惑星ムンド管理官、転生者を監視する。

山田村

文字の大きさ
10 / 52
第二章 自立

第10話 イベリア歴620年 おもい

しおりを挟む
 アン吉のヤツ……おもー……(重い)。

「実はここに来たのは、理由があります。私は首都パンプローナの南部地区に店舗兼住宅を構えて二十年になります。町から出る事はここ数年なく、前回の出張が二年ぶり、二回目になります。……実は、ここに来る前日の深夜、夢で神からお告げがあったのです」

 アントニオは胸の前で手を組み、うっとりと祈るポーズをとった。

「ニャンコか!」

「ニャンコ? ……あの神々しい姿と、包み込む様な優しい声……。オー……女神様……私は貴方の僕(しもべ)です……。今でも私の記憶にしっかりと刻まれ……」

「あのさ~……本題にいってちょうだい~……」

「コホン。失礼。女神様は、『信心深い我が子らよ、ここに向かいイザベルの仕事を手伝いなさい。イザベルを支援する事で多大な恩恵を受けるでしょう』とお告げになりまして。初めは『その村にそんな人物がいるのか?』と疑いましたが、気になって朝早く家を出て、ここに向かったのです」

「ふーん……本題!」

「失礼! ……村に到着して情報収集したら、イザベルさんが実在する事がわかりました。何やら新しい暖房器具を作ったとか、巫女だとか、姉が駆け落ちしたとか……コイン一枚でよく話す女性が教えてくれたのですが。ともかく、具体的使命がそこにあると確信しました」

「うぜー……雑貨屋のババァ~……間違いない……。それで、あーしの仕事の支援してくれるんだよね~……神様繋がりで……」

「もちろんです。任せて下さい。……有料になりますが」

「タダ友じゃないんだー……」

「申し訳ございません。仕事にお金が発生する事案と、商材の仕入れに関してはよろしくお願いいたします」

「ま、こんなあーしでも、最低限の節度と常識は持っているから」

「ありがとうございます! ご理解いただけて幸いです。それと、ここからが本題になります」

「えーーー、今の前振りかよ」

「実は、あれから家に帰った深夜、夢の中に再び女神様が現れまして。大変褒められ、私、天にも昇る高揚感が……」

「あのさ、いい加減にして!」

「失礼……。実はお姉さまの話です……」

 その瞬間、あーしの胸の奥で何かが崩れ落ちた。

「何処にいるの? 姉ちゃんの話をするってことは……知ってんだよね~」

「知っています。いや、女神様から教えてもらいました。……イレーネさんは、今この世にいません。ヘルマンも同じです……」

「えっ、ウソ……」――驚きで声がかすれた。

「ヘルマンは悪人に騙され、多額の借金を抱えていました。イレーネさんを連れて来ることで、借金が帳消しになる程の金貨が手に入る手筈だったようです。イレーネさんがヘルマンを好いていたのが功を奏してしまった。貴族との結婚を避けるための駆け落ちは、イレーネさんにとって最悪のタイミングだったのです。ヘルマンはイレーネさんの気持ちなど理解していなかったし……」

「ひどい……」怒りで手の震える

 アントニオは、まるで見てきたかのように語り始めた。

「……ヘルマンは、借金を取り立てにくる男――物静かに脅してくるその男の目と態度が怖くて怯えていたそうです。彼が来る月末になると憂鬱で落ち着かず、知人に名前を呼ばれるだけでびくついていた。いつも冷静を装っても心の中は破裂しそうで、心臓の音が外に聞こえるくらいドクドクと鼓動していた。」

「フン!」

「駆け落ち当日、ヘルマンは指定の宿屋で待機している取り立ての男を探して……

男は、金貨の入った小袋をヘルマンに放り投げた。
それをキャッチしたヘルマンは、イレーネさんに背を向けて出口へ向かう。」

「ィヤ!」

 「イレーネさんがヘルマンの名前を呼んでも、彼は振り向かなかった……」


「やめろ~……」



◆◇◆◇◆◇◆◇

外伝 『ブルーノ戦記』 を公開しました! 短編・全2話完結の物語です。
この外伝では――
イザベルから授けられる“チート”
ブルーノの無双劇(!?) が描かれ、物語世界の裏側に迫ります。
現在、本編は 「第40話 マシュー王子助ける」 まで執筆済み。 続く展開もぜひご期待ください。
本編と並行して楽しめる内容となっていますので、ぜひご覧ください!
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

「『お前に書く手紙などない』と言った婚約者へ、私は7年間手紙を書き続けた——ただし、届け先は別の人でした」

歩人
ファンタジー
辺境伯令嬢リゼットは、婚約者に7年間手紙を書き続けた。返事は一度もなかった。 「お前に書く手紙などない。顔も覚えていない」——婚約破棄。しかしリゼットは 泣かなかった。手紙の本当の届け先は、最初から別にあったから。前世の情報分析 能力で辺境の異変を読み解き、暗号として織り込んだ7年分の手紙。それを受け取り 続けていたのは第一王子。リゼットは誰にも知られず、王国を守っていた。 婚約破棄の翌朝、王子からの手紙が届く。「7年間、ありがとう。迎えに行く」

