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オーガパーティとの激戦

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 ◆◆◆◆◆◆◆◆
 名前:オーガ
 LV:40
 状態:平常
 ◆◆◆◆◆◆◆◆

 視聴者さんたちのあまりの酷さに、思わず啖呵を切った私。
 だけれど、この状況は流石に、絶対的な無理がある。
 
 そもそもだ。直前までの状況を思い返してほしい。
 トウカちゃんと激戦を乗り越えたのは、ほんの数時間前の出来事。
 よーするに、[守護結界]のチャージが出来ていないのだ。

 問題はそれだけではない。先程までビームを乱射していた関係上、HPもそこそこ消耗している。 
 ポーションのリキャストタイムは、まだ終わっていない。
 
 つまり、だ。

 まずい! ひっじょーにまずい! 
 視聴者さんたちもその状況に気付いたらしく、流石に厳しいんじゃないかと言うコメントが目立ち始めたかな。

 ……だったら尚更、諦めるわけにはいかないよねっ!


 思考の時間は僅かだった筈だけど、刀を抜き放ったオーガは、もう目の前まで迫っていた。

 勝ち筋は一つ。
 速攻で、片付ける!

 刀に斬られるのも構わず、[充填]を開始。
 [GAMAN]は一度使っちゃうとクールタイムが生まれるからね。速攻とはいえ、まずは[聖魔砲]をぶつけていく。

 深く切り裂かれて、紅いエフェクトが辺りに散る。
 見慣れないものに意識を割く暇すらなく、足元で大きな爆発が起こった。  

 凄まじい爆風に、軽く吹き飛ばされる。
 すぐさま起き上がって追撃を警戒するも、流石に飛んでは来なかった。

 チャージは止まっていない。残りHPは20%…………

 ちょっと待って、HP減るの早すぎない!?

 充填に消費するHPは、毎秒1%。
 しかし、横目に確認する体力は、その二倍以上の速さで減少している。

 よく見ると、HPバーの横に、見慣れない『出血』という文字。
 これか、紅いエフェクト。そして、このHP高速消耗の要因!

 しかし、原因がわかったところでどうしようもない。
 出血なんて状態異常、聞いたこともないし。当然、その回復方法も。

 ぐんぐん減るHP。此処は、早めに撃つしかないね。

 煙はまだ晴れきっていないけれど、相手の方向は分かっている。
 上手いこと四人固まっていて、まとめてやっつけられたりしないかな……っと!

「発射ぁっ!」

 かざした杖から、いつもの光の奔流を解き放つ。
 チャージ時間こそ全力には遠く及ばないものの、大きく伸びた最大HPにより威力は充分なはず。

 せめて、相手に大きな打撃を。


 そんな想いで解き放った攻撃は、なんと突如として現れた障壁に防がれた。
 なんとか叩き割りはしたものの、騎士のようなオーガによって完全に凌がれてしまう。

「っ……!」

 まずい。
 相手に打撃を与えるどころか、無傷で終わってしまった。
 そうなれば、今度は向こうの番とばかりに反撃が飛んでくるのは避けられないわけで……

 ええい、止むを得ん!!

 背に腹は変えられない。
 ここからノータイムで繰り出せて、相手の体勢を崩すことができる方法なんて。
 もう、手札の中には一つしか残っていないんだ。

 大きく、息を吸って。
 
「がおーーーっ!!!」

 全力、全開の雄叫び。
 超高確率のスタンという触れ込みは伊達ではないようで、見事なまでに敵全員が硬直したのが見て取れた。

 顔が熱く感じられるのを意識しないようにして、ポーションを服用する。
 おばあちゃん特製の、中級ポーション。消えかけていた体力が、半分以上回復した。

 相手の防御手段は非常に強力だったけれど、表示されたレベルはトントンだった。
 ……と、いうことは、流石に何度もあそこまでの防御は発揮できない……はず。

 カナからも教わっている。
 同レベルの相手と本気でやりあうなら、最終的には切り札を通しきった側が勝つって。
 決め技と、それを防ぎうる技との重みはトントン。
 つまり、[聖魔砲]による超火力を凌いでは見せても、次の一撃を防げる可能性は低いっ!

 ……というか、そうであってくれないと、もう勝ち目がないんだよね。

  今度こそ出し惜しみは必要ない。正真正銘、最後の綱。

「[GAMAN]」

 初期の頃からずっと使い続けているスキルに、今回も最後を託そう。
 ギリギリまでダメージを溜め込んで、最後に渾身のカウンターで倒しきる。私の常套手段!  

 キッと睨み付ける私に対して、サムライのオーガがニヤリと口角を上げた。
 素早い踏み込みのもと、渾身の一太刀を浴びせられる。

 予想を遥かに上回る威力に、思わずよろめいた。

 すかさず、魔術師っぽいオーガがかざした杖から、追撃の炎がほとばしる。
 避ける手段も無く、紅蓮の炎が私に襲いかかった。

 激しい熱を感じると共に、猛烈な勢いでHPが削られていく。
 出血に続き、燃焼までが追加された私の体力の減りは、もはや止められそうにない。

「……っ」

 潮時、か。
 これ以上は、もたない。

 炎に身を包まれながらも、溜め込んだエネルギーを解き放とうと。

 その、瞬間だった。

「グオオオオオッ!」

 耳をつんざくばかりの大音量が響き渡り、空気がビリビリと震える。
 私の、形ばかりの叫びとは比較にならない。
 野生を全解放した、真の[咆哮]。

 心臓が握りつぶされるかのような圧力に、放ちかけていたエネルギーが押さえ付けられる。

 ほんの、一瞬だけ。数秒にも満たない、僅かなタイムロス。
 しかしそれは、何よりも重かった。

「なっ……!?」

 いつのまにか展開されていた足もとの魔法陣から、突如として何本もの鎖が飛び出す。
 不気味な光を放つそれが瞬時に私を縛り上げ、あらゆる行動を許さない。
 
 魔力で構築された鎖の持続時間はそう長くなく、ほんの数秒程度で解放された。

 ──けれど、もう遅い。

 ダンっと強く地面を踏みしめ、飛び込んでくるオーガのサムライ。
 迫りくる真っすぐで綺麗な太刀筋を、私はただ睨みつけるしか出来なくて。


 このゲームを初めて、7日目。
 通算5度目の敗北は、今までで一番苦いものだった。





『【悪魔】の称号を修得致しました』

 ──ちょっと待て。運営さーーん!?



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