42 / 43
タオと一緒ならなんでも楽しい
食事も何もかもを面倒見てくれて、ベッドの上で抱きしめあってイチャイチャしながら過ごす一日は格別だった。
夜になり、やっと寝台から離れられた静樹はタオと一緒に料理を作っていた。タオにとっては辛すぎる塩漬け鶏肉の塩を丁寧に抜いて、根菜と一緒に仕込んでスープにする。
「シズキ、料理が上手になったよね。手つきが手慣れてきた」
「そうかな、だったら嬉しい」
にこにこしながら髪や肩を順に撫で下ろされて、タオの方に身を寄せた。すると彼はゴロゴロ喉を鳴らしながら、静樹の頭に顎を乗せる。
少し調理し辛いが、心はほっこり温かい。無事にスープを作り終えて、よそっていたところに来訪者があった。
「おいタオ、今いいか」
「ユウロン、いらっしゃい! ちょうどシズキと一緒にスープを作ったところなんだけど、食べていく?」
「そうだな、もらおう」
狼獣人はいつものように、遠慮なく席につく。温かなスープを食欲旺盛におかわりしながら平げた後、ユウロンはおもむろに話をし始めた。
「お前らが知りたがるだろうと思ってな、事件の顛末を話しにきてやったぞ」
「ああ、あれからどうなったの?」
ユウロンは元気そうだが、ハオエンはどうなったのだろう。静樹も耳を澄ました。
「一座の面々は全員、国から派遣された軍兵に捕まって中央に連行された。あれだけの事件を起こしたからな、少なくとも冬の間は懲役を受けることになるだろう」
「そんな……」
静樹が憂いていると、ユウロンは皮肉げな笑みを見せた。
「ヤツら、これで冬の間は飯にありつけるし住むところもあるって喜んでいたぞ。しぶといヤツらだ。あの子どもも平気そうな顔をしていた」
「ハオエンも……」
「まあ、そういうわけだから心配すんな。奇怪獣の被害も怪我人だけで、死者は出ていない。広場の天幕も撤去させたし、全てが元通りになっている頃だろうさ」
せっかくできた友達だけれど、こんなことになってしまった以上はもう会えないかもしれない。静樹はしばらく考えてから顔を上げた。
「ねえ、ハオエンに手紙を書いて届けることってできるのかな」
「ああ。手紙のやりとりは確か制限されてなかったと思うぞ」
静樹は拳を握って密かに決意した。
(ハオエンに手紙を書こう。離れていても、失敗することがあっても、僕たちは友達だよって)
きっと彼は学がないから、今回のような事件が起こると想像していなかったのだろう。
手紙のやりとりを通じて、彼が少しでも賢くなれますように。牢屋の中で辛い思いをせずに過ごせますようにと願った。
「じゃあ、これで一件落着ってことだね」
「ああ。お前にも世話になったな」
「いいよ別に。また何かあったら遠慮なく言って」
「助かる」
ユウロンはお礼だと言って、壺漬けの野菜を置いていってくれた。ありがたい、冬支度はまだ済んでいないのだ。
「明日は市に行って買い物をしよう。もうそろそろ雪が降るし、急がなきゃね」
「そうだね」
次の日は朝から薪を売って、そのお金で食料を買い込んだ。その後タオが寄りたいと言ったのは布屋だ。彼は風を通さない、もこもことした温かそうな生地を手に取る。
「どれがいいかな、うーん」
タオはいつも薄着だし、布なんてなんに使うのだろう。クッションは作り終えたみたいだしと首を傾げると、彼は楽しげに尻尾を揺らめかせる。
「シズキに服を作ってあげたくってさ。獣人にとって服はマナーであり、愛情を示すための手段でもあるんだ。手作りの服を贈るのは愛の証なんだよ」
「へえ、そうなんだ」
「いつか愛する人ができたら、服を作ってあげたいと思っていたんだ。だから俺、細かいことは苦手だけど裁縫だけは一生懸命練習したんだ」
あまり手先は器用ではないのに、裁縫だけは得意なのを意外に思っていたが、そんな意味合いがあったらしい。タオはいくつも布を腕に抱え込んでは、どれにしようかと首を捻っている。
「こっちの赤いのも可愛いだろうし、白もいいなあ……シズキはどれがいいと思う?」
「あまり派手なのはちょっと……白の方が好き」
静樹は答えながらも、タオに似合いそうな深い緑色の生地を見つけて、惹かれるまま手に取った。
「僕も、タオに何か作ってみようかな」
「え、作ってくれるの? 楽しみだなあ!」
冬でも薄着なタオだから、凝った服を作る必要はなさそうだが、どうなることやら。慣れない体験は苦手だったけれど、タオと一緒だと思うと楽しめそうだ。
「作り方、教えてくれる?」
「もちろんだよ! 一緒に作ろう」
