地味スキル「ためて・放つ」が最強すぎた!~出来損ないはいらん!と追い出したくせに英雄に駆け上がってから戻れと言われても手遅れです~

かくろう

文字の大きさ
74 / 150
71~80

決戦・烈火の魔将 中編

しおりを挟む
 僕は剣を握り直し、フィーリングリンクを全開にした。
(ルミナス……僕の魔力を持っていけ。炎に打ち勝つ力を!)

 胸の奥から、熱い奔流のように魔力が流れ出す感覚。リンクを通じて、ルミナスへと注ぎ込まれていく。

「……ああ……セージ、感じる。力……溢れる」
 ルミナスの体を淡い光が包み込んだ。彼女の赤い瞳が一瞬だけ揺れ、炎でも氷でもない、新しい輝きがその中に宿る。

 イグニスが嗤う。
「人間風情が魔族を強化するだと? 茶番もいいところだ!」

 彼が振り下ろした大剣から炎の奔流が押し寄せる。だがルミナスは一歩も退かず、両腕を広げた。
「――氷と風……混ざる。ルミナス、新しい魔法、見つけた」

 風が生まれた。炎を押し返す冷風。それに氷の粒子が溶け合い、極光のような光彩を帯びて渦巻く。

「《オーロラ・ストーム》!」

 轟音と共に、光と氷と風が織り成す暴風が広間を埋め尽くした。炎の奔流がかき消され、代わりに極光の嵐が吹き荒れる。
 虹色に揺れる光の刃が幾重にも走り、イグニスの鎧を削り取った。

「ぬううっ……!?」
 炎に守られた魔将が、初めて防御を崩される。燃え盛るマントが切り裂かれ、黒鉄の鎧に深い傷が刻まれる。

 僕はすかさず叫んだ。
「リンカ、今だ!」

「――任せて!」
 彼女の弓から放たれた矢が、僕の魔力を纏い、氷の輝きを帯びて一直線に飛ぶ。ルミナスの《オーロラ・ストーム》が生んだ隙を突き、矢は鎧の歪みへと突き刺さった。

「グォオオオオッ!」
 イグニスが苦悶の咆哮を上げる。炎の魔将が押されている――!

 セレスが祈りを込めるように両手を合わせた。
「聖光よ、仲間に祝福を――《ホーリー・ブレス》!」
 温かな光が僕たちを包み込み、疲労で重くなっていた体が軽くなる。

「セージ君! 今なら押し切れる!」
 リンカが叫ぶ。

「ああ、ここで決める!」
 僕は剣を振り上げ、力を溜め込んだ。

「――【破魔斬光陣】!」

 光の斬撃が《オーロラ・ストーム》に重なり、広間全体を覆う閃光の奔流となった。炎を、闇を、呪いを切り裂き、烈火の魔将の巨躯を真正面から打ち据える。

 爆発的な衝撃が響き渡り、広間の壁が崩れ落ちるほどの振動が走った。

 光と極光の嵐が収まり、広間には焼け焦げた匂いが漂っていた。
 ルミナスの《オーロラ・ストーム》と僕の【破魔斬光陣】が直撃したイグニスは、鎧を割かれ、燃え盛るマントもほとんど吹き飛んでいる。

 だが――

「……ク、クハハハ……ッ! 人間ごときが、この俺をここまで追い詰めるか」

 イグニスの声が低く響く。割れた鎧の隙間からは、熔岩のように赤熱した肉体が覗き、そこから炎が吹き上がっていた。

「だがなァ……本気を出していたとでも思ったかァッ!」

 次の瞬間、広間全体が火柱に呑まれた。床から、天井から、四方八方から炎が噴き出す。
 冒険者たちが「うわあっ!」と悲鳴を上げて退避し、石壁が真っ赤に焼け爛れていく。

 僕は歯を食いしばりながら仲間を庇った。
「ぐっ……この威圧感……!」

「セージ君っ、避けて!」
 リンカが氷矢を放つが、炎の壁に弾かれて溶け落ちる。

 セレスが祈りを込めて光の障壁を展開するが、炎の衝撃でひびが走る。
「くっ……耐えきれません……!」

 イグニスは愉快そうに吠えた。
「これぞ烈火の洗礼! 焼き尽くされるがいい!」

 広間全体がまるで火口の中のように灼熱化していく。僕たちは押されていた。
 さっきの反撃で一歩優位に立ったはずが、再び振り出し――いや、それ以上に追い込まれている。

