地味スキル「ためて・放つ」が最強すぎた!~出来損ないはいらん!と追い出したくせに英雄に駆け上がってから戻れと言われても手遅れです~

かくろう

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絶望の未来を断つ光

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 ルミナスが両腕を広げると、周囲の魔素が一気に引き寄せられた。
「炎! 氷! 風! 雷! ぜーんぶまとめて――ルミナスの大勝利!」

 瞬間、四つの属性が渦を巻き、僕らの視界を埋め尽くすほどの大爆発を起こした。
 風が森を裂き、雷が空を切り裂き、炎が樹々を焼き、氷が瞬時にそれを凍りつかせる。
 相反する力が同時に弾けたことで、爆風は制御不能のはずだった。

 だが――セレスの祈りがそれを束ねる。
「――《聖統合》!」
 光の結界が四属性をひとつの奔流にまとめ上げ、暴走を抑えながら敵へと直撃させた。

 轟音と共に大地が揺れ、ヴァルナの眼が一斉に軋むように蠢いた。
「ぐっ……ぐぉぉぉぉ……! これほどの干渉……“未来”が……見えん……!」

 リンカの矢がその隙を逃さず放たれ、光の雨となって突き刺さる。
「セージ君! 今なら……!」
「ああ!」

 僕は全身の力を込め、剣を振り抜いた。
「――《滅魔斬光連陣》ッ!」


 無数の斬撃が矢と魔法に重なり、森を覆う眼の群れを切り裂く。
 悲鳴がこだまし、ヴァルナの姿が霧散していった。

(やっぱり……一筋縄じゃいかないな。だが――確実に追い詰めている!)


 切り裂かれたはずの影が、なおも森の奥に濃く残っていた。
 霧のように崩れた粒子が逆流し、一本の黒い柱となって空へ伸びる。

「……まだ終わらぬ」

 低い声が大地を震わせた。
 霧の柱が形を取り戻すと、そこには――これまでの痩せ細った老人の影ではない。
 無数の眼が蠢く巨影。幹のように捩じれた肉体から、眼球が芽のように次々と生え出していた。


「これが本体……!」
 リンカが矢を握る手を強める。

 巨影の瞳が一斉にこちらを向いた瞬間、空気が押し潰されるように重くなる。
 呼吸するだけで喉が裂けそうだ。

「人間ども……幻影で楽しませてもらった……だが本当の絶望は、これからだ」

 ヴァルナ本体の声は、森そのものから響くようだった。
 次の瞬間、無数の眼が光を放つ。

「――《千眼断罪》」

 空間そのものが歪み、未来視に基づいた最適の斬撃と魔法が重ねて降り注いだ。
 矢の雨。剣の斬撃。雷撃と炎と氷の奔流――。
 すべてが「僕たちがこれまでに放ってきた攻撃」をなぞるように襲いかかる。

「くっ……僕たちの戦いを――再現してくるだと……!?」

 セレスが聖障壁を張るが、膨大な未来攻撃に押し潰され、光が軋む。
「このままでは……耐えきれません!」

 ルミナスが魔力を解き放つが、炎も氷も風も雷も同じだけの奔流に打ち消される。
「ルミナスの魔法まで……コピー!?」

 リンカの矢も、同じ矢で弾かれる。
「嘘……全部、跳ね返される……!」

 押し寄せる未来の奔流に、森そのものが崩れ落ちていく。
 枝が折れ、大地が裂け、空まで悲鳴を上げるかのようだ。

(……これが本体の力……! 今までのは、ただの囮だった……!)

 僕は剣を強く握り、必死に立ち向かった。

 未来をなぞる奔流が押し寄せる。
 森は裂け、地が崩れ、息をするだけで喉が潰れそうだ。

(このままじゃ、本当に押し潰される……!)