針と糸も買い足して、タオはいっぱいに膨れた買い物カゴを軽々と担ぐ。
「後はもやしをみつけなきゃね。他にやりたい事はある?」
「やりたいこと……そうだ、本って高いのかな。もっとたくさんの字を覚えたいんだ」
ハオエンに手紙を書くために頑張らなければ。
それに字の勉強を続ければ司書になれなくても、例えば手紙の代筆だとか、本を書き写す仕事とかがあるかもしれない。
「そうだね、そろそろ俺が教えられる字も全部覚えちゃったし、本を買おう。あと使いやすい筆記用具も探して買おう」
「あまり高価であればいらないよ」
「そんなこと言わないで、本に囲まれた場所で仕事をするのがシズキの夢なんでしょ? 俺に任せてよ、本が買えるくらいのお金は稼いでいるからね」
質屋に赴き学習用の本はあるのか尋ねると、挿絵がたくさん載った図鑑のような本を提示された。これなら絵を見ながら字を覚えられそうだ。
結構な金額がしたけれど、タオはためらうことなく筆記用具ごと購入してくれた。恐縮しながらお礼を伝える。
「ありがとう、大切に使うね」
冬の間に読み込もうと、大切に本を胸の前で抱きしめた。
夜になり、やっと寝台から離れられた静樹はタオと一緒に料理を作っていた。タオにとっては辛すぎる塩漬け鶏肉の塩を丁寧に抜いて、根菜と一緒に仕込んでスープにする。
「シズキ、料理が上手になったよね。手つきが手慣れてきた」
「そうかな、だったら嬉しい」
にこにこしながら髪や肩を順に撫で下ろされて、タオの方に身を寄せた。すると彼はゴロゴロ喉を鳴らしながら、静樹の頭に顎を乗せる。
少し調理し辛いが、心はほっこり温かい。無事にスープを作り終えて、よそっていたところに来訪者があった。
「おいタオ、今いいか」
「ユウロン、いらっしゃい! ちょうどシズキと一緒にスープを作ったところなんだけど、食べていく?」
「そうだな、もらおう」
狼獣人はいつものように、遠慮なく席につく。温かなスープを食欲旺盛におかわりしながら平げた後、ユウロンはおもむろに話をし始めた。
「お前らが知りたがるだろうと思ってな、事件の顛末を話しにきてやったぞ」
「ああ、あれからどうなったの?」
ユウロンは元気そうだが、ハオエンはどうなったのだろう。静樹も耳を澄ました。
「一座の面々は全員、国から派遣された軍兵に捕まって中央に連行された。あれだけの事件を起こしたからな、少なくとも冬の間は懲役を受けることになるだろう」
「そんな……」
静樹が憂いていると、ユウロンは皮肉げな笑みを見せた。
「ヤツら、これで冬の間は飯にありつけるし住むところもあるって喜んでいたぞ。しぶといヤツらだ。あの子どもも平気そうな顔をしていた」
「ハオエンも……」
「まあ、そういうわけだから心配すんな。奇怪獣の被害も怪我人だけで、死者は出ていない。広場の天幕も撤去させたし、全てが元通りになっている頃だろうさ」
せっかくできた友達だけれど、こんなことになってしまった以上はもう会えないかもしれない。静樹はしばらく考えてから顔を上げた。
「ねえ、ハオエンに手紙を書いて届けることってできるのかな」
「ああ。手紙のやりとりは確か制限されてなかったと思うぞ」
静樹は拳を握って密かに決意した。
(ハオエンに手紙を書こう。離れていても、失敗することがあっても、僕たちは友達だよって)
きっと彼は学がないから、今回のような事件が起こると想像していなかったのだろう。
手紙のやりとりを通じて、彼が少しでも賢くなれますように。牢屋の中で辛い思いをせずに過ごせますようにと願った。
「じゃあ、これで一件落着ってことだね」
「ああ。お前にも世話になったな」
「いいよ別に。また何かあったら遠慮なく言って」
「助かる」
ユウロンはお礼だと言って、壺漬けの野菜を置いていってくれた。ありがたい、冬支度はまだ済んでいないのだ。
「明日は市に行って買い物をしよう。もうそろそろ雪が降るし、急がなきゃね」
「そうだね」
次の日は朝から薪を売って、そのお金で食料を買い込んだ。その後タオが寄りたいと言ったのは布屋だ。彼は風を通さない、もこもことした温かそうな生地を手に取る。
「どれがいいかな、うーん」
タオはいつも薄着だし、布なんてなんに使うのだろう。クッションは作り終えたみたいだしと首を傾げると、彼は楽しげに尻尾を揺らめかせる。
「シズキに服を作ってあげたくってさ。獣人にとって服はマナーであり、愛情を示すための手段でもあるんだ。手作りの服を贈るのは愛の証なんだよ」
「へえ、そうなんだ」
