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しおりを挟む確かに、丸々一年引きこもっていたのなら、学校に籍を残していれば、留年にはなるが無事日本の生活に戻せるわけではあるので……まあ、悪くないのかも?
「あっ! そういえば、兄貴! 今日『リトル・ブレイブ・オンライン』の発売日だよ!」
「……『リトル・ブレイブ・オンライン』?」
「そうだよ! ほら、VRMMOの! 忘れちゃったの!?」
……あー、確か俺が異世界転移させられる前にそんな話があったかもしれない。
今となっては、リアルで異世界を体験してきたので、それほどVRMMOに興味はなかったのだが、
「あたし、配信でめっちゃやるって話してるからさ! お兄ちゃん一緒に買いに行こうよ!」
「よし行くぞ!」
配信かぁ。そういえば、舞は中学生のときから配信活動をしていたなぁ。
まだ困惑していることはあるけど、舞の頼みを断るわけにはいかない。
俺は笑顔の舞とともに家を出たのだが。
「おう……久しぶりじゃねぇか」
家を出てすぐ、俺たちの背後からそんな声が聞こえてきた。
振り返ると、そこには明らかに不良っぽい見た目の男二名がいた。
誰だこいつら?
疑問に感じていると、手を握っていた舞から震えが伝わる。
舞を震源地とした地震でなければ、彼女が恐怖によって震えているわけで……誰の舞を怯えさせてやがんだって話だ。
「あ、兄貴……こ、こいつら……兄貴をボコボコにした……」
「俺が引きこもった原因の奴らか?」
「う、うん……少年院に入ったとかって聞いてたけど……」
舞がガタガタと震えながらそう言った。
不良たちはニヤリと笑みを浮かべ、拳を鳴らす。
「ああ。てめぇのせいで、しばらく自由がなくってよぉ」
「ちょっと、鬱憤ばらしに付き合ってくれよ」
……なるほどね。
こいつらが原因で舞は今も、怯えているんだよな。
俺は小さく息を吐いてから、不良たちを見る。
隙だらけすぎるな。
こいつらが原因で俺が一年間も引きこもっていたとか聞いたらムカついてきてしまった。
異世界で一番弱いというゴブリンのほうが、まだこいつらよりも強いだろうな。
「こっちも、舞をここまで悲しませるクソ野郎に用事があってな。ほら来いよ馬鹿ども。叩き潰してやるよ」
「……ああ!?」
「今度はぶっ殺してやるよ!!」
叫んで突っ込んできた男たちだが、あまりにも遅すぎる。
まずは舞を後ろに下げるため、俺が一歩前に出る。
長身の男が拳を振り抜いてくる。
……遅い。
拳をかわしながら、俺は彼の目に両指をぶつける。
軽めの目潰し。だが、効果抜群。
「ぐわ!?」
悲鳴をあげてその場で倒れた男は無視しして、俺はもう一人の拳を片手で掴んだ。
そして、握力で握りつぶす。
「があああ!? は、離せ!」
……こちとら、異世界で鍛えた補正があるんでな。
骨が折れない程度に加減してやったが、痛みで男は動けないようだ。
隙だらけのその体を蹴り飛ばす。
転がった男たちがよろよろと立ち上がるが、俺は笑顔とともに近づいていく。
「あ、兄貴……?」
舞が驚いたようにこちらを見てくる。
……まあ、舞からしたら俺はただ一年間引きこもっていただけだからな。
驚いた舞の顔はとても可愛いのだが、やりすぎて怯えられたらお兄ちゃん泣いちゃう。
「て、てめぇ……!」
「……舐めんじゃねぇぞ!」
長身の男が、隠していたナイフを取り出す。
そんなもんまで持ってんのかよ。やべぇなこいつら。
男は武器を持ったからか、その顔には勝ちを確信した笑みが浮かべられている。
武器一つでそんな変わるものかってんだ。なんなら、こっちもインベントリから短剣とりだしてやろうか? あ?
銃刀法違反でしょっぴかれたくはないので、行動には移さないが。
「死ねや!」
思い切り踏み込んでくるが、あまりにも軌道が予測しやすかった。
別にこの程度のナイフ、回避する必要もないのだが……ここには舞がいるからな。
ショッキングな光景は見せたくない。
男の手首を掴みながら、俺はそいつの顔面に膝を叩き込んだ。
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