前世ゲーマーの俺、最悪の寝取られルートをハッピー学園ラブに改造中

かくろう

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第1章 鬱ゲー転生で即決断

第1話「幼馴染の告白、俺は迷わない」

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 ――視界がぐにゃりと歪んだ。
 次の瞬間、俺は知らない天井を見上げていた。

 いや、正確には「知らないはずの天井」だ。
 白く塗られた石膏の天井、蛍光灯の安っぽい光、どこにでもある学園の教室。
 だけど――俺は一目で理解してしまった。

(……ここ、知ってる。間違いない……『クロスフェイト・メモリーズ』の世界だ)

 体が冷たくなる。
 思い出すのはあのゲームのこと。見た目は普通の学園ラブコメなのに、ヒロインが理不尽に寝取られる――悪名高き“鬱ゲー”。
 ネットで散々叩かれた、俺自身もプレイしては後悔した作品。

 そして、ここは冒頭イベント……。
 窓から差し込む夕焼けの角度、聞こえてくる運動部の掛け声。すべてがゲームの記憶と一致している。
 つまり、このあと必ず“あの告白イベント”が始まる。

(クソッ、よりによってそこからスタートかよ……!)

 心臓が跳ねた。
 正ヒロイン、結城真白。幼馴染で、黒髪清楚で、誰よりも真っ直ぐな子。プレイヤー人気も高かったのに――彼女は絶対に報われなかった。
 俺が知る限り、どのルートでも途中で奪われ、泣き崩れる結末しかなかった。

 その涙のCGが脳裏に浮かんで、胃の奥がねじれる。
 あの絶望を、もう一度見せられるのか? いや、俺自身が“あの主人公”として彼女を傷つける役割を負うのか?

 耐えられない。そんなのはまっぴらごめんだ。

 けれど――胸の奥で、別の感情が沸き上がる。
 それは怒りでも絶望でもなく、もっと単純で強い衝動。

(違う……俺がやる。俺が、彼女を救う)

 ここに来てしまった理由はわからない。
 
 だけど、ひとつだけ確かにわかる。

 ――俺がこの世界に生まれ直したのは、“悲劇をひっくり返すため”。

 拳を握る。震えるほどの決意が、指先から全身へと広がった。
 この先、どんなイベントが待ち受けていようと構わない。絶対に真白を守る。絶対に彼女を泣かせない。

(よし……運命をぶっ壊してやる。ここから俺の物語を始めるんだ)

 そう誓った瞬間、チャイムが鳴り響き、俺の「第二の人生」の幕が上がった。


 放課後の校舎裏。
 夕焼けに染まる校舎の壁は真っ赤に燃え立つようで、世界のすべてが彼女と俺を照らす舞台装置になったかのようだった。運動部の掛け声や笛の音も遠くに聞こえるが、意識は一点――目の前の彼女だけに集中していた。

「……わ、わたし……ずっと前から、あなたのことが好きだったの!」

 その瞬間、胸の奥が大きく揺さぶられる。
 幼馴染の真白の声は、震えていた。けれど確かに俺の心臓を撃ち抜いてくる。鼓動が速くなり、血が駆け上がって顔が熱くなる。

 黒髪が風に流され、ふわりと俺の視界を覆う。陽光を反射して宝石のように輝くその一房ごとに、過ごしてきた時間が甦った。夏祭りで並んだ屋台、雨の日に分け合った傘、机に並んで勉強した夜――そのすべてが一瞬で胸を満たしていく。


(やっぱりだ。ゲームの通り。そして俺は自分の意思で物事を決められる!)

 彼女の大きな瞳が揺れる。涙が零れそうになりながらも、必死に俺を見つめ続けている。――それは懇願にも似た眼差しだった。「どうか拒まないで」と、その目が訴えているのを俺は痛いほど感じた。

 風に揺れる黒髪。腰まで伸びたストレートは夕陽を反射してきらめき、まるで舞台に差すスポットライトのようにその存在を際立たせていた。けれど、俺の視線は外見の美しさよりも、彼女の心の内側に釘付けになっていた。

 ――怖かったのだろう。
 頬は赤く染まり、唇はかすかに震えている。今にも「やっぱり言えない」と引っ込めてしまいそうな危うさを感じた。けれど、それでも真白は退かなかった。

 その勇気を知っている。
 普段の彼女は誰にでも優しく、気配りができて、学園でも憧れの的。けれど――そうやって笑顔でみんなと接してきた裏で、この想いだけは隠し続けてきたのだ。幼馴染という関係に甘えながら、踏み込む勇気を何度も飲み込んできたはずだ。

 その時間の長さを、俺は知っている。
 プリントを届けてくれたときの照れくさそうな顔。夏祭りの夜、花火を見上げながらも時折俺を盗み見していた視線。風邪をひいて寝込んでいた俺の布団の横で、何か言いかけて飲み込んだ言葉。
 ――全部、今この一言に込められていたんだ。


 胸が締め付けられる。俺は知っている。
 本来ならここで断るのが“シナリオ”だった。
 この世界はあの忌まわしいゲーム――『クロスフェイト・メモリーズ』の中。清楚で真っ直ぐな正ヒロインが、無情な運命に弄ばれる舞台。俺が転生してきた世界。

(……ふざけんな。そんな未来、絶対に認めない)

 背筋を走る怒りは、過去のプレイヤーとしての記憶から来ていた。
 あのCG、あの泣き崩れる真白の姿。コントローラーを握り潰したくなるほどの悔しさ。理不尽に奪われる彼女を何度見せられたことか。


 けれど今、目の前の真白は生身の少女として、勇気を振り絞って俺に想いをぶつけている。震える声も、涙をこらえる唇も、全部が本物だった。これはシナリオじゃない。彼女の心からの叫びだ。

 俺の中に迷いは消えた。
 本来の“主人公”がやらかしたような、未熟な照れ隠しも後ろ向きな拒絶も、もう一切必要ない。ここで踏み出さなければ、俺が俺である意味がない。

「……ああ」

 言葉が自然に零れた。胸の奥から、湧き上がるように。

「俺も、真白が好きだ」

 その一言を口にした瞬間、全身の力が抜けるような安堵と、同時に腹の底から湧く確信があった。これで未来は変わる。絶対に。

「え……」

 声にならない声が零れる。
 頬を伝う涙は、悲しみのものじゃない。長い間抑えてきた想いが報われたからこその涙だ。

「だから――これからは、俺の彼女になってくれ」

 俺の言葉に、真白の肩が小さく震えた。彼女は唇を噛み、涙をこぼしながらも――それ以上に眩しい笑顔を浮かべた。
 真白の表情が一瞬止まり、次の瞬間には涙を浮かべながらも花が咲くように笑った。頬が紅潮し、光に満ちた笑顔――それは、ゲームでは決して描かれなかった“唯一の正解”の表情だった。

(よし……これでバッドエンドは、もう絶対に来ない)

 拳を握る。胸に広がるのは勝利の実感。
 俺が選んだ言葉は、彼女を救い、この世界そのものを救ったのだと。

 真白の声が震えながら俺の耳に届く。
「……っ、うんっ!!」

 その瞬間、俺は悟った。
 これはもう“シナリオ”なんかじゃない。
 俺と真白の物語だ。彼女が勇気を振り絞って差し出した想いを、俺が全力で受け止める。そうやって二人で進んでいくんだ。

(絶対に守る。二度と、誰にも泣かせたりしない)

 胸に誓いを刻む。
 彼女がくれた勇気に応えるために、俺はこの世界で戦う。悲劇を“ラブコメ”に塗り替えるために。
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