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2巻
2-3
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そういうわけで、カイルはマーシャルで買った鉄の剣を使っているから、これでも時間がかかっているほうだ。魔力保存という名目で、俺とレジオットは敵が一匹の時はカイルに任せていた。
もっとも俺の魔力量なら本来、そんなことを気にする必要はないのだが。ずっと魔法を使い続けてピンピンしていたら不自然だから、加減している。
「チッ、面倒だ」
切れ味の悪い剣に痺れを切らしたカイルが、火の玉を敵に打ちこんだ。大猿は瞬く間に燃え尽きる。
「おい、魔法は俺とレジオットに任せとけってば」
「周囲に誰もいないことは確認済みだ。いつまでもまだるっこしい倒し方をしていられない」
そう言って、カイルは新たに現れたモンスターに最初から火の弾丸を浴びせる。
……今晩は魔力供給が必要そうだなあ。気合を入れて、音の漏れない二重結界を張るとするか。
昼を過ぎた頃。俺たちは、人一人がすれ違うのがやっとの細い通路を進んでいた。
「こんなところで他のチームと出会ったら、嫌っスねえ」
「縁起でもないことを言わないでよ、テオ」
おいおい、フラグを立ててんじゃねえよと眉をひそめていたら、早速フラグ回収案件らしい。
テオが足を止めて、困り顔で振り向く。
「あ、まずい。誰か向こうから来るっス」
「引き返そう」
「ごめんなさいボス、もう見られたっス……」
通路の向こうから現れたのは、立派な体躯をした黒髪の狼獣人だった。例の鼠獣人がいるパーティだ。
鼠獣人が弓を構えてクインシーを狙う。俺はカイルに目で合図して先手を取ろうとしたが、なぜか狼獣人は攻撃をやめさせた。
「待て、ディド。打つな」
「なぜだ」
「クインシーには危害を加えないと約束したんだ」
ん? 知り合いか? クインシーのほうを確認すると、彼も狼獣人を攻撃する意思がなさそうだ。しばらく様子を見てみるか。
「まだ生き残っていたようで、なによりだ。クインシー」
「ヴァレリオ、君もね」
「そこを通してくれないか。地上に戻りたいんだ」
おお、ヴァレリオとかいう狼獣人は、すでに鍵を三つ集めたみたいだな。見るからに強そうだが、運も頭もいいのか。
クインシーはしばらく考え込んでいたが、結局道を譲ることにしたらしい。
「ありがとう」
ヴァレリオは余裕を感じさせる微笑みを見せた。カイルほどじゃないが低くいい声で礼を告げ、クインシーの肩に手を置いて通り過ぎていく。
クインシーは複雑そうな顔をしている。あいつから鍵を奪えばよかったんじゃないか? 今からでも間に合うぞ。
「よかったのか?」
「……うん。急ごう。鍵はあと五つしかない」
いいらしい。貴族同士の複雑な事情があるんだろう。
アンタがいいなら従うが、優勝への道は遠のいた気がしてならない。さよなら、一ハンの追加報酬……
(いや、まだ可能性はあるよな。なんとか残りの鍵を見つければいいんだ)
道を抜けた頃にはもう、いい時間になっていた。土埃が濃くて居心地が悪いが、この辺りで野営できる場所を探すしかない。
少しでも野営場所を整えようと道端の石をどけていると、なにか光るものがあった。
「ん? これは……鍵じゃないか?」
「あった……! ありましたよボス、黄色い鍵!」
「あったね。よかったよ……」
クインシーがあからさまにホッとした表情をしている。よかったな。
安心したクインシーは、鍵を鏡に登録したら寝支度を整え、すぐに寝入ってしまった。
レジオットとテオが先に見張りをしてくれるというので、俺とカイルも野営ベッドに潜り込んだ。
ベストポジションを探してもぞもぞしていると、背後からカイルが抱きついてくる。
「イツキ、欲しい」
「……魔力が、だよな?」
「魔力も欲しいし、イツキのことも触りたい」
「ばっ……魔力摂取だけにしろよ、なに考えてるんだ」
「イツキのことを考えていた。早くこんな面倒な仕事は終わらせて、お前と二人きりになりたい」
おいおい、カイルのテンションが振り切れてるんだが……まあ、そりゃそうか。付き合いはじめてすぐに、予選がはじまっちまったからな。
俺だって、カイルとイチャイチャしたい気持ちは……ある。あるんだが、こんなところじゃ嫌だ。
「待て、とにかく魔力摂取だな? 結界を張るから、ちょっと時間をくれ」
全員を包む結界の中にもう一枚、俺たち二人の音を遮断する結界を張る。
これが結構難しいんだよ。シャボン玉の中に、もう一つシャボン玉を作るみたいな難しさがある。
結界を張る間に、カイルは俺たちの寝床周りに土埃が入ってこないよう風で吹き飛ばしていた。地味にありがたい。
「終わったか?」
「できた……んむぅ」
待ちきれないとばかりに、性急にキスをされた。舌を絡めて魔力を吸われながら、尻を撫でまわされる。
「んっ、ん!」
カイルは器用に俺の下穿きをずり下ろすと、直接肌に触れた。
尻尾の付け根をくすぐられて、逃げようと腰を引いたら詰め寄られた。ゴリッと硬くなったモノを太ももに押しつけられ、カッと頬が熱くなる。
ダメだ、こんな風にされたら……っ、ダンジョン内ではするなってあれほど言ったのに……!
(俺だってカイルとしたいのを我慢してるのに、流されちまうじゃねえか……っ!)
情熱的なキスを受けながら、尻の谷間の秘所に指先を当てられた。カイルは指に水魔法で生成した粘液をまとわせて、侵入を試みている。
「ん、ふっ!? ぅううー!」
指が一本入ってきた……っ、本気でまずいって!
カイルが一度唇を離して、欲情してギラつく瞳で俺の瞳を射貫く。
「イツキ、力を抜け」
「む、無茶言うな、こんな……っ!」
こんなところで盛らないでくれ、音は聞こえなくても毛布の膨らみは見えてんだぞ!? リラックスなんてできるか!
「早くお前の中に入りたい」
「あ、うぅ……こ、ここじゃ嫌だ」
「どうしてもか?」
「無理……っ!」
カイルはハア、と悩ましげな溜め息をつくと、また俺の唇を食んだ。魔力を吸われる感覚がする。
「ふゃ……んぐ、ぅ」
吸われるたびに腰の奥底が疼いて、尻穴を物欲しげに締めつけてしまう。
(ああ、欲しい……カイル、カイル)
体が切なくなってくるが、こんな場所で抱いてとねだれるはずがない。それでも愛撫をやめさせたくなくて、与えられる快感を追いかけながら舌を絡め返した。
満足するまで魔力を吸ったカイルは一度口づけを解き、情欲の滲んだ赤紫色の目を切なげに細める。
「だったら、中には挿れない。触るだけならいいか?」
カイルはちゅ、ちゅと角度を変えて口づけながら、勃ち上がりはじめている俺の愚息を指の輪っかで包んできた。
「は、ぅ……っ!」
上下に擦られて息が詰まる。体が熱くなってきたが、まさか毛布から出るわけにもいかない。絶対にテオたちに気取られたくはない。
「んー……っ」
また唇を奪われた。今度は魔力を吸うためではなく、快感を引き出すためだけに口蓋の奥を舌先でくすぐられて、どんどん息が上がってしまう。
先走りが滲みはじめた切っ先を指の腹で優しく撫でられて、ビクビクと背筋が震えた。
「んっ、あ……」
カイルは思う存分俺を乱してから、やっと唇を解放する。ぽってりと腫れぼったくなった下唇を見て、色気溢れる笑みを浮かべたカイルは、俺の体を反転させた。
「うわっ?」
「こっち向きのほうが弄りやすい」
背後から下穿きをずり下ろされて、膝まで露わになる。
(だ、か、ら! いくら毛布を被ってるとはいえ、こんなダンジョンの中で肌を露出させるなってば……!)
