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ユキは 魔砲を おぼえた!

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「さてさて。もうそんなに時間無いけど、ちょっとでもレベリングして行こうかなって思うよ」

『おお』
『ドゥーバ戻る?』
『まだお昼じゃない?』
『予定有るんだっけ』

「うん。戻ろう。 そうなのよ~ 次出来るとしたら、明日のお昼前とかかなぁ」

『あら』
『結構忙しめ?』
『どっちかというと(ゲームに)忙しめw』
『それはあるw』

「それは言えてるねぇ。ここ数ヶ月のゲーム時間を、この5日程度で上回ってる気がする」

『草』
『それはw』
『それは言い過ぎだろw』

「あながちそうでもないんだよね。わたし、もともとそんなにゲームしないし。やるよりカナの観るほうが多いし」

『あー』
『そんなこと言ってたね』
『ゲーム初心者は事実だったのか』
『最前線を走る初心者とは??』

「ビギナーズラックってやつだよきっと。まあそれに、なんだかんだカナをずっと観てきたから」

『うーん自然に出るこの台詞』
『てえてえ』
『聖女はもはやビギナーと認めてはいけない』
『運営さんユキちゃんなんとかして』
『今日また暴れると予言』
『↑今朝もうかなり暴れたでしょいい加減にして』
『↑常に暴れてるから間違ってはない』

「ねえ私がまるで怪獣みたいな扱い、不本意なんですけど?」

『運営からしたら似たようなもんだろ(』
『想定ぶっ壊してそうだもんなw』
『斜め上どころか切り立った崖の上をを逆立ちしながら突っ走る女』
『だがそれがいい』

「逆立ちはできないよ? 三点倒立ならなんとか」

『いやw』
『そうじゃねぇw』
『話がドンドンずれていく』
『わざと逸らしてるまである』

「ちなみにカナはバク宙2回転できます。助走とか一切なしで」

『ふぁ!?』
『は???』
『人間じゃねえwww』
『そういえば運動能力人外だった』
『意味がわからん』

「力は人より有るって程度なんだけどね。運動能力が昔から頭抜けていて……」



 のんびりと雑談をしているうちに、聖都ドゥーバの東門までたどり着いた。
 門のところにいる騎士さんに冒険者証を見せて、外へ。

 エリアとしては、まだまだS4のままみたい。
 でてくる敵も同じゴブリン……いや、レベルはちょっと高いかな?

 けどまぁ、これくらいなら特に脅威でもない。
 GAMANを起動し、緑色をしたゴブリン達に好きに殴らせてやる。
 そして、適当なタイミングで……どーん。

 今日も今日とて絵面を視聴者の方々に笑われるけども、仕方ないんだよね!

「あーーMPがほしい!!」

『どうした』
『急w』
『HPしか見えないんでしょ』

「そうだけどさーーやっぱり殴られないと殴れないってちょっと面倒というかなんというか。
 聖魔法つかいたーーい」

『草』
『自分の選択なんだよなぁ』
『まあ、これだけ堂々と突っ走ってるのに真似する人が殆ど居ない要因でも有るからなw』
『雑魚処理効率悪すぎる』
『結局リスク押してでも極振りするならわかりやすい火力特化が多いね』
『まあその火力も、死ぬ程難しいんですけど』

「おー? 私の真似ならいくらでもしてくれていいんだぞー
 ゲームはなんでもカナの真似から入ってるしね」

『なんでもカナなのか』
『ユキの一部、カナから出来てそう』
『草』
『後追い公認でましたわ』
『なお聖女のせいで真似できなくなった模様』
『www』

「あー……ま、まぁ、一人一人、自分にあう遊び方をするのが一番なんだよ」

『いや草』
『手のひらくるっくるですわ』
『そもそもMPあったってINT0でしょ』
『火力でないんだよなぁ』

「あーーー!! そっかぁ。ん~~いっそHP犠牲して能動的に攻撃できるスキル生えませんか」

『それなら使えるw』
『実際このゲームならありそうだよな』
『サクリファイス的な概念ありそう』

 サクリファイス、ねえ。
 【祈り】みたいにMPの代わりにHP消費する支援? も存在するわけだし、攻撃もできて良いと思うんだ。
 こうやって一々攻撃を受けてから敵を薙ぎ払うのも楽しいっちゃ楽しいけど……

 ──ポーン

 お?
 丁度、目の前のゴブリンたちを屠ったタイミングで、インフォが鳴った。


「インフォが鳴ったよ みんな!」

『お?』
『タイミング』
『これは??』
『まさか??』

 内容を確認。通知は、新技能修得のいつものアレだった。

「技能修得だって! これは来ましたわ!!」

『嘘やんw』
『神タイミング』
『神か??』

「えーっと。せいまほう……共有するね」

 ◆◆◆◆◆◆◆◆
 技能:聖魔砲
 効果:自身のMPを毎秒最大値の1%消費して充填、任意のタイミングで発動。
  攻撃力は消費したMPと同値。聖属性。
  相手の防御値は、物理と魔法の弱い方で判定される。
  (チャージ中は移動不可)
 条件:聖女として敵を100体討伐する。聖なる乙女にも棘はあるもの。
 ◆◆◆◆◆◆◆◆

「これじゃ意味ないんじゃーーーー!!!!」

『これはww』
『神w』
『運営は神だったwwww』
『どんまいwwww』

 違う。そうじゃない。そうじゃないんだよ!
 MP消費技能がどれだけ増えても私には意味ないの。わかって!?

「ゴブリン乱獲ね。決まり」

『やつあたり』
『ユキちゃんおこおこ』
『【悲報】ゴブリン全滅する』
『これは凄女』
『間違いねえww』

「うるさいなんとでも言えー!! 期待させた運営が悪い!」

『責任転嫁がすぎるw』
『これは酷い』

 もうこれはログアウトギリギリまでのゴブリン乱獲で決まりだ。
 ついでに、いけるところまで行ってみよう。

 そういえば。敵が弱めとはいえ、聖女になってからまだ一回もレベルが上がっていない。
 もうそろそろでもいいと思うんだけど……どうかな?


 ポーンとインフォがなったのは、それから少し経ったときだった。
 ゴブリンの乱獲も順調にすすみ、レベル9のゴブリンやその上位存在と思しきゴブリンファイターも散見されるようになってきている、そんなとき。

『只今の戦闘経験によりレベルが21に上がりました』
『条件を満たしたため、【命すら捧ぐ者】を修得しました』

「……お?」

『どしたん?』
『なにかあった?』

「……今度こそ、来たかもしれない。共有するよ」


 ◆◆◆◆◆◆◆◆
 称号:命すら捧ぐ者
 効果:【聖魔砲】の消費にHPを代用することで威力を更に上乗せできるようになる
 説明:かの者は聖女でありながらも自らが傷付くのを厭わず、最前線に立ち迫る敵を屠り続けた。
    敵を減らすことこそが、味方の助けになると信じて。
 ◆◆◆◆◆◆◆◆

『おおお』
『ウッソだろww』
『やばw』
『キターー!』 

 うふふふ。私は信じていたよ運営様!
 これでこちらからも積極的に仕掛けられるようになるね。
 そうと決まれば……!

「さあ、ゴブリン殲滅祭だーー!」

『おいw』
『し っ て た』
『結局犠牲になるゴブリン』
『知らなかったのか?凄女からは逃げられない』
『こんな聖女は嫌だ→バーサーカー』

 ふふふふなんとでも言うが良いさ。
 今の私は気分が良いからな。 さあ行くぞ!




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