神様な俺、住み込み勇者に口説かれてます。

兎騎かなで

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14 顔は好き

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 最近の時間の潰し方は、一に読書、二に日記、三にカリオスを鑑賞することになってきた。

 例えば手作りクッキーが食べたいって言うカリオスのために、クッキーを作ってあげた時。お礼を言いながらたいそう喜びほころぶ笑顔から、目が離せなかった。

 そんなに見られたら食べ辛いです、と言われてはじめて、ガン見していたことに気がついた。
 とっさにクッキーの出来が心配だったからって言い訳したけど、果たして誤魔化されてくれたのか。神でさえ知らぬ。

 他にも夕食を作ってくれている時。その後ソファーでくつろいでいる時。そういうふとした瞬間にカリオスを見つめて、はえー綺麗な顔してんなーってぼーっと眺めることが増えた。

 今もソファーに隣同士座りながら、夕食後の酒を飲むカリオスの横で彼の顔を見てボーッとしていると、不意に振り向かれた。

「なにか?」
「いいや。きんきら綺麗な髪だなあって思って」

 本当は顔がいいと思って眺めていたわけだが、見惚れていたと悟られたくなくてごまかしてみた。
 彼は自分の金の前髪をつまみあげて苦笑する。

「そうでしょうか。ツカサの真っ黒な髪の方が僕は好きですよ」
「そうかあ? 黒髪なんて白髪生えたら無様に目立っちゃうんだぞ」
「貴方の見た目は若いままだから、白髪なんて生えないんじゃないですか」
「まあそうだけどさ」

 遥か昔の記憶となりつつある母親が、若白髪って嫌だわぁと嘆いていた記憶が残っていた。

「うちの家系は若白髪の家系だって聞いたことがあるんだ」
「家系……神である貴方にも親がいるんですか」

 カリオスが驚いて俺を凝視してくる。居心地が悪くなって適当にごまかした。

「もういないけどな。なあ、ところで明日の朝は何食べたいとかある? 今なら特別にリクエスト聞いちゃう」
「また貴方の手作りクッキーがいいです」
「それご飯じゃないし。おやつじゃん」
「ではクッキーでなくともなんでもいいので、手作りの物が食べたい」
「えー……能力で出した方が絶対美味いのに」

 不満を漏らす俺に、カリオスはフッと噴き出した。

「そう言うと思いました。貴方らしい」
「俺らしいってなんだよ、まだお前と出会って少ししか経ってないのに俺のなにがわかるって言うんだよ」

 ちょっとした反抗心が頭をもたげて、腕を組んでわざとらしく怒った顔をして問いただす。カリオスは悪戯っぽく笑いながら、俺の頬に手を添えた。

「そうですね。名前はツカサ、平たくあどけない顔立ちの黒髪黒目、つぶらな瞳がかわいらしい人です」
「ほとんど見てわかることしか言ってないじゃん。あとつぶらな瞳は訂正してくれ」
「特技は天候操作、地形操作、超絶技巧魔法、ドラゴンを手なづけること。趣味は読書」

 特技はそれ全部合わせて神の力でまとめていいんじゃね? と思ったが、カリオスが話す俺というのが新鮮でそのまま聞くことにする。

「ふんふん、それで?」
「恋人の名前はカリオス・モエストロ」
「違わい」
「いずれそうなりますよ」

 自信満々に口角を持ち上げるカリオスを前にしてなにも言えなくなる。まあ、カリオスと一緒にいると平穏で暇すぎる日々が鮮やかに彩られて、なんていうか、嫌いじゃないよ、うん。

 恋に落ちるほどかって言われたら……うーん、まだそこまでじゃないかな? かなりお気に入りの人物となりつつあるけれど。





 カリオス鑑賞会をはじめて数日。俺は彼の見た目が自分の好みドンピシャなんじゃないかって思えてきた。

 普通にカッコいいんだよな、前世では女の子にも興味があったものだが、金髪緑眼のキャラとかそういや大好きだった。

 見れば見るほどカッコ悪いところがなくて感心してしまう。顔がカッコよくてもさ、ちょっと足が短いとか頭がでかすぎるとかそういう人いるじゃん? でももうスタイルも完璧でさ。最近は気がついたら彼を目で追いかけている。

 あんまりに俺がカリオスに熱い視線を向けるものだから、最近は彼も俺の視線に気づくとニヤリと笑ってからかってくる。惚れましたか? ってさ。

 いや、惚れてはいないんだこれが。見惚れてはいるんだけど、あくまで美術品を愛でるような視線であって、好きな人にトキメキきゅんな視線ではないんだ。

 そんな新たな趣味に夢中になっていると、突然あることに気づいた。

「あれ、最近死にたいと思わないな」

 夕食時にポツリと呟いた言葉に、カリオスは片眉を上げて反応した。

「いい兆候ですねそれは。つまり順調に僕に恋心を抱いてきていると」
「いやそうじゃねえけどさ」
「違いましたか」
「うん」

 恋ではないな、まだ。
 いや、まだってなんだよ……自分にツッコミを入れつつ、食事を終えて行き場のない手を頭の後ろで組む。

「でもなんか、けっこうお前と話すの楽しいんだよね」
「僕もですよ。今まで老若男女問わずモテてきましたけれど、ここまで振り向かせたいと思ったのは貴方が初めてですね」
「惚れてない」
「あ、先手を打たれました」
「だってお前絶対言うだろ、今の台詞でドキッとしました? 惚れちゃいましたかって」
「言いますね」
「やっぱりな」

 楽しそうな声音を聞いて、ほんの少し口角を上げて俺も微笑む。そんな俺を切なそうな瞳でカリオスは見返す。

「……ツカサの控えめな笑みも胸をえぐるほど尊くて素敵なのですが、いつか貴方の心から笑った顔を見てみたいものです」
「その程度の口説き文句じゃ俺は落とせないぞ」
「いえ、これは惚れさせようと意図して言ったわけではありません。本心ですよ」
「……あっそ」

 ごまかすように咳払いをしてそっぽを向く俺に、食事を終えて立ち上がったカリオスはテーブルに片手をつきながら俺に近づいてくる。

「あ、照れましたね? かわいい」

 端正な顔があっという間に迫ってきて、ちゅっと音を立てて俺の口の端にキスを落とした。
 くっ、避けられたはずなのに! まつ毛の長さに見惚れてたら隙をつかれちまった!

「ばっかお前そういう不意打ちやめろって言ってるだろー!?」
「惚れました?」
「惚れてません!!」

 ハハハッと弾かれたように笑うカリオス。俺は怒ったふりをするのがバカらしくなって、下手くそな笑みを浮かべた。

「あ、今の顔かわいいですね」
「かわいいとか言うなし」
「何故ですか、かわいいものをかわいいと言ってなにが悪いんですか」

 かわいい、かわいくないとお互いに主張する声がリビングに騒がしく響く。そうして新たな日常となった夜は更けていった。
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