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第5章 第十五次帝国戦役編
第440話 冒険者狩り
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何度騙されれば学習するのか。
全人類共通かつ永遠のテーマである。
永遠という事は、恐らく人間が学習することもまた、永遠にない。
人は大なり小なり、他人に自分に騙されながら毎日を生きている。
だが——
「ルークさん」
「ハァッ、ハァッ、あぁ?」
「この戦争で何度裏をかかれました?」
「……数えきれねえなぁ」
偶然というものは存在する。
それが偶々重なることもある。
だが、それが何度も何度もとなると、流石に少し疑わしい。
アラタは帝国戦役に従軍してからというもの、ウル帝国軍に何度も煮え湯を飲まされてきた。
取る作戦、取る戦術が悉く裏目に出て、たまに上手くいくこともあるが基本空振り。
それだけなら公国軍の参謀部が能無しであることを証明するだけなのだが、やはりおかしい。
アラタの部下だったサイロスとシリウスが帝国に内通していたことは記憶に新しく、彼らと同じ立場の人間はまだいるだろう。
当然情報管理には細心の注意を払っているが、敵が内側にいるのなら無意味なものになってしまう。
「帰ったらやることが増えました」
「そっか」
何年かかろうとも裏切り者は始末する。
そんな決意と共に、アラタは夜の戦場を駆けていく。
「ハァッ、ハァッ、ハァッ」
彼らには馬が無い。
自然走る以外に選択肢は無いし、かと言って徒歩圏内に両軍の陣地があるはずもない。
アラタとルークは長い時間をかけてやってきた道のりを、今度は極めて短時間で走破する必要に駆られていた。
ルークがゼイゼイと息を切らし、肺が張り裂けそうになるのも納得である。
「ハッ、ハッ、ハァッ、アラ……アラタ」
「何です?」
「少し休もう。苦しい」
「そっすか」
呼吸を多少乱しながらも、ルークのそれと比べればほぼ平常時と変わらないアラタの呼吸。
立ち止まってから少しの間、ルークは息を吸うことで精いっぱいになっていた。
冷たい空気が直接肺の中に入ってくると、ただひたすらに痛い。
酸素のありがたみなんてまるで分からず、ただ横隔膜が命じるままに空気を取り込み、そして吐き出す。
アラタは持ち込んでいた水筒を手に持っている。
水分補給はすでに終えて、遠くを眺めていた。
「アラタ、俺にもくれ」
「はい」
竹で作られた水筒は軽く、水の重みだけを感じた。
節の少し上で切りそろえられた飲み口には、小さな穴が一つ空いている。
そこから水が出てくるようになっていて、水を入れるときもそこから注入する。
「…………ハァ。生き返った」
「腹痛くなっても知りませんからね」
「そこはまあ、【痛覚軽減】で」
「便利なスキルですね」
アラタはしょうもないスキルの使い方に呆れたが、ルークはアラタの方にこそモノ申したかった。
「お前、肺も患ってるんだろ?」
「タリアさんに守秘義務って言葉を教えてあげてください。あの人マジで口が軽い」
「言っとくよ。けど実際どうなんだ?」
「そりゃあ、まあ本当のことですけど」
ルークから水筒を返却されると、アラタは栓を閉めて容器を振った。
チャパチャパと水が竹を叩く音が聞こえてきて、まだ中に水が入っていることを教えてくれる。
彼の腰にあるポーチには、水筒を入れる専用のホルスターが付いている。
いつもではないが、今日のような任務の時には必ずつけて戦場に立っていた。
「何が聞きたいんです?」
休憩中と言えど一度温めた身体を冷やすことは、かつてアスリートだった彼の魂が許さない。
地べたに座って体力を回復させているルークを尻目に、アラタはゆっくりと辺りを歩きながら訊いた。
「肺がやられてるのに、どうやったらそんなに走れるんだよ」
「あー…………」
答えに詰まれど、何か言わねばルークは納得しそうになかった。
「あれですよ、ポーションです」
