王子の俺が前世に目覚めたら、義兄が外堀をやべえ詰めてきていると気づいたが逃げられない

兎騎かなで

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第二章

1話

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 婚約してから早半月が経った。季節は夏に向かっているが、まだまだ過ごしやすい日が続いている。
 というか、この国は日本の夏みたいにジメジメしないみたいだ。カラッとして過ごしやすいらしい。ユールの記憶の中ではそうだった。

 むしろユールは冬の寒さの方が苦手そうだったな。今年は筋肉をしっかりつけて寒い冬を乗り越えたいところだ。

 そうそう、そのためにも今日はザスの友達に会いにいくんだ。
 俺は動きやすい服に着替えて颯爽と廊下を歩く。最近はちょっと早歩きしても息がきれなくなってきたんだよな。うん、俺は俺なりに成長してる。

 訓練場には長身のザガリアスと、小柄で赤茶の髪のヤツが待っていた。

「ユール! よく来たな。紹介しよう、こいつはレオだ」
「はじめまして第四王子殿下! 俺はレオ、しがない男爵家の次男っス! 今日はよろしくお願いしますっ」

 レオと呼ばれた赤茶の髪に同色の瞳の彼は、元気よく俺に挨拶してくれた。ザ、体育会系って感じのノリだな。
 俺も王子スマイルを装備してレオに返事をする。

「よろしく、僕のことは気軽にユールと呼んでくれ。見ての通りあまり体力はないんだが、今後鍛えたいと思っているんだ」
「うっす! ユール様、一緒にがんばりましょう」

 レオはニカっと俺に笑いかけた。すごい陽キャ臭がする。

「レオは小柄な体に見合わずなかなか戦闘力がある。俺も一本とられたことがあるほどだ!」

 レオは照れをごまかすように頭を掻いた。

「あの時は初見だったっスからね。運良く一本とれたけど……やっぱザガリアス先輩は強いから、またいい手を考えないとなあ」
「ハハッ、末恐ろしいヤツだ! どうだ? 今から手合わせするか!?」
「いやいや、今回はユール様の指導に来たんじゃなかったっスか?」
「ああ、そうだったな!」

 そうだよ、目的忘れてんなよザス。ハッハッハーって豪快に笑ってる場合じゃねえぞ?

 レオの体格は俺より少し筋肉質かなってくらいで、背はそこまで変わらなかった。きっと年下なんだろうな……俺は同世代のヤツらに比べてかなり背が低い方だし。

「ユール様もやっぱ剣術習ってんスか?」
「ああ、嗜みの為に最低限といったところだけどね」

 本当はもっと本格的に習えればよかったんだけどな……ユールのへっぽこさを舐めちゃいけない。基本の型通りに動くのだけでもヒイコラいってる有様だ。

「ふむふむ、俺は槍主体なんスよ。ほら俺らみたいに身長低いと、上から斬りかかられてせめぎ合いになると正直キツいんで。間合いに入りこませないことがまず大事的な」
「へえ、そうなんだ」
「レオ、ユールが実際に打ちあうような場面はそうない。そういった実践的なテクニックよりは、体作りのコツなどを伝授する方が喜ばれると思うぞ!」

 いやまあ、ザスの言う通りだけどさ? 別にこういう話も興味はあるんだけどな。

「実践的な話も面白そうだとは思うけれど、まずは基礎的な体力をつけるべきだと自覚はしているよ……」

 そう、せっかく技を身につけたところで反応できないし、剣だって軽ーく弾き飛ばされることだろう。まずは体づくりをしないことには、どうにもならないんだなこれが。

 レオはほうほうと頷くと俺の隣に並んだ。

「では俺を手本にしつつ筋トレしましょう! 小さい俺らはドーンと構えるより、ちょこまか動けた方がいいんで足の筋肉を中心に鍛えるっスよ。ユール様、疲れたら遠慮なく休憩入れてください」

 レオは至極真面目に丁寧に指導してくれた。こいついいヤツだな、ちゃんと俺のゆっくりペースに根気強くあわせてくれてる。
 けれど俺の体は早々に悲鳴を上げ、彼の想定した半分の量もこなせなかった。

「はあ、はあ……もう、限界だ……」
「お疲れ様っス! 休憩にしましょう」
「ユール、頑張ったな! 前回よりも体力がついているように思うぞ!」

 レオは余裕といった表情だった。くっ、情けねえ……

 俺が脇のベンチで座りこんでいる間、ザスとレオは手合わせをしていた。ザスがなかなかやると言っていた通り、レオの動きは素早くザスも攻撃を当てられずに翻弄されているようだった。

