異母姉妹たちに虐げられ、追放された私はもふもふと幸せに生きます ～今さら私の才能に気づいた家族が戻ってきてほしいと懇願するけど、遅いです～

第45話

　でも、不思議なのはこの計画的な犯行の部分。
　以前、ファイランと戦った時の魔人は、知性の欠片もなかった。
　そりゃあ、普通の魔物よりは賢かったけど、こんな隠密行動をとるような知能ではなかったのは確かだ。

「もしも、魔人を発見したら教えて」
『分かったよー！』
『でも、魔人の魔力は臭くて汚くて、まずいからどこにいるのか断定は難しいかな？』
「それでも大丈夫。怪しい場所とかも教えてね」
『うん、りょーかいー！』

　今はそのくらいの指示を出すしかない。
　……とりあえず、明日の朝にでも、アレアとラツィにこの情報は共有しよう。

「ティルガも、何かわかったら教えてね」
「ああ、もちろんだ」

　今日はこれで休むとして、明日からまた頑張らないと。
　私はベッドで横になり、目を閉じた。



『ルクス！　起きて！　起きて！　大変だよ！』

　体が揺さぶられ、私は目を開いた。
　周囲にはたくさんの微精霊がいる。
　私の体を揺すっていたのは、ティルガだ。
　部屋の明かりをつけながら、私は首を傾げた。

「どうしたの？　まだ夜だけど」
　
　軽くあくびをする。寝付いてからまだ三時間ほどしか経っていない。
　時刻は朝の２時を少し過ぎたところだ。

『一緒にいたうるさいおばさんたちが危ないよ！　魔人に襲われてる！』
「……ほんと？」

　一瞬で眠気が吹き飛ぶ。
　頷いていた微精霊たちを確認してから、私は出発の準備を整える。
　微精霊たちが起こしてくれた理由に驚きながらも、すぐに私は部屋を出た。

「場所の特定はできてる？」
『分かってるよ！　孤児院の近くだよ！』
『孤児院から北に向かったところだよ！』

　それだけ分かっていれば十分だ。
　アレア、ラツィの扉をノックする。
　部屋の間隔が狭いため、片方の扉を鞘で殴り、もう片方は手でたたき続ける。

「何よ！　嫌がらせなの！？」

　目を尖らせ、飛び出してきたのは可愛らしいクマのパジャマに身を包んだラツィ。
　着替えなどはすべてこの街で用意してくれるということだったので、旅の荷物なんて大して必要ないだろうと思っていたのだが、ラツィだけは鞄を持ってきていた。

　その理由がまさかこのパジャマだろうか？
　かなり似合っている。褒めてあげたいけど今はそれどころじゃない。

「すぐ制服に着替えて、魔人が出現した」
「なぬ！？　分かったわ！　すぐに着替える！」

　さすがの切り替えの速さだ。ラツィはすぐに部屋の奥へと消える。
　そのタイミングでアレアの扉も開いた。

「なんですかぁ……？」

　眠たそうに目元をこすっていたアレア、その頬を押しつぶすようにぱしっと叩く。
　ぼやっとした彼女の目がこちらを向いたところで、

「魔人が出たの。スティーナたちが襲われてるみたい」
「……はぁ、そうですかってえええ！？　すぐに行かないとっ！」
「そういうわけだからすぐ準備して」
「分かりましたぁ！」

　アレアもさすがに宮廷精霊術師。私の言葉ですぐに意識を覚醒させた。
　私も即座に制服へと着替えなおし、廊下へと出る。ラツィ、アレアの順番で集まり、私たちはすぐに宿を出た。

「場所はどっちなの！？」
「孤児院の北の方」
「北ってどっちだったかしら……あっち！？」
「そちらは南です！　北はあっちです！」

　逆方向へと走り出そうとしたラツィの体をアレアが引き留める。

「ルクス。全員を乗せて走ろう」
「分かった。みんな、ティルガに乗って！」

　私がティルガに魔力を与えると、その体が数倍に大きくなる。

「わっ！　凄いわね、ティルガ！　よし、出発！」

　私たちが飛び乗ると、ティルガはすぐに跳躍した。
　その軽やかな動きで家の屋根を伝うように移動する。

「でも、どうしてわかったのよ！？　そんな情報騎士たちから届いていないじゃない！」

　ラツィがこちらを見てきた。走りながらでもまったく声を乱さないのは、普段の訓練のたまものだろう。