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帰還の光
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光の揺らぎが視界を満たした。
空気がひっくり返り、次の瞬間、足元の砂が石畳に変わる。
「……着いた。ルインハルド王城の転移陣、反応安定」
ルミナスが淡々と呟く。
光の粒子が彼女の指先から霧散していった。
砂の匂いが薄れ、代わりに懐かしい城下の風が頬を撫でる。
――ベロク討伐から五日。
メルダナでの再興を見届けた僕たちは、王国への報告と今後の協議のため、ルミナスの《リ・テレポ》で帰還した。
転移先の魔方陣には、すでに冒険者ギルドの迎えが来ていた。
「セージ殿――ご無事で!」
迎えの騎士が駆け寄り、膝をつく。
彼の肩には、メルダナ奪還の紋章が刻まれている。
「王が待っておられます。すぐに謁見の間へ」
◇◇◇
豪奢な扉が開き、陽光が差し込む。
玉座の間は戦時下にもかかわらず整えられ、王の威厳を保っていた。
だがその目には、深い疲労と覚悟が宿っていた。
「――セージ・タブリンス。
お前がザハルの地で“暴食の魔将”を討ったと聞いた。……真か?」
「はい、陛下。ベロクは二度にわたり変貌しましたが、最終的に討滅を確認しました」
僕は跪き、剣を胸の前に掲げる。
セレス、リンカ、ルミナス、そしてザハル王女リシェルも後ろに続いた。
王は彼女の姿を見て、わずかに眉を上げた。
「……お前がザハルの生き残りか」
「はい。リシェル=ザハルと申します。王家最後の者として、貴国のご恩に報いたく参りました」
「うむ……。王家が滅びたと聞いていたが、生き残りがいたとは。神の加護か、あるいは――」
「祈りの力です」
セレスが静かに口を開いた。
「彼女の祈りが、あの地を繋ぎ止めたのです」
王はしばし沈黙し、やがて頷いた。
「……良かろう。ザハル王国の復興は、我らの誇りにもなる。
リシェル王女よ、ルインハルドはそなたに庇護を約す。
そして――セージ・タブリンス、貴殿ら“奈落の希望”はこの国の盾として、再び力を貸してほしい」
「承知しました。陛下」
◇◇◇
謁見のあと、僕たちは王城を後にし、ギルド本部の報告室へ案内された。
石壁の中に灯るランプの光が、緊張した空気を照らしている。
ギルド長が、重たい地図を机に広げた。
各地の被害報告、モンスター出現記録、そして――新たな報せ。
それらの紙束を、彼は一枚ずつ整えながら口を開いた。
「……西方方面から異常な魔素の波が検出された。
まだ正確な数は掴めんが、百や二百の群れではない。
この国の境界、サブランディア平原のさらに西……湿原地帯の上空で、
魔力が“蠢いている”」
「湿原……」
リンカが小声で呟く。
瞳に淡い光が宿り、彼女のスキルが発動する。
【分析】――視界に浮かぶ情報が、線となって地図上を走った。
「この揺らぎ……単なるモンスター群じゃない。
波形が三つに分かれてる。しかも、それぞれ性質が違う」
「性質?」と僕。
「一つは冷気、もう一つは歪んだ時流、最後の一つは……圧壊に似た震動」
セレスがはっと顔を上げる。
「冷気……時流……そして圧壊。
――セレーネ、アルジーナ、ダゴン」
「推定、だけどね」
リンカは眉をひそめる。
「でも、三体が同時に動いたなら、それは偶然じゃない」
沈黙が落ちた。
部屋の灯がわずかに揺れ、窓の外で風が唸る。
「……彼らが、動いている」
僕は地図を見つめたまま呟いた。
「ベロクを倒したことで、均衡が崩れたんだ。
奴らは“人間の手に奈落を奪われた”と判断した。
だから――総力を出す」
ギルド長が拳を握りしめる。
「七魔将の連合か。……最悪の想定だ」
「けど」
リンカが穏やかに息をついた。
「私たちがここまで来られたのも、“想定外”の積み重ねだったでしょ」
僕は微笑んだ。
「そうだな。
想定外の戦い方なら、俺たちの方が上手い」
◇◇◇
謁見のあと、僕たちは王城を後にし、ギルド本部の報告室へ案内された。
石壁の中に灯るランプの光が、緊張した空気を照らしている。
ギルド長が重たい地図を机に広げた。
各地の被害報告、モンスター出現記録、そして――新たな報せ。
それらの紙束を、彼は一枚ずつ整えながら口を開いた。
「……西方方面から異常な魔素の波が検出された。
まだ正確な数は掴めんが、百や二百の群れではない。
この国の境界、サブランディア平原のさらに西――湿原地帯の上空で、
魔力が“蠢いている”」
「セージ様」
静かな声に振り向くと、セレスが立っていた。
その瞳には、祈りの光が宿っている。
「……あの地であなたが“祈り”をためてくれた瞬間、私も感じたんです。
あれは、ただの力ではありません。
人が“立ち上がる想い”そのもの」
「なら、その想いをまた集めよう」
僕は剣を抜き、月光を映した。
「七魔将が動くなら、俺たちも動く。
この光は、もう後戻りしない」
風が吹く。
ルミナスが隣に現れ、空を見上げた。
「……風、変わった。湿原の匂い」
「感じるのか?」
「うん。遠くの闇、ざわめいてる。……でも、負けない」
リンカが笑みを浮かべて肩をすくめた。
「じゃあ、準備しなきゃね。次は“ため”の勝負になる」
「だな」
