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第39話
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俺と並び立てるだけの実力者ならともかく、中途半端な人がいても足手纏いになるからだ。
そもそも、俺は妹を助けるために戦っているわけで、すべては俺の勝手なわがままだからな。
それに、付き合わせるつもりはない。サーシャのように、自分から申し出てくるならともかくな。
「……つまり、治療する代わりに魔族とたたかってくれ、ってことか」
「そういうことになる。もちろん、いますぐに打って出るつもりはない。……魔族の被害を最小限にするためにも、キミたちみたいな魔族に立ち向かえる勇気ある人たちを仲間にしたいんだ」
魔族に立ち向かえる人たち、か。
確かに、ゲームでも魔族と戦うこと自体を諦めてしまっている人たちが大半だったわけだ。
なんなら、勇者の居場所を見つけた人間には特別な報酬が与えられる、という甘言を信じ、情報を売る人達も多くいた。
ゴルシュさんは、これから先、信じられる仲間たちを増やし……そしておそらくはアイフィに引き継ぎたいと思っているのだろう。
ゴルシュさんもまた、そう自分の未来が長くはないと考えている。
……この国の人間たちは、代替わりが早い。それは、単純に子どもたちを絶望させるため、さっさと親を殺しているからだ。
ゴルシュさんも、俺の父も……何もしなければ、あとどれだけこの世界で五体満足で生きていられるかは分からない。
そんなゴルシュさんの言葉を聞いたエルドは、笑顔を浮かべてはいたが、少し元気がなかった。
「魔族と、戦う……か」
ぽつりとつぶやいた彼は、それからぶるりと体を震わせていた。
……エルドは、ゲームでもそうだったな。
エルドだけはゲストキャラとしてパーティーに参戦する。
この時の勇者は、憤怒の魔王にやられ、指名手配された状態で、心も折られかけていた。
だからこそ、同じように魔族に敗北し、それでも戦っているエルドに対して、勇者は問いかけたんだ。
『どうして、まだ戦えるのか。怖くないのか』、と。
そして、エルドは、『怖いけど、でも……大事な人達がいるから、それを守るために戦う』、と
見た目は明るく振る舞っているが、「実のところはそんなに明るい性格じゃなく、無理やり明るく振る舞っているだけなんだ」とも話していたな。
今はその、心の弱い部分が出てきてしまっているような表情だ。
「ゴルシュ。……あんまりオレのこと、買い被らないでくれ」
力なく笑ったのは、エルドだけではない。
ルビーやブルーナも同じく体を震わせていた。
……同じ経験があるからだろうか。
サーシャもまた気持ちはわかるようで、苦い顔をしている。
「エルド……どういうことだ」
「……治してもらっても、オレたちじゃどうなるか、分からないだろ? 正直言って……怖いんだ。あの時、子どもが狙われたから咄嗟に動いたけど……こんなことになっちまって、後悔だってしてんだ。……魔族のことを考えると、怖くて怖くて、な。また剣を握って、立ち向かえるかどうかは……分からねぇよ」
……今のエルドは、まだ守りたい人たちというのが明確にはいないのかもしれない。
これから先、原作のストーリーが始まるまでにそんな人と出会っていくのかもしれない。
だから、そこまでの覚悟はないのだろう。
それがいつになるのかは分からない。
……ただ、原作のエルドのようになってくれないと、多少世界に矛盾が生じるかもしれない。
「情けないって、言ってくれてもいいぜ? ただ。オレはもう――」
「俺は、魔王を倒したいと思っている」
エルドの言葉に割り込むようにして、俺は言葉を挟んだ。
「俺の父さんは、たぶん俺が十五歳の誕生日になったときに……殺される。俺のお爺さんも、そうだったらしいからな」
「……フォータス家は、恐らくそうなるだろうな」
ゴルシュさんは、申し訳なさそうな顔と共にそういった。
俺もそれは理解している。だからこそ、一人でも戦える仲間を増やしたいと思っている。
エルドは、原作のキャラクターなので、信頼できる。
最後まで、勇者を逃がすために、その命をかけて戦ってくれた人だ。
命を賭けろ、とまで言うつもりはない。
俺のために戦ってくれ、ともいうつもりはない。
ただ、身近にいる大切な誰かを守れるだけの戦闘能力を有している彼らには、このまま心を折られたままでいてほしくはなかった。
この街を守ってくれるかもしれない貴重な戦力になってくれる可能性のある彼をこのまま帰らせたくはない。
「俺は十五歳の誕生日にくるだろう憤怒の魔王を、そこで倒す」
無謀にも思えるその言葉に、エルドは困惑した様子で問いかけてくる。
「ど、どうやって……勇者も、いないだろ?」
「勇者がいつ生まれるかは分からないし、頼れるかどうかも分からない。そんな可能性の少ない希望に縋ってたら、大事な人たちを守れない」
その勇者だって、俺にとっては大事な人だしな。
エルドの心に響くように、彼が使っていた言葉を使って話す。
「俺は、大事な家族や大事な友人たちを守りたい。だから、そこで憤怒の魔王を倒して、父さんを助けたい。俺だって、魔王との戦いが怖くないわけじゃないが、それでもやるしかないから戦うんだ」
俺は特に恐怖はない。
それでも、エルドにとって身近な気持ちを口にすることで、より同意を得やすくするためにそういった。
