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しおりを挟む「いたぞ! ひょっとこ兄貴だ!」
皆、やる気満々なようで。
血気盛んなのはいいことだが、やる気だけじゃな。
弓と魔法による援護を受けながら、六人の前衛が突っ込んでくる。
六人がお互いの隙を潰すようにしながら攻撃を加えてくる。
思っていたよりも連携はしっかりしているな。
ただ、二つのチームが合同して攻めてきている感じか。
恐らく、五人五人のパーティーが俺の目撃情報をうけて駆けつけたんだろう。
なので……そこを突けば、連携が乱れ始める。
「あだ!?」
「ちょっと!?」
お互いのパーティーが入れ替わり立ち替わりになるように俺が動いていくと、案の定、ぶつかった。
そもそも、一人の人間に対して、六人というのは数が多いのだ。
弓と魔法だって、俺に接近するまでは援護できていたが、今はそれらもうちあぐねている状況だ。
「はい、さいならー」
ぶつかって隙を作ってしまった二人に短剣を振り抜くと、すぐにそれを助けるように背後から剣を振り下ろしてくる。
俺がそれをかわすと、女性の肩に剣がめりこみ、大ダメージ。
「……ちゃんとしないと、同士討ちが増えちゃうぞ?」
剣を振ってきた男と、別の男の喉を切り裂いた。
女性は慌てて後退しながら、ポーションで回復を始める。
それを守るようにもう一人が後退するので、必然的に俺に対応できる人数が三人になる。
怪我人を残しておくと、それが宣戦復帰するまでの間はその人間の対応に当たる必要が出るからな。だから、ダメージを受けているほうを残した。
三人が突っ込んできて、それぞれ持っている武器を振り抜いてくる。
俺が連続の攻撃を短剣で捌きながら後退すると、彼らの表情が明るくなっていく。
「おいおい! ひょっとこ兄貴! 思ったよりも弱いな!」
「レベルのわりに動けてねぇなおい!」
「これならマジでやれそうだぜ!」
押している、と勘違いしてしまったようだ。
彼らのスキルを参考がてらみていただけにすぎないんだがな。
彼らは自動攻撃系のスキルは使ってこない。メリットデメリットを理解しているのだろう。
なのでもう、十分だ。
近くの男が振り抜いてきた攻撃に合わせ、【パリィ】を放つ。
相手が攻撃をする瞬間に合わせれば、動きを止めることのできるこのスキル。
「が!?」
見事に動けなくなった男を庇うように一人が出てくる。
そうなれば、さっきの回復中の子に割いていた人数を含めれば、残りは二人。いや、回復中の子はひとまず放置で、そっちの子が突っ込んできているな。
俺は後退しながら、
「怪我人放置はよくないぞ?」
「え?」
【投擲】で短剣を投げる。
回復中だった子は反応できなかったのだろう。俺のナイフが腹に突き刺さり、膝をつく。まだ仕留められないか。まさか、反応できないとは思っていなかったので、喉を狙って投げなかったんだよなぁ。
相手を過大評価してしまったようだ。
慌ててもう一人が守るように下がる。
「てめぇ! 調子に乗るなよ!」
「ぶっ殺してやるぜ!」
残っていた二人がスキルを放ちながら突っ込んできたので、俺は一人の攻撃をかわす。
そして、もう一人の攻撃をかわしながらその手首を掴む。
「ほらよ」
「え!?」
無理やり引っ張るようにして体の上体を崩したあとで、その背中をとんと押す。
男のスキル発動中の剣が、【パリィ】から復帰したばかりの男に命中。
「ぐああ!?」
「くそ!?」
そして、そっちに気を取られている間に、一番近くにいた男を切りつけて仕留めた。
「なんだよ、これ」
絶望的な声をあげている男が立ち直るのを待つつもりはない。
すぐに仲間のもとへと送ってやり、残っていたのは女性二人と後衛四人。
これだけ、開けた状態になると奥から攻撃が飛んでくる。
「に、逃げろ! 逃げるまでの時間を……ぐわ!?」
俺は二人を盾にするように移動し、矢と魔法の攻撃から逃れながら短剣を【投擲】する。
木々に隠れているようだが、声の位置でバレバレだ。
……ああ、一応スキルもあったな。
スキルを使いつつ、隠れている彼らを攻撃していく。
にげだした女二人も、逃しはしない。背中を晒してくれるので、随分と当てやすくなった彼女らを的あてのような感覚で短剣を投げつける。
よろめいて動けなくなった彼女らを放置し、俺は森の方へと向かう。
四方八方へと逃げ出しているが、俺から逃げられると思うなよ?
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