脱がされた服を引っ張って元に戻そうとしたところで、前に手が伸びてくる。
「……っ」
完全に勃ち上がったモノを握られて息を詰めていると、カイルは垂れ耳の付け根側に頬ずりしながら囁いた。
「お前の太ももを借りていいか」
「え? あ」
先走りで滑ったカイルの雄が、俺の太ももの間に押し入ってくる。とんっと先端がタマに軽く当たって、きゅうんと下腹部が切なくなった。
「あ、ぅ、やっ」
前を擦られながら素股をされていると、まるで挿れられているようでいたたまれない。
「イツキ……」
「はぅ、うっ、ん……っあ、うぁ」
どうしよう、止めなきゃダメなのに……カイルの荒い息遣いがうなじにかかるたびに胸がきゅうきゅう軋んで、もっとしてほしくなってしまう。
ギュッと太ももを締めると、カイルが腰の動きを速めた。同時に前を弄る手も速くなり、俺の息を荒くなる。
「あ、ぁ、それ……っ、も、イきそ……っ!」
カイルが強く俺のモノを握り込む。ピュッと精液が先端からほとばしった。彼も遅れてドピュッと子種を足の間に放出する。
何度か塗り込めるように抜き差しした後、魔法で綺麗にしてくれた。
(あーあ、こんな場所でイッちまった……カイルめ、時と場合を考えてくれよ……気持ちよかったけどさ)
服を直して内心ぐちぐち呟いていると、長耳を優しく手櫛で梳かれた。
心地よいマッサージのような動きにうっとりしていると、文句を言う気も失せてくる。
「……てんじゃねえよ……」
カイルがなにかを呟いているが、頭が働かない。射精後の倦怠感も相まって、気がつけば寝ついていた。
予選四日目の朝がきた。
テオやレジオットからは特に変な反応をされなかったので、昨日のアレはバレなかったみたいだ。心から安堵の溜め息をついた。
青い鍵はひょんなことから揃った。道を引き返した先で遭遇した、クインシーの知り合いらしき貴族が、あっさり譲ってくれたのだ。
「戦って手に入れるものだと思ってたから、なんか拍子抜けだな」
魔月鏡に青い鍵をかざして登録しているクインシーにぼやくと、彼は苦笑する。
「勝利条件はあくまで鍵を手に入れることであって、戦いじゃないからねえ。領地間の力関係やら同盟やら、いろいろな事情が関与してくるし」
「てことは、さっきの貴族となにか取引したってことか」
「まあね。きっと春頃には、マーシャル領で新名物が流行ると思うよ」
へえ、美味いものが流行るぶんには大歓迎だ。期待しておこう。
クインシーは鍵の登録が終わると、その足でダンジョンからの脱出を図った。
十一階層付近で三チーム十五人から襲撃を受けたが、そんなのはカイルの敵ではない。
「どけ」
カイルが剣を突きつけると、敵わないと見た貴族やその部下たちは一目散に逃げていく。
見た目的に弱そうな俺を襲おうとしてきた輩には、石粒を足に叩きつけてやった。痛みに転げまわるやつらを置いて、ダンジョンを脱出する。
入り口のところで待機していた騎士っぽい兄ちゃんが、俺たちの順位を教えてくれた。
「おめでとうございます! マーシャル領、四位着です」
なんとか予選は突破したようだな。やれやれだ。
本戦がはじまるまで、しばらく時間がある。クインシーたちと一緒に彼の屋敷に帰ろうとした俺は、カイルに引き止められた。
俺の腕を引いて足を止めさせたカイルは、クインシーたちに宣言する。
「本戦までイツキと二人で過ごす。犬っころ、なにかあれば、『食べ頃の豚亭』に連絡をよこせ」
テオはぱしぱしと目を瞬いてから頷く。
「へ? あ、はーい、わかりました旦那。ごゆっくりー!」
俺が驚いて言葉を失くしている間に、仏のような顔をしたクインシーと、微笑ましそうに手を振るレジオットが遠ざかっていく。
「おい、なに勝手に決めてんだよ」
「お前が嫌がるから離れたんだ。やつらがいると、気になって集中できないんだろう?」
「まあ……それはそうだが」
だからって、いかにも今からヤリます! みたいな感じで連れ去られるのには納得がいかないっていうか、単純に恥ずかしいのだが……
カイルはそこのところをまったく気にしていないようで、真っ直ぐ宿へ向かった。
食事処を兼ねた宿は、居心地がよさそうな造りだった。マーシャルで世話になった、白枝のせせらぎ亭に雰囲気が似ている。
ふくよかな豚獣人の女将さんと丸々と太った子豚のような男の子が、にこやかに対応してくれた。食べ頃の豚……いや、なにも言うまい。
さすが王都と唸るほど出来のいい食事をいただいた後、カイルに部屋へ連れ込まれた。
まだ昼を少しばかり過ぎた時間なのに、ベッドに押し倒されてしまい慌てて肩を押す。
「待て待てカイル、気が早い」
「どこがだ。俺は充分我慢したと思うが」
「まだ昼だろ? ダンジョンから帰ったばかりだし、俺たちには休憩が必要だと思わないか?」
「思わないな。休んでいる暇があったら、イツキのことを可愛がりたい」
垂れ耳の先を持ち上げられて、キスを落とされる。キザな仕草がどうしようもなく似合っていて、胸がときめいてしまった。
「その……数日ぶりだし、ちゃんと慣らしてくれよな……」
消え入りそうな声で呟くと、カイルは嬉しくてたまらないというような表情で微笑む。
「ああ、念入りに慣らそう」
あれ、これもしかして、言わなくてもいいことを口にしちまった気がするぞ。
どうにも落ち着かなくて視線をさまよわせていると、カイルの手が俺の服をまくってくる。明るい部屋の中で、少しずつ裸にされていく。
うう……っ、あまり見ないでくれ。軽く身をよじってから風呂にすら入っていないことに気づいた。
「カイル、汗を流したい」
「後にしろ」
一考の余地もなく却下されて、彼の我慢が限界に近いことを知る。
体臭やら汚れやらが気になるが、これ以上カイルを待たせるのは危険な気がするので、魔法で綺麗にしておいた。
あってよかったわ、『魔力の支配』ギフト。