「いつか愛する人ができたら、服を作ってあげたいと思っていたんだ。だから俺、細かいことは苦手だけど裁縫だけは一生懸命練習したんだ」
あまり手先は器用ではないのに、裁縫だけは得意なのを意外に思っていたが、そんな意味合いがあったらしい。タオはいくつも布を腕に抱え込んでは、どれにしようかと首を捻っている。
「こっちの赤いのも可愛いだろうし、白もいいなあ……シズキはどれがいいと思う?」
「あまり派手なのはちょっと……白の方が好き」
静樹は答えながらも、タオに似合いそうな深い緑色の生地を見つけて、惹かれるまま手に取った。
「僕も、タオに何か作ってみようかな」
「え、作ってくれるの? 楽しみだなあ!」
冬でも薄着なタオだから、凝った服を作る必要はなさそうだが、どうなることやら。慣れない体験は苦手だったけれど、タオと一緒だと思うと楽しめそうだ。
「作り方、教えてくれる?」
「もちろんだよ! 一緒に作ろう」
針と糸も買い足して、タオはいっぱいに膨れた買い物カゴを軽々と担ぐ。
「後はもやしをみつけなきゃね。他にやりたい事はある?」
「やりたいこと……そうだ、本って高いのかな。もっとたくさんの字を覚えたいんだ」
ハオエンに手紙を書くために頑張らなければ。
それに字の勉強を続ければ司書になれなくても、例えば手紙の代筆だとか、本を書き写す仕事とかがあるかもしれない。
「そうだね、そろそろ俺が教えられる字も全部覚えちゃったし、本を買おう。あと使いやすい筆記用具も探して買おう」
「あまり高価であればいらないよ」
「そんなこと言わないで、本に囲まれた場所で仕事をするのがシズキの夢なんでしょ? 俺に任せてよ、本が買えるくらいのお金は稼いでいるからね」
質屋に赴き学習用の本はあるのか尋ねると、挿絵がたくさん載った図鑑のような本を提示された。これなら絵を見ながら字を覚えられそうだ。
結構な金額がしたけれど、タオはためらうことなく筆記用具ごと購入してくれた。恐縮しながらお礼を伝える。
「ありがとう、大切に使うね」
冬の間に読み込もうと、大切に本を胸の前で抱きしめた。
あなたにおすすめの小説
処刑される悪役令息に転生したらなぜか推しの騎士団長がグイグイ近づいてくる
猫に小判
BL
交通事故で死んだはずの会社員・田中悠人は、気がつくとBL小説『恋と陰謀~はじまりは夜に~』の世界に転生していた。
しかも転生先は、原作で処刑される悪役令息エリオット。
当然そんな未来は回避したい。
原作知識を頼りに慎重に立ち回るつもりだったのに、気づけば王宮を揺るがす事件に巻き込まれていき――。
さらに困ったことに、原作で一番の推しだった騎士団長ガイウスがやたらと距離を詰めてきて……?
平穏に生きたい元悪役令息と、過保護な騎士団長がじれじれ距離を縮める話。
ガイウス(騎士団長)×エリオット(元悪役令息)
2度目の異世界移転。あの時の少年がいい歳になっていて殺気立って睨んでくるんだけど。
ありま氷炎
BL
高校一年の時、道路陥没の事故に巻き込まれ、三日間記憶がない。
異世界転移した記憶はあるんだけど、夢だと思っていた。
二年後、どうやら異世界転移してしまったらしい。
しかもこれは二度目で、あれは夢ではなかったようだった。
再会した少年はすっかりいい歳になっていて、殺気立って睨んでくるんだけど。
【完結】国に売られた僕は変態皇帝に育てられ寵妃になった
cyan
BL
陛下が町娘に手を出して生まれたのが僕。後宮で虐げられて生活していた僕は、とうとう他国に売られることになった。
一途なシオンと、皇帝のお話。
※どんどん変態度が増すので苦手な方はお気を付けください。
無能の騎士~退職させられたいので典型的な無能で最低最悪な騎士を演じます~
紫鶴
BL
早く退職させられたい!!
俺は労働が嫌いだ。玉の輿で稼ぎの良い婚約者をゲットできたのに、家族に俺には勿体なさ過ぎる!というので騎士団に入団させられて働いている。くそう、ヴィがいるから楽できると思ったのになんでだよ!!でも家族の圧力が怖いから自主退職できない!
はっ!そうだ!退職させた方が良いと思わせればいいんだ!!
なので俺は無能で最悪最低な悪徳貴族(騎士)を演じることにした。
「ベルちゃん、大好き」
「まっ!準備してないから!!ちょっとヴィ!服脱がせないでよ!!」
でろでろに主人公を溺愛している婚約者と早く退職させられたい主人公のらぶあまな話。
ーーー
ムーンライトノベルズでも連載中。
【新版】転生悪役モブは溺愛されんでいいので死にたくない!
