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13回目 その3
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「続いて、“王命ダンス”の時間です!」
杏奈がスマホでワルツを流す。
「王様、右手は杏奈。左手は鈴音。背中はふわりちゃんに預けて。三拍子~“いち、に、さん”」
半歩、半歩、半歩。
右へスライド、左へターン。埃一つないほど綺麗なターンではない。けれど、笑い声が拍を刻んで、失敗すら音楽になる。
「れーじくん、上手~♡」
「ふ、踏みませんよ。ちゃんとついていきます」
「れー君、目は私だけ見て♡」
片手ずつ違う鼓動を持った温度に引かれて、俺は床の節目をなぞるように一歩を重ねる。
最後、音がすっと消えた瞬間、三人が同時にほっぺへ。
「「「おつかれさま♡」」」
頬がくすぐったくて、笑いがこぼれた。
◇◇◇
「トドメは“ささやき封書”。録音禁止、今夜だけの秘密ボイス」
杏奈が照れ笑いをひとつ落としてから、俺の耳へ唇を近づける。
「れー君、だいすき。……明日になっても、今日の“好き”は消えないから♡」
鼓膜に残る甘さが、背中へ糸を通すみたいに落ちていく。
ふわりは、息の温度からしてやさしい。
「れーじくん。わたしね、れーじくんの“疲れた”って顔、守りたいの。いーっぱい、包むから。覚悟してねぇ~♡」
大きな掌の気配が肩に落ち、体温がゆるむ。
鈴音は、言葉を選ぶ沈黙を一拍置いてから。
「レージ君。……鈴音の“好き”は、小さいけれど、けっして揺れません。いつでも、ここにあります」
耳たぶをかすめるくらい慎ましい距離。誇り高い敬語の奥に、真剣が宿っている。
俺は胸の中央へ、三つの声を折りたたむ。
なくならないメモのように、だけど誰にも見せない形で。
「さて! ポイント清算のお時間でーす!」
杏奈がホワイトボード(急に出てくる)に、☆印を乱舞させる。
「ふわりちゃん、王宮スパ+1、ティー+1、抱っこ税+1で合計3ポイント!」
「やったぁ~♡」
「鈴音は“護衛完遂”+“目隠しハンド正解アシスト”+“紋章王冠”で3ポイント!」
「恐縮です」
「そして私は“仕上げキス規定執行”+“ダンス進行”+“封書先陣”で3ポイント~!」
「全員3かよ」
「公平でしょ♡」
公平って便利な言葉だ。
「じゃ、交換スタート! 1pt:手つなぎ散歩(家の中)、2pt:王様の全力ぎゅー30秒、3pt:『だいすき』耳もと宣言(おかわり)、どれにする?」
「わたしは“ぎゅー”~♡」
ふわりが手を挙げる。背後に回り、時計を見せながら、30秒間、ほんとに全力で包む。
柔らかくて、でも芯がある抱擁。背骨の一本一本が丁寧に解凍されていくみたいだった。
「はい、30秒~……おまけの5秒♡」
「不正加点です!」
「よいのです~」
甘い独裁が、一番やさしい。
「鈴音は……手つなぎ散歩、お願いします」
「承りました」
廊下からキッチンへ、テーブルを一周、窓辺で止まって外の星を見上げる。
指先が緊張で固まっているのに、途中から、すこし溶けた。
「……あの、手汗が……」
「気にするな。俺も出てる」
笑い合うだけの十歩。けれど、心の中では、何千歩も前へ進んだ気がした。
「杏奈はもちろん――“『だいすき』耳もと宣言(おかわり)”」
「うん、取りに行く♡」
椅子の背に膝を乗せ、俺を見下ろす角度で、耳へ口を寄せる。
「れー君、だいすき。いちど言った“好き”は、毎日増量するからね♡」
シロップみたいな声で、さらりと宣戦布告。
体内の甘味度が規定値オーバーになり、俺は天井を仰いだ。
「……糖度、違反」