暖められた室内でも、全ての服を脱いでしまえば多少肌寒い。ぶるりと震えたのは、寒さからだろうか……貧相な体にシーツを巻きつけて、カイルの視界から隠す。
(また初めての時みたいに、醜態を晒しちまったらどうしよう)
大切に抱かれたのが嬉しすぎて泣くとか、今思い出しても赤面ものだ。
今まで本気の恋愛を避けていたせいか、カイルと体を重ねるとどうにかなってしまいそうなくらい、気持ちが千々に乱れてしまう。
俺の服を畳んで枕横のチェストに置いたカイルは、自身の服と靴を放り出すように脱いでベッドに乗り上がってくる。
シーツをめくられそうになり、とっさに抵抗してしまった。
「どうしたイツキ、心配せずともがっついたりはしないつもりだ。優しくする」
そう告げるカイルの目は、情欲でグツグツと煮えたぎっているように見える。それでも無理矢理シーツを剥ぎ取ったりはせず、俺が返事をするのを待ってくれた。
そんな彼の愛情を、無下にはしたくなくて。
勇気を振り絞り、シーツから腕を出してカイルの手を引いた。ニッと唇の端を吊り上げて、不敵に見えるように強がってみせる。
「心配なんかしてねえ。カイルのこと、全部受け止めてやりてえから……来いよ」
お前が俺のことを抱くなら、俺はお前の心を抱きしめてやる。
そんな心意気で自らシーツから出て誘うと、アレキサンドライトの瞳の奥に灯った情熱の炎が、より一層燃え上がった。
すぐに裸のカイルが俺に覆いかぶさってくる。彼自身のスパイシーで色香溢れる体臭に包まれて、ドキドキと心臓がうるさい。
出会った頃のカイルは栄養失調で痩せぎすだったのに、今ではしっかり筋肉がついている。細マッチョになった魔人の均整の取れた体を、うっとりと眺めた。
「イツキ……綺麗だ」
カイルも俺の顔の横に両手をつきながら、締めきったカーテンから漏れる光に照らされた俺の全身を舐めるように見下ろしていた。
「う……早く触ってくれよ」
とても目を合わせられなくって、鍵をかけた部屋の扉を意味もなく凝視する。
「どこから触ってやろうか」
「どこでもいいから、早く」
「そうだな……」
カイルは、ご馳走を前にした子どものような顔で、上半身に視線を這わせる。そして桃色に色づいた俺の乳首に狙いを定め、吸いついた。
「はぅ……っ」
ぺろ、ぷちゅ、と舐めて、舌先で押し潰す。俺はそのたびに、胸を突き出すようにして身をよじった。
反対側の乳首も指先でつままれた。こすこすと捏ねるように弄ばれ、充血して色づいていく。
「赤くなってきた。美味そうだ」
「や……そういうこと言うの、やめてくれよ」
「他にどう言えばいいんだ。扇情的で大変そそられる、とでも言い換えれば満足か?」
「じゃなくて……くぅ……!」
両方の乳首をいっぺんにつねられて、痛気持ちいい感覚に声が上擦る。すっかり勃起した乳首から、カイルはやっと手を外した。
「次はどこにするか……」
そう言って、胸元から撫で下ろすように手を滑らせたカイルは、次の標的を半勃ちの陰茎に定めた。
そっと輪郭をなぞるような、柔らかな手つきで竿を撫でられる。もどかしい手つきに腰を揺らすと、クッと笑い声が聞こえた。
「いいなイツキ、もっと乱れてくれ」
余裕な態度のカイルにちょっとムカついたので、やつの乳首を舌先でペロリと舐めてみた。少ししょっぱい。
カイルは目を丸くしたが、あまり感じてはいなさそうだ。彼は薄く笑みを湛えた唇を、再び俺の胸に近づけた。
「乳首が気に入ったのか? なら、もう一回してやる」
「違う、っあん……ひぁ、あっ」
前を弄られながら胸を唇で刺激されるのは、たまらなかった。へこへこと無意識に腰を上下させてしまう。
乳首から顔を離したカイルは、興奮で頬を軽く染めながら俺の片足を持ち上げた。
「そろそろ触るぞ」
屹立から離れたほうの手も、俺の尻を割り開くようにして穴を露出させた。カイルの視線が秘所に注がれる。
「……っ」
あああっ恥ずかしいんだが! そんなにまじまじと見てんじゃねえよ!
垂れ耳の端を握って耐えていると、ぬるつきをまとった指がつぷりと胎内に入ってきた。
「ぁ、っ」
昨日指を挿れられたばかりだからか、抵抗感は少なめだった。
ぬっぬ……と内壁を押しながら進んできた不埒な指先は、前立腺を違わずタップする。
「あ、うゃっ……ん、そこっ……っあ、ぁ、あっあ!」
トントンとリズミカルにつつかれると、そのたびに嬌声が喉から漏れ出ていく。
クチュクチュと尻穴から音が立つまで弄られて、キュッと指を締めつけた。
「一度達しておけば、ここもチカラが抜けるか?」
「あ、わかんなっ、いぃっ! ひゃん!」
もう片方の手で竿を握られて、高い声が上がる。上下に扱かれながら我慢汁の溢れた鈴口辺りを撫でられると、簡単にイッてしまった。
「ぃ、あああぁん……っ!」
ぴゅく、ぴゅるっと噴き出した白濁液が、俺の太ももを濡らした。カイルは一度穴から指を引き抜くと、ぬるつく液体を指先にまとわせる。
「んっ、ぐ」
尻の圧迫感が増した。今度は二本、指が入ってきたみたいだ。慎重な手つきで、バラバラに動きながら奥へ侵入してくる。
ふうふうと息を整えようとするが、前立腺を二本の指で角度を変えながら次々に押されて、息をつく暇もない。
「も、そこばっか……触んなって、ん!」
「だが、ここがお前の好きなところじゃないのか? それとも耳がいいのか」
「あっ!?」
縁を辿るようになぞられ、甲高い声が上がる。耳の内側をこちょこちょくすぐってから、悪戯な手は離れた。
「まだ狭そうだな……」
「ふ……くぅ……」
カイルは辛抱強く中をほぐした。俺との約束を律儀に守るつもりらしい。じれったくなるほどの時間をかけて、穴の中をとろとろにしていく。
繊細に動く指先と、うかがうように俺の顔を時々確認するカイルの様子を見ているうちに、触れられていない前からぬるりと先走りが滴っていた。
(さすがに、ほぐしすぎじゃないかっ?)
