転生!底辺ドワーフの下剋上~小さい英雄の建国記~

西の果てのぺろ。

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第93話 その後と旅路

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 コウ達の無双ぶりに、バルことオーウェン王子とその一行は、茫然としていた。

 護衛騎士達は刺客と対峙してみて、その腕が一流であったことはわかっている。

 そんな相手を、容姿で侮られたことで不意を突けたとはいえ、ほぼ全員を彼らで一掃できたことに驚かずにはいられなかったのだ。

「こいつは驚いた……。ヨース会長の護衛というのは、十分理解しているつもりだったが、ただの魔物使いテイマーではないのだな……」

 バルは、コウの活躍に素直に感心した。

「バル様、コウだけではありません。あちらのダークエルフの剣技、そして、魔法使いもこちらの想像とは桁違いの才を持ち合わせているかと」

 バルの側近である黒髪黒い目のセバスが、ララノアとカイナの二人の活躍も高く評価した。

 セバスは剣も使えるが魔法もできる万能型だから、二人の能力に気づいたのだ。

「バル様、今回はヨース殿の護衛に助けられたと言って良いかと思います。これまでの刺客とは質も量も違いましたし」

 護衛騎士のカインが、無口なアベルに代わりにバルことオーウェン王子に説明する。

「なんだよ、あんたら。刺客に狙われるのは今回が初めてではないのか。そう言うのは先に言ってもらいたかったぜ?」

 コウ達の雇い主を演じている大鼠族のヨースがバルことオーウェン王子を非難するように注意した。

「すまなかった。こちらも刺客には慣れ過ぎていて、その先入観から他者を巻き込まないのが普通だと思い込んでいた。まさか、そちらの命も狙おうとするとはな……」

 側近のセバスが主であるバルに代わり謝罪する。

「なんだか、僕達を見逃したうえで、みなさんを殺した罪を擦り付ける算段だったみたいだけど、断ったから命を狙ってきたみたいです」

 コウが先程言われたことをそのまま、バルことオーウェン王子一行に伝えた。

「……今まで誰かと一緒に旅をするということは少なからずあったのだがな……。よく考えると、異種族は初めてか……。──どうやら、今回は例外だったらしい」

 バルことオーウェン王子は、眉をひそめると盲点だったとばかりに反省する素振りを見せる。

「それで、相手は誰なの? 初めてではないのなら、見当くらいはついているのでしょ?」

 ダークエルフのララノアが初めてそこで口を挟んだ。

「ば、馬鹿、それは聞いたらいけな──」

 ヨースが慌てた様子で、ララノアの質問を止めさせようとした。

「多分、兄弟の誰かだな。つまり、同じ王家の者だろう」

「ひぃー! やっぱりじゃないか! ララなんでそんな質問をするんだ! 今の話は絶対、俺達、平民が知ってはいけない情報だろう!」

 ヨースはムンクの『叫び』のように両手を頬に当てて悲鳴を上げた。

「あ、すまない。こんな質問をする者がいないからつい……」

 バルことオーウェン王子も、うっかりとばかりに謝罪するが後の祭りである。

「まあ、刺客は全滅させたんだし、大丈夫じゃない? 僕達がそんな事を知ったこと、証言する人がいないよ」

 コウが、笑って楽観的に答えた。

「ここのメンバーの誰かが証言できるだろ! ……俺は拷問にかけられそうになったら吐くぞ。だから、俺が捕まったらすぐに助けないと知らないからな!?」

 ヨースはコウにツッコミを入れると仲間を売ることを宣言する。

「ヨースは私達を売らないわよ」

 魔法使い姿のカイナが信頼している友人を代弁した。

「……。──……善処する」

 ヨースは信頼されていることに少し嬉しさを感じて、自白はしない方向で頑張ることを心に誓うのであった。


 コウ一行は、その後、尾行されていないか街道を外れた道を通ったりしながら、警戒しつつ辺境にある故郷を目指した。

 どうやら、刺客はあの時が最大の機会だと考えて現場の人員全員を投入したようで、尾行されている気配は全くないようであった。

「ふぅ……。少し時間はかかったけど、このまま、ダーマス伯爵領を横断して故郷に帰ろうか」

 コウはあまり言い慣れていないセリフを口にする。

 そう、コウ達にとって、帰る故郷が出来たのはこの一年弱くらいだからだ。

 特にララノアやカイナは帰る故郷が出来てから、初めて外への旅だったから、コウのこの言葉に嬉しくなる。

「「うん!」」

 ララノアとカイナは同時に返事をする。

 ヨースは無言でニヤリと笑みを浮かべ、剣歯虎のベルは「ニャウ」と一声鳴く。

「早く家に帰って、イッテツさんやダンカンさん達と旅のことをいっぱい話して飲みたいね」

 ララノアは嬉しそうにコウに応じると、笑顔をのぞかせるのであった。


 故郷であるエルダーロックの村に続く整備されていない道を進んでいると、見たことがない検問所ができていた。

 どうやら最近出来たばかりなのか、真新しいものだ。

「そこの二台の馬車、止まれ!」

 検問所の兵士が、コウとバル一行の馬車の前に立ちはだかる。

「……どうしたんですか?」

 コウが剣歯虎のベルに跨ったまま先頭を進んでいたので事情を聴く。

「なんだ、魔物使いの子供に大鼠族、ダークエルフに人の魔法使い? 後ろの馬車は誰が乗っている?」

 兵士は答えることなく、馬車に乗っている人員を確認する。

「こちらは全員、人だが?」

 バルことオーウェン王子が、馬車を代表して答えた。

「ドワーフはいないみたいだな。だが、お前達はこの先に何のようだ? この先はダーマス伯爵に対して反逆を起こしたドワーフの村しかないぞ?」

 兵士はコウ達を疑うように二台の馬車の中を確認しながら、疑問を口にする。

「「「反逆!?」」」

 コウ一行は想像していなかった不穏な二文字に驚き、思わず口にするのであった。
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