「またそれかよ。本当やめとけよ?」
「気を付けます」
そう返事をしたアラタだが、実のところポーションが肺や長距離走に寄与する割合はそこまで高くない。
あれはどちらかというと魔力だったり精神作用だったりの方に強く働きかける代物だ。
短期決戦用のドーピングと言ってもいい。
実際にアラタの長距離走を支えていたのは、スキルだった。
スキル【身体強化】、【痛覚軽減】。
この2つの存在が非常に大きい。
スキルは同じ名前を持っていても同じメカニズムであるとは限らないので、ここでは彼のスキルについてのみ言及する。
アラタのこの2つのスキルは、一言で言えば低レイヤーで作用する。
どういうことかというと、物理的に存在する肉体と同レイヤー、もしくはそのさらに下で効果を及ぼすのだ。
下と言われると優先権がなさそうに思えるが、実のところ逆である。
下になればなるほど、世界への強制力というのは増していく。
彼の場合、肉体疲労や物理的原理などを超えたところにスキルの効果が付与される。
たとえ筋断裂を起こしていようと【身体強化】を使えば走ることが出来るし、【痛覚軽減】は神経系の働きそのものを書き換えることが出来る。
これは全員の全スキルに当てはまる話ではないので注意が必要だが、とにかくアラタが肺をやられながらもルークより長距離に秀でている理由はこれだ。
だから彼は無茶をやめられない。
肉体的限界なら諦める諦めないに関係なく上限は定まる。
しかし彼の場合、スキルが使えれば、起動できれば上乗せで無茶できてしまう。
さらに質の悪いことに、彼のエクストラスキル【不溢の器】はスキルにすら定められているはずの上限を撤廃する。
最悪な永久機関だ。
彼は知ってか知らずか、自身が人間であることを放棄しようとしつつあるのだ。
「そろそろ行きましょう」
「そうだな。合わせてもらってすまん」
「1人じゃ危なくて移動できませんから」
ルークはアラタの手を掴んで地面から起き上がると、走り始める前に尻に付いた土を払い落とした。
そうしていざ出発である。
※※※※※※※※※※※※※※※
「あーあーこれは」
「まずいな。アラタどうする?」
「まずは観察しましょう。闇雲に動ける規模じゃない」
夜のミラ丘陵地が赤く染まる。
暗闇の中に煌々と燃える陣は、どこか幻想的ではあるものの美しさは微塵もない。
せっかく打ち込んだ柵の杭も、数人で協力して張ったテントも、乏しい補給の中で大切にしていた食料も、全てが虚しく灰塵に帰していく。
無情だ。
そしてそれは、アラタがさきほど帝国軍の陣地にやったこととまるで同じだった。
「どうです?」
アラタは自分で考える事を諦めてルークに聞くことにした。
「派手に燃えてるように見えるけど、表面だけっぽいな」
「表面?」
「陣地正面、まあ俺たちもさっきまで同じことやってたんだし、嫌がらせ目的だろうな」
「それって変じゃないですか?」
「あ?」
「こっちは戦力が足らないからそうしているだけで、向こうは違いますよね?」
「まあ、確かに」
アラタは頭が空っぽな分、余計な事に気を取られることなく物事を捉えることが出来る。
逆に多少頭を使わなければならない問題は苦手である。
「アラタ、八咫烏なら何をする?」
「……破壊工作か、暗殺ですね」
「それだな。食糧庫か救護所、それか司令部」
「司令部最優先、それから食料と救護ですね」
「違う。食料優先、それから救護と司令部だ。行くぞ」
「了解です」
ルークの指摘したように、敵軍は陣地正面ばかりを攻撃しているようだった。
だから案外簡単に側面から公国軍の陣地に戻ることは出来た。
「……静かすぎる」
ルークの言ったように、中で戦闘は起こっていないようだった。
本当に嫌がらせ目的の正面攻撃のみで、2人の不安は杞憂に終わるかに思える。
それほど内部は安定していて、正面の敵に対処しようとしているだけだった。
「ルークさん」
「ん?」
「【感知】スキルのスペックは?」
