転生!底辺ドワーフの下剋上~小さい英雄の建国記~

西の果てのぺろ。

文字の大きさ
29 / 190

第29話 仲間の為に

しおりを挟む
 コウと大鼠のヨースはダンカン達を乗せた荷車を引っ張って必死に街道を南下していた。

 もうすぐ山道に差し掛かるところであったが、背後から砂塵が上がっている。

 追手だ。

 どうやら、新たに編成した騎馬隊と歩兵隊が一緒に向かって来ているのか、その煙は大人数の移動を示唆していた。

「マズいぞ、コウ! このままだと、山道に入った辺りで捕捉される可能性が高い!」

 大鼠のヨースは荷車を易々と引いて駆ける緑の髪で人間の少年のような見た目のドワーフに危機を指摘する。

「とりあえず、山道の入り口まで行けば、すでに道を塞いでいるからその辺りで時間稼ぎは出来ると思う!」

 コウは自分で塞いだ山道の事を思い出し、ヨースに助かる可能性を告げた。

「え!? それだと俺達が通れないじゃないか!」

 ヨースは感じの事を指摘する。

「それは大丈夫。僕が一度回収し直すよ!」

 コウには魔法鞄というとっておきがあるから、慌てていない。

 だが、それについてヨースは知らないから理解出来ず、ドワーフに加勢したのは失敗だったかもと思い始めるのであった。


 コウとヨースは荷車を二人で必死に引いて加速し、山道の入り口まで捕捉される事なくなんとか到着する事が出来た。

 だが、追手は迫っている。

 そして、目の前には山道を塞ぐ大木であるから、大鼠のヨースはこのままドワーフ達は放っておいて自分だけこの大木を越えて逃げた方がいいのではないかと心を過ぎった。

 そもそも、ヨースはドワーフとは縁も所縁もない。

 強いて言うなら商売相手だ。

 大鼠族はその姿から人族からは当然差別の対象だったから、商売相手は異種族が多い。

 そして、ヨースは鉱山の街のドワーフ達と商売する事で小銭稼ぎをしていた。

 そのドワーフ達が新天地でやり直すと聞いて、お金の臭いがすると感じたのだ。

 だから、リーダーのヨーゼフの頼みを聞いて、人族の動きを監視して報告したりと、さほどお金にならない綱渡りのような仕事も引き受けていたのである。

 そこに、これまたお金の臭いがする自分と同じ歳くらいのドワーフらしからぬドワーフを知った。

 コウである。

 この緑の髪色の人族の子供に近い姿のコウがまた、ヨースにとって珍しく映った。

 ドワーフの特徴と言えば立派な髭に、低身長ながら筋骨隆々な体躯だが、そんな外見は全くしていないのだ。

 道中で聞けば人間との間に生まれたハーフドワーフらしい。

 それで長い間、差別の対象だったらしいが、ダンカン達との縁で最近ではドワーフ内でも一人前と認められ、大切な友人だからどうしても助けたいのだと涙ながらに語っていた。

 そこから人柄はよく伝わってきたし、ドワーフの集落での人族の追手相手の大立ち回りも丘から見物させてもらっていたから、こいつは将来凄い奴になるかもしれない、と思ったのだが……。

 目の前の大木に、コウに自分の人生を賭けるのは早まったかもしれないと思うのであった。

 しかし、次の瞬間だった。

 コウが腰の小さいポーチを大木に向けると、一本一本その小さいポーチに吸い込まれて消えていくではないか。

「! ──それって、もしかして、魔法の鞄か!? それも収納量が大きい一級品!」

 ヨースは行商人だからその存在は当然知っている。

 それに、実際目にした事もあった。

 取引先の商人が魔法鞄を自慢げに見せてくれた事があったのだ。

 しかし、目の前のコウのように大木を収納できる程の容量を持ったものではなかった。

 だから、わかる。

 一級品の代物だと。

 そんな物を持っているという事は、ドワーフの中でも一目置かれる存在のはず、コウの事はその見た目で目立つ以外、噂でも聞いた事がなかったのだが、もしかするとコウはドワーフ内だけで秘密の存在なのではないか? とヨースは考えた。

 こいつはやっぱり、金の臭いがする!

