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ロックゴーレム 蹂躙

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 ロックゴーレム。
 全身が岩でできた、熊とゴリラの中間みたいなフォルムの魔物。
 胸部にコアという弱点部位が有るものの、全身を覆う頑強な岩によって殆ど露出はされていない。
 両腕に甚大なダメージを与えコアを露出させるか、僅かな隙間を射抜くかというのが、対処方法として主流だ。

 ……っていうのは、事前知識としてトウカちゃんに教えてもらったこと。

 当然、精密な攻撃というのは私にとって(恐らく彼女にとっても)無縁なものであるので、今回は腕をぶっ飛ばすところから始まるんだけども。
 相手したことがあるという彼女が見本をみせてくれるらしい。楽しみだね。

 一応、私はチャージを始めておこうか。

「えーいっ!」

 気合の入った掛け声とともに、巨大なハンマーが横なぎに振るわれる。
 ドガーン! という爆音。奴の右腕が吹き飛んだ。

「……わーお」

 ドガガーン! と再びの轟音。 息つく暇のない逆サイドからの攻撃に、今度は左腕が吹き飛ぶ。
 力を失ったかのように、ロックゴーレムはだらんとした姿勢でコアを露出させた。

「てえええいっ!」

 肩に構え直したハンマーを、上段から振り下ろし。
 重量も乗った渾身の一撃が、赤く光るコアを粉砕した。

 そのまま、巨大な岩の像はなすすべもなく消え失せる。


 ……え。終わったんだけど??


 ふいーと額の汗を拭うような仕草をしたあと、トウカちゃんはくるりとこちらに向き直る。
 ハンマーをしまい、ぐっと親指を立ててみせた。

「えと、こんな感じっ!」

「誰も真似できんわっ!!」

『笑う』
『魂の叫びw』
『正常な反応』
『これが普通』
『ユキもようやく俺ら側に』
『俺らの気持ちがわかりましたか??』

「いや、わたしはちょっと違うんじゃないかな~?」

『いや、一緒だぞ』
『うむ』
『同じだな』
『カメラ目線の得意顔とかそっくり』
『わかるww』
『同類なのは間違いない』

 これはひどい。誰一人として同意してくれない。
 味方は。私の味方はいないのかっ!

「それにしても。いつも観ていて楽しいのは間違いないんですが、こうして配信側に回るのも面白いですね。
 自分についてもコメントが投げられているの、ちょっとくすぐったいです」

 にこやかに笑いながら、トウカちゃんが歩み寄ってくる。
 彼女の目線の先は、可視化されていないけどウィンドウかな?
 コメントが見えてるっぽい反応だけど……

「トウカちゃん、配信のコメントって見えているの?」

「はい! こちら側で配信画面を小さくですけど表示させて、視界の端に置いてあります」

「あ~、プレイ中に配信みることってできるんだ!」

「今の私だと、配信のコメント欄だけを映している感じですねっ」

 なるほどね。明らかに忙しそうなカナが的確に把握してくれているのは、そういった方法も活用しているのかな?
 わたしも、見ようと思えば配信中にカナの様子を確認することもできるんだろうか。 


 ちょっと詳しく聞いてみたところによると。他人の配信など、外部の情報にアクセスできないエリアもあると言われているらしい。
 私にわかりやすいものでいえば、近いうちに開かれるイベント中は確実に禁止されるだろうとのこと。
 まあ、そりゃそうだよね。 情報ダダ漏れになっちゃう。

「そういえば、今度のイベントは参加するつもり?」

「はいっ! 生き残るのは難しいかもしれませんけど、少しでも残れるように頑張りますっ」

「おー! 出会ったら、お互い手加減なしで!」

「もちろんっ」

 ふたり顔を見合わせて、にんまりと笑う。
 トウカちゃんがどんな戦い方で生き残るのか、非常に興味があるね。


 さて、そんな話をしているうちに、二体目のロックゴーレムが出現した。
 ハンマーを構えようとするトウカちゃんを制して、一歩前に出る。

「次は私の番。任せて」

 フルチャージしたまま行き場をなくした【聖魔砲】があるからね。
 移動自体は可能とはいえ、せっかく溜めたんだからはやく撃ちたい。

 真正面からぶっ放すのみ。小細工なんて有りはしない。
 ゆっくりと歩み寄ってくるロックゴーレムへ向けて、杖を振りかざす。


 ◆◆◆◆◆◆◆◆
 名前:ロックゴーレム
 LV:33
 状態:通常
 ◆◆◆◆◆◆◆◆

 ふむ。改めて見ると、なかなかの重圧。
 けどまぁ。

「恨むなら、私に放つ隙すら与えなかったトウカちゃんを恨んでねーっと」

 りふじんっ!? と背中から声が聞こえた気がするけど、知らない。
 突きつけた杖から、暴力的なまでの力の奔流が解き放たれる。

 真正面から受け止めることとなった両腕が、ほんの数秒で粉砕。
 そして、魔砲の威力は緩むこと無く。
 護るものの無くなったコアの部分に突き刺さった。

 一切の抵抗も許されずにロックゴーレムの姿が消え去ったのを確認して、ほっと一息。
 杖を仕舞って、くるりと振り返る。

「トウカちゃんほど凄くはないけど、私の答えはこんな感じっ!」

「私よりとんでもないと思うんですけどーーっ!?」

『いや草』
『新手の意趣返しをみた』
『理不尽ユキ炸裂』
『どっちもどっちだよ(』
『↑それすぎる』
『面白いなぁ』
『ユキカナもいいけどこのコンビもいい』
『わかる』
『脳筋×脳筋』
『混ぜるな危険www』

 うん。楽しい!

「あ、私わかります。この笑顔、確信犯です」

「なんのことかなぁ」

 じとーっと見つめてくるトウカちゃんに、にへらっと笑いかける。

「むーーっ!! 負けませんよ!」

「私だって!」

 さてさて、狩りはまだ始まったばかりですよー!



  

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