三男のVRMMO記

七草

文字の大きさ
13 / 40

11、三男と幼なじみ

しおりを挟む
篠田さんによって移された場所は、あの広々とした噴水のある公園だった。
周りはプレイヤーだろう人が沢山いて、住民はこの場にはあまり見られない。

「さて、どうしたものか」
「きゅ~?」

肩にいるマリを撫でながら考える。
とはいえ、チュートリアルが終わったら待ってろと広葉に言われているので、待つほかないんだけど。
当たりをくるりと見渡してみても、広葉らしき人はいなかったので、とりあえず噴水に腰掛けて待つことにする。
そう言えば、マリの尻尾は治ったのだろうか。

「なぁマリ。尻尾の怪我はもう大丈夫か?」
「きゅ?きゅ、ぴゆ~」

俺の問いかけに答えるように鳴いてから、マリはぴょんっと肩から膝の上に飛び乗ってきた。
そして、ふりふりと尻尾を振って大丈夫アピールをしてくれた。

「そっか、よかった」
「きゅう」

見たところ赤みも内容だし、本人も痛がってないので本当に問題はないのだろう。今も膝の上でくるくるとまわり、おさまりの良い所を探している。
治ってよかったなと言いながらそんなマリを撫でると、きゅ~と柔らかい声を出して膝の上で丸くなった。
戦闘態勢ではない今のマリはふわふわした毛で覆われており、手足は完全に隠れている。
辛うじて見えるのは小さな尻尾と顔だけだ。

「ほんとに鞠みたいだな」
「きゅぃ~」

笑いながら言った俺の声に答えるようにマリが鳴いたが、多分寝息だろう。
スピスピと鼻息が聞こえるし、マリの上にふわふわと泡が4つ飛んでいるからな。
マリは意外とねぼすけらしい。新発見だな。
鼻ちょうちんまで作り出して寝るマリは正直可愛い。
未だスピスピと鼻を鳴らしながら眠るマリを飽きずに撫でていると、突然こちらに走り寄る人が現れた。
遠目ではあるが、金髪っぽくて格好もどこかの王子や貴族のような服装をしている。
俺の知り合いにそんな人いたか?
つい困惑して首を傾げてしまう。
撫でる手が止まったからなのか、マリも目を覚ましてきょろきょろとしてから、その人に気づいたらしい。俺と同じ反応をしていた。

「マリ、おはよう」
「きゅ、ぴきゅ!」

走ってくる人に疑問は残るが、とりあえずマリに挨拶をする。
こういう行為は教えていかないとだからな。
マリもすちゃっと短い前足を上げて答えてくれたので、教える必要があるかは分からないけどな。

「あの人、誰なんだろうな」
「きゅー?」
「こころなしか呼ばれてる気がするんだよなぁ」
「きゅう」

おーい、という声がだんだん近くなるのを感じる。
気のせいではなく、やっぱり呼ばれてるみたいだな。
その時、ぶんぶん手を振りながらかけてくる人を見て、俺は妙な既視感を覚えていた。
もっとも、その正体は相手が近づくことで直ぐに判明した。

「よ!俺が誰だか分かるか?」

唐突にそう言われた。
誰かと言われても、このタイミングで話しかけてくる人は一人しかいないだろう。
顔もそのままだったしな。
まぁ挨拶もなしに問いかけてきたことに関しては、後で言っておこう。マリの教育に悪いからな。

「広葉だろ?この世界での名前は知らないけどな」
「あったり!!さすがだ友よ!」
「友っていうか、幼なじみの顔はさすがに間違えないよ」

広葉、この世界ではヒラハと言うらしいこいつは、俺と同じくリアルモード選択者らしい。
ただし、髪色と瞳の色は変えており、髪は金で瞳は緑だった。
どこの王子だお前は。

「カスミはそのままなんだな。探すのが楽で助かったぜ」
「弄っても慣れなさそうだしね」
「まぁ確かにな」

膝の上にいたマリを抱き上げて、腰掛けていた噴水から立ち上がってヒラハを見る。
現実と同じくこいつの方が背が高いので、少し見上げる形にはなるが、やはり慣れているから弄らないで正解だと思う。
俺がヒラハを見ているのと同じように、こいつも俺を見ていたようで、やっと腕の中のマリに気づいた。

「それ、テイムモンスターか?召喚獣ではないよな」
「そ。テイムモンスターで、ニーマスのマリだよ。よろしく~って」
「きゅ~きゅぴー!」

小さな手を優しく持って振ってみると、マリもよろしくと言うように鳴いた。
うちの子可愛いです。

「……可愛いな」
「でしょ?」

ヒラハはさっそくマリの魅力にやられたらしいく、マリのふわふわの毛に触れておお!とか言ってる。
説明してくれるんじゃないのか?