「俺は半径300m、精度は距離と反比例。ただ人数が多いと解析しきれねえ」
「反ぴ…………? まあいいや。俺が探るのでスキルを切って静かにお願いします」
「お前まさか反比例が——」
「【感知】起動します」
反比例が分からないアラタ君がスキルを起動した。
彼の【感知】は【敵感知】というスキルから派生したもので、その系譜からして対人に高い効果を持つ。
故に【罠感知】の進化系のルークのそれより今回の目的に沿っていた。
まず真横にいる味方の反応。
そこから拡充して、南入り口の兵士や待機中の兵士たちによる穏やかな魔力の流れが感じ取れる。
そこを超えていくと、今度は荒々しく高速移動する反応。
これは方向と状態的に正面にいる敵騎兵のそれだろう。
今のところ気になるものは何もない。
ルークのそれと違い全方位同時警戒が出来ないアラタは、スキルの強度を変えることで任意の方向の警戒を行う。
元来た方向の索敵を終えて、別な方向にアンテナを張る。
「……いました。数は不明、少数、交戦中です」
先ほどまで走り通してここまで帰って来たルークには、アラタも少しは悪いと思っている、そう願いたい。
またしても数百名の兵士が集結するような陣地の中を駆け抜けていく黒い影。
流石にルークに合わせてはいられないので、アラタが先に走っていく。
本来ならとっくにガクガクになっているはずの足は、魔力と【身体強化】で無理矢理動かされていた。
【感知】の向きを絞り、精度を上げる。
彼の手元に返ってくるのは、耳の奥底をほじくり返されるような不快感。
人がまた1人死んだ。
「チッ」
短く舌打ちをすると、さらに走る速度を上げる。
ほぼ全力疾走に近い状態で大地を駆け抜けると、アラタは勢いそのまま抜刀した。
【暗視】は常時起動している。
「レイヒムさん!」
「その声……アラタか!」
「敵ですね!」
「あぁ!」
「評価は!」
「C以下だ!」
「斬ります!」
「おう! 気を付けろ! 狙いは俺たち冒険者だ!」
なぜ戦争中に冒険者を狙い撃ちする意味がある?
ふと浮かんだ素朴な疑問だったが、今考える必要は無い。
アラタは黙って刀に魔力を流すと、敵と思しき兵士に斬りかかっていった。
全人類共通かつ永遠のテーマである。
永遠という事は、恐らく人間が学習することもまた、永遠にない。
人は大なり小なり、他人に自分に騙されながら毎日を生きている。
だが——
「ルークさん」
「ハァッ、ハァッ、あぁ?」
「この戦争で何度裏をかかれました?」
「……数えきれねえなぁ」
偶然というものは存在する。
それが偶々重なることもある。
だが、それが何度も何度もとなると、流石に少し疑わしい。
アラタは帝国戦役に従軍してからというもの、ウル帝国軍に何度も煮え湯を飲まされてきた。
取る作戦、取る戦術が悉く裏目に出て、たまに上手くいくこともあるが基本空振り。
それだけなら公国軍の参謀部が能無しであることを証明するだけなのだが、やはりおかしい。
アラタの部下だったサイロスとシリウスが帝国に内通していたことは記憶に新しく、彼らと同じ立場の人間はまだいるだろう。
当然情報管理には細心の注意を払っているが、敵が内側にいるのなら無意味なものになってしまう。
「帰ったらやることが増えました」
「そっか」
何年かかろうとも裏切り者は始末する。
そんな決意と共に、アラタは夜の戦場を駆けていく。
「ハァッ、ハァッ、ハァッ」
彼らには馬が無い。
自然走る以外に選択肢は無いし、かと言って徒歩圏内に両軍の陣地があるはずもない。
アラタとルークは長い時間をかけてやってきた道のりを、今度は極めて短時間で走破する必要に駆られていた。
ルークがゼイゼイと息を切らし、肺が張り裂けそうになるのも納得である。
「ハッ、ハッ、ハァッ、アラ……アラタ」
「何です?」
「少し休もう。苦しい」
「そっすか」
呼吸を多少乱しながらも、ルークのそれと比べればほぼ平常時と変わらないアラタの呼吸。
立ち止まってから少しの間、ルークは息を吸うことで精いっぱいになっていた。
