年少なのかもしれない。
控室にいた人たちが何やら眉間に皺をよせ、こちらをじっと睨んできた。
「……あの子、まだ15歳だってよ」
「……去年精霊術師になって、そのまま宮廷試験に推薦されたの?」
「……生意気なんだけど」
周囲の様子に、私は少しだけ冒険者時代を思い出した。
冒険者の時も同じようなことはよくあった。
若いのに生意気だ、とかそういうもの。
そういった声を気にしても仕方ない。私にできることをするだけだ。
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