何度も奥まで指を出し入れされてぐぷぐぷと泡が立ち、卑猥な音が耳を打つ。弄られるうちにより敏感になった体が、ピクピクと震えた。
「も、大丈夫……だから、そろそろ……っ」
「いいのか?」
「ん、挿れてくれ……」
熱に浮かされながらくたっと足を広げると、カイルはゴクリと唾をのみ込む。
彼は指を引き抜き、自身の屹立に手を添えた。すでにギンギンに勃ち上がったモノには、血管の筋が浮き出ている。
前も思ったが、かなり大きい。今までに直接見たペニスの中でも一、二を争う大きさだ。アレで奥を突かれたら……
期待と、少しの不安でもぞりと動いた腰を、カイルが両手で固定した。
「挿れるぞ」
グッと押し当てられて、ぬかるんだ胎内に雄が潜り込んできた。ああっ、入ってくる……っ、カイルが……
「……っ、あぁ……」
宣言通り念入りにほぐされたからか、抵抗感も痛みもなく、ただ圧迫感だけを感じる。ゆっくりと息を吐きながら受け入れた。
指で届かない奥のほうまで、じりじりとカイルが腰を押し進める。上気した頬が、漏れる熱い吐息が、彼の興奮を物語っていた。
「は、あ……っあ」
「はあ、とろとろだな……」
「あ、そういうこと……言うなって」
きゅうと剛直を締めつけてしまう。カイルが息を詰めるのを見て、ふうぅと意識して長い息を吐いた。息が震えながら掠れていく。
「はあぁ、あ……あ、ぁ」
「……ふっ……」
奥のほうまで腰を進めたカイルが、赤くなった俺の頬に手を添えた。口元に弧を描いた自然な笑みは、思わず見惚れるほどに綺麗だ。
「どうだ、お前の希望通り、優しくできただろう?」
「ぅ……そうだな……ん」
じれるくらいに丁寧だったと頷くと、カイルは嬉しそうに顔を近づけてきたので、目を閉じてキスを受け入れる。口蓋をぐるりと舌で撫で上げられながら、ゆっくりと抽送がはじまった。
「ん、ふんぅ……」
くぐもった声が喉奥から上がる。折りたたまれた足をカイルの腰に絡めると、チッと舌打ちが聞こえた。
「あまりかわいいことをするな、思いきり突き入れたくなるだろう」
「な……っ、あぅ!」
トンッとしこりを突かれて、腰がビクッと跳ねた。カリの部分で擦られると背筋に電流が走り、身悶えてしまう。
「あ! ぁ、それ……っ、気持ち、いぃ……っ!」
「ここか」
「ひぁっ! あ!」
俺の完勃ちした雄芯は、カイルが腰を突き入れるたびに上下に揺れる。もっと気持ちよくなりたくて手を添えようとすると、カイルも指を絡めてきた。
「気持ちいいな、イツキ……俺も気持ちがいい。もっとよくしてやる」
「はぁっ、あっ! それぇ、やば……あ、あぁっ! あっ!」
前も後ろもピストンされて、イきそうになってしまう。まだカイルと繋がっていたくて、ギュッと背中にすがりついて快感を逃した。
カイルが眉間に皺を寄せて、色っぽい吐息を吐く。
「はあ……っイツキ、お前の中、よすぎる……っ」
「ん、俺も、そろそろ……むりぃ!」
「中に、出していいか……っ」
「きて、きてくれ……っ!」
カイルの動く速度が速くなる。前も容赦なく扱かれて、俺は堪える間もなく射精した。
ビクビクと震える俺に、カイルが自身の硬いモノを、切羽つまった様子で突き入れてくる。
「やっ、やあぁ! も、イッた、からぁ! 止まってく……あぁ!」
「もう、俺も……っ!」
逃げようとした腰を抱えられ、結腸まで届けとばかりに突かれる。カイルはグッと息を詰めて、俺の胎内で達した。
温かい感覚が奥に広がる。カイルはやっと動くのを止めてくれて、ホッと体中の力を弛緩させながら彼の熱を受け止めた。
本戦がはじまるまでの短い日々を、俺たちはほとんど宿から出ずに過ごした。
カイルを受け入れた日は、あの後すぐに眠ってしまった。ダンジョンで疲れが溜まっていたところに、激しい運動をしたせいだろう。
次の日の朝はカイルが部屋まで食事を持ってきて、手ずから食べさせてくれた。
「ほら、口を開けろ」
「自分で食べられるからスプーンをよこせよ」
「嫌だ。俺はイツキに食べさせたい。それともお前は、俺の愛情表現を受け入れてはくれないのか?」
好みすぎる顔が少し寂しそうに、じっと見つめてきたら、応えないわけにはいかないだろう。
「くっそ……あー……」
「あーん」
「むぐ」
「どうだ?」
「……ふぉいひい」
俺もカイルの口に、サラダの葉っぱを放り込んでやる。食べさせ合って、思う存分イチャイチャした。
お互い体のどこかしらをひっつけながら、本を読んだり、お茶したり、兎耳のマッサージをされたりもした。
極楽すぎる耳のマッサージを受けながら、ふと俺ばっかり気持ちいいのもよくねえよなあ、と考える。
耳かきにちょうどよさそうな木の棒が部屋の中にあったので、カイルにしてやることにした。
「なあカイル、ここに頭を乗せてくれ」
ぽんぽんと膝を叩くと、カイルはすぐにベッドに横になって、俺の膝に頭を乗せる。
「なんだ、枕になってくれるのか?」
面白そうな表情で、俺を見上げるカイル。その表情と角度、新鮮だな……数秒見惚れてから、ハッと気を取り直す。
「それよりも、もっといいコトしてやるよ。耳を見せてくれ」
髪を避けて、先が尖った耳を露出させる。物珍しくて耳の尖っている部分を触ると、カイルはくすぐったそうに笑い声を漏らした。
「ふ……」
「カイルはここ、弱いのか?」
「どうだろうな、獣人のように性感帯というわけではないが」
「ふうん」
気が済むまで尖り耳を触った後、カイルの耳の穴に耳かきをそっと入れた。
「動くなよ」
「なにをしてるんだ」
「耳かき」
「なんだそれは」
「耳の中を掃除するんだよ。気持ちいいぞ」
本来人の耳は、耳かきなんてしなくても自浄作用で汚れが出てくる仕様になっている。
けれど耳の中には気持ちよくなる神経があって、それでみんな耳かきをしたがるらしい。
カイルはちょっと難しい顔をして、意味がわからないとでも言いたげな表情をしていたが、大人しく耳かきをさせてくれた。
その表情が、だんだんとほぐれていく。ほお、と気持ちよさげな吐息が、カイルの口から漏れる。
「なるほどな……これはいい」
「だろ? ほら、反対側向いてくれ」
カイルが俺の腹に顔が向くように、顔の位置を調整してくれた。
腰を抱かれながら、耳かきをする。途中胸元に伸びてこようとした不埒な手は、はたき落とした。
「おいこら、危ねえだろ」
「見てたら触りたくなったんだ」
「じっとしててくれよ、もう終わるから」
こしょこしょと耳奥をくすぐってから、ほとんど耳垢の出なかった耳掃除を終えた。
「これで終わりだ」
「そうか。なら次は俺の番だ。その棒を貸せ」
「え? いや、俺は別にいらないんだが」
「遠慮するな」
ヒョイと体の場所を入れ替えられて、今度はカイルの膝の上に俺の頭が乗る。
この体勢、カイルの色っぽくてスパイシーな体臭をモロに感じられて、ちょっとクるものがあるな……
「耳を持ち上げるぞ」
垂れ耳を思いきり持ち上げられて、耳の穴が空気に晒される。
音がいつもよりクリアになって、カイルがフッと笑った吐息の音がやけに大きく聞こえた。耳に息を吹きかけられた気分になって、肩をすくめる。
普段から風呂では兎耳も洗うようにしているが、内側なんてどうなっているかあまり見ないから、汚れが溜まってなきゃいいんだが……
緊張しながら待っていると、するりと耳かき棒が耳奥にさし入れられた。柔らかい力で耳の中をぐるりと擦られて、背筋が震えた。
なんとも言えない気持ちよさにびくついていると、片方の耳を掃除し終えたカイルに体の向きを変えさせられる。
「次はこっち側だ」
目を閉じて心地よい感覚を受け入れていると、しばらくして耳かきが耳の中から出ていった。
