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振替休日の朝ってさ、なんでこんなに空気が軽いんだろ。
カレンダーは平日っぽい顔してるくせに、街のテンポは休日モード。時計の針もゆっくり進んでる気がして、聞こえてくる足音までのんびりしてる。こういうギャップ、めっちゃ好きなんだよなぁ。
待ち合わせは駅前の噴水。俺、五分前に着いて「今日は早いぞ」なんてちょっとドヤ顔してたんだけど――はい、もう三人揃ってました。おいおい、早すぎない?ほんとこの三人、集合の概念に強すぎる。俺の“ちょい早”は、まったく意味をなしてなかった。
「れー君、おはよう♡ 今日は“王宮デート出張版”、やりますっ」
杏奈が一歩前に出てくる。水色のカーディガンに薄デニム、軽いスニーカー。動きやすいし写真も映えるし、ほんと抜け目ないな。これぞ杏奈クオリティ。
「れーじくん~、お弁当持ってきたよ~。お昼は“外ピクニック”ねぇ~」
ふわりは桃色のふわっとしたワンピース。195センチのシルエットが朝の光に溶けてて、もうそれだけで安心度が二段階くらい跳ね上がるんだよな。毎回思うけど存在が癒やし。
「レージ君、行程表を作成しました。カフェ、雑貨屋、公園ピクニック、本屋、プリクラ、最後は夕景。変更は柔軟に対応します」
鈴音は黄色のシュシュでポニテ、ジャケットまできっちり。参謀って単語が似合う高校生、そうそういないだろ。
「じゃあさ、出発式だけやっとく?」
杏奈が合図して、俺たち四人で小さく円になる。人目はあるはずなのに、ここだけは完全に別世界。
「「「王様れーじ君♡♡♡」」」
小声なのに、心臓だけ全力疾走。……うん、今日も調子いい。
◇◇◇
窓辺の席を確保。行き交う人や車が横スクロールの映像みたいに流れてくのを眺めながら、俺たちだけ休日の空気を吸い込む。外は平日、ここは休日。この境界感が気持ちいいんだ。
「れー君、ここで糖分チャージしよ♡」
杏奈がメニューを広げて、上目づかいでこっちを覗く。……その顔されると判断力落ちるんだよ、俺。
「レージ君は、シナモン少なめ、ミルク多め。季節のラテを推奨します」
ほら出た。俺専用の味覚データベース。更新され続ける系。
「れーじくんは、パンケーキにフルーツ増し増しだねぇ~」
あーもう、それで確定か。逃げ道ない。でも結局ハッピーになるからありがたい。
運ばれてきたラテは湯気がきれいに立ち上がってて、それだけで落ち着く。ひと口飲んで――はい、優勝。
「うまい」って言った瞬間、三人の顔が同時に“やった”って形になんの、ほんと反則だわ。
パンケーキ?もちろんフォークが三方向から狙ってくる仕様です。
「れー君、“最初の一口”は私があーん♡」
「れーじくん、“二口目”はわたしの追いあーんねぇ~」
「レージ君、“口直し”は鈴音の担当です」
はいはい、分業体制完璧。これ、どこの会議室で決まってんの?絶対「王宮会議」常設されてるだろ。
窓の外じゃスーツ姿の人が小走りで通り過ぎてく。完全に平日の顔。でも俺のテーブルは休日。コントラスト勝ちすぎで、ラテがさらに甘く感じる。環境補正、恐るべし。
◇◇◇
駅近の雑貨屋に入った瞬間、三人同時に立ち止まる。
「見て、れー君。水色・桃・黄色のコーナー、並んでる!」
ほんとだ。店員さん、俺たちの内通者?ってくらいの色配置。こういう偶然って無駄にテンション上がるんだよな。
「れー君、これ似合う?」
杏奈が水色のヘアピンをこめかみに当てる。即答で「似合う」って言ったら「ちゃんと見て♡」って一歩詰めてくる。近い近い、呼吸混ざる距離はやめて心拍数乱れるから!
