地味スキル「ためて・放つ」が最強すぎた!~出来損ないはいらん!と追い出したくせに英雄に駆け上がってから戻れと言われても手遅れです~

かくろう

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揺るがぬ誓い

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 眩しい閃光が森を覆い、足元の大地が波打つ。
 ヴァルナの無数の眼から黒い光線が走り、木々が一瞬で枯れ果てていく。

「これは……!」
 セレスが息を呑む。祈りの光を掲げるが、黒い光は浄化を食い破り迫ってきた。

「退けっ!」
 僕は剣を振り抜き、ためた魔力を斬撃に乗せて弾き飛ばす。
 しかし直後、頭に焼き付くような光景が流れ込んできた。

 ――仲間たちが倒れ、森が屍で埋め尽くされる未来映像。

「くっ……!」
 思わず膝が揺らぎ、額から冷や汗が流れる。

 リンカが声を張り上げる。
「セージ君! あれは幻影よ! 未来なんて、まだ来てない!」
 彼女の瞳が【分析】の光を帯び、揺らめく影を見抜いている。

「……幻……?」
 だが、痛みも血の匂いも本物に近い。心を惑わせるには十分すぎる。

「惑わされるな。奴は“未来を見せて、諦めさせる”つもりだ」
 僕は呼吸を整え、剣を握り直した。

 ルミナスが口角を吊り上げ、手に氷炎をまとわせる。
「なら、ルミナスたちが壊す。幻も、眼も、まとめて」

 その瞬間、ヴァルナの眼がさらに蠢き、空を覆い尽くすほど広がった。
 森の空気が重く沈み込み、まるで世界そのものが囚われていく。

(ここからが本番か……! だが――どんな未来を押しつけられても、俺たちは屈しない!)

 僕は踏み込み、仲間たちと共に揺らぐ視界の奥へと飛び込んでいった。



 踏み込んだ瞬間、足元の地面が崩れ落ち、視界が真っ黒に塗り潰された。
 気づけば僕たちは、見覚えのある風景の中に立っていた。

 ――タブリンス領都。
 だが、そこは瓦礫に覆われ、炎に焼かれ、悲鳴が響き渡っている。

「なっ……ここは……!」
 リンカが絶句する。

 瓦礫の中で泣き叫ぶ子供の姿、倒れ伏す領民、崩れた家。
 すべてが、僕らの知る街そのものだった。

「これが……俺たちの未来……?」
 声が震えた。

 背後から、ヴァルナの囁きが這い寄ってくる。
「抗えど無駄だ……お前たちが帰還する頃、この地は滅びている」

 セレスが必死に祈りを掲げる。

「……そんな未来、私は認めません! 神よ、どうか導きを……!」

 だが、祈りの光は街に届かない。むしろ、さらに深い闇に呑み込まれていく。

「嘘だ……絶対に、嘘!」
 リンカが叫び、弓を引き絞る。しかし放たれた矢は、未来の幻に吸い込まれて消えた。

 僕は歯を食いしばり、剣を振り抜いた。
 光刃が瓦礫を裂き、炎を断ち切る。

「――これは未来じゃない!」
 胸の奥から絞り出すように叫ぶ。
「僕たちが帰る場所を、こんな幻に壊させるものか!」

 ヴァルナの無数の眼がざわめき、幻影が軋むように揺らぎ始めた。


 瓦礫の山が崩れ落ち、泣き叫ぶ声が木霊する。
 だけど――その光景は、確かに揺らいでいた。

「……っ、見える……」
 ルミナスが呟き、拳を握りしめる。
「炎のゆらめき、影の歪み……これは全部、幻。ヴァルナの“未来の罠”」

 僕は剣先を突き出し、睨み据えた。
「つまり、奴が見せてるだけの虚像だ」

 セレスが息を呑む。
「でも、あまりにも現実的すぎて……心が引き込まれそうになります……」

「なら、壊すしかない」
 握る手に力を込める。
「俺たちの未来は、俺たちが選ぶ。こんな偽物に飲まれてたまるか!」

 再び斬り払うと、瓦礫が音を立てて霧散した。
 リンカの矢も、ルミナスの炎も、セレスの祈りも――次々と幻を裂いていく。

 空気が震え、森の奥からヴァルナの呻きが滲み出した。
「……馬鹿な……“確定未来”が……揺らぐ……!?」

 幻影の街はぼろぼろに剥がれ、血に染まった未来像が、光の粒子に変わって消えていく。

 けれど、最後に残ったのは一つ。
 ――仲間たちが全滅し、僕一人が剣を突き立てて倒れている幻影。

 それを見た瞬間、胸の奥がひやりと凍りついた。

(……これは、ただの幻か……? それとも――)