もう終わりか? と油断していると、耳穴の縁を爪先でなぞられる。
「これ、汚れか?」
「ぅひっ!?」
カリ、と爪先でひっかかれて、パッと耳を押さえた。
「違った、ホクロだったようだ」
「そ……そうかよ」
今のはヤバかった。カリカリと爪先でかき続けられたら、どことは言わないが反応してしまうところだった。
そんな感じで、俺たちは二人の時間を誰にも邪魔されずに満喫した。夜もその、いろいろと……声が枯れそうになる程度には仲良くした。
もっとも俺の魔力量なら本来、そんなことを気にする必要はないのだが。ずっと魔法を使い続けてピンピンしていたら不自然だから、加減している。
「チッ、面倒だ」
切れ味の悪い剣に痺れを切らしたカイルが、火の玉を敵に打ちこんだ。大猿は瞬く間に燃え尽きる。
「おい、魔法は俺とレジオットに任せとけってば」
「周囲に誰もいないことは確認済みだ。いつまでもまだるっこしい倒し方をしていられない」
そう言って、カイルは新たに現れたモンスターに最初から火の弾丸を浴びせる。
……今晩は魔力供給が必要そうだなあ。気合を入れて、音の漏れない二重結界を張るとするか。
昼を過ぎた頃。俺たちは、人一人がすれ違うのがやっとの細い通路を進んでいた。
「こんなところで他のチームと出会ったら、嫌っスねえ」
「縁起でもないことを言わないでよ、テオ」
おいおい、フラグを立ててんじゃねえよと眉をひそめていたら、早速フラグ回収案件らしい。
テオが足を止めて、困り顔で振り向く。
「あ、まずい。誰か向こうから来るっス」
「引き返そう」
「ごめんなさいボス、もう見られたっス……」
通路の向こうから現れたのは、立派な体躯をした黒髪の狼獣人だった。例の鼠獣人がいるパーティだ。
鼠獣人が弓を構えてクインシーを狙う。俺はカイルに目で合図して先手を取ろうとしたが、なぜか狼獣人は攻撃をやめさせた。
「待て、ディド。打つな」
「なぜだ」
「クインシーには危害を加えないと約束したんだ」
ん? 知り合いか? クインシーのほうを確認すると、彼も狼獣人を攻撃する意思がなさそうだ。しばらく様子を見てみるか。
「まだ生き残っていたようで、なによりだ。クインシー」
「ヴァレリオ、君もね」
「そこを通してくれないか。地上に戻りたいんだ」
おお、ヴァレリオとかいう狼獣人は、すでに鍵を三つ集めたみたいだな。見るからに強そうだが、運も頭もいいのか。
クインシーはしばらく考え込んでいたが、結局道を譲ることにしたらしい。
「ありがとう」
ヴァレリオは余裕を感じさせる微笑みを見せた。カイルほどじゃないが低くいい声で礼を告げ、クインシーの肩に手を置いて通り過ぎていく。
クインシーは複雑そうな顔をしている。あいつから鍵を奪えばよかったんじゃないか? 今からでも間に合うぞ。
「よかったのか?」
「……うん。急ごう。鍵はあと五つしかない」
いいらしい。貴族同士の複雑な事情があるんだろう。
アンタがいいなら従うが、優勝への道は遠のいた気がしてならない。さよなら、一ハンの追加報酬……
(いや、まだ可能性はあるよな。なんとか残りの鍵を見つければいいんだ)
道を抜けた頃にはもう、いい時間になっていた。土埃が濃くて居心地が悪いが、この辺りで野営できる場所を探すしかない。
少しでも野営場所を整えようと道端の石をどけていると、なにか光るものがあった。
「ん? これは……鍵じゃないか?」
「あった……! ありましたよボス、黄色い鍵!」
「あったね。よかったよ……」
クインシーがあからさまにホッとした表情をしている。よかったな。
安心したクインシーは、鍵を鏡に登録したら寝支度を整え、すぐに寝入ってしまった。
レジオットとテオが先に見張りをしてくれるというので、俺とカイルも野営ベッドに潜り込んだ。
ベストポジションを探してもぞもぞしていると、背後からカイルが抱きついてくる。
「イツキ、欲しい」
「……魔力が、だよな?」
「魔力も欲しいし、イツキのことも触りたい」
「ばっ……魔力摂取だけにしろよ、なに考えてるんだ」
「イツキのことを考えていた。早くこんな面倒な仕事は終わらせて、お前と二人きりになりたい」
おいおい、カイルのテンションが振り切れてるんだが……まあ、そりゃそうか。付き合いはじめてすぐに、予選がはじまっちまったからな。
俺だって、カイルとイチャイチャしたい気持ちは……ある。あるんだが、こんなところじゃ嫌だ。
「待て、とにかく魔力摂取だな? 結界を張るから、ちょっと時間をくれ」
全員を包む結界の中にもう一枚、俺たち二人の音を遮断する結界を張る。
これが結構難しいんだよ。シャボン玉の中に、もう一つシャボン玉を作るみたいな難しさがある。
結界を張る間に、カイルは俺たちの寝床周りに土埃が入ってこないよう風で吹き飛ばしていた。地味にありがたい。
「終わったか?」
「できた……んむぅ」
待ちきれないとばかりに、性急にキスをされた。舌を絡めて魔力を吸われながら、尻を撫でまわされる。
「んっ、ん!」
カイルは器用に俺の下穿きをずり下ろすと、直接肌に触れた。
尻尾の付け根をくすぐられて、逃げようと腰を引いたら詰め寄られた。ゴリッと硬くなったモノを太ももに押しつけられ、カッと頬が熱くなる。
ダメだ、こんな風にされたら……っ、ダンジョン内ではするなってあれほど言ったのに……!
(俺だってカイルとしたいのを我慢してるのに、流されちまうじゃねえか……っ!)
情熱的なキスを受けながら、尻の谷間の秘所に指先を当てられた。カイルは指に水魔法で生成した粘液をまとわせて、侵入を試みている。
「ん、ふっ!? ぅううー!」
指が一本入ってきた……っ、本気でまずいって!
カイルが一度唇を離して、欲情してギラつく瞳で俺の瞳を射貫く。
「イツキ、力を抜け」
「む、無茶言うな、こんな……っ!」
こんなところで盛らないでくれ、音は聞こえなくても毛布の膨らみは見えてんだぞ!? リラックスなんてできるか!
「早くお前の中に入りたい」
「あ、うぅ……こ、ここじゃ嫌だ」
「どうしてもか?」
「無理……っ!」
カイルはハア、と悩ましげな溜め息をつくと、また俺の唇を食んだ。魔力を吸われる感覚がする。
「ふゃ……んぐ、ぅ」
吸われるたびに腰の奥底が疼いて、尻穴を物欲しげに締めつけてしまう。
(ああ、欲しい……カイル、カイル)
体が切なくなってくるが、こんな場所で抱いてとねだれるはずがない。それでも愛撫をやめさせたくなくて、与えられる快感を追いかけながら舌を絡め返した。
満足するまで魔力を吸ったカイルは一度口づけを解き、情欲の滲んだ赤紫色の目を切なげに細める。
「だったら、中には挿れない。触るだけならいいか?」
カイルはちゅ、ちゅと角度を変えて口づけながら、勃ち上がりはじめている俺の愚息を指の輪っかで包んできた。
「は、ぅ……っ!」
上下に擦られて息が詰まる。体が熱くなってきたが、まさか毛布から出るわけにもいかない。絶対にテオたちに気取られたくはない。
「んー……っ」
また唇を奪われた。今度は魔力を吸うためではなく、快感を引き出すためだけに口蓋の奥を舌先でくすぐられて、どんどん息が上がってしまう。
先走りが滲みはじめた切っ先を指の腹で優しく撫でられて、ビクビクと背筋が震えた。
「んっ、あ……」
カイルは思う存分俺を乱してから、やっと唇を解放する。ぽってりと腫れぼったくなった下唇を見て、色気溢れる笑みを浮かべたカイルは、俺の体を反転させた。
「うわっ?」
「こっち向きのほうが弄りやすい」
背後から下穿きをずり下ろされて、膝まで露わになる。
(だ、か、ら! いくら毛布を被ってるとはいえ、こんなダンジョンの中で肌を露出させるなってば……!)
