帰還した元勇者はVRMMOで無双する。〜目指すはVTuber義妹を推して推しまくる生活~

木嶋隆太

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 たぶん、もう襲ってこなそうだな。俺の配信を見て、進行方向に間違いがないことが分かっているようだ。

 しばらく歩いていくと、開けた空間にでた。
 そこに待ち受けていたのは、大人数の武器を持ったプレイヤーたち。
 全員仲良く目が赤い集団――『アサシンブレイク』。
 彼らの中央に立っていた男は腕をくみ、にやりと笑う。

「よぉ、ひょっとこ兄貴」
「……どちらさん?」
「この『アサシンブレイク』のリーダーを務めてる、カツキって言うんだ……そして、これからお前をぶっ倒す男の名前だ」

 カツキは笑みを浮かべると、彼の周囲に控えていたプレイヤーたちが弓を構えた。
 ……構えが変なやつもいるので、全員のメイン武器が弓というわけではないんだろう。

 総勢、五十名くらいか? よくもまあ集めたものだ。

〈おいおいおい! さすがにこの人数でPKって卑怯すぎんだろ!〉
〈ひょっとこ兄貴! 今すぐ逃げてくれ!〉
〈場所はどこだ!? ひょっとこ兄貴を助けに行かないと……っ!〉

 コメント欄は慌てたように声をあげる。
 ルルラもさすがにこの数は危険だからか、俺のポケットに入ってちらちらと見てくる。

「ひょっとこ兄貴。装備品と金全部置いて行ったら見逃してやらんこともないぜ?」
「同意見だ。そういうわけで、さっさと置いていきな? 見逃してやるから」

 俺がひょいひょいと挑発するように片手を向けると、カツキは苛立ったように眉尻を上げた。
 ゲームなんだから、このくらいの盛り上げは必要だろ?

〈ひょっとこ兄貴!?〉
〈い、いけるんか?〉
〈さすがにこの数は無理だろ……っ! 対人戦だとそんなにレベル差も関係ないって聞いてるし……!〉

 俺の言葉に、コメントはさらに加速していく。『アサシンブレイク』の登場に合わせ、さらに視聴者数は伸びている。
 登録者数も爆伸びだ。もしかしたら、今日中に登録者数10万人を超えるかもしれない。
 ここまで盛り上げてくれた『アサシンブレイク』には感謝してもしきれないな。

「……てめぇ、後悔すんなよ!」

 カツキがそういった次の瞬間、俺に向けて矢が放たれた。
 一斉に放たれたのだから50近い矢が飛んでくるのだが、そのすべてが俺に当たるように飛んできているわけではない。

 なんなら、適当に放ってるやつもいるようで他の矢を巻き込み、向きがおかしくなっているのもある。

 軌道を見切り、自分に向かってきているものだけを弾きながら短剣を振り抜いていく。
 矢の雨を潜り抜けながら『アサシンブレイク』に接近すると、俺の突撃に明らかに動揺が走る。

「……怯むな! 全員で叩け! 仲間とか関係ねえ! とにかく、その舐めたガキに攻撃を叩き込んでやれ!」
『おおおお!』

 男女様々な音程の雄叫びが響き渡り、彼らが突撃してくる。
 もっとも近かった男の剣をかわし、その首を刈り取る。
 俺の背後をとった男が攻撃してくるが、俺は360度どこでも見られる。

 だって、分身が俺の配信を見ているんだからな。視野の広さだけでいえば、リアルの体と同じように展開できるわけで……その状態の俺が集団戦に負けると思っているのか。

 なんなら、分身の視界だけで対応できるので、それこそ目を閉じながらでも倒せるほどだ。
 そもそも、目を閉じていても敵の動きと声で十分対応可能なわけで――。

 連続で『アサシンブレイク』たちを仕留めたところ、明らかに向こうの勢いが下がっていく。
 俺を狙っているのに、攻撃はすべてかわされ、下手をすれば同士討ち。
 そして、俺の攻撃はすべて寸分違わず仲間の急所に吸い込まれていく。
 こんな状況を見れば、そりゃあ勢いもなくなるだろう。
 俺はさらにそれを削ぐように余裕ぶって、倒していく。

「くそっ! 怯むな! 怯むんじゃねぇ!」
「ほら、どこ見てんだよ!」

 一人安全圏から指示を出していたカツキにナイフを投げると、彼は慌てたようにかわした。
 一応、リーダーを張るだけはあり、このくらいはかわせるようだな。
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