異母姉妹たちに虐げられ、追放された私はもふもふと幸せに生きます ~今さら私の才能に気づいた家族が戻ってきてほしいと懇願するけど、遅いです~

木嶋隆太

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第43話


 ラツィはぴしっと背筋を伸ばし、がたがたと震えながらアレアとともに歩いていく。

 私も二人の後を追うようにして孤児院を歩いていく。
 スティーナたちには街を任せ、私たちは孤児院を見る。結果的にうまく戦力を分断できた。
 しかし……それから孤児院全体を見て回ったけど、特に何か証拠が残っているという様子はない。

「ティルガ、何か分かった?」
「……いや、分からない」
『僕たちも今調べてるところ! ちょっと待っててね!』

 ティルガはともかくとして、微精霊たちなら何かわかるかもしれない。
 街中を自由に移動できるのだから、敵が街のどこかに潜んでいれば見つけ出せるだろう。
 それまでは、孤児院での被害をなくすことを優先するべきだ。
 とはいえ、孤児院自体ができる対策は十分に取られている。
 今は、人の死角になりやすい場所には訪れないようにしているみたいだし、騎士たちも見張りとして配置されている。

 子どもたちの生活空間は一定の範囲に区切っているし、外で遊ぶ場合も騎士、あるいは精霊術師がいる状況でのみだった。
 そんな風にラツィとアリアとともに孤児院を歩いていったときだった。
 夜というのに一人の子どもが私たちの方へとやってきた。

「ねぇ、お姉ちゃんって、宮廷からきた精霊術師の人なの?」

 今にも泣き出しそうな声をあげ、少女は私の服の裾を掴んだ。
 私たちは顔を見合わせた後、私が声をかけた。
 視線を合わせるように、膝をつき出来る限りの笑顔を向けた。
 ティルガも少女を慰めるような調子で、鳴いている。
 少女は犬が好きなのか、ティルガを見て少し表情を緩める。その背中を撫でると、さらに多少表情が柔らかなものになった。

「そうだよ。こんな時間にどうしたの?」
「私の友達……みんな……みんな、戻ってくるよね?」

 嗚咽まじりの声を上げた少女の頭を、私は撫でる。
 犯人の目的は……なんだろうか。
 奴隷として売るため? それとも、自分の奴隷にでもして働かせるため?
 ……それとも、もっと何か残虐な理由があって?
 
 分からないが、最悪の可能性としては……すでに子どもたちが死んでいるということだった。
 そう思ってしまったが、私は彼女に嘘をつこうと思って口を開こうとしたときだった。

「最悪は、死んでいるわ。犯人の目的が分からない以上、生きている、なんて断言できないわ」
「……」

 ラツィが厳しい視線とともに子どもを見た。
 その言葉に、子どもはこらえていた涙が抑えきれず、声をあげてしまう。

「ラツィさん!」

 アレアがその両頬を叩くように挟みこんだ。
 私は少女の頭を撫でていると、院長がこちらへとやってきて、子どもを引き取ってくれた。
 さっきの少女がいなくなったところで、私たちはラツィを睨む。
 さっきの言い方はあんまりだ。確かに、ラツィの言う通りだけど。

「もう、ラツィさん! あんな言い方駄目ですよ!」
「……悲しい現実だけど、知らないとダメよ。何も知らずに、馬鹿みたいに信じて……そっちの方が苦しいわよ」

 ラツィの言い方は、まるで実体験でもあるかのようだった。

「……ラツィもそういう経験があるの?」
「あたし、孤児院の出身なの。……捨てられた、なんて知らなかったわ。子どもの頃は、いい子にしてればお母さんとお父さんが迎えに来てくれるって信じていたわ。あとで、そんなの嘘だって知ったわよ。優しい嘘、なんてつかれるくらいなら真実を教えてもらった方が、辛いのは一瞬なんだから」

 ラツィはふんとそっぽを向いてそれだけを言った。
 ……ラツィ。
 その体がいつも以上に小さく見えて、私はぎゅっと抱きしめた

「ちょっ! 何よ!」
「うんうん。ラツィも辛いことがあった」
「あんたあたしを子ども扱いしてるわね!? あたしの方が年上のお姉さまよ!」
「はいはい、お姉さま」
「その言い方やめなさいよ! む、か、つ、くー!」

 ラツィが暴れだしたので、私はぱっと彼女の体を解放した。

「でも、いじわるで言ったわけじゃないって分かって良かった」
「あ、当たり前よ……! ……期待して、裏切られるのと、最初から諦めているのだったら、あたしは……諦めている方が断然いいわ」

 ラツィがそういうと、アレアがびしっと人差し指をたてた。

「で、でもですね! 言い方というのもありましてね……。あんなはっきりとじゃなくてやんわりと……言う方法もあったわけですよ! ラツィさんの考えも分かりますけど、もうちょっと配慮してあげてください!」

 アレアがむすーっと頬を膨らませて叫ぶ。
 ていうか、意外とアレアって強気だ。
 ……人見知りなだけで、親しくなった相手には堂々と接することができるのかもしれない。
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