「逮捕して?♡」
その一言で、膝から力が抜けた。
「最後に、今日の締め~。“王室家事の達人”!」
杏奈がキッチンタイマーを置く。
「王様は“ただいま”ってリビングで座ってて。私達が“おかえり”を完成させるから、3分で感動させます!」
ふわりはエプロンを締め、鈴音はタオルと消臭スプレー、杏奈はスマホで照明を調整。
「よーい……スタート!」
ふわりがキッチンに滑り込み、お湯を沸かす音。マグにインスタントのスープパックを落とす手際。
「れーじくん、玉ねぎの甘い香りするよぉ~♡」
鈴音は窓を少し開け、風の通り道を作る。ラグの埃をコロコロで撫で、クッションを3つ三角形に整列。
「はい、王様の玉座、完了」
杏奈はカーテンを二段階で閉め、テーブルライトの色温度を少し下げた。
「20時の黄昏、完成♡」
3分のチャイム。
「王様、“おかえり”の儀式です」
三人が入口に並び、いっせいに笑顔で両手を広げる。
「「「おかえり♡」」」
膝が、また少しゆるんだ。
ふわりがマグを渡し、鈴音がタオルを肩へかけ、杏奈が前髪を指で整える。
何も特別じゃない動作が、ただもう、最高に特別だった。
「第13回・延長戦、これにて閉廷~♡」
杏奈が両腕で大きな円を描き、ふわりと鈴音も手を重ねる。
「王様、満足度は?」
「満点。……オーバーランしてる」
素直に答えると、三人の頬が同時にほどけた。
ベッドに腰かけ、四人で肩を寄せ合う。
右に杏奈、左に鈴音、背後からふわり。
「ねぇれー君、今日の“紋章”、ほんとに飾ってね」
「わたし、フレーム買ってくる~」
「埃、鈴音が毎週払います」
「お前ら……ほんと、頼もしいな」
言い終えるより先に、三つの唇が、ほっぺ・額・こめかみにそっと降りた。
こうして第13回は、“静かな甘さ”で二度目の幕を閉じた。
眠る前、電気を落とした暗がりで、誰かの手が俺の手を探す。
絡めた指は、最後までほどけなかった。
~ゲーム13回目 終了~
杏奈がスマホでワルツを流す。
「王様、右手は杏奈。左手は鈴音。背中はふわりちゃんに預けて。三拍子~“いち、に、さん”」
半歩、半歩、半歩。
右へスライド、左へターン。埃一つないほど綺麗なターンではない。けれど、笑い声が拍を刻んで、失敗すら音楽になる。
「れーじくん、上手~♡」
「ふ、踏みませんよ。ちゃんとついていきます」
「れー君、目は私だけ見て♡」
片手ずつ違う鼓動を持った温度に引かれて、俺は床の節目をなぞるように一歩を重ねる。
最後、音がすっと消えた瞬間、三人が同時にほっぺへ。
「「「おつかれさま♡」」」
頬がくすぐったくて、笑いがこぼれた。
◇◇◇
「トドメは“ささやき封書”。録音禁止、今夜だけの秘密ボイス」
杏奈が照れ笑いをひとつ落としてから、俺の耳へ唇を近づける。
「れー君、だいすき。……明日になっても、今日の“好き”は消えないから♡」
鼓膜に残る甘さが、背中へ糸を通すみたいに落ちていく。
ふわりは、息の温度からしてやさしい。
「れーじくん。わたしね、れーじくんの“疲れた”って顔、守りたいの。いーっぱい、包むから。覚悟してねぇ~♡」
大きな掌の気配が肩に落ち、体温がゆるむ。
鈴音は、言葉を選ぶ沈黙を一拍置いてから。
「レージ君。……鈴音の“好き”は、小さいけれど、けっして揺れません。いつでも、ここにあります」
耳たぶをかすめるくらい慎ましい距離。誇り高い敬語の奥に、真剣が宿っている。
俺は胸の中央へ、三つの声を折りたたむ。
なくならないメモのように、だけど誰にも見せない形で。
「さて! ポイント清算のお時間でーす!」
杏奈がホワイトボード(急に出てくる)に、☆印を乱舞させる。
「ふわりちゃん、王宮スパ+1、ティー+1、抱っこ税+1で合計3ポイント!」