 ヨースは全ての大木を回収し終わるコウの背中を見て、やっぱりこいつに賭けるべきだと思い直した。

「ヨースさん、ここからは君がこの荷車を引っ張って逃げてくれ。僕はここで時間稼ぎをする」

 そう言うと、荷車を山道側にいれてすぐに、コウはまた、魔法鞄から大木を出して道を塞ぎ始める。

「お前一人でどうするんだよ! ドワーフ達を乗せた荷車を傾斜のある山道で引っ張るのは大変なんだぞ? 道を塞ぎ終えたらお前が引っ張れよ! 俺も後ろから押すから!」

 ヨースは慌てて無謀な事をしようとしていると思えたのでコウを止めるべく提案した。

「ううん。この大木は時間稼ぎにしかならない。だから、今度は僕がその前で粘ってダンカンさん達を逃がすんだ。──ヨース、ダンカンさん達の容態も気になるから急いで!」

 そう言うとコウは大木を跳躍して越えると戦斧を魔法鞄から取り出して、仁王立ちする。

 そこに、追手の騎馬隊が領兵隊と共に追いついてきた。

「ヨース、早く!」

 コウが背中を見せたまま、ヨースに促した。

「……馬鹿野郎。……死ぬなよ?」

 ヨースはそう言うと後ろを振り向かず荷車を引いて四本足で山道を必死に駆け上がっていくのであった。


 領兵隊五十名を率いる新たな隊長は、先行した隊が山道の入り口付近で詰まっているところに追いついた。

「……これはどういう事だ?」

 状況がわからない新隊長が、追いついた隊の後ろの領兵達に声をかける。

「あ、隊長! 今、道を塞いでいるドワーフと前列の隊が戦っているところです!」

「相手の数は?」

「一人です!」

「何!? ──ま、まさか……、ドワーフの集落で邪魔していた奴か……?」

「そのようです!」

 新隊長はそれを聞いて愕然とする。

 その時、副隊長の一人としてその場で目撃していたのだ。

 スポンサーまで付いていた腕利きの隊長を力で押し切って倒した子供にしか見えないドワーフの強さに失禁するくらい驚いたから、新隊長は内心かなりビビっていた。

 だが、何も対策を考えていなかったわけではない。

「兵士たちに伝えよ! ──遠巻きにして弓矢で射かけるのだ! そして、前面には長槍を構え接近するな。奴の戦斧は柄が長いと言っても一メートル弱。槍と弓矢で距離を取って確実に仕留めれば怖くはない!」

 ただの小さいドワーフ一人相手に卑怯としか言えない戦法であったが、しかし、それは確かに有効な手段だろう。

 領兵はすぐに前列で戦う兵士に新隊長の命令を伝えるのであった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

1×∞(ワンバイエイト) 経験値1でレベルアップする俺は、最速で異世界最強になりました!

マツヤマユタカ
ファンタジー
23年5月22日にアルファポリス様より、拙著が出版されました!そのため改題しました。 今後ともよろしくお願いいたします! トラックに轢かれ、気づくと異世界の自然豊かな場所に一人いた少年、カズマ・ナカミチ。彼は事情がわからないまま、仕方なくそこでサバイバル生活を開始する。だが、未経験だった釣りや狩りは妙に上手くいった。その秘密は、レベル上げに必要な経験値にあった。実はカズマは、あらゆるスキルが経験値1でレベルアップするのだ。おかげで、何をやっても簡単にこなせて――。異世界爆速成長系ファンタジー、堂々開幕! タイトルの『1×∞』は『ワンバイエイト』と読みます。 男性向けHOTランキング1位!ファンタジー1位を獲得しました!【22/7/22】 そして『第15回ファンタジー小説大賞』において、奨励賞を受賞いたしました!【22/10/31】 アルファポリス様より出版されました!現在第四巻まで発売中です! コミカライズされました!公式漫画タブから見られます!【24/8/28】 マツヤマユタカ名義でTwitterやってます。 見てください。

猫を拾ったら聖獣で犬を拾ったら神獣で最強すぎて困る

マーラッシュ
ファンタジー
旧題:狙って勇者パーティーを追放されて猫を拾ったら聖獣で犬を拾ったら神獣だった。そして人間を拾ったら・・・ 何かを拾う度にトラブルに巻き込まれるけど、結果成り上がってしまう。 異世界転生者のユートは、バルトフェル帝国の山奥に一人で住んでいた。  ある日、盗賊に襲われている公爵令嬢を助けたことによって、勇者パーティーに推薦されることになる。  断ると角が立つと思い仕方なしに引き受けるが、このパーティーが最悪だった。  勇者ギアベルは皇帝の息子でやりたい放題。活躍すれば咎められ、上手く行かなければユートのせいにされ、パーティーに入った初日から後悔するのだった。そして他の仲間達は全て女性で、ギアベルに絶対服従していたため、味方は誰もいない。  ユートはすぐにでもパーティーを抜けるため、情報屋に金を払い噂を流すことにした。  勇者パーティーはユートがいなければ何も出来ない集団だという内容でだ。  プライドが高いギアベルは、噂を聞いてすぐに「貴様のような役立たずは勇者パーティーには必要ない!」と公衆の面前で追放してくれた。  しかし晴れて自由の身になったが、一つだけ誤算があった。  それはギアベルの怒りを買いすぎたせいで、帝国を追放されてしまったのだ。  そしてユートは荷物を取りに行くため自宅に戻ると、そこには腹をすかした猫が、道端には怪我をした犬が、さらに船の中には女の子が倒れていたが、それぞれの正体はとんでもないものであった。  これは自重できない異世界転生者が色々なものを拾った結果、トラブルに巻き込まれ解決していき成り上がり、幸せな異世界ライフを満喫する物語である。