 剣を構え直した瞬間、背後からリンカの声が飛んだ。
「セージ君! だったら――まだ撃ったことのない矢を放てばいいんだよ!」

 彼女の弓がきらめく。
 これまで一度も使っていなかった、風の魔素を矢に宿す。

「――《蒼翔連破》!」

 矢が青い軌跡を描き、未来の映像にない一撃が奔った。
 ヴァルナの眼が一斉に軋み、未来像が乱れる。

「……想定外……!?」

 その隙を突くように、ルミナスが叫んだ。
「風! 雷! 氷も炎も混ぜて――ルミナスの本気!」

 四属性の魔力が渦を巻き、森全体を覆う奔流となる。
 炎と氷が相殺し、風と雷が走り抜け、複雑すぎる力が未来の再現を狂わせていく。

「……この魔力……読み切れない……!」

 ヴァルナの無数の眼が震えた。
 その瞬間、セレスが祈りを放つ。

「――《聖域結界》! 仲間の命は、光で守ります!」

 未来の再現に取り込まれた斬撃が、光に触れた途端に弱まり、霧のように消えていく。

(……そうだ……! 俺たちが未来を揺らせば、ヴァルナの力は崩れる……!)

 僕は剣を握り直し、仲間たちの背に声を重ねた。
「みんな、行くぞ! 想定外の未来を、この手で切り開くんだ!」

 仲間たちの気迫が森を震わせた。
 ヴァルナの全身に浮かぶ眼が、一斉にうねり声をあげる。

「無駄だ……! 未来はすでに決まって……」

 その言葉を遮るように、リンカの矢が空を裂いた。
 蒼き奔流が何本も連なり、ヴァルナの視界を覆い尽くす。

「――っ……! 映像が、乱れる!?」

 ヴァルナが叫ぶ。だがすぐに別の眼が未来を繋ぎ直そうと蠢いた。
 その瞬間、ルミナスが両手を振り下ろす。

「ルミナス・カルテット! 炎、氷、風、雷――まとめてドカーン!」

 四つの属性が絡み合い、複雑すぎる奔流となって森を駆け抜けた。
 あまりの干渉に、ヴァルナの未来再現が弾け飛ぶ。

「……馬鹿な……! これほどの属性干渉……視えぬ……!」

 さらにセレスが両手を胸に当て、祈りを解き放つ。
「――《聖域結界》! 闇に覆われた未来など、光で塗り替えてみせる!」

 仲間を飲み込もうとしていた未来像が、光に溶かされるように消え去っていく。

(……揺らいだ! 未来は、確定じゃない!)

 僕は剣を掲げ、全身の魔素をため込んだ。
 無数の光輪が刃の周囲に展開し、天を突くほどの輝きとなる。

「これが――俺たちが切り拓く未来だ!」

 剣を振り下ろす。

「――【神滅光輪陣】ッ!」

 光輪が幾重にも広がり、ヴァルナの身体を取り囲む。
 無数の眼が断末魔をあげ、次々と潰れていった。

「視えぬ……未来が……断たれていく……!」

 光が森を貫き、夜空へと駆け昇った。
 その一閃の果てに、ヴァルナの身体は崩れ落ち――光の粒子となって四散した。

 光の粒子が森に降り注ぎ、しばしの静寂が訪れた。
 僕は剣を握りしめたまま、荒い息を吐き出す。

(……やった……のか……?)

 ヴァルナの身体が霧散していく最後の瞬間、老人のような顔が不気味に歪み、かすれた声を残した。

「……七魔将の眼は……潰えぬ……ラミエル……血の翼が……お前たちを呑み込む……」

 その声が掻き消えると同時に、無数の眼が夜空に散っていった。
 星々に紛れるように消えた光は、不気味な余韻を残して森を覆う。

「ラミエル……?」
 思わず口にしたが、その名に心当たりはない。

 ルミナスが苛立つように肩をすくめた。
「名前だけ言い捨てて消えるとか、腹立つ。……最後まで燃やしてやりたかった」

 セレスは両手を胸の前で組み、震える声を漏らす。
「血の翼……次に現れる魔将のことなのでしょうか……」

 リンカも弓を握りしめ、険しい表情を浮かべる。
「やっぱり……まだ終わりじゃないんだね」

 森を吹き抜ける風が、重苦しい沈黙を運んでくる。
 僕は剣を収めながら仲間たちを見回した。

(ラミエル……その名が意味するものは分からない。だが、確実に次の戦いの火種になる……)

 ――戦いは終わっていない。むしろ、これからが本当の試練なのだ。
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