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対抗戦予選
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うわあ、来ちゃったよ。よりにもよって、一番会いたくないやつがさあ。
いやいや、ここはパーティリーダーとして、メンバーに余裕を見せなきゃね。わざとらしいくらいににっこりと笑顔を作って、ロバートに話しかけた。
「おや、ロバートじゃないか。人の戦果を横取りしようなんて、相変わらずやることがせこいね」
「うるさいな、そんな余裕こいていられるのは、今のうちだよっ! いけ!」
周りの大型獣人達が、俺を目がけて斧や大剣を振りあげて向かってくる。うーん、怖いなあ。まともに相手をせずに、逃げるに限るね。
ヒラリと大振りな攻撃をかわして、メンバーに指示を伝える。
「みんな降りて!」
「させるかぁ!」
ボス部屋から脱出しても、一塊になって追ってくるロバート。
君さ、俺に喧嘩を売るってことは、自分の勝機を失うことだって、どうしてわからないのかな?
ずっとついてこられても迷惑だから、ここでカタをつけておこう。
「レジオット、弱いのやっちゃって」
「わかりました」
レジオットが、痺れて身動きがとれなくなる程度の電流を、追手にお見舞いする。
「あでだだだだっ!?」
痛みと痺れで立っていられなくなり、地面に尻もちをついたロバートの胸元の鏡を目がけて、俺はレイピアを突きだした。
パリン、という音と共に、鏡の表面が砕け散った。ロバートが絶望感あふれる表情で絶叫する。
「ああっ!? 嘘だ!」
「残念ながらここで敗退だね、ロバート。地上に帰ってゆっくり休むんだ。じゃあね」
「く……くっそー! お前達、何をボサっとしてるんだ! 今からでもあいつの鏡を割ってこい!」
「すいませんボス、動けねえでさあ」
「なんだと!?」
キーキーうるさく喚いているが、もう彼らの敗北は決定づけられている。俺は悠々とした足取りで、ロバートを置いて先に進んだ。
「あはは、タルモ子爵にまた嫌味を言われそうだなあ。でも今回は合法的に反撃できたから、胸がスカッとしたよ」
前回の領地対抗戦では、決着がつくまで敗退はなかったから、そりゃもうメチャクチャうざったい妨害をされ続けて、頭にきてたんだ。せいせいしたなあ。
「俺達が二十一階に一番乗りだ。赤の鍵も手に入ったし幸先がいい」
赤の鍵を忘れずに鏡に登録した。これで後二つ鍵を見つけて地上に戻れば、本戦に進める。勝機は十分にあると言えるね。
「このまま快進撃を繰りひろげたいところだけど、そろそろ休憩しようか」
急がせたから、イツキが辛そうだ。彼は優秀な土魔法使いだから、実力をちゃんと発揮できるように休ませてあげなきゃね。
二十一階層の、比較的安全だろうと思われる場所に赴き、ひっそり昼食をとった。
リュックを開けたイツキが、持ってきていた木の実をおすそ分けしてくれた。
「俺にもくれるんだ、ありがとう」
「アンタはもっと、ガッツリした食事の方が好きだろうが、流石に持ってこれねえからな。これで勘弁してくれ」
「十分だよ」
優しいなあ、イツキは。ほわほわと和み気分で、彼の耳を眺めて癒されていると、彼はごく自然な仕草で、カイル君の口に木の実を放りこんだ。
「美味いか?」
「まあまあだ」
う、うわあ……もう確実につきあってるだろう、あの二人。カイル君の告白を受けいれたんだね、イツキ……
地味に落ちこむ俺の隣で、レジオットは無邪気に喜んでいた。
「おいしい! ありがとうイツキ」
「レジーは本当に木の実が好きだなー、俺のもあげる」
「いいの? テオもありがとう」
君達は楽しそうでいいねえ、俺はショックだよ……でももう、受けいれなきゃなあ。
昼休憩を終えて探索を再開した後も、物思いに耽っていると、イツキに話しかけられた。