「やったぁ~♡」
「鈴音は“護衛完遂”+“目隠しハンド正解アシスト”+“紋章王冠”で3ポイント!」
「恐縮です」
「そして私は“仕上げキス規定執行”+“ダンス進行”+“封書先陣”で3ポイント~!」
「全員3かよ」
「公平でしょ♡」
公平って便利な言葉だ。
「じゃ、交換スタート! 1pt:手つなぎ散歩(家の中)、2pt:王様の全力ぎゅー30秒、3pt:『だいすき』耳もと宣言(おかわり)、どれにする?」
「わたしは“ぎゅー”~♡」
ふわりが手を挙げる。背後に回り、時計を見せながら、30秒間、ほんとに全力で包む。
柔らかくて、でも芯がある抱擁。背骨の一本一本が丁寧に解凍されていくみたいだった。
「はい、30秒~……おまけの5秒♡」
「不正加点です!」
「よいのです~」
甘い独裁が、一番やさしい。
「鈴音は……手つなぎ散歩、お願いします」
「承りました」
廊下からキッチンへ、テーブルを一周、窓辺で止まって外の星を見上げる。
指先が緊張で固まっているのに、途中から、すこし溶けた。
「……あの、手汗が……」
「気にするな。俺も出てる」
笑い合うだけの十歩。けれど、心の中では、何千歩も前へ進んだ気がした。
「杏奈はもちろん――“『だいすき』耳もと宣言(おかわり)”」
「うん、取りに行く♡」
椅子の背に膝を乗せ、俺を見下ろす角度で、耳へ口を寄せる。
「れー君、だいすき。いちど言った“好き”は、毎日増量するからね♡」
シロップみたいな声で、さらりと宣戦布告。
体内の甘味度が規定値オーバーになり、俺は天井を仰いだ。
「……糖度、違反」
「逮捕して?♡」
その一言で、膝から力が抜けた。
「最後に、今日の締め~。“王室家事の達人”!」
杏奈がキッチンタイマーを置く。
「王様は“ただいま”ってリビングで座ってて。私達が“おかえり”を完成させるから、3分で感動させます!」
ふわりはエプロンを締め、鈴音はタオルと消臭スプレー、杏奈はスマホで照明を調整。
「よーい……スタート!」
ふわりがキッチンに滑り込み、お湯を沸かす音。マグにインスタントのスープパックを落とす手際。
「れーじくん、玉ねぎの甘い香りするよぉ~♡」
鈴音は窓を少し開け、風の通り道を作る。ラグの埃をコロコロで撫で、クッションを3つ三角形に整列。
「はい、王様の玉座、完了」
杏奈はカーテンを二段階で閉め、テーブルライトの色温度を少し下げた。
「20時の黄昏、完成♡」
3分のチャイム。
「王様、“おかえり”の儀式です」
三人が入口に並び、いっせいに笑顔で両手を広げる。
「「「おかえり♡」」」
膝が、また少しゆるんだ。
ふわりがマグを渡し、鈴音がタオルを肩へかけ、杏奈が前髪を指で整える。
何も特別じゃない動作が、ただもう、最高に特別だった。
「第13回・延長戦、これにて閉廷~♡」
杏奈が両腕で大きな円を描き、ふわりと鈴音も手を重ねる。
「王様、満足度は?」
「満点。……オーバーランしてる」
素直に答えると、三人の頬が同時にほどけた。
ベッドに腰かけ、四人で肩を寄せ合う。
右に杏奈、左に鈴音、背後からふわり。
「ねぇれー君、今日の“紋章”、ほんとに飾ってね」
「わたし、フレーム買ってくる~」
「埃、鈴音が毎週払います」
「お前ら……ほんと、頼もしいな」
言い終えるより先に、三つの唇が、ほっぺ・額・こめかみにそっと降りた。
こうして第13回は、“静かな甘さ”で二度目の幕を閉じた。
眠る前、電気を落とした暗がりで、誰かの手が俺の手を探す。
絡めた指は、最後までほどけなかった。
~ゲーム13回目 終了~
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