「ヒラハ、チュートリアル終わったけど、これからどうすればいいの?」
「ん?ああ。そういやお前さ、チュートリアル全部やったの?」
「へ?やったけど」
「まぁ、そりゃ初めてだからやるか」

なんのことだと思ってマリと一緒に首を傾げると、ヒラハによる説明が始まった。
どうやら、この手のゲームはチュートリアルがほぼ同じであり、またサイトなどにもやり方や施設の種類、使い方などは載っているため、チュートリアルは職業の体験だけやって終わるという人がほとんどだそうだ。
だから篠田さん、途中で何度か続けますかって聞いてきたのか。

「分からないことだらけだし、何でもかんでもお前に聞くのも悪いしね」
「そりゃありがとよ。それとさ、その装備どうしたんだ?明らかに初期装備じゃないだろ、それ」

俺の今の服装は旅人シリーズから一転してシンプルだがオシャレな格好だ。
ベージュのコートに黒のシャツと黒のズボンを着て、その上に茶色いブーツを履いている。

「これか?チュートリアルのクエストで貰ったんだ」
「は?チュートリアルってそんなもんまで貰えんのかよ。お使いクエストだろ?なんのクエストやったんだ?」
「えっと…あそこの店の手伝い」
「あそこって……おまっ、あれめっちゃ人気の店じゃん!」
「そーなの?」
「そーなの!」

クラウスさんの店は住民だけでなく、プレイヤー、ここで言う旅人にも人気だそうだ。
流石はクラウスさん。丁寧な仕事が人を呼ぶのだろう。

「はーー……ま、ここは素直に良かったなって言っておくよ」
「ああ。ありがとう」

若干呆れたようにヒラハは言ったが、俺も素直に受け取っておこう。
そんなことより説明だ。
俺はどんな話をしてくれるのだろうと期待を込めてヒラハを見る。
こいつもそれを受けて、ニッと笑ってから一歩噴水に近づいて腕を広げた。

「ようこそカスミ!第二の世界へ!!」

そういったヒラハの後ろで、見計らったように噴水が高く水しぶきを上げた。

「これでやっとお前の飯がこの世界で食えるよ」
「カッコつけた途端それか」
「いーじゃん。美味いもんは正義だ!」
「きゅぴー!!」
「お!!分かるかマリ!」
「はぁ……食いしん坊が増えたな」

噴水の水しぶきと太陽の光でキラキラとしたかっこいいヒラハは、それでも結局は幼なじみの広葉だったみたいだ。
俺はこれから始まる第二の世界とやらに少し期待しながら、目の前の食いしん坊二人に苦笑した。

しおりを挟む
感想 122

あなたにおすすめの小説

【完結】デスペナのないVRMMOで一度も死ななかった生産職のボクは最強になりました。

鳥山正人
ファンタジー
デスペナのないフルダイブ型VRMMOゲームで一度も死ななかったボク、三上ハヤトがノーデスボーナスを授かり最強になる物語。 鍛冶スキルや錬金スキルを使っていく、まったり系生産職のお話です。 まったり更新でやっていきたいと思っていますので、よろしくお願いします。 「DADAN WEB小説コンテスト」1次選考通過しました。 ──────── 自筆です。

癒し目的で始めたVRMMO、なぜか最強になっていた。

branche_noir
SF
<カクヨムSFジャンル週間1位> <カクヨム週間総合ランキング最高3位> <小説家になろうVRゲーム日間・週間1位> 現実に疲れたサラリーマン・ユウが始めたのは、超自由度の高いVRMMO《Everdawn Online》。 目的は“癒し”ただそれだけ。焚き火をし、魚を焼き、草の上で昼寝する。 モンスター討伐? レベル上げ? 知らん。俺はキャンプがしたいんだ。 ところが偶然懐いた“仔竜ルゥ”との出会いが、運命を変える。 テイムスキルなし、戦闘ログ0。それでもルゥは俺から離れない。 そして気づけば、森で焚き火してただけの俺が―― 「魔物の軍勢を率いた魔王」と呼ばれていた……!? 癒し系VRMMO生活、誤認されながら進行中! 本人その気なし、でも周囲は大騒ぎ! ▶モフモフと焚き火と、ちょっとの冒険。 ▶のんびり系異色VRMMOファンタジー、ここに開幕! カクヨムで先行配信してます!

親がうるさいのでVRMMOでソロ成長します

miigumi
ファンタジー
VRが当たり前になった時代。大学生の瑞希は、親の干渉に息苦しさを感じながらも、特にやりたいことも見つからずにいた。 そんなある日、友人に誘われた話題のVRMMO《ルーンスフィア・オンライン》で目にしたのは――「あなたが求める自由を」という言葉。 軽い気持ちでログインしたはずが、気づけば彼女は“ソロ”で世界を駆けることになる。 誰にも縛られない場所で、瑞希は自分の力で強くなることを選んだ。これは、自由を求める彼女のソロ成長物語。 毎日22時投稿します。

もふもふと味わうVRグルメ冒険記 〜遅れて始めたけど、料理だけは最前線でした〜

きっこ
ファンタジー
五感完全再現のフルダイブVRMMO《リアルコード・アース》。 遅れてゲームを始めた童顔ちびっ子キャラの主人公・蓮は、戦うことより“料理”を選んだ。 作るたびに懐いてくるもふもふ、微笑むNPC、ほっこりする食卓―― 今日も炊事場でクッキーを焼けば、なぜか神様にまで目をつけられて!? ただ料理しているだけなのに、気づけば伝説級。 癒しと美味しさが詰まった、もふもふ×グルメなスローゲームライフ、ここに開幕!

