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プロローグ

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    いつの間にか子供ではなくなった。
 毎日人と人で敷き詰められた世界で、不規則に身体を揺らされることにも慣れた。
 こんなはずなんてない、なんて思うんだけど、もう遅い。
 空を見上げると、晴天の空!  なんてことはなくて、気がついたときには濁っている。
「あ」
 雨が降ってきた。締め切っていない蛇口から滴る水滴の音から徐々に人の声をかき消すほどの音へと変わった。
 最近こんな日が続いてる気がする。
 今日だけは晴れて欲しいなーと、思ったのに、そう上手くはいかないみたい。

 もしも誰かが「世界を征服しに行こう」って言ってくれたら制服と教科書全部燃やして今すぐ手作りのボートを太平洋に浮かべるのに、こういう日に限ってあの人からは連絡は来ない。
 いや、いいんだ。
 私は諦めたんだから。
 待つことでさえ罪だ。
 でも、でも、それでも私は期待してしまう。ああ、憎い。
 でも、そんなのも今日いっぱい。
 私は一度諦めた。だから待つことは許されない。そうだ。待ってるだけではダメなんだ。
 来るべき何かを来ると信じてるだけじゃダメなんだ。
 そう思い知らされたはずなんだ。
 私の知る限り時間は止まったりはしない。ただ前を進み続けるだけだから。
 だから、もう、その日暮らしはいやだ。もう、世界から、あの人から、自分の気持ちから目を背け続けるのはやめるんだ。
 私は先へ進む。
 晴れた空の下で散って笑えるように。
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