虎獣人から番になってと迫られて、怖がりの僕は今にも失神しそうです(した)

兎騎かなで

文字の大きさ
22 / 43

これは治療、ただの治療だから……!

 静樹は寝台の上で裸の尻を晒して高く上げ、悩ましげな声を上げた。

「く、うぅ……っ」
「これは治療、これは治療、ただの治療だから……」
「あ、あの……やっぱり自分で」
「ううん、俺のせいでシズキが怪我したんだから! 俺に責任を取らせて! お願い、友達でしょ⁉︎」
「……わかりました、お願いします……っ、うぁ、染みる……っ」

 軟骨を塗られる度にじわじわと痛いような熱いような感覚が臀部から広がり、声を上げずにはいられない。

 果たして本当に友達にこんなことまで頼むものだろうかと疑問は残しつつも、友達だから手当てをさせてほしいと懇願されて受け入れてしまった。

 お尻を出したあたりで、番になりたいと言われた相手にこれはマズいのではと頭に過ったものの、すぐに薬を塗られてしまい止めようがなかった。

 タオの鼻息は静樹の髪を揺らすほど荒かったものの、手つきはあくまでも薬を塗るだけの紳士的な対応を見せた。

 いや、一回だけどこが痛いのと尻全体を手のひらで包まれたけれど、驚いて叫ぶと止めてくれた。

「ふう、ふう……終わったよ……いや待って、もう少し全体を眺め……じゃなくて、確認してから」
「もういいです、ありがとうございました」

 タオの理性がブチブチと千切れていく幻聴を耳にして、静樹は慌てて身を起こし服を元通りに直した。青い瞳は据わったままで、タオは寝台の上に乗り上がってくる。

 すでに理性の綱は切れてしまったのかと、己の迂闊なお願いを後悔しながら青くなっていると、彼は吐息がかかりそうな距離で静樹を責めた。

「ずるい」
「え?」
「今日会ったばかりの雑技団の子には、普通に話していたのに。なんで俺にはよそよそしい口調なのかな?」
「それはその……」
「友達なら、普通に喋ってよ」

 それだけ言うと、タオは拗ねたように瞳を逸らして胡座をかいた。ぼすん、ぼすんと尻尾の先も怒りを表すようにシーツに叩きつけられている。

(あ……反応してる)

 彼が寝台の上に座った角度で、股の間が盛り上がっているのがわかってしまった。

 こんなにも静樹を求めているのに、それでも友達でいいと言いながら拗ねているタオを前にして、今までに感じたことのない情動が湧いてくる。

(なんていじらしい人なんだろう)

 心を打たれた静樹は未だ危機的な状況にいることも忘れて、彼に向かって身を乗り出し顔をのぞきこんだ。恐ろしい牙が眼前に迫り、少し身を引きながらも声をかける。

「タオ……大丈夫?」
「何が?」
「えっと……いや、なんでもない。そろそろお腹空いたね、何か食べる?」

 窮屈そうだねと言いかけて、別の言葉に切り替えた。薮を突いてしまったら、蛇の頭を出してしまいそうだったので。

 タオは静樹の言葉遣いが変わったのを聞いて、機嫌を直したらしい。ぱたぱたと大きく尻尾が左右に振れる。

「そうだね、一緒にご飯を作って食べよう。先に手を洗ってきてくれる?」

 なんで、などと余計なことは言わずに、台所に置いてある水を張ったタライの前にしゃがみ込むと、ゆっくり丁寧に手を洗った。

 料理の手伝いは、日を追うごとに少しずつできることが増えている。今回は調味料の配分を任せてくれて、美味しく作ることができた。

 ほとんど静樹が一人で作った鶏肉と野菜の炒め物を、タオは大袈裟に褒めながら頬張った。

「すごいよ、めちゃくちゃ美味しい! 静樹には料理の才能がある」
「そうかな……? ありがとう」

 タオは基本的に嘘をつくことがないので、静樹は安心して言葉通りの意味で受け取ることができた。人の言葉の裏を読むのは苦手だから、タオの真っ直ぐな気質は好ましく映る。

 鶏肉は捌けないしかまどの火起こしもまだまだだけど、できることが着実に増えてきていて嬉しくなった。

 買ってきた服は少し袖が長かったので、タオが裾上げしてくれるらしい。

「あの、僕がやってもいい? 今度は指に針を刺さないよう、気をつけるから」
「これは俺にやらせて! 大丈夫、すぐ終わらせるから」

 肉球のついた手じゃ針を使いにくいだろうに、タオは服を抱えて自室に全て持っていってしまった。

(……一回失敗してるし、しょうがないか)