煮卵
BL
ゲーム会社に勤めていた俺はゲームの世界の『婚約破棄』イベントの混乱で殺されてしまうモブに転生した。
処刑の原因となる婚約破棄を避けるべく王子に友人として接近。
なんか数ヶ月おきに繰り返される「恋人や出会いのためのお祭り」をできる限り第二皇子と過ごし、
婚約破棄の原因となる主人公と出会うきっかけを徹底的に排除する。
最近では監視をつけるまでもなくいつも一緒にいたいと言い出すようになった・・・
やんごとなき血筋のハンサムな王子様を淑女たちから遠ざけ男の俺とばかり過ごすように
仕向けるのはちょっと申し訳ない気もしたが、俺の運命のためだ。仕方あるまい。
クレバーな立ち振る舞いにより、俺の死亡フラグは完全に回避された・・・
と思ったら、婚約の儀の当日、「私には思い人がいるのです」
と言いやがる!一体誰だ!?
その日の夜、俺はゲームの告白イベントがある薔薇園に呼び出されて・・・
ーーーーーーーー
この作品は以前投稿した「転生悪役モブは溺愛されんで良いので死にたくない!」に
加筆修正を加えたものです。
リュシアンの転生前の設定や主人公二人の出会いのシーンを追加し、
あまり描けていなかったキャラクターのシーンを追加しています。
展開が少し変わっていますので新しい小説として投稿しています。
続編出ました
転生悪役令嬢は溺愛されんでいいので推しカプを見守りたい! https://www.alphapolis.co.jp/novel/687110240/826989668
ーーーー
校正・文体の調整に生成AIを利用しています。
「出来損ない」オメガと幼馴染の王弟アルファの、発情初夜
鳥羽ミワ
BL
ウィリアムは王族の傍系に当たる貴族の長男で、オメガ。発情期が二十歳を過ぎても来ないことから、家族からは「欠陥品」の烙印を押されている。
そんなウィリアムは、政略結婚の駒として国内の有力貴族へ嫁ぐことが決まっていた。しかしその予定が一転し、幼馴染で王弟であるセドリックとの結婚が決まる。
あれよあれよと結婚式当日になり、戸惑いながらも結婚を誓うウィリアムに、セドリックは優しいキスをして……。
そして迎えた初夜。わけもわからず悲しくなって泣くウィリアムを、セドリックはたくましい力で抱きしめる。
「お前がずっと、好きだ」
甘い言葉に、これまで熱を知らなかったウィリアムの身体が潤み、火照りはじめる。
※ムーンライトノベルズ、アルファポリス、pixivへ掲載しています
恋人に好きな人が出来たと思ったら、なにやら雲行きが怪しい。
めっちゃ抹茶
BL
突然だが、容姿も中身も平凡な俺には、超絶イケメンの王子と呼ばれる恋人がいる。付き合い始めてそろそろ一年が経つ。といってもまだキスもそれ以上もした事がない健全なお付き合い。王子は優しいけど意地悪で、いつも俺の心臓を高鳴らせてくる——だけどそれだけだ。この前、喧嘩をした。それきり彼と話していない。付き合っているのか定かじゃない関係。挙句に、今遠目から見つけた王子の側には可憐な女の子。彼女が彼に寄り掛かって二人がキスをしている。
その瞬間、目の前が真っ黒になった。もう無理だ。俺がスイッチが切れたようにその場に立ち尽くした、その時だった。前にいる彼から聞いたこともない怒声が俺の耳に届いたのは。
⚪︎佐藤玲央……微笑みの王子と呼ばれ、常に笑顔を絶やさない。物腰柔らかな姿勢に男女問わずモテる
⚪︎中田真……両親の転勤で引っ越してきた転校生。平凡な容姿で口が悪いがクラスに馴染めず誰とも話さないので王子しか知らないし、これからも多分バレない
※全四話、予約投稿済み。
本編に攻めの名前が出てこないの書き終わってから気が付いた。3/16タイトル少し変更しました。
※後日談を3/25に投稿予定←しました。Rを書くかはまだ悩み中
転生したら同性の婚約者に毛嫌いされていた俺の話
鳴海
BL
前世を思い出した俺には、驚くことに同性の婚約者がいた。
この世界では同性同士での恋愛や結婚は普通に認められていて、なんと出産だってできるという。
俺は婚約者に毛嫌いされているけれど、それは前世を思い出す前の俺の性格が最悪だったからだ。
我儘で傲慢な俺は、学園でも嫌われ者。
そんな主人公が前世を思い出したことで自分の行動を反省し、行動を改め、友達を作り、婚約者とも仲直りして愛されて幸せになるまでの話。