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表彰式
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熱狂的な拍手に迎えられたヴァレリオは、堂々とした態度で手を振りかえしていた。すごいでしょう、俺の未来の旦那様は。誰にもあげないからね。
対抗戦の表彰式を、こんなに晴れやかな気分で迎えられるなんて、婚約が決まった時には予想もしていなかった。
表彰式の後も俺達はずっと行動を共にしながら、婚約したことを触れ回る。
娘をヴァレリオに紹介しようとしていた、多くの貴族の親が嘆いた。俺狙いのご令嬢も落胆していた。
けれど俺達はどこ吹く風といった調子で、お互い婚約を心から喜んでいるとアピールしまくった。
陛下が満足そうな顔でそれを見ているのを、視界の端で確認できた。今となっては、陛下の暴走にも感謝だね。
人波がはけたタイミングで食事を摂っていると、ヴァレリオが小声で呟く。
「……先程声をかけてきた青年が、クインに見惚れていたようだ」
「ああ、そうみたいだったね」
「……やはり素直に感情を表現するのは、俺と二人きりの時にしないか?」
独占欲の滲んだ声音でそんなことを言いだしたので、俺はクスリと笑って彼を上目遣いで見上げる。
「ふうん? 妬いちゃったんだ?」
「そうだ。悪いか?」
「ううん、嬉しいよ。早く二人きりになりたいなあって思っちゃった」
「くっ、俺もだ……! 手早く挨拶を済ませて帰ろう!」
ヴァレリオがブンブン尻尾を振っているのを見ていると、俺も本気で帰りたくなってきた。そろそろ帰れないかなと思って会場を見渡すが、抜けるにはまだ早そうだ。
どうにかして早めに抜けだせないか考えていると、険呑な顔つきをしたロバートが、ロバの耳を寝かせながらこちらに近づいてきた。
彼はブルブルと震える手つきで、ワイングラスの中身をチャプチャプと揺らしている……あ、いいこと思いついた。
俺は笑みをとり繕って、ロバートに話しかけた。
「こんばんはロバート、俺達のお祝いに来てくれたのかな? わざわざありがとう」
「だ、誰がそんなことするか……! なんでヴァレリオ様が、お前なんかと婚約なんてしてるんだよ! 彼は僕の憧れの人なのに!!」
「へえ、そうだったんだ? ごめんねえ、彼ってば俺にめちゃくちゃ惚れてるみたいだからさ。悪いけど君が入る隙間はどこにもないからね」
「こ、この、この野郎……!」
煽り文句に簡単に乗せられて、顔を真っ赤にして憤慨したロバートは、ワインを俺に引っかけようとグラスを前に突きだした。狙い通りだ。
ヴァレリオも俺も、飛沫の一粒すらかからないように華麗に避けたが、あえてかかったフリをしながら大袈裟に嘆いてみせた。
「大変だヴァレリオ、君が贈ってくれた服が……!」
「これはいけないな、すぐに退出しよう」
「ま、待て! 話はまだ終わってないぞ!?」
俺達は慌てふためくロバートを置いて、会場を抜けだした。
*
ヴァレリオの家にたどり着くと、急いで暖炉の火を起こした。複雑な服を脱ぎ捨てて、体についた雑多な臭いを湯浴みして落とす。
俺が湯船の中で一息ついていると、美しい肉体美を惜しげもなく晒したヴァレリオが、浴室に入ってきた。
「えっ、来たのか。お先にどうぞって言ってたのに」
「前にクインに、風呂の中に招待しようかと言われたのを思いだしたら、どうしても貴方が湯を浴びる姿が見たくなったんだ」
「そうなんだ。まあいいけどさ」
俺ってば裸でいても、美しいことに変わりはないからね。ちょっとばかり細身だけれど、それがいいっていう人もいることだし。
ヴァレリオは俺の身体を気に入ってくれてるみたいだから、サービスしちゃおうかな?