【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜

一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m ✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。 【あらすじ】 神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!   そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!  事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます! カクヨム(吉野 ひな)にて、先行投稿しています。

少し冷めた村人少年の冒険記

mizuno sei
ファンタジー
 辺境の村に生まれた少年トーマ。実は日本でシステムエンジニアとして働き、過労死した三十前の男の生まれ変わりだった。  トーマの家は貧しい農家で、神から授かった能力も、村の人たちからは「はずれギフト」とさげすまれるわけの分からないものだった。  優しい家族のために、自分の食い扶持を減らそうと家を出る決心をしたトーマは、唯一無二の相棒、「心の声」である〈ナビ〉とともに、未知の世界へと旅立つのであった。

男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件

美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…? 最新章の第五章も夕方18時に更新予定です! ☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。 ※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます! ※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。 ※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!

断罪後のモブ令息、誰にも気づかれずに出奔する

まる
ファンタジー
断罪後のモブ令息が誰にも気づかれないよう出奔して幸せを探す話

異世界転移から始まるハーレム生活〜チートスキルを貰った俺は、妹と共に無双する〜

昼寝部
ファンタジー
 2XXX年、X月。  俺、水瀬アキトは戦争の絶えない地球で『戦場の悪魔』と呼ばれ、数多の戦で活躍していた。  そんな日々を過ごしていた俺は、ひょんなことから妹と一緒に異世界へ転移することになった。  その世界にはダンジョンが存在しており、ライトノベルなどで登場する世界観と類似していた。  俺たちはその世界で過ごすため女神様からチートスキルを貰い、冒険者となって異世界での生活を満喫することにした。  これは主人公の水瀬アキトと妹のカナデが異世界へ転移し、美少女たちに囲まれながら異世界で無双するお話し。

45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる

よっしぃ
ファンタジー
2巻決定しました! 【書籍版 大ヒット御礼!オリコン18位&続刊決定!】 皆様の熱狂的な応援のおかげで、書籍版『45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる』が、オリコン週間ライトノベルランキング18位、そしてアルファポリス様の書店売上ランキングでトップ10入りを記録しました! 本当に、本当にありがとうございます! 皆様の応援が、最高の形で「続刊(2巻)」へと繋がりました。 市丸きすけ先生による、素晴らしい書影も必見です! 【作品紹介】 欲望に取りつかれた権力者が企んだ「スキル強奪」のための勇者召喚。 だが、その儀式に巻き込まれたのは、どこにでもいる普通のサラリーマン――白河小次郎、45歳。 彼に与えられたのは、派手な攻撃魔法ではない。 【鑑定】【いんたーねっと?】【異世界売買】【テイマー】…etc. その一つ一つが、世界の理すら書き換えかねない、規格外の「便利スキル」だった。 欲望者から逃げ切るか、それとも、サラリーマンとして培った「知識」と、チート級のスキルを武器に、反撃の狼煙を上げるか。 気のいいおっさんの、優しくて、ずる賢い、まったり異世界サバイバルが、今、始まる! 【書誌情報】 タイトル: 『45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる』 著者: よっしぃ イラスト: 市丸きすけ 先生 出版社: アルファポリス ご購入はこちらから: Amazon: https://www.amazon.co.jp/dp/4434364235/ 楽天ブックス: https://books.rakuten.co.jp/rb/18361791/ 【作者より、感謝を込めて】 この日を迎えられたのは、長年にわたり、Webで私の拙い物語を応援し続けてくださった、読者の皆様のおかげです。 そして、この物語を見つけ出し、最高の形で世に送り出してくださる、担当編集者様、イラストレーターの市丸きすけ先生、全ての関係者の皆様に、心からの感謝を。 本当に、ありがとうございます。 【これまでの主な実績】 アルファポリス ファンタジー部門 1位獲得 小説家になろう 異世界転移/転移ジャンル(日間) 5位獲得 アルファポリス 第16回ファンタジー小説大賞 奨励賞受賞 第6回カクヨムWeb小説コンテスト 中間選考通過 復活の大カクヨムチャレンジカップ 9位入賞 ファミ通文庫大賞 一次選考通過

処理中です...