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しおりを挟む「アレクシア様。お待ちしていました」
白を基調とした煌びやかな鎧に身を包んだ男性。
年齢は俺と同じくらいだろうか? 感じられる力はかなり強大なものだ。
彼も聖騎士……なのだろうか?
そして、その奥には――彼と同じかそれ以上の魔力を持つ女性が座っていた。
「大聖女様。お待たせしてしまって申し訳ありません」
大聖女。
英雄カインの時代にはなかった聖女たちを管理する立場の人だ。
すべての聖女たちをまとめる聖女たちのトップなのだから、その力が絶大な理由もわかる。
間違いなく、ゲームでは最高評価のSランクを獲得できる戦闘力だろうな。
「あなたが昔から時間にルーズなのは知っているから気にしなくていいわ」
両肘をつき、合わせた手の甲に顎をのせながらこちらを見る女性。
さっきの教会騎士と、恐らくは同い年くらいだろう。
恐らく、ほとんどの人が目を奪われるであろう美しい容姿を持った大聖女様が、こちらをじっと観察してくる。
「……その方が、あなたの聖騎士候補かしら?」
「はい、そうです。名前はスチルです……あっ」
アレクシアがそこで少し迷った様子を見せたあと、しまったという顔を作る。
おい。普通に本名を言うんじゃない、馬鹿。
「スチルベルトという名前だ。親しい人間はスチル、と呼んでいる」
「ということは、私もスチルって呼んでいいかしら?」
「親しくなった覚えはないんだが」
「よろしく、スチル」
にこっと微笑む大聖女。
聖女様ってのはどいつもこいつも距離の詰め方おかしくないか?
ミハエルはもっと奥ゆかしかったぞ?
現代の聖女たちはどうなってんだか。
とりあえず、誤魔化すことはできたのでよしとしよう。
「顔は見せてもらえないのかしら?」
大聖女からの問いかけに俺は反応せず、アレクシアを見る。
さっきの無茶振りされたのだから、ここからはアレクシアにお願いするつもりだ。
ちらと視線を向けると、彼女は任せてとばかりに胸を張り、ポニーテールを揺らす。
「彼は自分の正体を明かしたくはないんです。目立つことが嫌いで、少なくとも私生活まで聖騎士として関わられたくないということです」
アレクシアがそういうと、傍に立っていた騎士がじろりとこちらを睨んでくる。
「……聖騎士は国民の象徴だ。その場にいるだけで人々に安心感を与える存在とならなければならないんだぞ? それが正体を隠す? ……それはさすがに認められない」
「まあまあ、待ちなさいアクリル。別に正体を明かすことが義務付けられているわけでもないわ」
こいつ、アクリルっていうのか。見た目はかなり整った顔たちをしている。
だが、真面目そうな奴ってのは表情からも分かる。
大聖女様はそこで言葉を区切ってから、俺を見てきた。
「あなたの意向は理解したわ。けれど、私たちにだけ内緒で見せてくれることもできないのかしら」
「できない。それが条件でこの話は引き受けた。無理なら、断るだけだ。よし、交渉決裂、帰るぞ」
俺が振り返って逃げようとしたが、がしりとアレクシアに腕を掴まれる。
俺のそんな態度にアクリルが眉間を寄せる。不機嫌そうな様子とともに、口を開いた。
「……スチルベルト。育ちの問題もある。敬語を使えないというのは仕方ないかもしれないが、ここにいる方はこの国の聖女たちをまとめている大聖女様だ。もう少し、敬う気持ちをもって接することはできないのか?」
「悪いが、俺は聖女や聖騎士に対して敬いの気持ちはない。聖騎士だって、金がもらえるから引き受けたにすぎないからな」
「……貴様ッ!」
その瞬間だった。アクリルが咆哮をあげると同時、こちらへと掴みかかってきた。
素早く力強い一撃にはかなりの殺気が込められていて、俺は反射的にその手首を掴んだ。
アクリルは俺に攻撃を止められたことに僅かながらに驚いていたが、すぐに次の行動へと移る。
すかさず攻撃を仕掛けようとしてきたが、それより速くその体を蹴り飛ばした。
「がは!?」
「……へえ」
吹き飛んだアクリルは壁に叩きつけられて悲鳴をあげ、大聖女が俺を見て嬉しそうに呟いた。
今のアクリルは本気ではなかっただろうが、彼は驚いたようにこちらを見ていた。
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