「どうするんだ? また三十一階まで駆け降りるか?」
あ、真面目な話だ。そうだね、今は予選の最中なんだ。しゃんとしないと。俺も真面目モードで答えを返した。
「いや……隠す側だって、さすがに二回も同じ手は使わないと思うんだよね。地道に可能性がありそうな場所を当たっていこう」
その日はずいぶんと歩きまわったが、残念ながら青い鍵を見つけることはできなかった。
この広大なダンジョンで、たった六個しかない鍵を見つけるんだから、半日で見つけられないのは普通のことだ。
俺は自分にそう言い聞かせてみたが、不安は拭えなかった。いけない、こんなことでは探索に支障が出てしまう。
でももう、歩き疲れてきたな。みんなの歩く速度も落ちてきているし、ここらで野営を挟もう。
「今日はここまでにして、明日に備えよう。野営の準備をするよ」
野営できそうな隠れられる場所を見つけて、今夜はここに泊まりこむことに決めた。
成長期のレジオットはすでに眠そうにしていたので、先に毛布を敷いて寝かせてあげることにした。
魔物避けの香を焚いていると、イツキが話かけてきた。
「明日は鍵が見つかればいいな」
気遣うような口調に、しみじみと嬉しさを覚える。イツキって本当に情に厚いというか、かわいくて男前で素敵だよねえ。すごく……好きだったよ。
「本当にね。もう他のチームも来てるだろうし、急がないと」
何事もないように装えただろうか。意味もなくレジオットの方を見たり、目を伏せてみたりしてみたが、一向に切ない気持ちは収まらない。
駄目だ、今は予選に集中しないといけない。俺はヴァレリオに勝って、自由の身になって、でまた適当な豹獣人の女の子を婚約者に迎えるんだ。
それで、兎獣人を愛でながら面白おかしく暮らしてさ。でもきっとその生活の中に、イツキはいないんだね……
彼はカイル君を選んだんだ。それが正解さ。俺みたいに、他に婚約者がいるような男に引っかからなくて、よかったじゃないか。
君のおかげで、俺はすごく楽しかったよ。世界が明るく見えた。会えるだけではしゃいで、触ってふざけて、夢中になった。
でもそれも、今日で終わりにしよう。
俺はイツキにまっすぐ視線をあわせて、からかうような笑顔を向けた。
「ところでイツキ、カイル君から告白されたんだって?」
「うぐっ……!?」
イツキは飲みかけのお茶を、噴きだしそうになってむせた。あ、ごめんね? イツキの状態まで見て話を振ればよかったな、そんな余裕はなかったんだ。
ようやく息を整えたイツキは、若干頬を染めながら俺を見返した。はー、その表情もとってもかわいいなあ。未練がわいちゃうよ。
「……っ、なんでそれを」
「テオから聞いたんだ」
イツキがテオの方を見ると、テオは勢いよく目を逸らしていた。尻尾がくるんと丸まっている。
「わ、わざとじゃないんっスよ、ちょっとした言葉のあやというか、話してないのにバレちゃったというか」
「テオの態度で、何かあったのがバレバレだったよ」
わかりやす過ぎるんだよねえ、君は。そこがテオのいいところでもあるんだけどね。
いやいや、ここはパーティリーダーとして、メンバーに余裕を見せなきゃね。わざとらしいくらいににっこりと笑顔を作って、ロバートに話しかけた。
「おや、ロバートじゃないか。人の戦果を横取りしようなんて、相変わらずやることがせこいね」
「うるさいな、そんな余裕こいていられるのは、今のうちだよっ! いけ!」
周りの大型獣人達が、俺を目がけて斧や大剣を振りあげて向かってくる。うーん、怖いなあ。まともに相手をせずに、逃げるに限るね。
ヒラリと大振りな攻撃をかわして、メンバーに指示を伝える。
「みんな降りて!」
「させるかぁ!」
ボス部屋から脱出しても、一塊になって追ってくるロバート。
君さ、俺に喧嘩を売るってことは、自分の勝機を失うことだって、どうしてわからないのかな?
