地味スキル「ためて・放つ」が最強すぎた!~出来損ないはいらん!と追い出したくせに英雄に駆け上がってから戻れと言われても手遅れです~

かくろう

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暫定パーティー

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「ん……ここは」
「目が、覚めましたか?」

「あなたは……。そうか、僕、イレギュラーと戦って」

 目が覚めると、目の前に銀色の天使がいた。

 小さな焚き火の炎に照らされた銀色の美しい瞳がこちらをのぞき込んでいた。

「僕は、どのくらい気を失っていましたか?」

 辺りはまだ真っ暗だ。いつモンスターに襲われるかも分からない。

「ほんの数分くらいです。まだ動かないでください。あれだけの激しい戦いをしたのですから」

 彼女は地面に倒れていた僕の頭を持ち上げ、自らの膝の上に乗せた。

 柔らかい太ももの感触と、花のような良い香りが鼻腔をくすぐる。

 普段の僕なら恥ずかしくて飛び起きていたところだけど、全身のホネがひび割れたかのように軋んで動けなかった。

「うぐっ……」
「だ、大丈夫ですか」

「ええ、やっぱりしばらく動けそうもないみたいです。少々限界を超えてしまいました」

 やっぱりスキルの多重発動は肉体への負担が凄まじい。必死だったとはいえこんな無茶は二度としたくない。

 巨大フォレストウルフの魔素を吸収したことで多少回復しているみたいだ。

 ☆治癒力に振った数値が徐々に目減りしている。体を横たえているだけで少しずつ回復しているのが分かる。

 多分あと10分もすれば動けるようになるだろう。


「本当に助かりました。セージさんでしたよね。私はリンカニアと言います」

「リンカニア、さん? ひょっとして純白の剣の?」

「えっ、私の事、ご存じなんですか?」

 その名前には聞き覚えがあった。狐の獣人の斥候。優秀な分析能力のギフトを持っていて、最近破竹の勢いで成果を上げている冒険者チームに狐人族の女性がいると、王都の冒険者ギルドの知り合いに聞いたことがある。

 まさかこんな綺麗な人だったなんて。

「はい、知っています。純白の剣は有名ですから」

「そう、なんですね……嬉しいです。ありがとうございます」

 そこまで言って自分の迂闊さを後悔する。奴隷として運ばれていた事を考えれば、何か事情があるのは察せられた筈なのに。

「すみません。あなたの事情も考えず、軽率でした」

「いえ、本当のことですから。私、パーティーを追放されたんです」
「ええっ⁉ いぁ、イテテ」

 ビックリして思わず身を起こそうとしてしまい、全身の痛みに悶えてしまう。

「あっ、無茶しないでください」

「す、すみません。でも、一体どうして……いや、込み入った事情でしょうし、無理はなさらないで。僕は通りすがりですから」

「いえ、別に隠すような事でもないですし、どうせメンバー達が触れ回ってるでしょうから」

 そうして彼女は自分が被った被害をポツポツと語り出した。

 冒険者でもない素人の僕でも、そのハーカルとかいう男の愚かさはすぐに分かる。

 努めて明るく振る舞おうとしているが、ショックを受けているのは明白だった。

「そんなバカな。純白の剣の優秀さはリンカニアさんの分析能力があってこそだと、王都の冒険者が熱弁してましたよ。なんてバカなことを」


「あはは。買いかぶり過ぎですよ。気持ち悪いって……ハッキリ言われましたから」

「信じられない……。すみません、不快なことを言わせてしまって」
「き、気にしないでください。誰かに聞いてもらえてよかったです。それに、命の恩人であるセージさんに、そんなことで不快になったりしません」

「よかった。でも、僕はあなたの過去をあれこれ詮索するつもりはありません。これから、どうなさるおつもりですか?」

「正直行く当てはありません。奴隷として売られた訳ですし、もうパーティーには戻れませんから」

「そう、ですか……」

「そういえば、セージさんも帰る家が無いと仰って……あ、ごめんなさい。私も詮索するつもりはなくて」

「いえ、僕も同じです。僕は家を追放されました。昨日の神託の儀式で授かったギフトがご当主様の逆鱗に触れたみたいで。出来損ないは出て行けと追い出されてしまいました」

「そ、そうだったんですか。ということは……貴族様のお屋敷に?」

「はい。さる高名な貴族家の妾腹でして。僕の力及ばず、追放を……」

「酷いですっ! あなたほどの強さを持つ方を追い出すなんて」

「いえ、能力に目覚めたのはついさっきなんです」
「え? ついさっき? じゃあ、たった1日そこらであれだけの強さを?」

「自分でも驚いています。しかし、例え追い出されなかったとしても、時間の問題だったかもしれません。旦那さまは僕の母上を下賎な血だと罵倒しました。あのような考え方をされていては、いずれガマンできなくなっていたでしょう」


