ゲーム主人公に転生した俺、強くてニューゲームで続編世界のラスボス聖女様に好かれているようです

木嶋隆太

文字の大きさ
14 / 23

14

しおりを挟む


「アクリル。もうそれ以上は攻撃しなくてもいいわ」
「……」
「まったく。あなた、相変わらず演技苦手ね」
「……」

 さらに力を籠めようとしたアクリルを、大聖女が止める。
 大聖女の声を聞いたアクリルが、そこで小さく息を吐いてから頷いた。
 アクリルは俺を見て、軽く頭を下げてきた。

 ……俺の実力を測るために、アクリルを仕掛けさせたんだろう。
 だからまあ俺も、少し力を出したわけだ。

「ごめんなさいね。試すようなことをして」
「それは別にいい。素性も何も知らない相手なんだから、実力くらいはみたいだろうしな」
「実力も問題ないし……アレクシアの聖騎士については、もともと彼女に一任しているわ。だから、聖騎士としてあなたのことも認めましょう」
「……」

 ……マジかよ。
 わりと横暴な態度をとっていたのに認められるとか……聖騎士の選定基準適当すぎないか?
 それか、あるいはアレクシアがそれだけ信頼されているということだろうか?

「……ここで裸踊りでもしたら、取り消されたりしないか?」
「あら、それは楽しそうね。見せてくれるのかしら?」
「……」

 ダメそうである。
 本気でやったらアクリルにぶん殴られそうだ。先ほどのアクリルも、すべてがすべて演技ではないだろうし。
 大聖女様を敬え、という気持ちは確かなようで、威嚇するように睨んできている。

 まあ教会の人間として、アクリルの反応が正しいよな。

 この大聖女の器が広すぎるのか、適当なのか……どちらにせよ、俺の聖騎士は決まってしまったようだ。
 アレクシアはとても満足そうに胸を張っている。

「それでは、大聖女様。私たちはこれで失礼いたします」
「ええ、今日はゆっくり休んでちょうだい。明日から、また聖女としての仕事もあるんだからね」
「ええ、分かっています。それでは、行きましょうか、スチル」
「……」

 ひらひらと手を振ってくる大聖女と別れた俺たちは、教会内を歩いていく。
 教会というのはいつの時代もたいして造りは変わらないんだな。時代が進んだことによって、建築に使われた素材の質は良くなっているようではあるな。

 通路には、宿屋のようにいくつもの部屋が並んでいる。
 この通路にある部屋たちには、聖女が休んでいるんだろう。
 今頃、聖女たちは就寝中だろう。俺もラスボス聖女様に絡まれてなかったら、今頃は宿屋で気持ちよく眠っていただろう。

「こちらが私たちの部屋になります」

 ……そういえば、聖騎士と聖女は一緒の部屋だったな。
 聖女がいつどこで誰に襲われるか分からないため、常に両者は一緒にいることになっていた。
 教会内ならばまだ大丈夫だと思うが、遠征先では特に気を付ける必要がある。

 まあ、聖女なんてのは邪教徒からすれば最大の敵だからな。

 邪教集団というのがこの時代にはいるわけで、彼らは俺がかつて倒したラスボスの邪神を復活させるのが目的らしい。
 あんなの復活しても俺ならワンパンだぞ? と思っているのだが、そのために活動している人たちもいるわけだし、俺もそういう夢を持っている人たちを馬鹿にするつもりはない。

 そして、聖女含めこの世界の人々は邪教集団を敵として認めているわけで、聖女たちもそんな奴らから年がら年中命を狙われるような立場というわけだ。
 実際、俺が知る限りでも、何度か命を狙われ……聖女、聖騎士どちらも命を落とすような事件もあったからな。

 聖騎士というのはそれだけ命の危険にさらされる仕事でもある。
 まあ、邪教集団関係なく命を狙われた俺とかもいるわけだが。

 アレクシアが扉を開けると、中は広々とした部屋になっていた。
 中を見ていくと、キッチン、リビングにシャワールームまで備え付けられている。

 部屋もいくつかあるな。寝室にはベッドが二つ並んでいる。
 ……窓側のベッドは襲撃の可能性も踏まえ、通常は聖騎士が使うんだったな。
 ざっと部屋を見て回ったが、意外と部屋は綺麗だ。

「怠惰な生活を所望していたわりには、部屋の整理はしっかりされているんだな」
「ここは教会内ですので、使用人が毎日清掃してくれますから」

 それはつまり、使用人がいなければ大変なことになるという可能性もあるわけか。
 部屋には簡易的なキッチンもありはするが、料理だって伝えておけば使用人が運んできてくれるだろう。
 聖女というのはそこらの貴族と同じか、それ以上の待遇なんだしな。

「それでは、私は一日動いて疲れましたし、シャワーでも浴びてきますね」
「ああ、分かった」
「覗かないでくださいね?」
「興味ない。さっさと行ってこい」

 備え付けられていたソファに腰掛け、手をひらひらと振ってから天井を見上げる。
 フードと仮面を外した俺は、小さく息を吐く。
 
 それにしても。
 また、聖騎士になるとはな……。
 とりあえず、教会のこととかラスボス聖女様のことか……。
 色々と不安材料はある。
 ただまあ、前世と違って……俺が鍛えた元仲間たちが敵に回ることはないはずだ。

 ……まあ、俺の能力があれば大丈夫か。

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

宮廷から追放された聖女の回復魔法は最強でした。後から戻って来いと言われても今更遅いです

ダイナイ
ファンタジー
「お前が聖女だな、お前はいらないからクビだ」 宮廷に派遣されていた聖女メアリーは、お金の無駄だお前の代わりはいくらでもいるから、と宮廷を追放されてしまった。 聖国から王国に派遣されていた聖女は、この先どうしようか迷ってしまう。とりあえず、冒険者が集まる都市に行って仕事をしようと考えた。 しかし聖女は自分の回復魔法が異常であることを知らなかった。 冒険者都市に行った聖女は、自分の回復魔法が周囲に知られて大変なことになってしまう。

