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第39話
しおりを挟む寮に戻った私は、そこで待機していたティルガを連れ、精霊術師棟へと戻ってきた。
言われた通りの十時ちょっと前に到着したけど、すでに一階には四人が集まっていた。
全員女性だ。そして、ベールド様は全員新人とも言っていた。
ラツィとアレアはもう話しているので知っていたけど、向こうの二人の女性は初めてになる。
年齢は私たち三人よりも年上っぽく見える。二十半ばくらいだろうか?
目があったので軽く会釈しようとしたけど、ぷいっとそっぽを向かれてしまった。
む、なんだか少し態度が悪い。二人はどうにも、私を敵視しているようだった。
挨拶をする気もなくなってしまい、私はアレアたちの方へと向かった。
よく見れば、アレアたちと向こうの女性たちの間にも一つ線のようなものが光れていた。
この新人グループは、私たち三人と、向こうの新人二人で完全に別れている。
アレアたちに向こうの二人について聞こうとしたところで、一階フロアの空気が分かりやすく変化した。
すたすたと一人の男性が歩いてきた。
その男性に対して、他の四人が皆敬礼をしている。偉い人みたい。
私も少し遅れて敬礼をすると、その男性は私たちを鋭い目で見てきた。
「オレは第一師団、師団長のメトルだ」
第一師団の人だったんだ。
確かに胸のところに一を示す文字が刻まれていた。
「ここに集まってもらった五人には、これから任務にあたってもらうことになる。宮廷精霊術師としての初任務になると思うが、頼んだぞ」
彼の激励に私たちはこくりと頷いた。
メトルがフロアから出ると、張り詰めていた空気がいくらか和らいだ。
私の前に立っていたアレアも肩から力を抜いていて、私の方を見てきた。
「出発は十時半みたいです」
「そうなんだ。集合場所は?」
「またここに来ればいいみたいですよ?」
「そっか……」
「私は一度、事務室に戻ります。……ちょっと聞いておきたいことがありますので」
「そっか。そういえばあっちの二人なんだけど……」
私は先ほど聞けなかった新人二人について質問する。
すでに二人はこのフロアからいなくなっており、直接話すことはできなかった。
しかし、私の質問はどうやらダメだったようだ。
ラツィがふんと腕を組んでそっぽを向いた。
「あいつらはどうでもいいわよ! あたしはちょっと部屋に行って精神統一してくるわね!」
「……あっ、うん。……何かあったの、アレア?」
「私も直接見たわけじゃないですけど……喧嘩したみたいですね」
ああ、そっか。
ラツィの性格だと基本的にぶつかりそうだもんね……。
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