「なんだか、私達似たもの同士ですね」
「あはは、そうかもしれません……。リンカニアさん、もしよければですが……僕と一緒にいきませんか?」

「え?」

「ダータルカーンで辛い目にあったあなたにこのような事を頼むのは心苦しいですが、僕はこれから冒険者として身を立てていこうと思っています。よければ僕に新人指導をしていただけませんか?」


「ええっ、あ、あんなにお強いのに、てっきり名のある冒険者だと……あ、でも神託の儀式を受けたということは、15歳?」

「はい。まだ成人したばかりの若輩です」

「そうだったんですね。じゃあ、こんな暗闇に装備もなしにいたのも」

「あはは、罠に填められて崖から転落しまして、命からがら下流から歩いてきた所にあなたと出くわしたんです」

「ま、魔の森の下流から自力で戻ってきたんですか? あそこはベータランクでもレイドを組まないと危険で近寄れないのに」

「はい。まさしく奇蹟でしたよ」

「モンスターに遭遇しなかったんですね。本当に運が良いですね」
「いえ、しましたよ。最初はデビルグリズリーに殺されかけました」

「え……ええっ⁉ デ、デビルグリズリーって、超危険モンスターじゃないですか。通常個体がイレギュラーと間違われるくらい強いのに」

 森の奥から滅多に出てこないが、時折人里近くで目撃されてはベータやガンマ。時にはアルファクラスに討伐依頼が出るほど凶暴な魔物だ。

「改めて考えると、あんなのよく倒せたな僕……あ、そうだ。お腹空いてませんか?」

「え、ああ……そういえば。食事は最低限しか……」

 その時、リンカニアさんのお腹がグゥゥウと悲鳴を上げていた。顔を真っ赤にしてお腹を押さえている姿はなんだか可愛らしいとすら思ってしまう。

「い、今の聞こえました?」
「はい、バッチリと」

「そ、そういうのは聞こえないフリが紳士だと思います!」

「すみません、あまりにも響き渡っていたもので」

 夜の静寂の中で中々の音を響かせるリンカニアさん。流石にこの音が聞こえないフリをするのは逆効果な気がして正直に言ってしまった。

「うー。命の恩人じゃなかったら怒ってるところですよぉ」

 気が付けば僕たちは自然と打ち解け合って軽口を聞けるようになっていた。

 出会ってから1時間も経っていないのに、彼女とのフィーリングが心地良かった。


『フィーリングリンクを取得。感情ゲージを蓄積可能になりました。感情の高まりで能力の共有が可能となります』

「え?」

――――

 ・感情ゲージ
 リンカニア 6/10 10/10到達で【ためる】を共有可能

――――

「どうしたんですか?」
「あ、いえ。その……」

 なんと説明していいか悩む。僕の能力の事を話してもいいが、僕自身もよく分かっていないし、もう少し理解が進んでからにしよう。

「お腹空いてますよね。手持ちの食料を……あ」
「どうしたんですか?」

 しまった。そういえば手持ちのアイテムは全て魔素ストックに変換してしまったんだった。

 デビルグリズリーの肉もまとめて変換したのでストレージの中身はすっからかんじゃないか。残ってるのは川の水だけだ。

「すみません。食料があったんですが、さっきスキルを使う時に使ってしまって」
「そういうスキルがあるんですか」

「まあ、そういう感じです。こっちから振っておいてすみません」

「いえいえ、気にしないでください。そうだ、盗賊達の食料が残ってるかも」

 リンカニアさんは立ち上がってバラバラにされた馬車の荷台を探し始める。


「ありました。半分くらい狼に食べられちゃってますけど、水と食料が少しだけ。もともと王都までの2日分なので大した量は得られませんでしたけど」

「仕方ないですね」

 僅かに残った食料で食事の準備をしながらこれからの事について話し合う事にした。

「さっきの話ですけど、お引き受けします。私にはもう何もありません。このまま王都に行っても良いことはなさそうですし。私でよければ、冒険者のノウハウをお伝えします」

「ありがとうございます。凄く助かります。とりあえずお互いが身を立てられるまでの暫定でいいので、パーティーを組みませんか」

「いえ、あなたは命の恩人です。暫定なんて言わず、セージさんが必要なくなるまで使い倒してください」

「そ、そんな。むしろ僕からお願いしたいくらいです。よろしくお願いしますリンカニアさん」

 そうして、僕たちは臨時のパーティーを組むことになり、僕はダータルカーンに到着するまでの護衛を。

 彼女は僕が冒険者として身を立てるまでの間、僕の面倒を見てくれる事になった。


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