湯船からザバっと上がり、裸体を隠しもせずにヴァレリオの方へ歩み寄った。
「な、なんだ?」
「背中を洗ってあげる」
手に石鹸をつけて、泡だてて背中に塗りたくった。ヴァレリオはくすぐったそうに耳をひくひくさせている。
「どう、気持ちいい?」
「う……くすぐったいな」
「ちょっとは感じてるってことかな、それは」
「いや、どうだろうか……」
煮えきらない返事に不満を感じたので、もっと大胆なことをしてみようと思いつく。ヴァレリオの背中にぴっとりと胸から腹まで押しつけてみた。
「!?」
「ヴァレリオの体って、背中まで筋肉が発達してるんだねえ……んっ」
くっついているだけじゃ物足りなくって、身体をすりすりと擦りつけてみる。あ、なんか気持ちいいかも……乳首がぬるぬる刺激されて、じんわりとした快感が生まれる。
夢中になって胸を擦りつけていると、ヴァレリオの狼尻尾がふっさふっさと揺れはじめた。うーん、それ邪魔。俺が動きにくいじゃないか。
動きを止めようとして、尻尾を掴んだ。ついでに指先で根元の辺りをくすぐると、ますます尻尾の動きが荒ぶる。クッと息を詰める気配を感じた。
「クイン、悪戯が過ぎるぞ……!」
「え、駄目? 君だって尻尾を振って、喜んでいるじゃないか」
指を筒のように形作り、尻尾の毛を逆立てるように撫でると、突然ヴァレリオが体を反転させ俺の腕を掴んだ。
「んっ!」
腕をとらえた手は頸に移動し、噛みつくようにキスをされる。もう一方の手でぬるぬるの体を忙しなく撫でまわされた。
対抗戦の表彰式を、こんなに晴れやかな気分で迎えられるなんて、婚約が決まった時には予想もしていなかった。
表彰式の後も俺達はずっと行動を共にしながら、婚約したことを触れ回る。
娘をヴァレリオに紹介しようとしていた、多くの貴族の親が嘆いた。俺狙いのご令嬢も落胆していた。
けれど俺達はどこ吹く風といった調子で、お互い婚約を心から喜んでいるとアピールしまくった。
陛下が満足そうな顔でそれを見ているのを、視界の端で確認できた。今となっては、陛下の暴走にも感謝だね。
人波がはけたタイミングで食事を摂っていると、ヴァレリオが小声で呟く。
「……先程声をかけてきた青年が、クインに見惚れていたようだ」
「ああ、そうみたいだったね」
「……やはり素直に感情を表現するのは、俺と二人きりの時にしないか?」
独占欲の滲んだ声音でそんなことを言いだしたので、俺はクスリと笑って彼を上目遣いで見上げる。
「ふうん? 妬いちゃったんだ?」
「そうだ。悪いか?」
「ううん、嬉しいよ。早く二人きりになりたいなあって思っちゃった」
「くっ、俺もだ……! 手早く挨拶を済ませて帰ろう!」
ヴァレリオがブンブン尻尾を振っているのを見ていると、俺も本気で帰りたくなってきた。そろそろ帰れないかなと思って会場を見渡すが、抜けるにはまだ早そうだ。
どうにかして早めに抜けだせないか考えていると、険呑な顔つきをしたロバートが、ロバの耳を寝かせながらこちらに近づいてきた。
彼はブルブルと震える手つきで、ワイングラスの中身をチャプチャプと揺らしている……あ、いいこと思いついた。
俺は笑みをとり繕って、ロバートに話しかけた。
「こんばんはロバート、俺達のお祝いに来てくれたのかな? わざわざありがとう」
「だ、誰がそんなことするか……! なんでヴァレリオ様が、お前なんかと婚約なんてしてるんだよ! 彼は僕の憧れの人なのに!!」
「へえ、そうだったんだ? ごめんねえ、彼ってば俺にめちゃくちゃ惚れてるみたいだからさ。悪いけど君が入る隙間はどこにもないからね」
「こ、この、この野郎……!」
煽り文句に簡単に乗せられて、顔を真っ赤にして憤慨したロバートは、ワインを俺に引っかけようとグラスを前に突きだした。狙い通りだ。
ヴァレリオも俺も、飛沫の一粒すらかからないように華麗に避けたが、あえてかかったフリをしながら大袈裟に嘆いてみせた。
「大変だヴァレリオ、君が贈ってくれた服が……!」
「これはいけないな、すぐに退出しよう」
「ま、待て! 話はまだ終わってないぞ!?」
俺達は慌てふためくロバートを置いて、会場を抜けだした。
*
ヴァレリオの家にたどり着くと、急いで暖炉の火を起こした。複雑な服を脱ぎ捨てて、体についた雑多な臭いを湯浴みして落とす。
俺が湯船の中で一息ついていると、美しい肉体美を惜しげもなく晒したヴァレリオが、浴室に入ってきた。
「えっ、来たのか。お先にどうぞって言ってたのに」
「前にクインに、風呂の中に招待しようかと言われたのを思いだしたら、どうしても貴方が湯を浴びる姿が見たくなったんだ」
「そうなんだ。まあいいけどさ」
俺ってば裸でいても、美しいことに変わりはないからね。ちょっとばかり細身だけれど、それがいいっていう人もいることだし。
ヴァレリオは俺の身体を気に入ってくれてるみたいだから、サービスしちゃおうかな?
湯船からザバっと上がり、裸体を隠しもせずにヴァレリオの方へ歩み寄った。
「な、なんだ?」
「背中を洗ってあげる」
手に石鹸をつけて、泡だてて背中に塗りたくった。ヴァレリオはくすぐったそうに耳をひくひくさせている。
「どう、気持ちいい?」
「う……くすぐったいな」
「ちょっとは感じてるってことかな、それは」
「いや、どうだろうか……」
煮えきらない返事に不満を感じたので、もっと大胆なことをしてみようと思いつく。ヴァレリオの背中にぴっとりと胸から腹まで押しつけてみた。
「!?」
「ヴァレリオの体って、背中まで筋肉が発達してるんだねえ……んっ」
くっついているだけじゃ物足りなくって、身体をすりすりと擦りつけてみる。あ、なんか気持ちいいかも……乳首がぬるぬる刺激されて、じんわりとした快感が生まれる。
夢中になって胸を擦りつけていると、ヴァレリオの狼尻尾がふっさふっさと揺れはじめた。うーん、それ邪魔。俺が動きにくいじゃないか。
動きを止めようとして、尻尾を掴んだ。ついでに指先で根元の辺りをくすぐると、ますます尻尾の動きが荒ぶる。クッと息を詰める気配を感じた。
「クイン、悪戯が過ぎるぞ……!」
「え、駄目? 君だって尻尾を振って、喜んでいるじゃないか」
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