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胎動 ―― 暴食神核の覚醒
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風が止んでいた。
夜明けの光が砂を照らしはじめたというのに、空気が凍りついたように動かない。
メルダナの砂丘が微かに震えている――まるで、地の底で何かが“息をしている”ように。
「……おかしい」
リンカが弓を構えた。
銀の耳がぴくりと動く。
「地面の下、鼓動みたいな波動がある。……セージ君、これ、普通の魔物じゃない」
「祈祷陣の残滓、反応してる」
セレスが聖印を握りしめる。
淡い光が、まるで脈を打つように点滅していた。
「祈りが……何かを呼び起こしているようです」
胸の奥で、嫌な感覚が走った。
あの“喰う災厄”。
完全に消えたはずの気配が、また戻ってきている。
「ッ、みんな下がれ!」
叫ぶより早く、地面が爆ぜた。
砂柱が天へ突き上がり、光の中から巨大な影が姿を現す。
咆哮が空を裂いた。
「ガァァハハハハァッ!! 見つけたぞォ、セージィィィィィ!!」
現れたのは――あの“暴食のベロク”。
だが、姿が違う。
肉体の輪郭は黒砂に変わり、腹の裂け目から神聖な光が漏れている。
その光は“祈り”の輝きに似ていた。
「……どうなってる?」
僕が呟くと、リンカが目を細める。
彼女の瞳が淡く輝き、【分析】が発動した。
〈分析開始〉
対象:暴食のベロク
観測結果:神位結晶との融合反応を検知。
新種分類――暴食神核(ベル=ベロク)。
〈解析完了〉
「……セージ君、こいつ、もう“魔将”じゃない」
リンカが低く告げる。
「神の欠片を喰ってる。体内に“神位結晶”を取り込んで、存在そのものが変質してる」
「神位結晶を……喰った?」
セレスが息を呑んだ。
「黒砂の教団が祈祷陣に封じていた“神の欠片”――それが、ベロクの腹で目覚めたのです」
「おいおい、そんな高級なもんだったのかよ」
ベロクが笑う。
その声は地鳴りのように重く、空間そのものが揺れる。
「腹の中で暴れてやがるぜ……神の味ってやつは、クセが強ぇなァ!」
背から腕が伸びる。
四本だったはずの巨腕が、六本に増えていた。
掌の中心に眼がひとつずつ埋め込まれ、開くたびに光が漏れる。
「分析結果から言うと――あれは“祈り”そのものをエネルギー化してる」
リンカの声が緊張を帯びる。
「つまり、祈るほど喰われる。普通の魔力戦じゃ太刀打ちできないよ」
「……つまり、“祈り喰い”の神ってことか」
僕は息を整える。
「もう、災厄でも魔将でもない――“暴食神核《ベル=ベロク》”」
ベロクが咆哮した。
砂の大地が波打ち、空が反転する。
「見ろよォ、セージィ! 俺の腹はもう無限だ! この星ごと、腹の中で燃やしてやる!!」
大気が焼ける。
砂が浮き上がり、重力が歪む。
その存在は、もはや“世界そのもの”を喰らう神の顎だった。
「セージ様!」
セレスの聖印が悲鳴を上げる。
「祈りが……喰われていく! 人々の信仰が、今も吸い上げられています!」
「くそ……」
僕は剣を抜いた。
その瞬間、祈りの光が脈を打った。
〈祈りストック:8000/8000〉
〈魔力ストック:4000/4000〉
〈共鳴率:安定〉
ルミナスが指を鳴らす。
背に光炎の輪が灯った。
「セージ、今回は逃げない。喰う側を、燃やし尽くす」
「援護は任せて!」
リンカの弓が輝く。
「喰われる前に、撃ち抜く!」
僕は頷いた。
光が集まり、祈りが熱を持つ。
胸の奥で――確かに聞こえた。
奪われた祈りを、取り戻して。
砂が鳴動する。
暴食神核《ベル=ベロク》が咆哮し、世界を裂いた。
それは、神と人との“境界”を喰らう声。
「いくぞ――!」
僕は剣を構える。
炎と祈りと光が、一つに融けた。
神を喰らう者と、祈りを放つ者。
どちらが“正しさ”を残すのか。
砂の海が反転し、光が弾けた。
――暴食神核との最終決戦が、始まった。
