地味スキル「ためて・放つ」が最強すぎた!~出来損ないはいらん!と追い出したくせに英雄に駆け上がってから戻れと言われても手遅れです~

かくろう

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やっぱり楽勝

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 新街道に合流しようという地点で、魔物に襲われている馬車を発見した。

 ☆加速を使って素早く距離を詰め、救出に向かう。


「あ、馬車がっ」

 そろそろ追いつけるかというところで馬が限界を迎えたらしい。
 派手な音を立てながら馬車が横転してしまい、御者が投げ出されたのが見える。

 そして待ち伏せしていたオーガ達が一斉に襲い掛かっていた。

「ジャンプします。しっかり捕まっててくださいっ!」
「え、は、はいっ! きゃぁあああっ」

 まずは投げ出された御者の方へ思い切りジャンプする。

 加速の勢いを乗せた跳躍で魔物達を飛び越え、御者を抱えてもう一度馬車の近くに飛ぶ。

「きゃっ」

「えっ」

 腰の辺りを抱えて飛び上がろうとしたところで声の高い悲鳴が聞こえた。

 だけど気にしている余裕はない。馬車の近くに着地したと同時にリンカニアさんに中の人の護衛をお願いすることにする。

「魔物は僕が片付けます。馬車の人達に近づく取りこぼしから護衛をお願いします」

「分かりました」

 馬車の近くに2人を下ろし、僕たちを取り囲む魔物達は嘲笑うかのようにジリジリと距離を詰めてくる。


「ぐぎゃぎゃぎゃ」
「ごふっ、ぐふふっ」

「グルルルッ」

 攻撃力の高いのはオークとオーガか。ゴブリンはブルー。ウルフはフォレストウルフじゃないな。

 夕べのヘルガロウムの一団に比べれば大した相手じゃない。

 だけどオークは体が大きい上にゴブリンと連携をとりながらずる賢い戦い方をしてくる狡猾な魔物だ。

 
 フォレストウルフに勝てるからって自惚れて油断したら怪我じゃ済まないかもしれない。

「まずは数を減らす。重ね斬りッ!!」

 一撃五連の振り下ろしでオークの集団に攻撃を加える。

『ギョえぇええっ』
『ガファアッ』

 レベル45の攻撃は通常のオーク程度なら一撃で倒せる。
 脇に控えていたブルーゴブリンとまとめて5体を薙ぎ倒す。

 このまま重ね斬りを連発していても勝てそうだが、それだと戦略の幅が広がらない。

 一つのやり方に固執すると、いつの間にか油断や慢心に繋がる。

 ショートソードを片手で構え直し、まずは弓を構えているゴブリンに向かって石を投げつけた。

 
「ギャッ」

「よしっ」

 弓兵は全部で五匹。そうだ。投擲に☆攻撃回数は適用できるのかな。

「せいっ!」

 近くに寄ってきたオークをショートソードで攻撃しながら【ためる】を発動させて攻撃回数を増やしていく。

 通常攻撃に☆攻撃回数が乗らないようにできるかが問題だったが、☆投擲に注ぐように意識すると減らない。

 どうやら僕が意識を向ける事でどの項目に☆攻撃回数を使えるかを選べるようだ。

 ドドドドドッ!!

「うわっ、これ凄いな」

 投擲に攻撃回数を乗せると、思った通り5個の石が敵に向かって飛んで行く。

 ストレージの入り口が開き、中から石が飛び出しいた。

「石の投擲は消耗するのか。乱発はできないな」

 河原の石は昨日の戦いでかなり消耗してしまった。補充はしていないので残り少なくなっている。

(投擲用の石は常に補充するようにしよう)