 レベルを上げるか……いや、もっとギリギリまで引きつけて、一気に振り抜く必要がある。

 しかし――

「セージ……大丈夫。ルミナス、まだ戦える。氷、もっと強くできる」
 ルミナスが真剣な眼差しで僕を見た。

 僕はうなずき、フィーリングリンクを強く意識する。
「……よし。力を合わせれば、必ず突破口は開ける!」

 リンカが矢を番えながら応える。
「私もいるわ。氷の矢にもっと力を込めて、炎を射抜いてみせる!」

 セレスも必死に祈りの言葉を重ねる。
「わたくしも、皆さまを護ります……! どうか、光が道を照らしますように!」

 再び僕たちの心がひとつになっていく。フィーリングリンクが熱を帯び、全員の力が重なり合う。

 イグニスは僕らの気配を感じ取ったのか、燃え盛る大剣を振り上げて吠えた。
「何度足掻こうと無駄だ! この烈火の力こそ、絶対だァッ!」

 灼熱の炎が王城の大広間を呑み込んでいた。
 空気すら燃え、剣を握る手の皮膚がひりつく。
「ぐっ……熱すぎる……!」
 イグニスの大剣が振り下ろされるたび、炎の奔流が押し寄せ、足場ごと吹き飛ばされる。仲間たちは必死に応戦していたが、じわじわと押され始めていた。

 イグニスの炎が城内を呑み込み、空気そのものが灼熱地獄と化していた。僕の斬撃も、リンカの矢も、ルミナスの氷も押し返される。

「ぐっ……! この熱気、全身が焼けそうだ……!」

 僕が歯を食いしばったその時――耳奥に、いつもの無機質な声が響く。

『魔素ストックの共鳴により、新たな上位魔法《アブソリュート・コキュートス》が解放されます。適合者は、魔族ルミナス』

 ――ルミナスに!?

 僕が振り返ると、ルミナスの全身に青白い魔力の奔流が絡みついていた。
 彼女自身も驚いているのか、金色の瞳が大きく見開かれている。

「ルミナス……お前、今の声……!」

「セージ……来る。体、勝手に……魔力、膨れ上がる!」

 足元から、氷の結晶が一斉に広がり始めた。炎で焼け爛れた床に、蒸気が立ち昇る。
 ルミナスが両腕を掲げると、頭上に広がるのは氷界そのもの。

「《アブソリュート・コキュートス》――!」

 瞬間、極寒の光柱が天より降り注いだ。
 燃え盛る炎を打ち消し、空間そのものを絶対零度で塗り潰す。
 轟音と共にイグニスの炎壁が砕け、赤黒い火焔は白き氷霜に呑まれていった。

「馬鹿なっ……我が烈火が……氷ごときに……!?」
 イグニスの瞳に、初めて動揺の色が浮かぶ。

 ルミナスは荒い息を吐きながら、それでも勝ち誇ったように口角を上げる。
「セージ……これ、使える。氷、極限。炎、喰い尽くす……!」

 僕は頷き、剣を握り直した。
 この力があれば、炎の魔将にも届く――勝機が見えてきた。

 床一面に刻まれた光刃の残滓が、灼熱の赤黒を切り裂いている。
 炎を纏った鎧は裂け、燃え盛るマントは半ば焼き千切れ……その中心に、苦悶の唸り声が響いた。

「……ぬ、ぐぅ……こ、小僧……貴様……ッ!」

 イグニスが膝をつきかける。その巨体がぐらりと揺れ、熱波が弾ける。
 ――だが、その眼光は死んでいなかった。むしろ、これまで以上に狂気に満ちていた。
しおりを挟む
感想 7

あなたにおすすめの小説

ブラック国家を制裁する方法は、性癖全開のハーレムを作ることでした。

タカハシヨウ
ファンタジー
ヴァン・スナキアはたった一人で世界を圧倒できる強さを誇り、母国ウィルクトリアを守る使命を背負っていた。 しかし国民たちはヴァンの威を借りて他国から財産を搾取し、その金でろくに働かずに暮らしている害悪ばかり。さらにはその歪んだ体制を維持するためにヴァンの魔力を受け継ぐ後継を求め、ヴァンに一夫多妻制まで用意する始末。 ヴァンは国を叩き直すため、あえてヴァンとは子どもを作れない異種族とばかり八人と結婚した。もし後継が生まれなければウィルクトリアは世界中から報復を受けて滅亡するだろう。生き残りたければ心を入れ替えてまともな国になるしかない。 激しく抵抗する国民を圧倒的な力でギャフンと言わせながら、ヴァンは愛する妻たちと甘々イチャイチャ暮らしていく。

異世界から日本に帰ってきたら魔法学院に入学 パーティーメンバーが順調に強くなっていくのは嬉しいんだが、妹の暴走だけがどうにも止まらない!

枕崎 削節
ファンタジー
〔小説家になろうローファンタジーランキング日間ベストテン入り作品〕 タイトルを変更しました。旧タイトル【異世界から帰ったらなぜか魔法学院に入学。この際遠慮なく能力を発揮したろ】 3年間の異世界生活を経て日本に戻ってきた楢崎聡史と桜の兄妹。二人は生活の一部分に組み込まれてしまった冒険が忘れられなくてここ数年日本にも発生したダンジョンアタックを目論むが、年齢制限に壁に撥ね返されて入場を断られてしまう。ガックリと項垂れる二人に救いの手を差し伸べたのは魔法学院の学院長と名乗る人物。喜び勇んで入学したはいいものの、この学院長はとにかく無茶振りが過ぎる。異世界でも経験したことがないとんでもないミッションに次々と駆り出される兄妹。さらに二人を取り巻く周囲にも奇妙な縁で繋がった生徒がどんどん現れては学院での日常と冒険という非日常が繰り返されていく。大勢の学院生との交流の中ではぐくまれていく人間模様とバトルアクションをどうぞお楽しみください!