 心配性なタオのことだから、静樹が怪我をするかもしれないのにやらせたくないのだろう。

 料理まで手伝わなくていいと言われないように、より一層怪我に注意しようと決意した。
感想 10

あなたにおすすめの小説

処刑される悪役令息に転生したらなぜか推しの騎士団長がグイグイ近づいてくる

猫に小判
BL
交通事故で死んだはずの会社員・田中悠人は、気がつくとBL小説『恋と陰謀~はじまりは夜に~』の世界に転生していた。 しかも転生先は、原作で処刑される悪役令息エリオット。 当然そんな未来は回避したい。 原作知識を頼りに慎重に立ち回るつもりだったのに、気づけば王宮を揺るがす事件に巻き込まれていき――。 さらに困ったことに、原作で一番の推しだった騎士団長ガイウスがやたらと距離を詰めてきて……? 平穏に生きたい元悪役令息と、過保護な騎士団長がじれじれ距離を縮める話。 ガイウス(騎士団長)×エリオット(元悪役令息)

2度目の異世界移転。あの時の少年がいい歳になっていて殺気立って睨んでくるんだけど。

ありま氷炎
BL
高校一年の時、道路陥没の事故に巻き込まれ、三日間記憶がない。 異世界転移した記憶はあるんだけど、夢だと思っていた。 二年後、どうやら異世界転移してしまったらしい。 しかもこれは二度目で、あれは夢ではなかったようだった。 再会した少年はすっかりいい歳になっていて、殺気立って睨んでくるんだけど。

【完結】国に売られた僕は変態皇帝に育てられ寵妃になった

cyan
BL
陛下が町娘に手を出して生まれたのが僕。後宮で虐げられて生活していた僕は、とうとう他国に売られることになった。 一途なシオンと、皇帝のお話。 ※どんどん変態度が増すので苦手な方はお気を付けください。

無能の騎士~退職させられたいので典型的な無能で最低最悪な騎士を演じます~

紫鶴
BL
早く退職させられたい!! 俺は労働が嫌いだ。玉の輿で稼ぎの良い婚約者をゲットできたのに、家族に俺には勿体なさ過ぎる!というので騎士団に入団させられて働いている。くそう、ヴィがいるから楽できると思ったのになんでだよ!!でも家族の圧力が怖いから自主退職できない! はっ!そうだ!退職させた方が良いと思わせればいいんだ!! なので俺は無能で最悪最低な悪徳貴族(騎士)を演じることにした。 「ベルちゃん、大好き」 「まっ!準備してないから!!ちょっとヴィ!服脱がせないでよ!!」 でろでろに主人公を溺愛している婚約者と早く退職させられたい主人公のらぶあまな話。 ーーー ムーンライトノベルズでも連載中。

【新版】転生悪役モブは溺愛されんでいいので死にたくない!