 投擲をやめて見回すと、僕を囲もうと後ろに回り込むゴブリンが映り込む。

「チィ、そっちに回り込んだか」
「後ろは任せてくださいっ!」

 ナイフを構えたリンカニアさんが回り込んだゴブリンと戦い始める。

 流石はベテラン冒険者。
 
 僕は全部を1人でやろうとしていた自分を反省し、気を配りながらも周りの敵に集中することにした。

「重ね斬りッ」

 技のバリエーションをもっと増やさないと。剣技の才能が無かった僕は、長い時間をかけて会得できた剣技スキルがあまり多くない。

 激殺両断は渾身の力を込めて威力を高める技だ。集団戦向きじゃない。

 実は僕は敵の隙を突いて力を込めた一撃で逆転する戦法を得意としていた。

 そのため、大ぶりな技が多いのだ。【ためて・放つ】なんてギフトを授かったのも、それが影響しているのかもしれない。
 
 逆に言うとそれに特化した訓練を行なってきたために、剣技では領内の騎士団で上位に位置することができていた。


「たぁああ、せいっ!」

 大きく振りかぶってくるオークの攻撃をはじき返し、隙を生じた腹に払い斬りを喰らわせた。

 自分の戦い方に自信を持って良いはずだ。だがこの機会に新しい戦い方を模索していいかもしれない。

 よし、威力が控え目で取り回しの効く技をやってみるか。

「両断斬ッ」

 激殺両断より隙が小さく、それなりに威力が出る小技でオーガを両断する。

『グオッ……オオ』

 ズゥゥゥン……

 オーガの巨体が肩から下半身にかけて斬り裂かれ、左右に分かれて土煙を上げた。

 新しい技を模索しながら敵を蹴散らしていき、あっという間に敵の集団を平らげることができた。

◇◇◇

「お見事でしたセージさん。ほとんどお一人で全滅させてしまうなんて、さすがですね」

「後ろでサポートして頂いたおかげです。背中を預けられる方がいて安心できました。馬車の方達は?」

「はい。全員ご無事です。ただ、横転した時に体を強く打ったみたいで、怪我をしている方が何人か。安全の為に馬車の中で待機してもらってます」

「もう出てきてもらって大丈夫です。僕はドロップアイテムを集めてきますので、ポーションを使ってあげてください」

「えっ」

「さっき言った実験に関して分かったことがあるんですが、とりあえずそれは後でお話するとして、たぶん四つくらいドロップしている筈なので」

「ええっ! ポーションのドロップって100匹倒して1個あるかどうかなのに」

 ケガ人の治療をするためにドロップした魔石やポーションをかき集め、先ほどの検証で仮説がかなり的を射ていたことが確信できた。

 その証拠にリンカニアさんに任せたゴブリンの何匹かの死体は残ったままだ。

 とりあえずその話は後にしよう。


……




「モンスターは全て撃退しました。もう大丈夫ですよ」
 
 
 馬車は横転してしまったので扉を持ち上げ、中から引っ張り出そうと手を差し伸べる。

「おおっ、ありがとうございます!! あなた方は命の恩人ですっ」

 
 中から出てきたのは商人らしき男性だった。たっぷりと脂肪の乗った体を引っ張り出すのはちょっと大変だったが、ちょっとタンコブができたくらいで大怪我はしていないようだった。

「私よりも先に、娘を。横転した時に体を強く打ってしまって、頭から血を」

「それは大変です。魔物からドロップしたポーションを使いましょう。さあ、まずはこちらへ」

 気を失っているらしい少女は、確かに頭から血を流して気を失っている。

 リンカニアさんに手伝ってもらい、少女を馬車の外に引っ張り出すと、事態はかなり深刻であることが分かる。

「お嬢様っ。しっかりなさってくださいっ」

 隣から声を掛けてきたのは御者の人だった。女性だったのか。

 メイド服を着た女性はすりむいた肩をものともせずに少女の心配をしている。

「大丈夫です。回復ポーションを使いましょう」

 気を失っている少女にポーションを飲ませようとするが、気を失っているため口から入っていきそうもない。

「これは傷口に直接振りかけた方が良さそうですね」

「う、ううっ」

「大丈夫だからね。すぐに痛くなるから」

 呻き声を上げる少女に声を掛けながらポーションを振りかける。

「そちらの女性は? まだポーションはあります。使ってください」
「あ、ありがとうございます」

 馬車に乗っていたのは男性が1人。メイド服を着た女性が1人。怪我をした少女が1人の3人だった。

 街道を移動するには非常に少なすぎる人数だ。

 ◇◇◇


 僕は横転して逃げ出した馬を探しに出かけて戻ってきた所だった。

 幸いにして襲われる事なく草むらに隠れている所を発見し連れ戻すことができた。

 足を怪我していたのでポーションを与え、なだめながらリンカニアさん達の待つ現場に戻ってきた。

 その間に彼らの事情を聞いてもらい、どうやら護衛の冒険者に逃げられたあげく、自分達が助かる為に囮にされて必死に逃げていた所だと聞かされた。



「改めてありがとうございました。私はダータルカーンで商会を開いている商人のトトルムでございます。こちらはメイドのアンナ。そして」

「娘の、エリスです。あの、助けていただきありがとうございました」

「僕はセージと申します」

「セージさん、どうやら王都からダータルカーンに向けて帰る途中で魔物に襲われたそうです。護衛に雇っていた冒険者は魔物の数を見て逃げ出したらしく……」

「そうでしたか。幸い馬車は少し修理すればまだ走れるでしょう。馬も連れ戻しましたし、僕らの目的地もダータルカーンです」

「そうでしたか。どうでしょう? 報酬はしっかりお支払いいたしますので、町までの護衛を引き受けてくださらないでしょうか」

「ええ、もちろんです。それで、その代わりといってはなんですが、いくつかお願いしたい事が」

「もちろんです。私にできることでしたら」

「僕らは事情があって身分を失った身です」

「身分を……そういえば、その黒髪に高貴な出で立ち……。あ、あなた様はもしや!」

 トトルム氏は何かを察したように僕の顔をのぞき込んだが、直ぐに首を横に振ってくれた。

「……いえ、命の恩人の事情を詮索するのはやめましょう。分かりました。あなた方お二人の身分は私が保証しましょう。ダータルカーンに問題なく入れるように取り計らわせていただきます」

「察していただき感謝いたします。町までの安全は僕らが保証しますので安心してください」



 こうして僕らはトトルムさん達と共に馬車で町に向かうことになり、数日は掛かるかと思われた道のりを短縮することに成功したのだった。



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