太陽でも炎でもない――“祈り”が燃えている。
暴食神核《ベル=ベロク》が開いた口は、世界そのものを喰らおうとしていた。
その咆哮が響くたび、砂が宙へ舞い、空気が震える。
「……全部、飲み込む気かよ」
吐き出した息が、すぐに熱に呑まれた。
六本の巨腕が天を覆い、掌の“眼”が一斉にこちらを見据える。
そこから放たれる光線は、祈りそのものを分解する破壊の奔流。
「セージ君!」
リンカの声。弓弦の音が走る。
雷の矢が一条、空を裂いた――だが、その光は巨体の周囲に吸い込まれて消えた。
〈分析更新〉
対象:暴食神核(ベル=ベロク)
観測結果:外殻が“祈り吸収層”に変質。あらゆる属性攻撃を祈りごと吸収・同化。
〈解析補足:再生核に“神位因子”を確認。〉
「セージ君、ダメ! 外殻が完全に神位層化してる! 祈りごと吸われる!」
「つまり、今の俺たちの攻撃は“ごちそう”ってわけか」
吐き捨てるように言い、剣を構えた。
肌が焼けるような圧に包まれても、体の奥で“光”が脈打っている。
それは――セレスの祈り、仲間の想い、そして僕の決意。
〈祈りストック:8000/8000〉
〈共鳴率:安定〉
〈想念同期:良好〉
セレスの声が届いた。
「セージ様! “神位因子”……それは、かつて祈りを創った神々の残滓。 祈りで創られたなら、祈りでしか滅ぼせません!」
「祈りで、祈りを斬る……か」
胸の奥で、光が強くなった。
僕の中で、誰かの声が囁く。
“恐れるな。ためろ。受け止めろ。”
僕は剣を地に突き立て、深く息を吸った。
「――“ためる”」
〈祈りストック:限界突破 8000/8000 → 16000/16000〉
〈共鳴祈装:完全展開〉
世界が震える。
砂が浮き、光がねじれ、音が消える。
ルミナスの目が見開かれた。
「……セージ、それ、もう“人”のため方じゃない」
「それでも構わない」
僕は笑う。
「祈りを喰うなら、その何倍も祈ってやる」
光が爆ぜた。
六本の巨腕が一斉に振り下ろされる。
大地が裂け、空が崩れ落ちる。
その中心で、僕はただ一歩、前へ踏み出した。
夜明けの光が砂を照らしはじめたというのに、空気が凍りついたように動かない。
メルダナの砂丘が微かに震えている――まるで、地の底で何かが“息をしている”ように。
「……おかしい」
リンカが弓を構えた。
銀の耳がぴくりと動く。
「地面の下、鼓動みたいな波動がある。……セージ君、これ、普通の魔物じゃない」
「祈祷陣の残滓、反応してる」
セレスが聖印を握りしめる。
淡い光が、まるで脈を打つように点滅していた。
「祈りが……何かを呼び起こしているようです」
胸の奥で、嫌な感覚が走った。
あの“喰う災厄”。
完全に消えたはずの気配が、また戻ってきている。
「ッ、みんな下がれ!」
叫ぶより早く、地面が爆ぜた。
砂柱が天へ突き上がり、光の中から巨大な影が姿を現す。
咆哮が空を裂いた。
「ガァァハハハハァッ!! 見つけたぞォ、セージィィィィィ!!」
現れたのは――あの“暴食のベロク”。
だが、姿が違う。
肉体の輪郭は黒砂に変わり、腹の裂け目から神聖な光が漏れている。
その光は“祈り”の輝きに似ていた。
「……どうなってる?」
僕が呟くと、リンカが目を細める。
彼女の瞳が淡く輝き、【分析】が発動した。
〈分析開始〉
対象:暴食のベロク
観測結果:神位結晶との融合反応を検知。
新種分類――暴食神核(ベル=ベロク)。
〈解析完了〉
「……セージ君、こいつ、もう“魔将”じゃない」
リンカが低く告げる。
「神の欠片を喰ってる。体内に“神位結晶”を取り込んで、存在そのものが変質してる」
「神位結晶を……喰った?」
セレスが息を呑んだ。
「黒砂の教団が祈祷陣に封じていた“神の欠片”――それが、ベロクの腹で目覚めたのです」
「おいおい、そんな高級なもんだったのかよ」
ベロクが笑う。
その声は地鳴りのように重く、空間そのものが揺れる。
「腹の中で暴れてやがるぜ……神の味ってやつは、クセが強ぇなァ!」
背から腕が伸びる。