 しかしレオの方もザスに攻撃を当てようとしても、ことごとくいなされてしまう。なかなか決着がつかなかったが、最後には動きまくって息の上がってきたレオの動きが鈍くなり、ザスの剣の切っ先がレオの首元に突きつけられた。

「あー、降参っス!」
「ハハハッ! また早くなったんじゃないか!?」
「いくら早く動けても攻撃を当てられないんじゃ意味ないっス!」

 レオは悔しそうに槍の柄を地面にドカッと突き立てた。こいつ力もありそうだな。

「さて、ユール様どうします? 筋トレの続きするっスか?」
「いや、今日はやめておくよ」

 もう現時点で明日筋肉痛になるのが確定している気がする。足がギシギシいってるしこれ以上はヤバい。

「それにしてもレオはかなり槍の扱いに慣れているんだな。小さい時から習っていたのかな?」
「そうっスよ。ウチはほら、弱小貴族っスから平民ともフツーに交流があるんスけど、町外れにめっちゃすげー槍の名手が住んでたんっス。そのじっちゃんから習いました」

 へえ、平民と交流があるのか。いいな、俺も町に出かけたことはあっても、まだ町の人とはろくに会話をしたことがないんだよな。

 やっぱ王族として平民の日々の暮らし程度は知っておくべきじゃね? ほら、俺もガレルと結婚したらちょっとは内政に携わるかもしれないじゃん? 知らんけど。

「槍の名手か、いいね。僕も会いたいな」
「ユール様がっスか? すいません、じっちゃんはもう亡くなってるんスよ……」

 レオがしょんぼりと落ちこんでいるので、俺は慌てて手を振って否定した。

「いや、別にどうしても彼に会いたいというわけじゃない。ただ王族の一員として市井の者の暮らしに興味があっただけなんだ」
「いい心掛けだなユール! どうだレオ、今度俺と共にユールを町に連れていって、いろいろ町のことを教えてやってくれないか!?」

 ザスがナイスな提案をしてくれた。それいいな! 世間知らずなユール様のための城下町観光ツアー、ぜひ開催してほしい。

 レオはあたふたとザスと俺を見比べていた。

「お、俺がっスか!? もっと他に適任者がいるんじゃ」
「俺の同僚の中で一番平民と交流があるのはお前だ、レオ! 心配するな、俺もついていくぞ!!」
「僕からもお願いするよ。レオに町を案内してもらったら、いつもと違う経験ができそうだ」

 なんせ俺が町に行ってすることといえば、市場で買い物が関の山だからな。
 みーんな俺の背後の護衛にビビってろくに話も成立しないし、まともに町の人と話をしたかったらレオを連れていくのが一番よさそうだ。

 レオはしばらく唸りながら悩んでいたが、やがて決意をしたように顔を上げた。

「わかりました。行きましょう!」
「流石レオ、それでこそ漢だ!!」

 ザスが暑苦しく肩を組んでレオを褒め称えている。レオは満更でもなさそうに頬を緩めた。
 しかしハッと何かに気づいたみたいで、レオは顔色を変えた。

「あのユール様、第三王子殿下にはユール様から許可を通してくれるってことで大丈夫なんスよね?」
「ああ、ガレルにはどこかに出かけるときは必ず報告してから行ってるよ。今回もそうするつもりだ」

 そうしないと後から何故言わなかったってうるせーからな。アイツが嫉妬深いのは知ってるからなるべく言うようにはしてるけど、たまにポロッと言うのを忘れてお仕置きされたりしている……

 不意にこの前のお仕置き内容を思いだす。ちんこを口に咥えて刺激されてるのに、指で堰き止められてなかなかイケなかったんだよな。
 その間も尻穴を容赦なく刺激してくるしさ……アレは気持ちよかったけど辛かった……

 ポッと頬を染めた俺の様子には気づかず、レオは俺に念を押した。

「絶対前もって言っておいてくださいよ。俺、ガレル殿下に睨まれるのは嫌っス……」
「ハッハッハ、ガレル様は嫉妬深いからな!!」

 なんだそれ、アイツの嫉妬深さは騎士団内では周知の事実なのか? いや、むしろ貴族中に知れ渡っている気もしてきたぞ……恥ずかし……

 その後も頬の火照りはなかなか治まらず、心配したザスとレオに部屋まで送り届けられることとなった。
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