冷たい空気が直接肺の中に入ってくると、ただひたすらに痛い。
酸素のありがたみなんてまるで分からず、ただ横隔膜が命じるままに空気を取り込み、そして吐き出す。
アラタは持ち込んでいた水筒を手に持っている。
水分補給はすでに終えて、遠くを眺めていた。
「アラタ、俺にもくれ」
「はい」
竹で作られた水筒は軽く、水の重みだけを感じた。
節の少し上で切りそろえられた飲み口には、小さな穴が一つ空いている。
そこから水が出てくるようになっていて、水を入れるときもそこから注入する。
「…………ハァ。生き返った」
「腹痛くなっても知りませんからね」
「そこはまあ、【痛覚軽減】で」
「便利なスキルですね」
アラタはしょうもないスキルの使い方に呆れたが、ルークはアラタの方にこそモノ申したかった。
「お前、肺も患ってるんだろ?」
「タリアさんに守秘義務って言葉を教えてあげてください。あの人マジで口が軽い」
「言っとくよ。けど実際どうなんだ?」
「そりゃあ、まあ本当のことですけど」
ルークから水筒を返却されると、アラタは栓を閉めて容器を振った。
チャパチャパと水が竹を叩く音が聞こえてきて、まだ中に水が入っていることを教えてくれる。
彼の腰にあるポーチには、水筒を入れる専用のホルスターが付いている。
いつもではないが、今日のような任務の時には必ずつけて戦場に立っていた。
「何が聞きたいんです?」
休憩中と言えど一度温めた身体を冷やすことは、かつてアスリートだった彼の魂が許さない。
地べたに座って体力を回復させているルークを尻目に、アラタはゆっくりと辺りを歩きながら訊いた。
「肺がやられてるのに、どうやったらそんなに走れるんだよ」
「あー…………」
答えに詰まれど、何か言わねばルークは納得しそうになかった。
「あれですよ、ポーションです」
「またそれかよ。本当やめとけよ?」
「気を付けます」
そう返事をしたアラタだが、実のところポーションが肺や長距離走に寄与する割合はそこまで高くない。
あれはどちらかというと魔力だったり精神作用だったりの方に強く働きかける代物だ。
短期決戦用のドーピングと言ってもいい。
実際にアラタの長距離走を支えていたのは、スキルだった。
スキル【身体強化】、【痛覚軽減】。
この2つの存在が非常に大きい。
スキルは同じ名前を持っていても同じメカニズムであるとは限らないので、ここでは彼のスキルについてのみ言及する。
アラタのこの2つのスキルは、一言で言えば低レイヤーで作用する。
どういうことかというと、物理的に存在する肉体と同レイヤー、もしくはそのさらに下で効果を及ぼすのだ。
下と言われると優先権がなさそうに思えるが、実のところ逆である。
下になればなるほど、世界への強制力というのは増していく。
彼の場合、肉体疲労や物理的原理などを超えたところにスキルの効果が付与される。
たとえ筋断裂を起こしていようと【身体強化】を使えば走ることが出来るし、【痛覚軽減】は神経系の働きそのものを書き換えることが出来る。
これは全員の全スキルに当てはまる話ではないので注意が必要だが、とにかくアラタが肺をやられながらもルークより長距離に秀でている理由はこれだ。
だから彼は無茶をやめられない。
肉体的限界なら諦める諦めないに関係なく上限は定まる。
しかし彼の場合、スキルが使えれば、起動できれば上乗せで無茶できてしまう。
さらに質の悪いことに、彼のエクストラスキル【不溢の器】はスキルにすら定められているはずの上限を撤廃する。
最悪な永久機関だ。
彼は知ってか知らずか、自身が人間であることを放棄しようとしつつあるのだ。
「そろそろ行きましょう」
「そうだな。合わせてもらってすまん」
「1人じゃ危なくて移動できませんから」
ルークはアラタの手を掴んで地面から起き上がると、走り始める前に尻に付いた土を払い落とした。
そうしていざ出発である。
※※※※※※※※※※※※※※※
「あーあーこれは」
「まずいな。アラタどうする?」
