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たまには乙女
しおりを挟む聖都ドゥーバに到着した私達は、フレンド登録をして別れた。
お互いに用事があるからね。明日にでも、一緒に遊ぼうってことになってある。楽しみだ。
さて。一人になったところで、神殿の方へ向かう。
目的はもちろん、任務の完了報告。
もはやおなじみとなった部屋で、グレゴールさんと向かい合った。
特に問題もなく、最深部まで浄化が終わったことを報告する。
「ええ。こちらの方でも、墓地の方角より漂い始めていた邪の気配が止まったのを観測しております。
期待以上の完璧な任務、本当にありがとうございました」
そんな言葉と共に、深々と頭を下げられた。
「いえ、お力になれて嬉しいです。それに、予想外に得る物もありました」
具現化してみせるは、バギーニャ·トロスティ。 例の杖だ。
なんとなく予想はしていたけれど、大きな反応はない。
「……なるほど。聖女様の武装は、無事に当代へと受け継がれたというわけですね」
「この杖のこと、ご存知だったんですか?」
「存在自体は。しかし、場所などは全く。
それは、神殿の者にすら伝えられず、ひっそりと次代へと受け継がれるしきたりなのです」
なるほど。彼女なら知っていて言わなかったんじゃないかって思ったんだけど、そうでもないのか。
代々受け継がれる大切な装備であるわけだし、詳細を知る人はなるべく減らそうということなんだろうね。
……その結果として継承に失敗するとかは無いのかな? 見つからないまま終わるとか。
まぁ、私の時みたいに良い感じに導かれるようになっているのかもしれないけど。
「一応確認なんですけど、私が持っていて良いものなので?」
「無論。それは当代の聖女様にこそ受け継がれるべきもの。御業を間違いなくより強力なものにしてくれることかと」
聖女の御業……ねぇ。
うーん。正直わたしじゃ、本来見込まれた性能は殆ど発揮できないけどねっ!
まあ、【守護結界】の方で想定より遥かに強力な効果を見込めるだろうし、これはこれで私に向いているといえなくもないか。
「わかりました。では、しっかりとこの杖、預からせていただきます。
……そういえば、聖女って二人以上は存在しない感じなんですか?」
この際だから、ついでに気になっていたことを聴いてみよう。
グレゴールさんは、質問が想定外だったのか少し考えるような仕草をした後、口を開いた。
「……そう、ですね。神が判断をくだされることなので確実とは言えません。
が、長い歴史を紐解いても過去に聖女様が二人並び立った時代は存在しない。それが答えになるかと」
「なるほど……
えーと、じゃあもし、ですけど、聖女が姿を消しちゃったら結構問題になります?」
唯一性のある職業をたまたま引き当て、それを楽しめていることは純粋に嬉しい。
けれど、私だって現実の方でもいろいろ有るわけで。今はわからないけど、この世界に来られなく可能性だってあるんだ。
「全く影響が無いといえば、嘘になります。既にこうしてユキ様とは関わらせていただいておりますし、やはり【聖女】の持つ力というものは大きい。
しかし、【勇者】を筆頭とする六天と呼ばれるものは、もともと存在しない時代のほうが遥かに多いもの。居なくなったからと慌てて後任を探すようなものではございません。
そしてなにより、ユキ様は異邦よりの旅人。仮に姿をお隠しになったとて、それは有るべき形に戻ったということです」
『ですので、ユキ様は何も気になさること無く』
そう行って微笑むグレゴールさん。 この人には敵わないなぁと思わせられた。
そこからは、軽く雑談をして別れる。
現状、切羽詰まっていることは無いらしい。強いて言うならば、ゴブリン来襲の際には協力貰えればありがたいとのこと。
任務の報酬は、経験値とお金だった。レベルが1上がって36になったことを考えると、結構もらえたんじゃないだろうか。
どうでも良いことかもしれないけど、クエスト報酬として貰える経験値ってなんなんだろうね。
いや、ほらさ。戦闘直後とかなら、戦闘経験が形になったとか倒した相手から経験を得たとか解釈はできるかもしれないけど。
ただ報告で話しただけで強くなるって、どういう概念だろうって思わなくもない。
「それにしても、六天……ねえ」
グレゴールさんとの会話の中、不意に出てきた耳慣れない単語。
雑談の一環として、できる範囲で色々と聞いてみた。
『掲示板、阿鼻叫喚だぞ』
『爆弾情報すぎる』
『爆弾というよりもはやダイナマイト』
『一気にユニークの情報が明るみになったわけだもんな』
『神殿は新情報のバーゲンセールだ』
「話の流れでさらっと出てくるから、私も反応しそこねちゃったよ。
なんだっけ。勇者を筆頭に、剣聖、槍聖、大魔導、聖女。それから拳王か」
『少なくとも後5つか』
『競争激化しそうだね』
『初対面の時に、弓神とか守護騎士とか言ってなかった?』
『あー』
『そう思えば、かなりあるね』
『まあもう既に何枠か内定してそうな気もするけどな』
『言うな!!言うんじゃない!!』
『カナとか筆頭じゃん』
『カナは職業も【魔王】になるんだろいいかげんにしろ』
『草』
「あはは。クラスまで魔王になったら面白いね。
あ、でも、そうなったらもしかして敵対しちゃうのかな?」
『まさかの魔物陣営』
『流石にないだろww』
『魔王で人間側ってのも意味わからんけどな』
『やっぱりクラス魔王は実現しないかー』
『流石にな』
『だが妄想は自由だ』
『今のうちに魔王カナの討伐方法考えておこうぜ』
「ふふっ。討伐方法って。
あーでも、意外に今度のイベントの参考にもなるかもね」
『たしかにな』
『バトロワかーー』
『バトロワがレイド化する未来』
『初イベント レイド「VS魔王カナ」』
『まああくまで妄想としてさ、カナが魔王として敵に回ったらどうするの?』
「え。わたし? うーんそうだなぁ。一応こっちだって【聖女】だし討伐軍に入るかなぁ」
『討伐軍w』
『実は結構ノリノリじゃねえかw』
『魔王VS人間側とか絶対盛り上がる』
『実現するなら魔王側にもテコ入れほしいけどね』
『それは確かに』
『魔王様が聖女を攫えばOK』
『それは草』
『王道。だが、凄女サマだからなぁ……』
『www』
「もう。何言ってんの。
……あ、でも」
『でも?』
『お?』
『おお?』
「……ちょっとだけ、攫われてみたいかなーって」
『草』
『www』
『欲望もれとるwwww』
『意外に少女趣味だな』
『急に女の子にならないで』
『【速報】凄女サマ、意外に乙女』
「ああ待って待って今のナシ!! 冗談だから!」
思わず零れ出た変な思考に、コメントが猛烈な勢いで加速していく。
みるみるうちに顔が真っ赤になっていくのがわかった。
ああ、もう! みんなぶっ飛ばすよ!!??
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