「れーじくん、こっちは“桃色のハンカチ”~。お弁当に添えると映えるよぉ~」
ふわりはもう使用シーンまで想像済み。現場と写真、両立してくるのずるい。
「レージ君、こちら“黄色の小さな星のブローチ”。通学鞄の裏側に付けると“内緒の目印”になります」
……それは買うしかない。四人で目を合わせて、こっそり頷いて即レジ。秘密の合図がまた一個増えた。学校に隠れ王宮、完成。
◇◇◇
川沿いの公園でシート広げた瞬間、風の機嫌がいいのが分かる。
「れーじくん、はい、オープン~」
ふわりが弁当のふたを開けた瞬間に、もう確信する。これ絶対美味いやつ。
おにぎりの丘、唐揚げの黄金、ふわふわ卵焼き、赤と緑のアクセント。配色が教科書みたい。
「お店?」って本気で口から出た。
「れー君、“一番最初の一個”はどれ?」
杏奈が目をキラキラさせる。こういう時の杏奈、俺の“好き”を当ててくる率めちゃくちゃ高いんだよな。
「レージ君、梅、鮭、昆布、ツナマヨ。正確に選んでください」
「ツナマヨ」
「はいっ、ツナマヨ一、発進~♡」
ふわりの「発進」で味まで軽くなるの、謎すぎる。外で食う米って、なんでこんなに美味いんだろうな。
◇◇◇
……この後も雑貨屋、本屋、プリクラ、夕景まで全部回って、王宮新聞やアルバムも更新。
俺は何度も思った。今日が満点だって。
駅までの帰り道。右に水色、左に黄色、背中に桃色。四人並んで歩くだけで信号の青になるタイミングが味方する。たまたま?いや、王宮補正ってことにしておこう。
振替休日は満点。明日からの日常も、この“王宮の歩幅”で歩いていけば、ちゃんと真ん中に立てる――立たせてもらえる。
そう思うだけで、帰り道の空気がひと口ぶんくらい甘くなった気がした。
カレンダーは平日っぽい顔してるくせに、街のテンポは休日モード。時計の針もゆっくり進んでる気がして、聞こえてくる足音までのんびりしてる。こういうギャップ、めっちゃ好きなんだよなぁ。
待ち合わせは駅前の噴水。俺、五分前に着いて「今日は早いぞ」なんてちょっとドヤ顔してたんだけど――はい、もう三人揃ってました。おいおい、早すぎない?ほんとこの三人、集合の概念に強すぎる。俺の“ちょい早”は、まったく意味をなしてなかった。
「れー君、おはよう♡ 今日は“王宮デート出張版”、やりますっ」
杏奈が一歩前に出てくる。水色のカーディガンに薄デニム、軽いスニーカー。動きやすいし写真も映えるし、ほんと抜け目ないな。これぞ杏奈クオリティ。
「れーじくん~、お弁当持ってきたよ~。お昼は“外ピクニック”ねぇ~」
ふわりは桃色のふわっとしたワンピース。195センチのシルエットが朝の光に溶けてて、もうそれだけで安心度が二段階くらい跳ね上がるんだよな。毎回思うけど存在が癒やし。
「レージ君、行程表を作成しました。カフェ、雑貨屋、公園ピクニック、本屋、プリクラ、最後は夕景。変更は柔軟に対応します」
鈴音は黄色のシュシュでポニテ、ジャケットまできっちり。参謀って単語が似合う高校生、そうそういないだろ。
「じゃあさ、出発式だけやっとく?」
杏奈が合図して、俺たち四人で小さく円になる。人目はあるはずなのに、ここだけは完全に別世界。
「「「王様れーじ君♡♡♡」」」
小声なのに、心臓だけ全力疾走。……うん、今日も調子いい。
◇◇◇
窓辺の席を確保。行き交う人や車が横スクロールの映像みたいに流れてくのを眺めながら、俺たちだけ休日の空気を吸い込む。外は平日、ここは休日。この境界感が気持ちいいんだ。
「れー君、ここで糖分チャージしよ♡」