【完結】スーパーの店長・結城偉介 〜異世界でスーパーの売れ残りを在庫処分〜

かの
ファンタジー
 世界一周旅行を夢見てコツコツ貯金してきたスーパーの店長、結城偉介32歳。  スーパーのバックヤードで、うたた寝をしていた偉介は、何故か異世界に転移してしまう。  偉介が転移したのは、スーパーでバイトするハル君こと、青柳ハル26歳が書いたファンタジー小説の世界の中。  スーパーの過剰商品(売れ残り)を捌きながら、微妙にズレた世界線で、偉介の異世界一周旅行が始まる!  冒険者じゃない! 勇者じゃない! 俺は商人だーーー! だからハル君、お願い! 俺を戦わせないでください!

動物に好かれまくる体質の少年、ダンジョンを探索する 配信中にレッドドラゴンを手懐けたら大バズりしました!

海夏世もみじ
ファンタジー
 旧題:動物に好かれまくる体質の少年、ダンジョン配信中にレッドドラゴン手懐けたら大バズりしました  動物に好かれまくる体質を持つ主人公、藍堂咲太《あいどう・さくた》は、友人にダンジョンカメラというものをもらった。  そのカメラで暇つぶしにダンジョン配信をしようということでダンジョンに向かったのだが、イレギュラーのレッドドラゴンが現れてしまう。  しかし主人公に攻撃は一切せず、喉を鳴らして好意的な様子。その様子が全て配信されており、拡散され、大バズりしてしまった!  戦闘力ミジンコ主人公が魔物や幻獣を手懐けながらダンジョンを進む配信のスタート!

俺の職業は【トラップ・マスター】。ダンジョンを経験値工場に作り変えたら、俺一人のせいでサーバー全体のレベルがインフレした件

夏見ナイ
SF
現実世界でシステムエンジニアとして働く神代蓮。彼が効率を求めVRMMORPG「エリュシオン・オンライン」で選んだのは、誰にも見向きもされない不遇職【トラップ・マスター】だった。 周囲の冷笑をよそに、蓮はプログラミング知識を応用してトラップを自動連携させる画期的な戦術を開発。さらに誰も見向きもしないダンジョンを丸ごと買い取り、24時間稼働の「全自動経験値工場」へと作り変えてしまう。 結果、彼のレベルと資産は異常な速度で膨れ上がり、サーバーの経済とランキングをたった一人で崩壊させた。この事態を危険視した最強ギルドは、彼のダンジョンに狙いを定める。これは、知恵と工夫で世界の常識を覆す、一人の男の伝説の始まり。

もふもふと始めるゴミ拾いの旅〜何故か最強もふもふ達がお世話されに来ちゃいます〜

双葉 鳴
ファンタジー
「ゴミしか拾えん役立たずなど我が家にはふさわしくない! 勘当だ!」 授かったスキルがゴミ拾いだったがために、実家から勘当されてしまったルーク。 途方に暮れた時、声をかけてくれたのはひと足先に冒険者になって実家に仕送りしていた長兄アスターだった。 ルークはアスターのパーティで世話になりながら自分のスキルに何ができるか少しづつ理解していく。 駆け出し冒険者として少しづつ認められていくルーク。 しかしクエストの帰り、討伐対象のハンターラビットとボアが縄張り争いをしてる場面に遭遇。 毛色の違うハンターラビットに自分を重ねるルークだったが、兄アスターから引き止められてギルドに報告しに行くのだった。 翌朝死体が運び込まれ、素材が剥ぎ取られるハンターラビット。 使われなくなった肉片をかき集めてお墓を作ると、ルークはハンターラビットの魂を拾ってしまい……変身できるようになってしまった! 一方で死んだハンターラビットの帰りを待つもう一匹のハンターラビットの助けを求める声を聞いてしまったルークは、その子を助け出す為兄の言いつけを破って街から抜け出した。 その先で助け出したはいいものの、すっかり懐かれてしまう。 この日よりルークは人間とモンスターの二足の草鞋を履く生活を送ることになった。 次から次に集まるモンスターは最強種ばかり。 悪の研究所から逃げ出してきたツインヘッドベヒーモスや、捕らえられてきたところを逃げ出してきたシルバーフォックス(のちの九尾の狐)、フェニックスやら可愛い猫ちゃんまで。 ルークは新しい仲間を募り、一緒にお世話するブリーダーズのリーダーとしてお世話道を極める旅に出るのだった! <第一部:疫病編> 一章【完結】ゴミ拾いと冒険者生活:5/20〜5/24 二章【完結】ゴミ拾いともふもふ生活:5/25〜5/29 三章【完結】ゴミ拾いともふもふ融合:5/29〜5/31 四章【完結】ゴミ拾いと流行り病:6/1〜6/4 五章【完結】ゴミ拾いともふもふファミリー:6/4〜6/8 六章【完結】もふもふファミリーと闘技大会(道中):6/8〜6/11 七章【完結】もふもふファミリーと闘技大会(本編):6/12〜6/18

処理中です...