セレスが胸の前で手を組む。
「祈りの力をもう一度――皆の想いを、あなたに」
僕は頷いた。
夜空の星々が瞬く。その光が、ほんの少しだけ近く見えた。
空気がひっくり返り、次の瞬間、足元の砂が石畳に変わる。
「……着いた。ルインハルド王城の転移陣、反応安定」
ルミナスが淡々と呟く。
光の粒子が彼女の指先から霧散していった。
砂の匂いが薄れ、代わりに懐かしい城下の風が頬を撫でる。
――ベロク討伐から五日。
メルダナでの再興を見届けた僕たちは、王国への報告と今後の協議のため、ルミナスの《リ・テレポ》で帰還した。
転移先の魔方陣には、すでに冒険者ギルドの迎えが来ていた。
「セージ殿――ご無事で!」
迎えの騎士が駆け寄り、膝をつく。
彼の肩には、メルダナ奪還の紋章が刻まれている。
「王が待っておられます。すぐに謁見の間へ」
◇◇◇
豪奢な扉が開き、陽光が差し込む。
玉座の間は戦時下にもかかわらず整えられ、王の威厳を保っていた。
だがその目には、深い疲労と覚悟が宿っていた。
「――セージ・タブリンス。
お前がザハルの地で“暴食の魔将”を討ったと聞いた。……真か?」
「はい、陛下。ベロクは二度にわたり変貌しましたが、最終的に討滅を確認しました」
僕は跪き、剣を胸の前に掲げる。
セレス、リンカ、ルミナス、そしてザハル王女リシェルも後ろに続いた。
王は彼女の姿を見て、わずかに眉を上げた。
「……お前がザハルの生き残りか」
「はい。リシェル=ザハルと申します。王家最後の者として、貴国のご恩に報いたく参りました」
「うむ……。王家が滅びたと聞いていたが、生き残りがいたとは。神の加護か、あるいは――」
「祈りの力です」
セレスが静かに口を開いた。
「彼女の祈りが、あの地を繋ぎ止めたのです」
王はしばし沈黙し、やがて頷いた。
「……良かろう。ザハル王国の復興は、我らの誇りにもなる。
リシェル王女よ、ルインハルドはそなたに庇護を約す。
そして――セージ・タブリンス、貴殿ら“奈落の希望”はこの国の盾として、再び力を貸してほしい」
「承知しました。陛下」
◇◇◇
謁見のあと、僕たちは王城を後にし、ギルド本部の報告室へ案内された。
石壁の中に灯るランプの光が、緊張した空気を照らしている。
ギルド長が、重たい地図を机に広げた。
各地の被害報告、モンスター出現記録、そして――新たな報せ。
それらの紙束を、彼は一枚ずつ整えながら口を開いた。
「……西方方面から異常な魔素の波が検出された。
まだ正確な数は掴めんが、百や二百の群れではない。
この国の境界、サブランディア平原のさらに西……湿原地帯の上空で、
魔力が“蠢いている”」
「湿原……」
リンカが小声で呟く。
瞳に淡い光が宿り、彼女のスキルが発動する。
【分析】――視界に浮かぶ情報が、線となって地図上を走った。
「この揺らぎ……単なるモンスター群じゃない。
波形が三つに分かれてる。しかも、それぞれ性質が違う」
「性質?」と僕。
「一つは冷気、もう一つは歪んだ時流、最後の一つは……圧壊に似た震動」
セレスがはっと顔を上げる。
「冷気……時流……そして圧壊。
――セレーネ、アルジーナ、ダゴン」
「推定、だけどね」
リンカは眉をひそめる。
「でも、三体が同時に動いたなら、それは偶然じゃない」
沈黙が落ちた。
部屋の灯がわずかに揺れ、窓の外で風が唸る。
「……彼らが、動いている」
僕は地図を見つめたまま呟いた。
「ベロクを倒したことで、均衡が崩れたんだ。
奴らは“人間の手に奈落を奪われた”と判断した。
だから――総力を出す」
ギルド長が拳を握りしめる。
「七魔将の連合か。……最悪の想定だ」
「けど」
リンカが穏やかに息をついた。
「私たちがここまで来られたのも、“想定外”の積み重ねだったでしょ」
僕は微笑んだ。
「そうだな。
想定外の戦い方なら、俺たちの方が上手い」
◇◇◇
謁見のあと、僕たちは王城を後にし、ギルド本部の報告室へ案内された。
石壁の中に灯るランプの光が、緊張した空気を照らしている。
ギルド長が重たい地図を机に広げた。
各地の被害報告、モンスター出現記録、そして――新たな報せ。
それらの紙束を、彼は一枚ずつ整えながら口を開いた。
「……西方方面から異常な魔素の波が検出された。
まだ正確な数は掴めんが、百や二百の群れではない。
この国の境界、サブランディア平原のさらに西――湿原地帯の上空で、
魔力が“蠢いている”」
「セージ様」
静かな声に振り向くと、セレスが立っていた。
その瞳には、祈りの光が宿っている。
「……あの地であなたが“祈り”をためてくれた瞬間、私も感じたんです。
あれは、ただの力ではありません。
人が“立ち上がる想い”そのもの」
「なら、その想いをまた集めよう」
僕は剣を抜き、月光を映した。
「七魔将が動くなら、俺たちも動く。
この光は、もう後戻りしない」
風が吹く。
ルミナスが隣に現れ、空を見上げた。
「……風、変わった。湿原の匂い」
「感じるのか?」
「うん。遠くの闇、ざわめいてる。……でも、負けない」
リンカが笑みを浮かべて肩をすくめた。
「じゃあ、準備しなきゃね。次は“ため”の勝負になる」
「だな」
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