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待ってよ人さらい!
タオのもっともな言い分に、すかさずハオエンは反発する。
「いいじゃない、綺麗な服を着て笑顔で手を振るだけでも、シズキなら稼ぎ頭になれるよ!」
「いや、だから僕は……」
「ね! 一緒に雑技団を盛り上げよう!」
「駄目だって言ってるでしょ!」
さっきから熱くなり過ぎていて、二人の会話に割り込めない。
二人の顔を見比べておろおろしているうちに、我慢の限界を迎えたタオによって抱き抱えられてしまう。
「えっ、わぁ⁉︎」
「シズキに変なことを吹き込むのはやめて! もう帰るから」
「待ってよ人さらい!」
「違う! まったくもう」
タオは肩の上に静樹を乗せると、あっという間に広場から立ち去った。モフモフの首の毛が静樹の手のひらに触れて、見た目より柔らかな感触に目を見張る。
(うわ、ふわふわだ)
肉球は得体が知れないが、毛皮は心地いいのかと新たな発見に内心驚く。タオは勢いのまま荷車を引き取りに行くと、台の上に静樹を乗せて無言で引き始めた。
鬼気迫る背中の様子と、前に伏せたまま戻ってこない耳の先を見て、しばらく声をかけずにそっとしておくことにした。かなり怒っているらしい。
(タオがこんなにも頭にきているところを初めて見た……そんなに雑技団に入るのっていけないことなのかな)
冷静になって考えてみると、全く静樹には向いていなさそうだから、入団する気は欠片もないのだが。
家に帰る頃にはタオの頭が冷えていることを願いつつ、ひたすら森の中の景色を堪能した。
黄色い木の実が生っている木も見つけたので、機会があれば木の実狩りをしたいと考えつつ時間を潰す。
森の中の家に帰りつくと、ようやく荷車から降りられた。揺られ続けて痛くなったお尻をさすっていると、荷車を片付けたタオが寄ってきて壁際に詰め寄られる。
丸太の壁に両手をついた虎頭に見下ろされて、静樹はゴクリと唾を飲み込んだ。
「シズキ……お願いだから、俺の側にいてよ。好きなんだ……っ」
そのままずるずるとしゃがみこまれて、目線の下に虎耳がくる。萎れた耳が眼前に迫り動けない。
「君の側にいられるなら、なんだっていいから……本当は番がいいけど、番じゃなくたっていい。保護者でも、兄でも友達でも、ただで住める便利な場所としてでもいいから、ここに住んでほしいんだよ。お願いだ」
番じゃなくていいなんて本当だろうかと驚いた。友達という言葉が妙に胸を打ち、繰り返す。
「……友達?」
「そう! なってくれる? 友達としてなら家に住んでくれるのなら、それでもいい。俺の友達になってよ、シズキ」
ずっと心を通わせられる友人が欲しかった静樹は、タオの訴えに胸の奥を揺さぶられた。震える唇を舌先で湿らせてから、言葉を紡ぐ。
「僕の友達になってくれるんですか? なんでも話せるくらい、心を許せる友達に」
「いいよ、なろうよ。友達から始めよう。なんでも話して。シズキのことならなんでも知りたいんだ」
「……じゃあ、ひとつお願いを聞いてもらってもいいですか」
「なに?」
「荷車の揺れのせいで、お尻がとっても痛いんです……何かいいお薬はありませんか?」
「お尻に塗るお薬……?」
タオが息を呑む音が聞こえた。
「いいじゃない、綺麗な服を着て笑顔で手を振るだけでも、シズキなら稼ぎ頭になれるよ!」
「いや、だから僕は……」
「ね! 一緒に雑技団を盛り上げよう!」
「駄目だって言ってるでしょ!」
さっきから熱くなり過ぎていて、二人の会話に割り込めない。
二人の顔を見比べておろおろしているうちに、我慢の限界を迎えたタオによって抱き抱えられてしまう。
「えっ、わぁ⁉︎」
「シズキに変なことを吹き込むのはやめて! もう帰るから」
「待ってよ人さらい!」
「違う! まったくもう」
タオは肩の上に静樹を乗せると、あっという間に広場から立ち去った。モフモフの首の毛が静樹の手のひらに触れて、見た目より柔らかな感触に目を見張る。
(うわ、ふわふわだ)
肉球は得体が知れないが、毛皮は心地いいのかと新たな発見に内心驚く。タオは勢いのまま荷車を引き取りに行くと、台の上に静樹を乗せて無言で引き始めた。
鬼気迫る背中の様子と、前に伏せたまま戻ってこない耳の先を見て、しばらく声をかけずにそっとしておくことにした。かなり怒っているらしい。
(タオがこんなにも頭にきているところを初めて見た……そんなに雑技団に入るのっていけないことなのかな)
冷静になって考えてみると、全く静樹には向いていなさそうだから、入団する気は欠片もないのだが。
家に帰る頃にはタオの頭が冷えていることを願いつつ、ひたすら森の中の景色を堪能した。
黄色い木の実が生っている木も見つけたので、機会があれば木の実狩りをしたいと考えつつ時間を潰す。
森の中の家に帰りつくと、ようやく荷車から降りられた。揺られ続けて痛くなったお尻をさすっていると、荷車を片付けたタオが寄ってきて壁際に詰め寄られる。
丸太の壁に両手をついた虎頭に見下ろされて、静樹はゴクリと唾を飲み込んだ。
「シズキ……お願いだから、俺の側にいてよ。好きなんだ……っ」
そのままずるずるとしゃがみこまれて、目線の下に虎耳がくる。萎れた耳が眼前に迫り動けない。
「君の側にいられるなら、なんだっていいから……本当は番がいいけど、番じゃなくたっていい。保護者でも、兄でも友達でも、ただで住める便利な場所としてでもいいから、ここに住んでほしいんだよ。お願いだ」
番じゃなくていいなんて本当だろうかと驚いた。友達という言葉が妙に胸を打ち、繰り返す。
「……友達?」
「そう! なってくれる? 友達としてなら家に住んでくれるのなら、それでもいい。俺の友達になってよ、シズキ」
ずっと心を通わせられる友人が欲しかった静樹は、タオの訴えに胸の奥を揺さぶられた。震える唇を舌先で湿らせてから、言葉を紡ぐ。
「僕の友達になってくれるんですか? なんでも話せるくらい、心を許せる友達に」
「いいよ、なろうよ。友達から始めよう。なんでも話して。シズキのことならなんでも知りたいんだ」
「……じゃあ、ひとつお願いを聞いてもらってもいいですか」
「なに?」
「荷車の揺れのせいで、お尻がとっても痛いんです……何かいいお薬はありませんか?」
「お尻に塗るお薬……?」
タオが息を呑む音が聞こえた。
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