……こういった合理的な判断ができるようになったのは、色々な経験があったからな。
そもそも、俺は妹を助けるために戦っているわけで、すべては俺の勝手なわがままだからな。
それに、付き合わせるつもりはない。サーシャのように、自分から申し出てくるならともかくな。
「……つまり、治療する代わりに魔族とたたかってくれ、ってことか」
「そういうことになる。もちろん、いますぐに打って出るつもりはない。……魔族の被害を最小限にするためにも、キミたちみたいな魔族に立ち向かえる勇気ある人たちを仲間にしたいんだ」
魔族に立ち向かえる人たち、か。
確かに、ゲームでも魔族と戦うこと自体を諦めてしまっている人たちが大半だったわけだ。
なんなら、勇者の居場所を見つけた人間には特別な報酬が与えられる、という甘言を信じ、情報を売る人達も多くいた。
ゴルシュさんは、これから先、信じられる仲間たちを増やし……そしておそらくはアイフィに引き継ぎたいと思っているのだろう。
ゴルシュさんもまた、そう自分の未来が長くはないと考えている。
……この国の人間たちは、代替わりが早い。それは、単純に子どもたちを絶望させるため、さっさと親を殺しているからだ。
ゴルシュさんも、俺の父も……何もしなければ、あとどれだけこの世界で五体満足で生きていられるかは分からない。
そんなゴルシュさんの言葉を聞いたエルドは、笑顔を浮かべてはいたが、少し元気がなかった。
「魔族と、戦う……か」
ぽつりとつぶやいた彼は、それからぶるりと体を震わせていた。
……エルドは、ゲームでもそうだったな。
エルドだけはゲストキャラとしてパーティーに参戦する。
この時の勇者は、憤怒の魔王にやられ、指名手配された状態で、心も折られかけていた。
だからこそ、同じように魔族に敗北し、それでも戦っているエルドに対して、勇者は問いかけたんだ。
『どうして、まだ戦えるのか。怖くないのか』、と。
そして、エルドは、『怖いけど、でも……大事な人達がいるから、それを守るために戦う』、と
見た目は明るく振る舞っているが、「実のところはそんなに明るい性格じゃなく、無理やり明るく振る舞っているだけなんだ」とも話していたな。
今はその、心の弱い部分が出てきてしまっているような表情だ。
「ゴルシュ。……あんまりオレのこと、買い被らないでくれ」
力なく笑ったのは、エルドだけではない。
ルビーやブルーナも同じく体を震わせていた。
……同じ経験があるからだろうか。
サーシャもまた気持ちはわかるようで、苦い顔をしている。
「エルド……どういうことだ」
「……治してもらっても、オレたちじゃどうなるか、分からないだろ? 正直言って……怖いんだ。あの時、子どもが狙われたから咄嗟に動いたけど……こんなことになっちまって、後悔だってしてんだ。……魔族のことを考えると、怖くて怖くて、な。また剣を握って、立ち向かえるかどうかは……分からねぇよ」
……今のエルドは、まだ守りたい人たちというのが明確にはいないのかもしれない。
これから先、原作のストーリーが始まるまでにそんな人と出会っていくのかもしれない。
だから、そこまでの覚悟はないのだろう。
それがいつになるのかは分からない。
……ただ、原作のエルドのようになってくれないと、多少世界に矛盾が生じるかもしれない。
「情けないって、言ってくれてもいいぜ? ただ。オレはもう――」
「俺は、魔王を倒したいと思っている」
エルドの言葉に割り込むようにして、俺は言葉を挟んだ。
「俺の父さんは、たぶん俺が十五歳の誕生日になったときに……殺される。俺のお爺さんも、そうだったらしいからな」
「……フォータス家は、恐らくそうなるだろうな」
ゴルシュさんは、申し訳なさそうな顔と共にそういった。
俺もそれは理解している。だからこそ、一人でも戦える仲間を増やしたいと思っている。
エルドは、原作のキャラクターなので、信頼できる。
最後まで、勇者を逃がすために、その命をかけて戦ってくれた人だ。
命を賭けろ、とまで言うつもりはない。
俺のために戦ってくれ、ともいうつもりはない。
ただ、身近にいる大切な誰かを守れるだけの戦闘能力を有している彼らには、このまま心を折られたままでいてほしくはなかった。
この街を守ってくれるかもしれない貴重な戦力になってくれる可能性のある彼をこのまま帰らせたくはない。
「俺は十五歳の誕生日にくるだろう憤怒の魔王を、そこで倒す」
無謀にも思えるその言葉に、エルドは困惑した様子で問いかけてくる。
「ど、どうやって……勇者も、いないだろ?」
「勇者がいつ生まれるかは分からないし、頼れるかどうかも分からない。そんな可能性の少ない希望に縋ってたら、大事な人たちを守れない」
その勇者だって、俺にとっては大事な人だしな。
エルドの心に響くように、彼が使っていた言葉を使って話す。
「俺は、大事な家族や大事な友人たちを守りたい。だから、そこで憤怒の魔王を倒して、父さんを助けたい。俺だって、魔王との戦いが怖くないわけじゃないが、それでもやるしかないから戦うんだ」
俺は特に恐怖はない。
それでも、エルドにとって身近な気持ちを口にすることで、より同意を得やすくするためにそういった。
……こういった合理的な判断ができるようになったのは、色々な経験があったからな。
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