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ゴブリン退治 再び
しおりを挟む最後の最後で運営に裏切られた、ドロップ品の確認を終えて。
正午をかなり回っていたのもあり、トウカちゃんとはそこで解散。
一旦のお昼休憩を挟んで、私はまたインクリの世界に戻ってきていた。
「うぬぬ……運営……」
『まだボヤいてるのかw』
『上げて落とされたもんな』
『アトラクションもびっくり』
『ナイアガラもビックリ』
『滝かww』
「むー! これ以上笑ったら焼き払うよ!」
『はいはい』
『怖い怖い』
『コワイナー』
『誰一人怖がらなくなってて笑う』
『あ、でもさ、聖魔砲とかどうなん?』
「……!
そっか、アレはMP消費をHPで代用している訳だから、消費減るかも……ん。それって良いのかな?」
一瞬期待しかけた私だけど、ちょっとだけ嫌な考えもよぎった。
消費が軽減されたならば、その分チャージ速度が落ちるのではないかということ。
◆◆◆◆◆◆◆◆
技能:聖魔砲
効果:自身のMPを毎秒最大値の1%消費して充填、任意のタイミングで発動。
攻撃力は消費したMPと同値。聖属性。
相手の防御値は、物理と魔法の弱い方で判定される。
(チャージ中は移動不可)
聖なる乙女にも棘はあるもの。
◆◆◆◆◆◆◆◆
消費したMPと同値の攻撃力っていうのがどんな扱いを受けるか……なんだよね。
というか、今更だけど相手の防御、弱い方で判定されてたんだね。すっかり忘れてたや。
最悪の場合だと、消費が軽減される分、毎秒0.8%分しかチャージできないとかそういうことになる?
そんな疑問をぶつけてみたところ、流石にそれはないだろーってコメントが殆ど。
まあ実際にやってみれば良いよねってことで試してみた。
結果としては、特に変化なし。
毎秒1%ずつHPが消費され、特に威力の上昇もなさそうだった。
「むーん……けっきょく腐るユニークアイテム~」
『哀愁漂ってて草』
『せめてトレード出来たら良いのにね』
『カナとかすっごい喜びそう』
『間違いない』
「ま。仕方ないよねぇ。さて。どーしようか」
現在の時刻は15時と言ったところ。
割と時間はあるけれど、さてさて何をしようかなぁーっと。
『雑談』
『雑談枠とかどう?』
『挑戦者を募ってなぎ倒す』
『雑談良いね』
『挑戦枠は草』
「あ~雑談か。じゃあ、東の方でテキトーにゴブリンでも狩りながら雑談しよっか」
特に大きな反対もでなかったので、東門の方へ移動。
確か、ワールドクエスト? でもゴブリン減らしておけって言われているしね!
「うお、東のエリア、思った以上に人がいる」
魔砲を習得した場所でもあり、ゴブリンの砦を粉砕した場所でもある、聖都の東側エリア。
草原が続くこの場所は、予想を遥かに越えて混雑していた。
見渡す限りのあちらこちらで冒険者たちとゴブリンの小さな群れが戦闘している様子を横目にみながら、奥へと進んでいく。
『ゴブリン狩りに真面目なプレイヤー諸君って感じ』
『ワイも今狩りながら配信みてるで』
『意識たけえ』
『やっぱり最初のイベントだからか、皆けっこう真面目に取り組んでるよね』
『わかる』
「全体へのアナウンスでも、ゴブリンの削り具合でクエストが変わりますって言ってたもんね~。
結局あれから一度も狩りしてないし、今日は頑張って貢献してみようかな?」
『おー』
『ゴブリンたち逃げて!!!』
『鬼がくるぞ!!』
『お前達逃げろーー!!!』
「おかしくない!? 皆してゴブリンの肩を持つのおかしくない!?」
いつも通りに酷い視聴者さんたちにツッコミながら、聖魔砲でゴブリンを蹴散らしていく。
以前の砦くらいの位置まで来て、上位種らしき存在も増えてきた。
けどまぁ、所詮レベル20に満たないようなモノだから、大した脅威にはなり得ない。
「ん~これじゃ弱い者いじめな感じがしてくるなぁ」
『そりゃなぁ』
『レベル20で暴れていたステージでしょ』
『今40だもんね』
『そもそも小鬼が鬼に勝てるわけない』
『↑待ってツボった』
『↑天才すぎんか???』
『この世の真理じゃん』
「なるほどね? ゴブリンのこと小鬼って表記することも多いもんね……じゃないよばっかやろー!!」
『wwww』
『待って落ち着いてw』
『あかんマジで暴れはじめた』
『ビーム乱射すんなw』
『本当に鬼と化してるんだが……?』
『えぇ……』
HPが12000近くまで伸びた今、600のチャージに要する時間は僅か5秒。
ちょーっとした腹いせに乱射したビームで、まとめてゴブリンは消し飛ばされていく。
『改めて見るとやべえなぁ』
『同じ威力を出すのにもチャージ時間減ってるからね』
『小鬼を蹂躙する大鬼』
『大鬼は草wwww』
『凄いじゃん人間卒業』
『はじめから人間じゃない説あるから』
「だーかーらー! 好き勝手ばっかり言ってんじゃなーい!!」
今更だけど、聖魔砲の凄さってリキャストタイム……再使用までの時間が極端に短いことだよね。
敵に合わせて小回りも効かせられる感じが、本当に強いと思う。
そうこうしていると、パタリとゴブリンの出現が止んだ。
先程まで無限と言えるほどに姿を表していたのが嘘かのように、静けさが辺りに立ち込める。
「……あれ? 止まった」
『でてこなくなったねぇ』
『[悲報]ゴブリン、根絶される』
『ああ……流石に虐殺されすぎたか』
『この感じ、見覚えありすぎるんだがw』
『ゴブリン、恐れを為してでてこなくなった模様』
『もうワールドクエスト凄女サマだけでよくね?』
『笑う』
「もうツッコまないよ。ツッコむと君たちの思うつぼだってことくらいわかってるもん。
ま、まあでも、ゴブリンが居なくなったなら仕方な……うわわっ!?」
踵を返そうとした瞬間だった。
ピシャーーン! と物凄い音が響き渡り、思わず身を縮こませる。
反射的に瞑った目をゆっくりと開くと、ほんの10メートルほど先の地点に大きな人影が立っていた。
◆◆◆◆◆◆◆◆
名前:オーガ
LV:40
状態:平常
◆◆◆◆◆◆◆◆
ゴブリンとは比較にならないほど大きく、強靭な肉体を見せつけるようにして。
ゆっくりと、オーガと表示されたモンスターがこちらに歩み寄ってくる。
その得物は、刀。すぐ後ろには、追加で3体ほどの大きな鬼の姿があった。
『マジで大鬼きて草』
『オーガVS凄女』
『大鬼VS大鬼』
『草』
『オーガ側、パーティーっぽいのがウケる』
『どっちがモンスターなんだww』
『凄女サマに決まってるだろいいかげんにしろ』
『おwまwえwらw』
「好き放題言ってくれちゃって……蹴散らしてあげるッ!」
私は、先頭のオーガをキッと睨みつけると、杖を振りかざした。
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