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町の散策と、出会い

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「私は戻ってきたぁー」

『おかえり』
『わこつ』
『888』
『早かったね』

 再びやってまいりました、Infinite creationの世界。
 前回リスポーンし、ログアウトした地点である教会の前からの再開だ。

「ありがとー。カナと話して、今日はデスペナ有るし一人で街探索することになったんだ」

『なるほど』
『デスペナってなんだっけ』
『ですぺなるてぃ』
『それは知っとるw 』
『Death Penalty』
『お前らわざとだな!?』

「いや、みんな連携力高すぎない?」

『どや』
『それほどでもある』
『今ゲームにおいては2時間の全ステータス半減と経験値取得不可やね』
『唐突なちゃんとした解説で草』

 おふざけ一色かに思われたコメント欄に、唐突に現れる真面目な回答。
 この読めなさが、楽しい。

「あはは、まあそういうことなんで、外には出ずに歩き回るよ~!」

 さて、街を探索とは言うものの、どこに行こうか。
 昼間はギルドに寄ってからすぐに出てしまったので、実際のところ街の殆どは未開拓……ということになる。

 位置関係としては、街のど真ん中に中央広場。そこから少し南に行ったところにリスポーン地点でもある教会があって、ギルドは真逆、北の通りだ。

「北の通りは露店が多かった印象あるな……今ちょっと南寄りにいるんだし、とりあえず南側見てみよっか」

『賛成』
『さて何をやらかしてくれるのか』
『目が離せません』

「なんでやらかす前提なの!?」

『自分の胸に手を当てて』
『今日の出来事思い出して』
『心当たり、ないか?』

「うっ…………ある、かも…………」

『いや負けないで?』
『ちょろくて草』
『コメントに負ける配信者』
『素直がすぎる』

「ぐ……納得いかない…………」

 どうも手玉に取られている気がして、釈然としない。
 けどまぁ、反応を見ている感じだとみんな好意的なんだよね……配信ってこういうものだっけ。
 カナはもっとこう、かっこいい感じなんだけどな。

 まぁ、いいさ。気を取り直して、南通りへ。
 屋台が多かった北通りと比べると、こちらは店舗っていえば良いのかな、普通の店が多い印象。

「お。あれは武器屋じゃない?ちょっと興味あるね」

『使わないじゃん』
『なんなら装備すらしないじゃん』
『武器&盾=インベントリの肥やし』

「むーー、わかってるよう。でも、私は良いにしても、皆よく上手に剣とか扱えるよね。
 いちおう最初の戦闘で使ってはみたんだけど、全然当たる気がしなくてさ……」

『そう?』
『たしかに速い敵相手だと難しめかもしれないけど』
『それアシスト切れてるからじゃない?』

「アシスト?」

『流石に素人にいきなり剣や盾使わせたって使いこなせないっていうところから、このゲームにはシステムアシストが実装されてる』
『若干モーションを手助けしてくれるから、武器全般それでかなり当てやすくなるよ。設定画面からオンオフ切り変えられるから、逆にやりづらいって人は切るらしいけど』
『はえー初耳』
『解説助かる』

 なるほどね。まあそりゃそうだよね。冷静に考えて、動く的(まと)相手にいきなり剣とか弓とか当てるのすっごく難しそうだもん。武器本来のちゃんとした振り方、撃ち方とかも知らない訳だから……

「なるほろーー……あれ? じゃあ私ってアシスト込みで駄目ってこと?」

『泣かないで』
『どんまいw』
『極振りだからでしょ』
『このゲーム、装備要求値満たしてないとシステムアシスト全部OFFになっちゃうらしいからね』
『知らなかったんだが???』
『普通にプレイしてて直面することはまず無いって』
『確かに』

「なるほどねぇ……つまり私は、攻撃も防御もほとんどシステム的なアシストはもらえない訳だ。
 ま、やらないから良いんだけど。すべてライフで受けるからね! 」

 剣や盾とはこの先も無縁になることが確定されてしまった気がするけれど、もともと膨大なHPで受けきる作戦でいたんだ。方針は何も変わらない。

 因みに、要求値のことだけども。
 各装備には要求能力値っていうのがあって、それを下回った状態だと装備の性能を発揮しきれないと言われている。大幅に下回りすぎると、装備すらさせて貰えないらしい。

 初心者の大剣の要求値は、STR3だ。誰でも扱えるように作られた練習用の剣であるそうな。 
 私は扱えないけどね!