ずっとついてこられても迷惑だから、ここでカタをつけておこう。
「レジオット、弱いのやっちゃって」
「わかりました」
レジオットが、痺れて身動きがとれなくなる程度の電流を、追手にお見舞いする。
「あでだだだだっ!?」
痛みと痺れで立っていられなくなり、地面に尻もちをついたロバートの胸元の鏡を目がけて、俺はレイピアを突きだした。
パリン、という音と共に、鏡の表面が砕け散った。ロバートが絶望感あふれる表情で絶叫する。
「ああっ!? 嘘だ!」
「残念ながらここで敗退だね、ロバート。地上に帰ってゆっくり休むんだ。じゃあね」
「く……くっそー! お前達、何をボサっとしてるんだ! 今からでもあいつの鏡を割ってこい!」
「すいませんボス、動けねえでさあ」
「なんだと!?」
キーキーうるさく喚いているが、もう彼らの敗北は決定づけられている。俺は悠々とした足取りで、ロバートを置いて先に進んだ。
「あはは、タルモ子爵にまた嫌味を言われそうだなあ。でも今回は合法的に反撃できたから、胸がスカッとしたよ」
前回の領地対抗戦では、決着がつくまで敗退はなかったから、そりゃもうメチャクチャうざったい妨害をされ続けて、頭にきてたんだ。せいせいしたなあ。
「俺達が二十一階に一番乗りだ。赤の鍵も手に入ったし幸先がいい」
赤の鍵を忘れずに鏡に登録した。これで後二つ鍵を見つけて地上に戻れば、本戦に進める。勝機は十分にあると言えるね。
「このまま快進撃を繰りひろげたいところだけど、そろそろ休憩しようか」
急がせたから、イツキが辛そうだ。彼は優秀な土魔法使いだから、実力をちゃんと発揮できるように休ませてあげなきゃね。
二十一階層の、比較的安全だろうと思われる場所に赴き、ひっそり昼食をとった。
リュックを開けたイツキが、持ってきていた木の実をおすそ分けしてくれた。
「俺にもくれるんだ、ありがとう」
「アンタはもっと、ガッツリした食事の方が好きだろうが、流石に持ってこれねえからな。これで勘弁してくれ」
「十分だよ」
優しいなあ、イツキは。ほわほわと和み気分で、彼の耳を眺めて癒されていると、彼はごく自然な仕草で、カイル君の口に木の実を放りこんだ。
「美味いか?」
「まあまあだ」
う、うわあ……もう確実につきあってるだろう、あの二人。カイル君の告白を受けいれたんだね、イツキ……
地味に落ちこむ俺の隣で、レジオットは無邪気に喜んでいた。
「おいしい! ありがとうイツキ」
「レジーは本当に木の実が好きだなー、俺のもあげる」
「いいの? テオもありがとう」
君達は楽しそうでいいねえ、俺はショックだよ……でももう、受けいれなきゃなあ。
昼休憩を終えて探索を再開した後も、物思いに耽っていると、イツキに話しかけられた。
「どうするんだ? また三十一階まで駆け降りるか?」
あ、真面目な話だ。そうだね、今は予選の最中なんだ。しゃんとしないと。俺も真面目モードで答えを返した。
「いや……隠す側だって、さすがに二回も同じ手は使わないと思うんだよね。地道に可能性がありそうな場所を当たっていこう」
その日はずいぶんと歩きまわったが、残念ながら青い鍵を見つけることはできなかった。
この広大なダンジョンで、たった六個しかない鍵を見つけるんだから、半日で見つけられないのは普通のことだ。
俺は自分にそう言い聞かせてみたが、不安は拭えなかった。いけない、こんなことでは探索に支障が出てしまう。
でももう、歩き疲れてきたな。みんなの歩く速度も落ちてきているし、ここらで野営を挟もう。
「今日はここまでにして、明日に備えよう。野営の準備をするよ」
野営できそうな隠れられる場所を見つけて、今夜はここに泊まりこむことに決めた。
成長期のレジオットはすでに眠そうにしていたので、先に毛布を敷いて寝かせてあげることにした。
魔物避けの香を焚いていると、イツキが話かけてきた。
「明日は鍵が見つかればいいな」
気遣うような口調に、しみじみと嬉しさを覚える。イツキって本当に情に厚いというか、かわいくて男前で素敵だよねえ。すごく……好きだったよ。
「本当にね。もう他のチームも来てるだろうし、急がないと」
何事もないように装えただろうか。意味もなくレジオットの方を見たり、目を伏せてみたりしてみたが、一向に切ない気持ちは収まらない。
駄目だ、今は予選に集中しないといけない。俺はヴァレリオに勝って、自由の身になって、でまた適当な豹獣人の女の子を婚約者に迎えるんだ。
それで、兎獣人を愛でながら面白おかしく暮らしてさ。でもきっとその生活の中に、イツキはいないんだね……
彼はカイル君を選んだんだ。それが正解さ。俺みたいに、他に婚約者がいるような男に引っかからなくて、よかったじゃないか。
君のおかげで、俺はすごく楽しかったよ。世界が明るく見えた。会えるだけではしゃいで、触ってふざけて、夢中になった。
でもそれも、今日で終わりにしよう。
俺はイツキにまっすぐ視線をあわせて、からかうような笑顔を向けた。
「ところでイツキ、カイル君から告白されたんだって?」
「うぐっ……!?」
イツキは飲みかけのお茶を、噴きだしそうになってむせた。あ、ごめんね? イツキの状態まで見て話を振ればよかったな、そんな余裕はなかったんだ。
ようやく息を整えたイツキは、若干頬を染めながら俺を見返した。はー、その表情もとってもかわいいなあ。未練がわいちゃうよ。
「……っ、なんでそれを」
「テオから聞いたんだ」
イツキがテオの方を見ると、テオは勢いよく目を逸らしていた。尻尾がくるんと丸まっている。
「わ、わざとじゃないんっスよ、ちょっとした言葉のあやというか、話してないのにバレちゃったというか」
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