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しおりを挟む「てめ……」
「リーダーが一番びびってんじゃねぇか?」
「ふざけんじゃねぇ!」
カツキと対話していると、脇から剣を突き刺してくる男がいた。
その攻撃をかわしながら、頭を掴み地面に叩きつける。
俺の背中を狙ってきた男の攻撃を横に転がってかわすと、勢いよく地面にいた男を切りつけてしまう。
かわしてすぐ、その場で回るように足払いをかける。倒れた男の喉に短剣を突き刺す。
迫ってきた男に、短剣を振り上げて胸から喉へと切り裂く。
やってることは単調だ。敵の攻撃を受け流し、仕留めるだけ。
スキルを使ってくることもあったが、どれもこれも見切りやすいので、回避か【パリィ】が余裕でできてしまう。
あっという間に残りは五人となる。カツキに短剣を向け、俺は問いかける。
「運営のアップデート待ってからだったら、ここまで被害も出なかったんじゃないか?」
「……」
カツキは小さく息を吐いてから、右手に剣を持った。
そしてこちらをじっと睨んでくる。
「テメェ……オレに勝てると思ってるのか?」
「おまえは俺に勝てると思ってるのか?」
「テメェのことは調べたが……ただの引きこもりのインキャなんだろ? オレは前のゲームでトッププレイヤーだったんだ! テメェなんかよりも、ガチ対戦の経験は多いんだよ!」
カツキが剣を構え、突っ込んでくる。
確かに、他の奴らに比べて動きはまともだ。
フェイントも多く、それはもう対人戦に慣れているのがよくわかる。
いくつか、俺の回避を誘うような攻撃を繰り出してくる。
俺の動きを誘導し、そしてそしてカツキの口角が釣り上がる。
「死ね!」
振り下ろされた剣は俺にはあたらない。
ここまで、すべて、俺に誘導されていたからだ。
すべての攻撃をかわしてやると、さすがにカツキの表情も険しくなる。
一発くらいは当てられると思っていたようだな。
剣を構える彼に一歩近づくと、カツキは怯んだ様子で後退りする。
それまでの攻撃的な姿勢から一変。怯えの混じった表情でこちらを見る。
「……それじゃあ、本物の攻撃を見せてやる」
俺はそう言うと、カツキは慌てた様子で剣を握り直す。
俺の攻撃を見切り、反撃するためにだ。
一歩、また一歩と俺がゆっくりと近づいていく。それに合わせ、カツキは俺から距離を取る。
だが、そのタイミングはくる。
瞬きと呼吸をした一瞬――その隙に俺は踏み込んだ。
「え?」
カツキからすれば,ワープしてきたように感じたのではないだろうか。
まったく何の反応もできなかった彼だったが、慌てた様子で後方へとぶ。
俺はその彼の右腕を斬りつける。
カツキは顔を顰めながらも、後方へ跳んで逃げる。荒くなった呼吸の合間を縫うように、俺は距離を詰めて短剣を振り抜いていく。
急所を外すようにして、何度も何度も致命傷になりにくい箇所へと攻撃を重ねていく。
逃げても無駄だ。連撃を叩き込むと、カツキの表情がみるみるこわばっていく。
先ほどまでの威勢は完全になくなり、恐怖に染まった表情にだ。
「どうした? 震えてるぞ?」
「……はぁ、はぁ……はぁ……! お、お前,何者なんだよ!」
「俺か? キリキリマイというVTuberの兄だ。あっ、チャンネル登録よろしくな」
「……ふ、ふざけるなぁ!」
俺の発言で、せっかく与えた恐怖心が取り除かれてしまったようだ。あるいは、無理やり声を荒らげて勇気を振り絞ったか。
カツキが突っ込んでくると同時に、剣を振り抜いてくる。
ただ、力みすぎだ。スキルを発動したカツキの剣に、俺は【パリィ】を合わせた。
タイミングは完璧で、カツキのスキルを無効化し、弾く。
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