「あ、もしかして鎧もダメ?  これから先、服系しか着られない説あるのでは??」

『え』
『鎧、初期のやつ以外筋力いるもんね』
『剣も盾も、挙句の果てに鎧すらも装備できない重戦士』
『重戦士とは……?』

「それを言われると辛いなぁ。体力の補正値が1.5倍で一番高かったからね。仕方ないのだよ」

 言ったかどうか忘れたけれど、このゲームは各職業ごとに能力値の補正がかかるんだ。
 例えば、私が選んだ重戦士だと、HPに×1.5、物理攻撃と物理防御に×1.2の補正がかかる代わりに、魔法2種には0.7の下方が入る。
 逆に奏が選んだ魔術師は、魔法防御に×1.1魔法攻撃には×1.3も入る代わりに、HPが0.8倍。物理2種に関しては×0.5にまで下がってしまう。

 他にも職業ごとに個性はあるけど、まぁそれはおいおいってことで良いだろう。 

「んーまぁそういう事だし、当面は武器防具屋には縁はないかなぁ」

『せやね』
『新調したところで一生使われない』
『プレイヤーメイド一択?』
『ダンジョンドロップとかでも装備ありそう』

「そうだねー。更新するとしたら、ほかはどうでも良いからHPが少しでも上がる装備が手に入った時かなぁ。
 もうちょっとお金貯まったら、服系の装備だけでも変えても良いかもね」

『たしかに』
『筋力要らないもんな』
『筋力不足で鎧装備できない重戦士 (少女)』
『かわいい』
『いやほんと「重」とは』
『重戦士 (重装備するとは言ってない)』

「はいはいどーせ私は職業詐欺ですよーーだ」

『拗ねたw』
『拗ねないで』
『このコメント欄の雰囲気好きすぎる』
『この世の平和が凝縮されてる』

「スケール大きいな!? でも、雰囲気良いのはそうだよね。皆本当にありがとう。楽しいよ…………あ、雑貨屋」

『良い雰囲気になりかける<雑貨屋』
『俺たち<雑貨屋』

「あはは。雑貨屋大事だから!ポーション補充!!」

『めっちゃダメージ受けるもんね』
『俺たち<<<<<<(超えられない壁)<<<HP  だったか』

「そういうことー。すみませーんポーション下さーい!」

 元気よく店に乗り込む。店員は、人の良さそうなお婆ちゃんだった。
 かなりお年は召されているようだけど、どこか貫禄がある。

「いらっしゃい。おや、見ない顔だね?」

「初めまして。今日からこの街に来たんです。HPポーションって置いてありますか?」

「ほほう。お嬢さん運が良いね。ウチのポーションは自信作だよ」

 お嬢さんだって! なんだかこそばゆい。
 お婆ちゃんは奥の戸棚をゴソゴソと探ると、瓶をひとつ持ってきた。
  
◆◆◆◆◆◆◆◆
 名前;下級HPポーション
 品質;A
 説明;超高品質の下級HPポーション。HPを35%回復する。クールタイムは1分。 
 製造;ミランダ
◆◆◆◆◆◆◆◆

「効果高っ!」

『なにこれw』
『配布されるポーションより10%も高いんだけどw』
『製造者まで書いてる』
『品質表示Aって凄そう』

 思わず、コメントの反応をうかがってしまった。
 ざっと流し見しただけだけど、皆も効果の高さにびっくりしている感じがあるね。

「ふふ。そうさろう? なにせ、この私……薬師ミランダ特製のポーションだからね。
 見たところ駆け出しみたいだし、下級で充分だろう?」

 問いかけには、こくこくとうなずくことで答える。
 このお婆ちゃん、もしかしなくとも結構なお方なのかもしれない。

「こんな凄そうなもの、買わせてもらって良いんですか?」

 ここまで効果が高いなら、あちこちで引っ張りだこになりそうなものだけど……

「いいのさ。私は気に入った子にしかお手製のものは売らないからね。お嬢さんは合格だよ」

 そう言ってにやりと笑うお婆ちゃんもとい、ミランダさん。
 何が良かったのかはわからないけど、降ってきた幸運は最大限活かすべきだろう。

「ありがとうございます!じゃあ、買えるだけ買いたいです!」

「はいよ。それじゃあ…………」

 私は今日の狩りで得たお金もすべて精算して、買えるだけポーションを買わせてもらう。
 帰り際に『ミランダさん、ありがとうございました』と頭を下げると、『これから頑張りなさいね』と激励をいただいた。

 もう一度お礼を言ってから、店を出る。

「どこか不思議な方だったなぁ」

『雰囲気出てたね』
『歴戦の魔女かもしれない』
『もしかしてフラグ立った?』

「どーだろ。歓迎してくれてたみたいだし、今後もあの店使ってみようかな。いいもの見つけられてラッキーだったね!」

 軽い気持ちでの探索だったが、良い出会いもあるものだ。
 ますますワクワクするのを感じながら、もう少しだけ散策を再開。

 街の南門まで着いたところで、今日は切り上げることにした。
 明日からはまた外に出て色々と冒険してみようかな。







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