無自覚に世界最強だった俺、追放後にチートがバレて全員ざまぁされる件

fuwamofu
ファンタジー
冒険者団から「役立たず」と追放された青年リオ。 実は彼のスキル《創造》は、世界の理を作り替える最強の能力だった。 追放後、孤独な旅に出るリオは、自身の無自覚な力で人々を救い、国を救い、やがて世界の中心に立つ。 そんな彼の元には、かつて彼を見下していた美少女たちが次々と跪いていく──。 これは、無自覚に世界を変えてしまう青年の、ざまぁと覇道の物語。

多分悪役令嬢ですが、うっかりヒーローを餌付けして執着されています

結城芙由奈@コミカライズ連載中
恋愛
【美味しそう……? こ、これは誰にもあげませんから!】 23歳、ブラック企業で働いている社畜OLの私。この日も帰宅は深夜過ぎ。泥のように眠りに着き、目覚めれば綺羅びやかな部屋にいた。しかも私は意地悪な貴族令嬢のようで使用人たちはビクビクしている。ひょっとして私って……悪役令嬢? テンプレ通りなら、将来破滅してしまうかも! そこで、細くても長く生きるために、目立たず空気のように生きようと決めた。それなのに、ひょんな出来事からヒーロー? に執着される羽目に……。 お願いですから、私に構わないで下さい! ※ 他サイトでも投稿中

妾の子だからといって、公爵家の令嬢を侮辱してただで済むと思っていたんですか?

木山楽斗
恋愛
公爵家の妾の子であるクラリアは、とある舞踏会にて二人の令嬢に詰められていた。 彼女達は、公爵家の汚点ともいえるクラリアのことを蔑み馬鹿にしていたのである。 公爵家の一員を侮辱するなど、本来であれば許されることではない。 しかし彼女達は、妾の子のことでムキになることはないと高を括っていた。 だが公爵家は彼女達に対して厳正なる抗議をしてきた。 二人が公爵家を侮辱したとして、糾弾したのである。 彼女達は何もわかっていなかったのだ。例え妾の子であろうとも、公爵家の一員であるクラリアを侮辱してただで済む訳がないということを。 ※HOTランキング1位、小説、恋愛24hポイントランキング1位(2024/10/04) 皆さまの応援のおかげです。誠にありがとうございます。

婚約破棄の慰謝料として『王国の半分』を要求したら、本当にくれたので、今日から私があなたの女王様です

唯崎りいち
恋愛
婚約破棄の慰謝料に 「王国の半分」を要求したら、 ゴミみたいな土地を押し付けられた。 ならば――関所を作りまくって 王子を経済的に詰ませることにした。 支配目当ての女王による、 愛なき(?)完全勝利の記録。

腹に彼の子が宿っている? そうですか、ではお幸せに。

四季
恋愛
「わたくしの腹には彼の子が宿っていますの! 貴女はさっさと消えてくださる?」 突然やって来た金髪ロングヘアの女性は私にそんなことを告げた。

「貧相な小娘」と罵った第一王子へ。番(つがい)は貴方ではなく、国王陛下(お父様)でした

しえろ あい
恋愛
「お父様、わたくし、あの方と目が合った瞬間、分かってしまったのです」 十六歳のデビュタントの夜、ルーセント侯爵令嬢フェリシアを待っていたのは、残酷な罵倒だった。第一王子カシウスは、可憐な白いドレスを纏った彼女を「貧相な小娘」と呼び、己の番(つがい)であることを真っ向から否定する。 会場に響く冷笑と、愛用の刺繍に込めた自信さえ打ち砕くような屈辱。しかし、絶望の淵に立たされた彼女を見つめていたのは、王子ではなく、圧倒的な威厳を放つ「ある男」だった。 魂を焦がすような熱い視線が重なり、静まり返る謁見の間。この出会いが、王室を揺るがす大事件の幕開けになるとは、まだ誰も知らない。自身の価値を否定された少女が、真実の愛によって世界で最も幸福な王妃へと駆け上がる、逆転溺愛ストーリー。 ※小説家になろう様にも投稿しています※

英雄の番が名乗るまで

長野 雪
恋愛
突然発生した魔物の大侵攻。西の果てから始まったそれは、いくつもの集落どころか国すら飲みこみ、世界中の国々が人種・宗教を越えて協力し、とうとう終息を迎えた。魔物の駆逐・殲滅に目覚ましい活躍を見せた5人は吟遊詩人によって「五英傑」と謳われ、これから彼らの活躍は英雄譚として広く知られていくのであろう。 大侵攻の終息を祝う宴の最中、己の番《つがい》の気配を感じた五英傑の一人、竜人フィルは見つけ出した途端、気を失ってしまった彼女に対し、番の誓約を行おうとするが失敗に終わる。番と己の寿命を等しくするため、何より番を手元に置き続けるためにフィルにとっては重要な誓約がどうして失敗したのか分からないものの、とにかく庇護したいフィルと、ぐいぐい溺愛モードに入ろうとする彼に一歩距離を置いてしまう番の女性との一進一退のおはなし。 ※小説家になろうにも投稿

処理中です...