 胸をざわめかせる幻影を振り払い、僕は剣を握り直した。
(違う……! これは奴の最後の足掻きだ。僕たちが信じるのは――仲間と歩む今だ!)

「みんな、構えろ!」

 リンカが素早く弓を引き絞り、矢に魔力を宿す。
「セージ君の未来は、私が必ず守る!」
 放たれた矢は光の尾を引き、幻影の残骸を貫き消し去った。

「ドカン!」
 ルミナスが炎をまとい、爆ぜるように駆け出す。
「未来なんか燃やし尽くせばいい!」
 炎の竜が咆哮し、幻影の残りかすを一掃した。

 セレスは両手を胸に組み、祈りを解き放つ。
「神よ……この道を照らしたまえ!」
 眩い光が仲間を包み、僕の体に確かな力を与える。
(……癒しだけじゃない。勇気まで伝わってくる……!)

 僕はその力を剣に込め、走り出した。
「これで終わりだ、ヴァルナ!」

 剣閃が走ると同時に、リンカの矢とルミナスの炎、セレスの光が交差する。
 三つの力が一点に収束し、未来の幻影を完全に打ち砕いた。

 森が軋むように震え、ヴァルナの呻き声が響く。
「……バカな……! 未来が……消える……!?」

 その声を振り切るように、僕は剣を振り下ろした。
 刹那、幻影は一気に霧散し、森に静寂が戻った。

 剣を構えたまま、僕は息を荒げて仲間たちを見回した。
 全員、無事に立っている――それだけで、胸が熱くなる。

(そうだ。未来なんて決まっていない。俺たちが信じ合って進む限り――いくらでも切り拓けるんだ)

 僕の胸に広がったのは、確かな安堵と――次なる戦いへの予感だった。
 剣を握る手に、まだ震えが残っている。だがその震えは恐怖ではない。仲間と共に未来を揺さぶり、勝ち取った実感だった。

「……終わったの?」
 リンカが弓を下ろし、額の汗を拭った。
 その声にはまだ緊張が残っていたけれど、揺るぎない強さもあった。

「幻影は全部消えた。けど……」
 僕は周囲の森を見回した。
 霧が晴れていく。だが完全な静寂の奥に、まだ何かが潜んでいる気配を感じた。

 ルミナスが不満そうに足を踏み鳴らす。
「ちょっと物足りない。ヴァルナ、本気じゃなかった。絶対そう」
「……確かに。妙にあっさり消えたな」

 セレスは眉を寄せ、胸に手を当てて祈りを捧げる。
「この感覚……邪悪な気配はまだ途絶えていません。むしろ、深く沈んで……待っている……」

(やっぱりか……今のは本体じゃない。奴はどこかでこちらを観察し、本気の一撃を隠している)

 そう気づいた瞬間、再び胸の奥がざわめいた。
 だが、すぐにその感覚を振り払い、仲間たちを見た。

「今は引こう。無理に追えば、逆に奴の罠に嵌る」
「……わかった」リンカが頷く。
「戻って、力を整え直す。そういうことでしょ?」セレスが真剣な眼差しを向ける。
 ルミナスも腕を組み、珍しく真面目に頷いた。
「うん。ルミナスも賛成。本番はこれから」

 剣を腰に戻し、僕は小さく息を吐いた。
「必ず仕留める。その時は――僕たちの全てをぶつける」

 その誓いは、仲間たちの瞳に灯る光と重なり、静かな森に確かな決意を刻んでいった。

(ヴァルナ……必ず次は本体を見つけ出す。お前がどんな未来を見ていようと、僕たちはそれを断ち切る)

 夜風が梢を揺らし、木漏れ日がわずかに差し込む。
 そこに残るのは、戦いの余韻と、次なる決戦の予兆だった。
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