煮卵
BL
ゲーム会社に勤めていた俺はゲームの世界の『婚約破棄』イベントの混乱で殺されてしまうモブに転生した。 処刑の原因となる婚約破棄を避けるべく王子に友人として接近。 なんか数ヶ月おきに繰り返される「恋人や出会いのためのお祭り」をできる限り第二皇子と過ごし、 婚約破棄の原因となる主人公と出会うきっかけを徹底的に排除する。 最近では監視をつけるまでもなくいつも一緒にいたいと言い出すようになった・・・ やんごとなき血筋のハンサムな王子様を淑女たちから遠ざけ男の俺とばかり過ごすように 仕向けるのはちょっと申し訳ない気もしたが、俺の運命のためだ。仕方あるまい。 クレバーな立ち振る舞いにより、俺の死亡フラグは完全に回避された・・・ と思ったら、婚約の儀の当日、「私には思い人がいるのです」 と言いやがる!一体誰だ!? その日の夜、俺はゲームの告白イベントがある薔薇園に呼び出されて・・・ ーーーーーーーー この作品は以前投稿した「転生悪役モブは溺愛されんで良いので死にたくない!」に 加筆修正を加えたものです。 リュシアンの転生前の設定や主人公二人の出会いのシーンを追加し、 あまり描けていなかったキャラクターのシーンを追加しています。 展開が少し変わっていますので新しい小説として投稿しています。 続編出ました 転生悪役令嬢は溺愛されんでいいので推しカプを見守りたい! https://www.alphapolis.co.jp/novel/687110240/826989668 ーーーー 校正・文体の調整に生成AIを利用しています。

「出来損ない」オメガと幼馴染の王弟アルファの、発情初夜

鳥羽ミワ
BL
ウィリアムは王族の傍系に当たる貴族の長男で、オメガ。発情期が二十歳を過ぎても来ないことから、家族からは「欠陥品」の烙印を押されている。 そんなウィリアムは、政略結婚の駒として国内の有力貴族へ嫁ぐことが決まっていた。しかしその予定が一転し、幼馴染で王弟であるセドリックとの結婚が決まる。 あれよあれよと結婚式当日になり、戸惑いながらも結婚を誓うウィリアムに、セドリックは優しいキスをして……。 そして迎えた初夜。わけもわからず悲しくなって泣くウィリアムを、セドリックはたくましい力で抱きしめる。 「お前がずっと、好きだ」 甘い言葉に、これまで熱を知らなかったウィリアムの身体が潤み、火照りはじめる。 ※ムーンライトノベルズ、アルファポリス、pixivへ掲載しています

恋人に好きな人が出来たと思ったら、なにやら雲行きが怪しい。

めっちゃ抹茶
BL
突然だが、容姿も中身も平凡な俺には、超絶イケメンの王子と呼ばれる恋人がいる。付き合い始めてそろそろ一年が経つ。といってもまだキスもそれ以上もした事がない健全なお付き合い。王子は優しいけど意地悪で、いつも俺の心臓を高鳴らせてくる——だけどそれだけだ。この前、喧嘩をした。それきり彼と話していない。付き合っているのか定かじゃない関係。挙句に、今遠目から見つけた王子の側には可憐な女の子。彼女が彼に寄り掛かって二人がキスをしている。 その瞬間、目の前が真っ黒になった。もう無理だ。俺がスイッチが切れたようにその場に立ち尽くした、その時だった。前にいる彼から聞いたこともない怒声が俺の耳に届いたのは。 ⚪︎佐藤玲央……微笑みの王子と呼ばれ、常に笑顔を絶やさない。物腰柔らかな姿勢に男女問わずモテる ⚪︎中田真……両親の転勤で引っ越してきた転校生。平凡な容姿で口が悪いがクラスに馴染めず誰とも話さないので王子しか知らないし、これからも多分バレない ※全四話、予約投稿済み。 本編に攻めの名前が出てこないの書き終わってから気が付いた。3/16タイトル少し変更しました。 ※後日談を3/25に投稿予定←しました。Rを書くかはまだ悩み中

転生したら同性の婚約者に毛嫌いされていた俺の話

鳴海
BL
前世を思い出した俺には、驚くことに同性の婚約者がいた。 この世界では同性同士での恋愛や結婚は普通に認められていて、なんと出産だってできるという。 俺は婚約者に毛嫌いされているけれど、それは前世を思い出す前の俺の性格が最悪だったからだ。 我儘で傲慢な俺は、学園でも嫌われ者。 そんな主人公が前世を思い出したことで自分の行動を反省し、行動を改め、友達を作り、婚約者とも仲直りして愛されて幸せになるまでの話。