脱がされた服を引っ張って元に戻そうとしたところで、前に手が伸びてくる。
「……っ」
完全に勃ち上がったモノを握られて息を詰めていると、カイルは垂れ耳の付け根側に頬ずりしながら囁いた。
「お前の太ももを借りていいか」
「え? あ」
先走りで滑ったカイルの雄が、俺の太ももの間に押し入ってくる。とんっと先端がタマに軽く当たって、きゅうんと下腹部が切なくなった。
「あ、ぅ、やっ」
前を擦られながら素股をされていると、まるで挿れられているようでいたたまれない。
「イツキ……」
「はぅ、うっ、ん……っあ、うぁ」
どうしよう、止めなきゃダメなのに……カイルの荒い息遣いがうなじにかかるたびに胸がきゅうきゅう軋んで、もっとしてほしくなってしまう。
ギュッと太ももを締めると、カイルが腰の動きを速めた。同時に前を弄る手も速くなり、俺の息を荒くなる。
「あ、ぁ、それ……っ、も、イきそ……っ!」
カイルが強く俺のモノを握り込む。ピュッと精液が先端からほとばしった。彼も遅れてドピュッと子種を足の間に放出する。
何度か塗り込めるように抜き差しした後、魔法で綺麗にしてくれた。
(あーあ、こんな場所でイッちまった……カイルめ、時と場合を考えてくれよ……気持ちよかったけどさ)
服を直して内心ぐちぐち呟いていると、長耳を優しく手櫛で梳かれた。
心地よいマッサージのような動きにうっとりしていると、文句を言う気も失せてくる。
「……てんじゃねえよ……」
カイルがなにかを呟いているが、頭が働かない。射精後の倦怠感も相まって、気がつけば寝ついていた。
予選四日目の朝がきた。
テオやレジオットからは特に変な反応をされなかったので、昨日のアレはバレなかったみたいだ。心から安堵の溜め息をついた。
青い鍵はひょんなことから揃った。道を引き返した先で遭遇した、クインシーの知り合いらしき貴族が、あっさり譲ってくれたのだ。
「戦って手に入れるものだと思ってたから、なんか拍子抜けだな」
魔月鏡に青い鍵をかざして登録しているクインシーにぼやくと、彼は苦笑する。
「勝利条件はあくまで鍵を手に入れることであって、戦いじゃないからねえ。領地間の力関係やら同盟やら、いろいろな事情が関与してくるし」
「てことは、さっきの貴族となにか取引したってことか」
「まあね。きっと春頃には、マーシャル領で新名物が流行ると思うよ」
へえ、美味いものが流行るぶんには大歓迎だ。期待しておこう。
クインシーは鍵の登録が終わると、その足でダンジョンからの脱出を図った。
十一階層付近で三チーム十五人から襲撃を受けたが、そんなのはカイルの敵ではない。
「どけ」
カイルが剣を突きつけると、敵わないと見た貴族やその部下たちは一目散に逃げていく。
見た目的に弱そうな俺を襲おうとしてきた輩には、石粒を足に叩きつけてやった。痛みに転げまわるやつらを置いて、ダンジョンを脱出する。
入り口のところで待機していた騎士っぽい兄ちゃんが、俺たちの順位を教えてくれた。
「おめでとうございます! マーシャル領、四位着です」
なんとか予選は突破したようだな。やれやれだ。
本戦がはじまるまで、しばらく時間がある。クインシーたちと一緒に彼の屋敷に帰ろうとした俺は、カイルに引き止められた。
俺の腕を引いて足を止めさせたカイルは、クインシーたちに宣言する。
「本戦までイツキと二人で過ごす。犬っころ、なにかあれば、『食べ頃の豚亭』に連絡をよこせ」
テオはぱしぱしと目を瞬いてから頷く。
「へ? あ、はーい、わかりました旦那。ごゆっくりー!」
俺が驚いて言葉を失くしている間に、仏のような顔をしたクインシーと、微笑ましそうに手を振るレジオットが遠ざかっていく。
「おい、なに勝手に決めてんだよ」
「お前が嫌がるから離れたんだ。やつらがいると、気になって集中できないんだろう?」
「まあ……それはそうだが」
だからって、いかにも今からヤリます! みたいな感じで連れ去られるのには納得がいかないっていうか、単純に恥ずかしいのだが……
カイルはそこのところをまったく気にしていないようで、真っ直ぐ宿へ向かった。
食事処を兼ねた宿は、居心地がよさそうな造りだった。マーシャルで世話になった、白枝のせせらぎ亭に雰囲気が似ている。
ふくよかな豚獣人の女将さんと丸々と太った子豚のような男の子が、にこやかに対応してくれた。食べ頃の豚……いや、なにも言うまい。
さすが王都と唸るほど出来のいい食事をいただいた後、カイルに部屋へ連れ込まれた。
まだ昼を少しばかり過ぎた時間なのに、ベッドに押し倒されてしまい慌てて肩を押す。
「待て待てカイル、気が早い」
「どこがだ。俺は充分我慢したと思うが」
「まだ昼だろ? ダンジョンから帰ったばかりだし、俺たちには休憩が必要だと思わないか?」
「思わないな。休んでいる暇があったら、イツキのことを可愛がりたい」
垂れ耳の先を持ち上げられて、キスを落とされる。キザな仕草がどうしようもなく似合っていて、胸がときめいてしまった。
「その……数日ぶりだし、ちゃんと慣らしてくれよな……」
消え入りそうな声で呟くと、カイルは嬉しくてたまらないというような表情で微笑む。
「ああ、念入りに慣らそう」
あれ、これもしかして、言わなくてもいいことを口にしちまった気がするぞ。
どうにも落ち着かなくて視線をさまよわせていると、カイルの手が俺の服をまくってくる。明るい部屋の中で、少しずつ裸にされていく。
うう……っ、あまり見ないでくれ。軽く身をよじってから風呂にすら入っていないことに気づいた。
「カイル、汗を流したい」
「後にしろ」
一考の余地もなく却下されて、彼の我慢が限界に近いことを知る。
体臭やら汚れやらが気になるが、これ以上カイルを待たせるのは危険な気がするので、魔法で綺麗にしておいた。
あってよかったわ、『魔力の支配』ギフト。
