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第21話
しおりを挟む監獄長はそこそこの立場らしく、スラム出身の私が挨拶に向かったのが気に食わないとして頬を叩かれたのだ。
あのときは、周りからも笑われたものだ。だが、そのとき、アシュート様が助けてくれた。
それが、「聖女候補に対して行う対応か、と」しかし、アシュート様の言葉は逆に周りに否定された。
『スラムの猿はしょせん候補。まさか、聖女に選ばれるはずがない、と』
……うん、おもいだしたら苛立ってきちゃった。
とりあえず、ちょうどアシュート様の元に向かう予定だったみたいなので、
「そ、そういえば……王都の聖女様の話聞きましたか?」
「ん? ああ、なんだか面白いことになっているみたいだな?」
「面白い、だなんて……とんでもないですよ! なんでも王子はカエルに姿をかえられ、聖女候補の方々はそれぞれ……変な生き物にされてしまったらしいですよ!」
「はっはっはっ! 王子がカエル? まあ、あのぼんぼんお坊ちゃまにはちょうどいいじゃないか!」
監獄長は腹を叩きながら楽しそうに笑っていた。
「か、監獄長、もしも王子の耳に入ったらどうするんですか!」
「ここにはわしとお前たち二人しかいない。もしも、王子がそんなことを言って来たら、おまえたちが言ったと伝えておこう」
まあ、私もいますけどね。
「や、やめてくださいよ! 今、聖女様の手配書が回ってきましたけど……も、もしも……他の街にまでいってみんなを猿に変えて回っていたらどうしますか?」
すでにあなたたちの後ろにいますけどね。
「これまでの聖女たちと違い、奴はスラムの猿だ」
「……スラムの、猿ですか?」
「そうだ、相手はただのガキだろ? それもスラム出身者。貴族様に魔法の力で勝てるわけがないだろ?」
いえ、ボコボコにしましたけど?
「久しぶりだな、アシュート……今日のご飯の時間だ」
ニヤニヤと笑いながら監獄長は鞭を取り出した。
アシュート様は……久しぶりに見るけど、その目には昔見たときと同じような真っすぐな力強さがあった。
随分とやせてしまい、ヒゲや髪などは一切の手入れもされていなかったが、それでもアシュート様であることはすぐにわかった。
私は……どうやってここからアシュート様を連れ出そうかと考えていた。
この部屋にいるのは騎士二名とアシュート様だけだから、なんとかなりそうなものだけど……うーん、どうしようか?
できれば、この監獄長にも仕返しをしてやりたいものだ。
一体どんな仕返しがいいかな……と考えていた。
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