悪役令嬢の使用人 ~没落予定の家の使用人に転生してしまった私は、国外追放される悪役令嬢なお嬢様を正しく導きます!~

木嶋隆太

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第4話

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 侍女というのは、他の使用人たちとは何もかも立場が違う。
 主に変化するのは立場、食事、浴場、寝室の利用だろうか。

 まず、立場に関してだが、私はメイドであるがリア様のおつきであるため、立場的にはメイド長と同等程度だ。これまで同僚だったメイドたちは、私を見かけたら先に挨拶をしなければならないし、これから仮にほかの貴族家にリア様と出向くようなことがあれば、そちらの家の使用人たちからはリア様に近いような扱いを受けるらしい。

 ……まあ、別に私は好待遇とかされなくてもいいんだけどね。ていうか、手厚く歓迎とかあまり好きじゃないし。誕生日会とかそういうの大嫌いなタイプだった。そもそも、呼ばれたこともないけど。

 そして次に、食事。これに関しては個人で食事を用意してもらうことも可能だ。ただ私は食堂での食事が好きだった。使用人たちが他の使用人の愚痴をこぼしているのを聞いている時間が至福の時間といっても過言ではない。

 性格悪いって? ほっといて。
 というか、屋敷にはたくさんの使用人がいるし、月ごとに新しい人も入ってくる。
 この食堂でそういった情報収集をしておくのは非常に大事なことだった。
 
 そんなこんなで夕食の時間を楽しんでいると、私の先輩メイドであるピリアさんが声をかけてきた。

「ねぇ、ニャル……あなた本当にリア様の侍女になったの?」
「はい、そうですね」
「……あなたがそんなに仕事熱心だったなんて思わなかったわ」
「失礼ですね。私は真面目なメイドですよ」

 給金と休みにつられたとは一言も出さない。
 私の言葉に、ピリアさんは苦笑する。

「昇格……とりあえずはおめでとう……かな?」
「とりあえず……ですね。まあ、そうですね」
「でも、大丈夫? リア様の侍女ってみんなすぐやめちゃってるよね?」
「そうですね。そこは少し心配ですね」

 あれから詳しく打ち合わせをした。業務内容はリア様に朝から夕方まで付き添うことだ。
 詳しい仕事内容は分からない。というのも、基本的にリア様に付き従うため、リア様から命令がなければ何の仕事もないということになる。

 ……どのくらい大変なのかは今後やってみなければわからないだろう。
 ま、休日とお金がもらえるのなら、私としてはどうでもよい。セカンドライフに向けて貯金をし、別の道で食っていけるように能力をつければそれでいいのだ。

 この世界には魔法だってある。今だって空き時間を見つけて少しずつ魔法の勉強とかをしているけど、これからは休日にがっつり時間を割いて出来るようになるんだから私にとってはそれだけで最高だった。

「とりあえず、体壊さないようにね? 体あっての人生なんだからね」
「そうですね。肝に銘じておきます」

 ピリアさんにこくこくと頷きながら、私は夕食を終えた。
 食堂を出るとき、知り合いの使用人たちに頑張って、と声をかけられながら私は食堂を後にした。

 ……侍女になって大きく変わるのは、個別の部屋が用意されたことだろうか。
 もちろん、これも以前と同じ集団の部屋での生活も可能だ。

 けど、それは断った。集団部屋で嬉しいのは数日くらいまでだ。それからは他の人が気になって気になってしょうがなかった。

 何より、一人用の部屋であれば魔法の練習だって気兼ねなくできる。
 私は与えられた自室をちらと見る。……結構広いなぁ。前世の実家の自室よりも全然大きい。
 やっぱり貴族って何もかも違うわよね。

 私は用意されたふかふかのベッドにごろんと寝転がり、天井を見上げる。

「異世界かぁ……」

 この家はリア様が原因で没落するのよね。まあ、どうにかできるならどうにかするけど、無理そうなときは……すぐに逃亡できるように準備だけはしておかないとね。
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