暖められた室内でも、全ての服を脱いでしまえば多少肌寒い。ぶるりと震えたのは、寒さからだろうか……貧相な体にシーツを巻きつけて、カイルの視界から隠す。
(また初めての時みたいに、醜態を晒しちまったらどうしよう)
大切に抱かれたのが嬉しすぎて泣くとか、今思い出しても赤面ものだ。
今まで本気の恋愛を避けていたせいか、カイルと体を重ねるとどうにかなってしまいそうなくらい、気持ちが千々に乱れてしまう。
俺の服を畳んで枕横のチェストに置いたカイルは、自身の服と靴を放り出すように脱いでベッドに乗り上がってくる。
シーツをめくられそうになり、とっさに抵抗してしまった。
「どうしたイツキ、心配せずともがっついたりはしないつもりだ。優しくする」
そう告げるカイルの目は、情欲でグツグツと煮えたぎっているように見える。それでも無理矢理シーツを剥ぎ取ったりはせず、俺が返事をするのを待ってくれた。
そんな彼の愛情を、無下にはしたくなくて。
勇気を振り絞り、シーツから腕を出してカイルの手を引いた。ニッと唇の端を吊り上げて、不敵に見えるように強がってみせる。
「心配なんかしてねえ。カイルのこと、全部受け止めてやりてえから……来いよ」
お前が俺のことを抱くなら、俺はお前の心を抱きしめてやる。
そんな心意気で自らシーツから出て誘うと、アレキサンドライトの瞳の奥に灯った情熱の炎が、より一層燃え上がった。
すぐに裸のカイルが俺に覆いかぶさってくる。彼自身のスパイシーで色香溢れる体臭に包まれて、ドキドキと心臓がうるさい。
出会った頃のカイルは栄養失調で痩せぎすだったのに、今ではしっかり筋肉がついている。細マッチョになった魔人の均整の取れた体を、うっとりと眺めた。
「イツキ……綺麗だ」
カイルも俺の顔の横に両手をつきながら、締めきったカーテンから漏れる光に照らされた俺の全身を舐めるように見下ろしていた。
「う……早く触ってくれよ」
とても目を合わせられなくって、鍵をかけた部屋の扉を意味もなく凝視する。
「どこから触ってやろうか」
「どこでもいいから、早く」
「そうだな……」
カイルは、ご馳走を前にした子どものような顔で、上半身に視線を這わせる。そして桃色に色づいた俺の乳首に狙いを定め、吸いついた。
「はぅ……っ」
ぺろ、ぷちゅ、と舐めて、舌先で押し潰す。俺はそのたびに、胸を突き出すようにして身をよじった。
反対側の乳首も指先でつままれた。こすこすと捏ねるように弄ばれ、充血して色づいていく。
「赤くなってきた。美味そうだ」
「や……そういうこと言うの、やめてくれよ」
「他にどう言えばいいんだ。扇情的で大変そそられる、とでも言い換えれば満足か?」
「じゃなくて……くぅ……!」
両方の乳首をいっぺんにつねられて、痛気持ちいい感覚に声が上擦る。すっかり勃起した乳首から、カイルはやっと手を外した。
「次はどこにするか……」
そう言って、胸元から撫で下ろすように手を滑らせたカイルは、次の標的を半勃ちの陰茎に定めた。
そっと輪郭をなぞるような、柔らかな手つきで竿を撫でられる。もどかしい手つきに腰を揺らすと、クッと笑い声が聞こえた。
「いいなイツキ、もっと乱れてくれ」
余裕な態度のカイルにちょっとムカついたので、やつの乳首を舌先でペロリと舐めてみた。少ししょっぱい。
カイルは目を丸くしたが、あまり感じてはいなさそうだ。彼は薄く笑みを湛えた唇を、再び俺の胸に近づけた。
「乳首が気に入ったのか? なら、もう一回してやる」
「違う、っあん……ひぁ、あっ」
前を弄られながら胸を唇で刺激されるのは、たまらなかった。へこへこと無意識に腰を上下させてしまう。
乳首から顔を離したカイルは、興奮で頬を軽く染めながら俺の片足を持ち上げた。
「そろそろ触るぞ」
屹立から離れたほうの手も、俺の尻を割り開くようにして穴を露出させた。カイルの視線が秘所に注がれる。
「……っ」
あああっ恥ずかしいんだが! そんなにまじまじと見てんじゃねえよ!
垂れ耳の端を握って耐えていると、ぬるつきをまとった指がつぷりと胎内に入ってきた。
「ぁ、っ」
昨日指を挿れられたばかりだからか、抵抗感は少なめだった。
ぬっぬ……と内壁を押しながら進んできた不埒な指先は、前立腺を違わずタップする。
「あ、うゃっ……ん、そこっ……っあ、ぁ、あっあ!」
トントンとリズミカルにつつかれると、そのたびに嬌声が喉から漏れ出ていく。
クチュクチュと尻穴から音が立つまで弄られて、キュッと指を締めつけた。
「一度達しておけば、ここもチカラが抜けるか?」
「あ、わかんなっ、いぃっ! ひゃん!」
もう片方の手で竿を握られて、高い声が上がる。上下に扱かれながら我慢汁の溢れた鈴口辺りを撫でられると、簡単にイッてしまった。
「ぃ、あああぁん……っ!」
ぴゅく、ぴゅるっと噴き出した白濁液が、俺の太ももを濡らした。カイルは一度穴から指を引き抜くと、ぬるつく液体を指先にまとわせる。
「んっ、ぐ」
尻の圧迫感が増した。今度は二本、指が入ってきたみたいだ。慎重な手つきで、バラバラに動きながら奥へ侵入してくる。
ふうふうと息を整えようとするが、前立腺を二本の指で角度を変えながら次々に押されて、息をつく暇もない。
「も、そこばっか……触んなって、ん!」
「だが、ここがお前の好きなところじゃないのか? それとも耳がいいのか」
「あっ!?」
縁を辿るようになぞられ、甲高い声が上がる。耳の内側をこちょこちょくすぐってから、悪戯な手は離れた。
「まだ狭そうだな……」
「ふ……くぅ……」
カイルは辛抱強く中をほぐした。俺との約束を律儀に守るつもりらしい。じれったくなるほどの時間をかけて、穴の中をとろとろにしていく。
繊細に動く指先と、うかがうように俺の顔を時々確認するカイルの様子を見ているうちに、触れられていない前からぬるりと先走りが滴っていた。
(さすがに、ほぐしすぎじゃないかっ?)