四本だったはずの巨腕が、六本に増えていた。
掌の中心に眼がひとつずつ埋め込まれ、開くたびに光が漏れる。
「分析結果から言うと――あれは“祈り”そのものをエネルギー化してる」
リンカの声が緊張を帯びる。
「つまり、祈るほど喰われる。普通の魔力戦じゃ太刀打ちできないよ」
「……つまり、“祈り喰い”の神ってことか」
僕は息を整える。
「もう、災厄でも魔将でもない――“暴食神核《ベル=ベロク》”」
ベロクが咆哮した。
砂の大地が波打ち、空が反転する。
「見ろよォ、セージィ! 俺の腹はもう無限だ! この星ごと、腹の中で燃やしてやる!!」
大気が焼ける。
砂が浮き上がり、重力が歪む。
その存在は、もはや“世界そのもの”を喰らう神の顎だった。
「セージ様!」
セレスの聖印が悲鳴を上げる。
「祈りが……喰われていく! 人々の信仰が、今も吸い上げられています!」
「くそ……」
僕は剣を抜いた。
その瞬間、祈りの光が脈を打った。
〈祈りストック:8000/8000〉
〈魔力ストック:4000/4000〉
〈共鳴率:安定〉
ルミナスが指を鳴らす。
背に光炎の輪が灯った。
「セージ、今回は逃げない。喰う側を、燃やし尽くす」
「援護は任せて!」
リンカの弓が輝く。
「喰われる前に、撃ち抜く!」
僕は頷いた。
光が集まり、祈りが熱を持つ。
胸の奥で――確かに聞こえた。
奪われた祈りを、取り戻して。
砂が鳴動する。
暴食神核《ベル=ベロク》が咆哮し、世界を裂いた。
それは、神と人との“境界”を喰らう声。
「いくぞ――!」
僕は剣を構える。
炎と祈りと光が、一つに融けた。
神を喰らう者と、祈りを放つ者。
どちらが“正しさ”を残すのか。
砂の海が反転し、光が弾けた。
――暴食神核との最終決戦が、始まった。
太陽でも炎でもない――“祈り”が燃えている。
暴食神核《ベル=ベロク》が開いた口は、世界そのものを喰らおうとしていた。
その咆哮が響くたび、砂が宙へ舞い、空気が震える。
「……全部、飲み込む気かよ」
吐き出した息が、すぐに熱に呑まれた。
六本の巨腕が天を覆い、掌の“眼”が一斉にこちらを見据える。
そこから放たれる光線は、祈りそのものを分解する破壊の奔流。
「セージ君!」
リンカの声。弓弦の音が走る。
雷の矢が一条、空を裂いた――だが、その光は巨体の周囲に吸い込まれて消えた。
〈分析更新〉
対象:暴食神核(ベル=ベロク)
観測結果:外殻が“祈り吸収層”に変質。あらゆる属性攻撃を祈りごと吸収・同化。
〈解析補足:再生核に“神位因子”を確認。〉
「セージ君、ダメ! 外殻が完全に神位層化してる! 祈りごと吸われる!」
「つまり、今の俺たちの攻撃は“ごちそう”ってわけか」
吐き捨てるように言い、剣を構えた。
肌が焼けるような圧に包まれても、体の奥で“光”が脈打っている。
それは――セレスの祈り、仲間の想い、そして僕の決意。
〈祈りストック:8000/8000〉
〈共鳴率:安定〉
〈想念同期:良好〉
セレスの声が届いた。
「セージ様! “神位因子”……それは、かつて祈りを創った神々の残滓。 祈りで創られたなら、祈りでしか滅ぼせません!」
「祈りで、祈りを斬る……か」
胸の奥で、光が強くなった。
僕の中で、誰かの声が囁く。
“恐れるな。ためろ。受け止めろ。”
僕は剣を地に突き立て、深く息を吸った。
「――“ためる”」
〈祈りストック:限界突破 8000/8000 → 16000/16000〉
〈共鳴祈装:完全展開〉
世界が震える。
砂が浮き、光がねじれ、音が消える。
ルミナスの目が見開かれた。
「……セージ、それ、もう“人”のため方じゃない」
「それでも構わない」
僕は笑う。
「祈りを喰うなら、その何倍も祈ってやる」
光が爆ぜた。
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大地が裂け、空が崩れ落ちる。
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