杏奈がメニューを広げて、上目づかいでこっちを覗く。……その顔されると判断力落ちるんだよ、俺。
「レージ君は、シナモン少なめ、ミルク多め。季節のラテを推奨します」
ほら出た。俺専用の味覚データベース。更新され続ける系。
「れーじくんは、パンケーキにフルーツ増し増しだねぇ~」
あーもう、それで確定か。逃げ道ない。でも結局ハッピーになるからありがたい。
運ばれてきたラテは湯気がきれいに立ち上がってて、それだけで落ち着く。ひと口飲んで――はい、優勝。
「うまい」って言った瞬間、三人の顔が同時に“やった”って形になんの、ほんと反則だわ。
パンケーキ?もちろんフォークが三方向から狙ってくる仕様です。
「れー君、“最初の一口”は私があーん♡」
「れーじくん、“二口目”はわたしの追いあーんねぇ~」
「レージ君、“口直し”は鈴音の担当です」
はいはい、分業体制完璧。これ、どこの会議室で決まってんの?絶対「王宮会議」常設されてるだろ。
窓の外じゃスーツ姿の人が小走りで通り過ぎてく。完全に平日の顔。でも俺のテーブルは休日。コントラスト勝ちすぎで、ラテがさらに甘く感じる。環境補正、恐るべし。
◇◇◇
駅近の雑貨屋に入った瞬間、三人同時に立ち止まる。
「見て、れー君。水色・桃・黄色のコーナー、並んでる!」
ほんとだ。店員さん、俺たちの内通者?ってくらいの色配置。こういう偶然って無駄にテンション上がるんだよな。
「れー君、これ似合う?」
杏奈が水色のヘアピンをこめかみに当てる。即答で「似合う」って言ったら「ちゃんと見て♡」って一歩詰めてくる。近い近い、呼吸混ざる距離はやめて心拍数乱れるから!
「れーじくん、こっちは“桃色のハンカチ”~。お弁当に添えると映えるよぉ~」
ふわりはもう使用シーンまで想像済み。現場と写真、両立してくるのずるい。
「レージ君、こちら“黄色の小さな星のブローチ”。通学鞄の裏側に付けると“内緒の目印”になります」
……それは買うしかない。四人で目を合わせて、こっそり頷いて即レジ。秘密の合図がまた一個増えた。学校に隠れ王宮、完成。
◇◇◇
川沿いの公園でシート広げた瞬間、風の機嫌がいいのが分かる。
「れーじくん、はい、オープン~」
ふわりが弁当のふたを開けた瞬間に、もう確信する。これ絶対美味いやつ。
おにぎりの丘、唐揚げの黄金、ふわふわ卵焼き、赤と緑のアクセント。配色が教科書みたい。
「お店?」って本気で口から出た。
「れー君、“一番最初の一個”はどれ?」
杏奈が目をキラキラさせる。こういう時の杏奈、俺の“好き”を当ててくる率めちゃくちゃ高いんだよな。
「レージ君、梅、鮭、昆布、ツナマヨ。正確に選んでください」
「ツナマヨ」
「はいっ、ツナマヨ一、発進~♡」
ふわりの「発進」で味まで軽くなるの、謎すぎる。外で食う米って、なんでこんなに美味いんだろうな。
◇◇◇
……この後も雑貨屋、本屋、プリクラ、夕景まで全部回って、王宮新聞やアルバムも更新。
俺は何度も思った。今日が満点だって。
駅までの帰り道。右に水色、左に黄色、背中に桃色。四人並んで歩くだけで信号の青になるタイミングが味方する。たまたま?いや、王宮補正ってことにしておこう。
振替休日は満点。明日からの日常も、この“王宮の歩幅”で歩いていけば、ちゃんと真ん中に立てる――立たせてもらえる。
そう思うだけで、帰り道の空気がひと口ぶんくらい甘くなった気がした。
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