何度も奥まで指を出し入れされてぐぷぐぷと泡が立ち、卑猥な音が耳を打つ。弄られるうちにより敏感になった体が、ピクピクと震えた。
「も、大丈夫……だから、そろそろ……っ」
「いいのか?」
「ん、挿れてくれ……」
熱に浮かされながらくたっと足を広げると、カイルはゴクリと唾をのみ込む。
彼は指を引き抜き、自身の屹立に手を添えた。すでにギンギンに勃ち上がったモノには、血管の筋が浮き出ている。
前も思ったが、かなり大きい。今までに直接見たペニスの中でも一、二を争う大きさだ。アレで奥を突かれたら……
期待と、少しの不安でもぞりと動いた腰を、カイルが両手で固定した。
「挿れるぞ」
グッと押し当てられて、ぬかるんだ胎内に雄が潜り込んできた。ああっ、入ってくる……っ、カイルが……
「……っ、あぁ……」
宣言通り念入りにほぐされたからか、抵抗感も痛みもなく、ただ圧迫感だけを感じる。ゆっくりと息を吐きながら受け入れた。
指で届かない奥のほうまで、じりじりとカイルが腰を押し進める。上気した頬が、漏れる熱い吐息が、彼の興奮を物語っていた。
「は、あ……っあ」
「はあ、とろとろだな……」
「あ、そういうこと……言うなって」
きゅうと剛直を締めつけてしまう。カイルが息を詰めるのを見て、ふうぅと意識して長い息を吐いた。息が震えながら掠れていく。
「はあぁ、あ……あ、ぁ」
「……ふっ……」
奥のほうまで腰を進めたカイルが、赤くなった俺の頬に手を添えた。口元に弧を描いた自然な笑みは、思わず見惚れるほどに綺麗だ。
「どうだ、お前の希望通り、優しくできただろう?」
「ぅ……そうだな……ん」
じれるくらいに丁寧だったと頷くと、カイルは嬉しそうに顔を近づけてきたので、目を閉じてキスを受け入れる。口蓋をぐるりと舌で撫で上げられながら、ゆっくりと抽送がはじまった。
「ん、ふんぅ……」
くぐもった声が喉奥から上がる。折りたたまれた足をカイルの腰に絡めると、チッと舌打ちが聞こえた。
「あまりかわいいことをするな、思いきり突き入れたくなるだろう」
「な……っ、あぅ!」
トンッとしこりを突かれて、腰がビクッと跳ねた。カリの部分で擦られると背筋に電流が走り、身悶えてしまう。
「あ! ぁ、それ……っ、気持ち、いぃ……っ!」
「ここか」
「ひぁっ! あ!」
俺の完勃ちした雄芯は、カイルが腰を突き入れるたびに上下に揺れる。もっと気持ちよくなりたくて手を添えようとすると、カイルも指を絡めてきた。
「気持ちいいな、イツキ……俺も気持ちがいい。もっとよくしてやる」
「はぁっ、あっ! それぇ、やば……あ、あぁっ! あっ!」
前も後ろもピストンされて、イきそうになってしまう。まだカイルと繋がっていたくて、ギュッと背中にすがりついて快感を逃した。
カイルが眉間に皺を寄せて、色っぽい吐息を吐く。
「はあ……っイツキ、お前の中、よすぎる……っ」
「ん、俺も、そろそろ……むりぃ!」
「中に、出していいか……っ」
「きて、きてくれ……っ!」
カイルの動く速度が速くなる。前も容赦なく扱かれて、俺は堪える間もなく射精した。
ビクビクと震える俺に、カイルが自身の硬いモノを、切羽つまった様子で突き入れてくる。
「やっ、やあぁ! も、イッた、からぁ! 止まってく……あぁ!」
「もう、俺も……っ!」
逃げようとした腰を抱えられ、結腸まで届けとばかりに突かれる。カイルはグッと息を詰めて、俺の胎内で達した。
温かい感覚が奥に広がる。カイルはやっと動くのを止めてくれて、ホッと体中の力を弛緩させながら彼の熱を受け止めた。
本戦がはじまるまでの短い日々を、俺たちはほとんど宿から出ずに過ごした。
カイルを受け入れた日は、あの後すぐに眠ってしまった。ダンジョンで疲れが溜まっていたところに、激しい運動をしたせいだろう。
次の日の朝はカイルが部屋まで食事を持ってきて、手ずから食べさせてくれた。
「ほら、口を開けろ」
「自分で食べられるからスプーンをよこせよ」
「嫌だ。俺はイツキに食べさせたい。それともお前は、俺の愛情表現を受け入れてはくれないのか?」
好みすぎる顔が少し寂しそうに、じっと見つめてきたら、応えないわけにはいかないだろう。
「くっそ……あー……」
「あーん」
「むぐ」
「どうだ?」
「……ふぉいひい」
俺もカイルの口に、サラダの葉っぱを放り込んでやる。食べさせ合って、思う存分イチャイチャした。
お互い体のどこかしらをひっつけながら、本を読んだり、お茶したり、兎耳のマッサージをされたりもした。
極楽すぎる耳のマッサージを受けながら、ふと俺ばっかり気持ちいいのもよくねえよなあ、と考える。
耳かきにちょうどよさそうな木の棒が部屋の中にあったので、カイルにしてやることにした。
「なあカイル、ここに頭を乗せてくれ」
ぽんぽんと膝を叩くと、カイルはすぐにベッドに横になって、俺の膝に頭を乗せる。
「なんだ、枕になってくれるのか?」
面白そうな表情で、俺を見上げるカイル。その表情と角度、新鮮だな……数秒見惚れてから、ハッと気を取り直す。
「それよりも、もっといいコトしてやるよ。耳を見せてくれ」
髪を避けて、先が尖った耳を露出させる。物珍しくて耳の尖っている部分を触ると、カイルはくすぐったそうに笑い声を漏らした。
「ふ……」
「カイルはここ、弱いのか?」
「どうだろうな、獣人のように性感帯というわけではないが」
「ふうん」
気が済むまで尖り耳を触った後、カイルの耳の穴に耳かきをそっと入れた。
「動くなよ」
「なにをしてるんだ」
「耳かき」
「なんだそれは」
「耳の中を掃除するんだよ。気持ちいいぞ」
本来人の耳は、耳かきなんてしなくても自浄作用で汚れが出てくる仕様になっている。
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「なるほどな……これはいい」
「だろ? ほら、反対側向いてくれ」
カイルが俺の腹に顔が向くように、顔の位置を調整してくれた。
腰を抱かれながら、耳かきをする。途中胸元に伸びてこようとした不埒な手は、はたき落とした。
「おいこら、危ねえだろ」
「見てたら触りたくなったんだ」
「じっとしててくれよ、もう終わるから」
こしょこしょと耳奥をくすぐってから、ほとんど耳垢の出なかった耳掃除を終えた。
「これで終わりだ」
「そうか。なら次は俺の番だ。その棒を貸せ」
「え? いや、俺は別にいらないんだが」
「遠慮するな」
ヒョイと体の場所を入れ替えられて、今度はカイルの膝の上に俺の頭が乗る。
この体勢、カイルの色っぽくてスパイシーな体臭をモロに感じられて、ちょっとクるものがあるな……
「耳を持ち上げるぞ」
垂れ耳を思いきり持ち上げられて、耳の穴が空気に晒される。
音がいつもよりクリアになって、カイルがフッと笑った吐息の音がやけに大きく聞こえた。耳に息を吹きかけられた気分になって、肩をすくめる。
普段から風呂では兎耳も洗うようにしているが、内側なんてどうなっているかあまり見ないから、汚れが溜まってなきゃいいんだが……
緊張しながら待っていると、するりと耳かき棒が耳奥にさし入れられた。柔らかい力で耳の中をぐるりと擦られて、背筋が震えた。
なんとも言えない気持ちよさにびくついていると、片方の耳を掃除し終えたカイルに体の向きを変えさせられる。
「次はこっち側だ」
目を閉じて心地よい感覚を受け入れていると、しばらくして耳かきが耳の中から出ていった。
もう終わりか? と油断していると、耳穴の縁を爪先でなぞられる。
「これ、汚れか?」
「ぅひっ!?」
カリ、と爪先でひっかかれて、パッと耳を押さえた。
「違った、ホクロだったようだ」
「そ……そうかよ」
今のはヤバかった。カリカリと爪先でかき続けられたら、どことは言わないが反応してしまうところだった。
そんな感じで、俺たちは二人の時間を誰にも邪魔されずに満喫した。夜もその、いろいろと……声が枯れそうになる程度には仲良くした。
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異世界転移(転生)したワタルが現地の魔術師ユーグと恋人になって、致しているお話です。9割性描写です。※自サイトからの転載です。サイトにこの二人が付き合うまでが置いてありますが、こちら単独でご覧頂けます。
愛を知らない少年たちの番物語。
あゆみん
BL
親から愛されることなく育った不憫な三兄弟が異世界で番に待ち焦がれた獣たちから愛を注がれ、一途な愛に戸惑いながらも幸せになる物語。
*触れ合いシーンは★マークをつけます。
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