「まずは観察しましょう。闇雲に動ける規模じゃない」
夜のミラ丘陵地が赤く染まる。
暗闇の中に煌々と燃える陣は、どこか幻想的ではあるものの美しさは微塵もない。
せっかく打ち込んだ柵の杭も、数人で協力して張ったテントも、乏しい補給の中で大切にしていた食料も、全てが虚しく灰塵に帰していく。
無情だ。
そしてそれは、アラタがさきほど帝国軍の陣地にやったこととまるで同じだった。
「どうです?」
アラタは自分で考える事を諦めてルークに聞くことにした。
「派手に燃えてるように見えるけど、表面だけっぽいな」
「表面?」
「陣地正面、まあ俺たちもさっきまで同じことやってたんだし、嫌がらせ目的だろうな」
「それって変じゃないですか?」
「あ?」
「こっちは戦力が足らないからそうしているだけで、向こうは違いますよね?」
「まあ、確かに」
アラタは頭が空っぽな分、余計な事に気を取られることなく物事を捉えることが出来る。
逆に多少頭を使わなければならない問題は苦手である。
「アラタ、八咫烏なら何をする?」
「……破壊工作か、暗殺ですね」
「それだな。食糧庫か救護所、それか司令部」
「司令部最優先、それから食料と救護ですね」
「違う。食料優先、それから救護と司令部だ。行くぞ」
「了解です」
ルークの指摘したように、敵軍は陣地正面ばかりを攻撃しているようだった。
だから案外簡単に側面から公国軍の陣地に戻ることは出来た。
「……静かすぎる」
ルークの言ったように、中で戦闘は起こっていないようだった。
本当に嫌がらせ目的の正面攻撃のみで、2人の不安は杞憂に終わるかに思える。
それほど内部は安定していて、正面の敵に対処しようとしているだけだった。
「ルークさん」
「ん?」
「【感知】スキルのスペックは?」
「俺は半径300m、精度は距離と反比例。ただ人数が多いと解析しきれねえ」
「反ぴ…………? まあいいや。俺が探るのでスキルを切って静かにお願いします」
「お前まさか反比例が——」
「【感知】起動します」
反比例が分からないアラタ君がスキルを起動した。
彼の【感知】は【敵感知】というスキルから派生したもので、その系譜からして対人に高い効果を持つ。
故に【罠感知】の進化系のルークのそれより今回の目的に沿っていた。
まず真横にいる味方の反応。
そこから拡充して、南入り口の兵士や待機中の兵士たちによる穏やかな魔力の流れが感じ取れる。
そこを超えていくと、今度は荒々しく高速移動する反応。
これは方向と状態的に正面にいる敵騎兵のそれだろう。
今のところ気になるものは何もない。
ルークのそれと違い全方位同時警戒が出来ないアラタは、スキルの強度を変えることで任意の方向の警戒を行う。
元来た方向の索敵を終えて、別な方向にアンテナを張る。
「……いました。数は不明、少数、交戦中です」
先ほどまで走り通してここまで帰って来たルークには、アラタも少しは悪いと思っている、そう願いたい。
またしても数百名の兵士が集結するような陣地の中を駆け抜けていく黒い影。
流石にルークに合わせてはいられないので、アラタが先に走っていく。
本来ならとっくにガクガクになっているはずの足は、魔力と【身体強化】で無理矢理動かされていた。
【感知】の向きを絞り、精度を上げる。
彼の手元に返ってくるのは、耳の奥底をほじくり返されるような不快感。
人がまた1人死んだ。
「チッ」
短く舌打ちをすると、さらに走る速度を上げる。
ほぼ全力疾走に近い状態で大地を駆け抜けると、アラタは勢いそのまま抜刀した。
【暗視】は常時起動している。
「レイヒムさん!」
「その声……アラタか!」
「敵ですね!」
「あぁ!」
「評価は!」
「C以下だ!」
「斬ります!」
「おう! 気を付けろ! 狙いは俺たち冒険者だ!」
なぜ戦争中に冒険者を狙い撃ちする意味がある?
ふと浮かんだ素朴な疑問だったが、今考える必要は無い。
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