ゲームの悪役パパに転生したけど、勇者になる息子が親離れしないので完全に詰んでる

街風
ファンタジー
「お前を追放する!」 ゲームの悪役貴族に転生したルドルフは、シナリオ通りに息子のハイネ(後に世界を救う勇者)を追放した。 しかし、前世では子煩悩な父親だったルドルフのこれまでの人生は、ゲームのシナリオに大きく影響を与えていた。旅にでるはずだった勇者は旅に出ず、悪人になる人は善人になっていた。勇者でもないただの中年ルドルフは魔人から世界を救えるのか。

防御力を下げる魔法しか使えなかった俺は勇者パーティから追放されたけど俺の魔法に強制脱衣の追加効果が発現したので世界中で畏怖の対象になりました

かにくくり
ファンタジー
 魔法使いクサナギは国王の命により勇者パーティの一員として魔獣討伐の任務を続けていた。  しかし相手の防御力を下げる魔法しか使う事ができないクサナギは仲間達からお荷物扱いをされてパーティから追放されてしまう。  しかし勇者達は今までクサナギの魔法で魔物の防御力が下がっていたおかげで楽に戦えていたという事実に全く気付いていなかった。  勇者パーティが没落していく中、クサナギは追放された地で彼の本当の力を知る新たな仲間を加えて一大勢力を築いていく。  そして防御力を下げるだけだったクサナギの魔法はいつしか次のステップに進化していた。  相手の身に着けている物を強制的に剥ぎ取るという究極の魔法を習得したクサナギの前に立ち向かえる者は誰ひとりいなかった。 ※小説家になろうにも掲載しています。

【完結】転生したら最強の魔法使いでした~元ブラック企業OLの異世界無双~

きゅちゃん
ファンタジー
過労死寸前のブラック企業OL・田中美咲(28歳)が、残業中に倒れて異世界に転生。転生先では「セリア・アルクライト」という名前で、なんと世界最強クラスの魔法使いとして生まれ変わる。 前世で我慢し続けた鬱憤を晴らすかのように、理不尽な権力者たちを魔法でバッサバッサと成敗し、困っている人々を助けていく。持ち前の社会人経験と常識、そして圧倒的な魔法力で、この世界の様々な問題を解決していく痛快ストーリー。

収納魔法を極めた魔術師ですが、勇者パーティを追放されました。ところで俺の追放理由って “どれ” ですか?

木塚麻弥
ファンタジー
収納魔法を活かして勇者パーティーの荷物持ちをしていたケイトはある日、パーティーを追放されてしまった。 追放される理由はよく分からなかった。 彼はパーティーを追放されても文句の言えない理由を無数に抱えていたからだ。 結局どれが本当の追放理由なのかはよく分からなかったが、勇者から追放すると強く言われたのでケイトはそれに従う。 しかし彼は、追放されてもなお仲間たちのことが好きだった。 たった四人で強大な魔王軍に立ち向かおうとするかつての仲間たち。 ケイトは彼らを失いたくなかった。 勇者たちとまた一緒に食事がしたかった。 しばらくひとりで悩んでいたケイトは気づいてしまう。 「追放されたってことは、俺の行動を制限する奴もいないってことだよな?」 これは収納魔法しか使えない魔術師が、仲間のために陰で奮闘する物語。

地味な薬草師だった俺が、実は村の生命線でした

有賀冬馬
ファンタジー
恋人に裏切られ、村を追い出された青年エド。彼の地味な仕事は誰にも評価されず、ただの「役立たず」として切り捨てられた。だが、それは間違いだった。旅の魔術師エリーゼと出会った彼は、自分の能力が秘めていた真の価値を知る。魔術と薬草を組み合わせた彼の秘薬は、やがて王国を救うほどの力となり、エドは英雄として名を馳せていく。そして、彼が去った村は、彼がいた頃には気づかなかった「地味な薬」の恩恵を失い、静かに破滅へと向かっていくのだった。

没落ルートの悪役貴族に転生した俺が【鑑定】と【人心掌握】のWスキルで順風満帆な勝ち組ハーレムルートを歩むまで

六志麻あさ
ファンタジー
才能Sランクの逸材たちよ、俺のもとに集え――。 乙女ゲーム『花乙女の誓約』の悪役令息ディオンに転生した俺。 ゲーム内では必ず没落する運命のディオンだが、俺はゲーム知識に加え二つのスキル【鑑定】と【人心掌握】を駆使して領地改革に乗り出す。 有能な人材を発掘・登用し、ヒロインたちとの絆を深めてハーレムを築きつつ領主としても有能ムーブを連発して、領地をみるみる発展させていく。 前世ではロクな思い出がない俺だけど、これからは全てが報われる勝ち組人生が待っている――。

異世界に召喚されたが「間違っちゃった」と身勝手な女神に追放されてしまったので、おまけで貰ったスキルで凡人の俺は頑張って生き残ります!

椿紅颯
ファンタジー
神乃勇人(こうのゆうと)はある日、女神ルミナによって異世界へと転移させられる。 しかしまさかのまさか、それは誤転移ということだった。 身勝手な女神により、たった一人だけ仲間外れにされた挙句の果てに粗雑に扱われ、ほぼ投げ捨てられるようなかたちで異世界の地へと下ろされてしまう。 そんな踏んだり蹴ったりな、凡人主人公がおりなす異世界ファンタジー!

処理中です...