地味スキル「ためて・放つ」が最強すぎた!~出来損ないはいらん!と追い出したくせに英雄に駆け上がってから戻れと言われても手遅れです~

かくろう

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リンカを取り戻すには

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「はぁ……はぁ……倒した……」

 ツインヘッドダークドラゴンが絶命の叫びを上げ、巨体を崩れ落とす。
 地響きが広場を揺らし、土煙が舞い上がった。
 だが、胸に広がるのは達成感でも誇らしさでもなかった。

 ――視界の端に、消えていったリンカの姿が焼き付いて離れない。
 勝ったのに嬉しくない。勝ったからこそ余計に、彼女を守れなかった自分が許せない。
 剣を握る手が小刻みに震えた。

「た、倒した……一撃で、だと……?」
「なんという攻撃でござるか……。信じられんでござるよ」
「す、凄いわ……。ガンマクラスの域を明らかに超えてる。一体何者なの?」

 煉獄の騎士団の面々が目を丸くして僕を見ていた。
 けれど心はそこに向かなかった。
 耳に入っても、反応する余裕などない。
 今はただ――リンカを取り戻す。それだけだ。

「すみません。そんなことより……急いで地上に出ましょう。リンカを攫った連中を追わないと」

◇◇◇

 そのとき、場違いなほど小さな声がした。

「……私を、連れて行って」

 振り返ると、赤い瞳を持つ少女が立っていた。痩せ細った体、ぼろ布のような奴隷服。
 血の匂いの中でも、震える声だけは鮮明に届いた。

「君は……?」

「私、魔族。奴隷、されてた……あの人達、行き先、知ってる。目的……闇ギルド。受け渡す、約束……してる」

「闇ギルド……」

 やはり裏があったか。
 だが、彼女の言葉が真実なら貴重な手掛かりだ。
 でも――警戒心が拭えない。敵の手先かもしれない、罠かもしれない。
 頭ではそう分かっているのに、心は叫んでいた。

 疑って時間を潰している暇なんてない!

「分かった。僕は君を信じるよ」

 その瞬間、視界に淡い光の文字が浮かんだ。

――――――
【ルミナス】LV12
感情ゲージ
14/20 【ためる】共有可能
――――――

「えっ……?」

 フィーリングリンク。しかも高い。
 なぜだ。今会ったばかりなのに……。
 僕が「信じる」と言ったから? その言葉が彼女の心を揺らしたのか。

「名前……ルミナス」
「ルミナス。光か……いい名前だ」
「……っ。名前、褒められたの、初めて」

 彼女の赤い瞳が揺れる。
 小さな震えは、嘘や演技には見えなかった。
 胸の奥が熱くなる。――疑った自分が恥ずかしくなった。

◇◇◇

 地上に戻ると、すぐにトトルムさんに報告した。
 彼は眉間に皺を寄せ、低い声で言った。

「……リンカさんが狙われたのは、銀狐族だからでしょう。闇ギルドが関わっているなら、オークションにかけられる可能性が高い」

「オークション……!」

「銀狐族は非常に希少です。通常の奴隷なら五千万ルクス、銀狐族ともなれば二億ルクス以上の値がついてもおかしくありません。貴族が競り落とす目玉商品でしょう」

 二億……!
 耳にした瞬間、背筋が冷たくなる。
 普通なら一生かけても届かない額。
 だが諦めるわけにはいかない。諦めたら――リンカは誰かの所有物になる。

「トトルムさん。出来るだけ短期間で、出来るだけ高額の依頼を紹介してください。数は多い方がいい」

「なるほど……他ギルドにも声を掛けましょう。資金を集める猶予は?」

「……オークションが始まる前。奴隷紋を刻まれる前に、絶対に間に合わせます」

 言葉にした途端、胸に焦りの炎が広がる。
 もし間に合わなければ――想像するだけで手が震えた。



「その魔結晶……ルミナスに、ください」

 ルミナスが、ドラゴンの魔結晶を指差した。
 トトルムさんが頷く。

「なるほど……。魔族は魔結晶を取り込むことで力を増します。彼女に与えれば戦力になるでしょう」

 そうか。確かにそういう話を本で読んだ事がある。

「ルミナス……僕に協力してくれるか?」

「肯定。セージ、助けてくれた。恩、返したい」

 真っ直ぐな瞳に、迷いはなかった。
 自然に頷けた。リンカを取り戻す戦いは、もう僕一人のものじゃない。



「必要な資金は最低五千万ルクス、できれば二億。あなた達のチームをアルファランクに昇格させ、受けられる依頼の幅を広げましょう」

 トトルムさんの言葉に息を呑む。
 短期間で大金を稼ぐ――命を削る覚悟が必要だ。
 だが迷っている時間などない。

「必ず集めます。どんな依頼でも受けます」

 告げた瞬間、心の奥に「試されている」という感覚が芽生えた。
 セージという冒険者が、リンカを救えるのかどうか――ここからが本当の戦いだ。

◇◇◇

「それから」
 トトルムさんはベルを鳴らし、メイドに命じた。
「エリスを呼んできてくれ」

「エリスお嬢様を?」
「ええ。リンカさん奪還のためには、彼女の力が欠かせません」

 ほどなくして現れた少女。
 彼女が口にした言葉は、僕の想像を遥かに超えるものだった――。
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