異世界転移したら、神の力と無敵の天使軍団を授かったんだが。

猫正宗
ファンタジー
白羽明星は気付けば異世界転移しており、背に純白の六翼を生やした熾天使となっていた。 もともと現世に未練などなかった明星は、大喜びで異世界の大空を飛び回る。 すると遥か空の彼方、誰も到達できないほどの高度に存在する、巨大な空獣に守られた天空城にたどり着く。 主人不在らしきその城に入ると頭の中にダイレクトに声が流れてきた。 ――霊子力パターン、熾天使《セラフ》と認識。天界の座マスター登録します。……ああ、お帰りなさいルシフェル様。お戻りをお待ち申し上げておりました―― 風景が目まぐるしく移り変わる。 天空城に封じられていた七つの天国が解放されていく。 移り変わる景色こそは、 第一天 ヴィロン。 第二天 ラキア。 第三天 シャハクィム。 第四天 ゼブル。 第五天 マオン。 第六天 マコン。 それらはかつて天界を構成していた七つの天国を再現したものだ。 気付けば明星は、玉座に座っていた。 そこは天の最高位。 第七天 アラボト。 そして玉座の前には、明星に絶対の忠誠を誓う超常なる存在《七元徳の守護天使たち》が膝をついていたのだった。 ――これは異世界で神なる権能と無敵の天使軍団を手にした明星が、調子に乗ったエセ強者を相手に無双したり、のんびりスローライフを満喫したりする物語。

ペーパードライバーが車ごと異世界転移する話

ぐだな
ファンタジー
車を買ったその日に事故にあった島屋健斗(シマヤ)は、どういう訳か車ごと異世界へ転移してしまう。 異世界には剣と魔法があるけれど、信号機もガソリンも無い!危険な魔境のど真ん中に放り出された島屋は、とりあえずカーナビに頼るしかないのだった。 「目的地を設定しました。ルート案内に従って走行してください」 異世界仕様となった車(中古車)とペーパードライバーの運命はいかに…

異世界転移から始まるハーレム生活〜チートスキルを貰った俺は、妹と共に無双する〜

昼寝部
ファンタジー
 2XXX年、X月。  俺、水瀬アキトは戦争の絶えない地球で『戦場の悪魔』と呼ばれ、数多の戦で活躍していた。  そんな日々を過ごしていた俺は、ひょんなことから妹と一緒に異世界へ転移することになった。  その世界にはダンジョンが存在しており、ライトノベルなどで登場する世界観と類似していた。  俺たちはその世界で過ごすため女神様からチートスキルを貰い、冒険者となって異世界での生活を満喫することにした。  これは主人公の水瀬アキトと妹のカナデが異世界へ転移し、美少女たちに囲まれながら異世界で無双するお話し。

クラス転移したら種族が変化してたけどとりあえず生きる

アルカス
ファンタジー
16歳になったばかりの高校2年の主人公。 でも、主人公は昔から体が弱くなかなか学校に通えなかった。 でも学校には、行っても俺に声をかけてくれる親友はいた。 その日も体の調子が良くなり、親友と久しぶりの学校に行きHRが終わり先生が出ていったとき、クラスが眩しい光に包まれた。 そして僕は一人、違う場所に飛ばされいた。

異世界帰還者の気苦労無双録~チートスキルまで手に入れたのに幼馴染のお世話でダンジョン攻略が捗らない~

虎柄トラ
ファンタジー
 下校帰りに不慮の事故に遭い命を落とした桜川凪は、女神から開口一番に異世界転生しないかと勧誘を受ける。  意味が分からず凪が聞き返すと、女神は涙ながらに異世界の現状について語り出す。  女神が管理する世界ではいま魔族と人類とで戦争をしているが、このままだと人類が負けて世界は滅亡してしまう。  敗色濃厚なその理由は、魔族側には魔王がいるのに対して、人類側には勇者がいないからだという。  剣と魔法が存在するファンタジー世界は大好物だが、そんな物騒な世界で勇者になんてなりたくない凪は断るが、女神は聞き入れようとしない。  一歩も引かない女神に対して凪は、「魔王を倒せたら、俺を元の身体で元いた世界に帰還転生させろ」と交換条件を提示する。  快諾した女神と契約を交わし転生した凪は、見事に魔王を打ち倒して元の世界に帰還するが――。

最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。

MP
ファンタジー
高校2年の夏。 高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。 地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。 しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。

処理中です...